ザ・グレート・展開予測ショー

愛の歌


投稿者名:tara
投稿日時:(05/ 1/11)

本当のモノが欲しい。

欲しいと言っても人から貰うものじゃないの。それは私の中にある。

でも本当にそんなモノあるのかしら?他でもない、この私の中に。

悲しいのよ、あの人に愛されれば愛されるほど。

ああ、こんな思いをするくらいならいっそ……






『生まれて来なければ良かった』









「タマモのやつ知らないかな、おキヌちゃん」

「え?今日はまだ見てませんよ。どうかしたんですか?」

「いや……」

横島忠夫は焦っていた。それも当然、朝起きると隣で寝ているはずの恋人が居なかったからだ。
それは彼女に奔放なところはあるのは否めないが、恋人に何も言わずに消えるほど勝手ではない。

「何よ横島クン、愛想尽かされたの?」

令子が面白そうに窺う。

「………そうなんでしょうか?」

あからさまに落ち込む横島。

「ちょっ、冗談だってば!何本気にしてんのよ調子狂うわね。……何かあったの?」

「……実はーー」







時は昨日の夜まで遡る。
ボロアパートの一室。1組の男女が向かい合っていた。

「大事な話があるんだ」

「…ん…なに?」

横島の真剣な面持ちにタマモはきつねうどんをたぐるのを止めた。
彼がこんな顔をするのは仕事中くらい。食事しながら聞くべきではないだろう。
タマモは座りなおして横島を見る。

「大事な話なんだけど…「それはさっき聞いたわ」…いーから聞けよっ!」

真剣な話だとは分かっているが本性はキツネのタマモ。思わずちゃちゃを入れてしまった。

「……ゴ、ゴメン」

半目でタマモをにらんで一度深呼吸。そして

「あのだな、その、なんつーか、先月から事務所の正社員になってだな、俺も社会的に自立
出来てきてだな、そろそろなんつーかこう、いっぱしの男になったというか、世間様に恥じない
人間に……ああああああああああッッ、もうッッ!!
タマモさんッ!」

緊張の余り練習通りにいかず癇癪気味になる横島。

「はいぃッ!!!」

いきなり両肩を掴まれて狼狽するタマモ。

「けっ、結婚してくださいッッ!」

「…………………」

思考停止。

「………………?」

「……タマモ?……」

「えっ?何?……ああ……えっ?えっ?」

「あの、だからね「ええええええええええええええええッッッ!!!???」」

「ぬおッ!?」

「ほ、本気でいってんの?私妖怪「んなことどうでもいい」…ヨコシマ……」

「いいか?恥ずかしいからこれで最後だぞ。タマモ、俺と結婚して欲しい」

「…………」

タマモは横島から眼を逸らし俯く。顔は見えない。しかし形のいい耳が真っ赤に染まっている。

「……タマモ?」

「………うん、いいよ」





返事は分かっていたとはいえ安堵のため息が漏れる。一大イベントを終え緊張から開放された所で、目の前の少女が愛おしくてたまらなくなった。
彼女にはルシオラのことは言ってある。以前愛した女性が未だ心の中に居ると。それどころか自分の子供に転生してくる可能性すらあると。

それでも、この子は。

だからこそ、この子を。

その為の第一歩。俺の誓いを捧げる。



「タマモ」

彼女がゆっくり顔を上げる。やはり顔が赤い。

「ん?」

「愛してる」

「ッ……」

切れ長の瞳から涙がこぼれ出す。

「おいおい、何泣いてんだよ?」

結婚申し込んでも泣かなかったので彼は驚いてしまう。

「あ、愛してるって、うぅっ、初めて言われたぁ」




好きは100回以上いったろう。その度彼女は赤くなったが、少し寂しそうだった。
意識して言わなかった。何故なら街で溢れてる安っぽい愛じゃないから。彼が初めて愛した女性は彼が殺した。少なくとも彼自身がそう思っている。
優しい呪い。重い重い言霊。お前が愛した女性は死ぬ。
だから言わなかった。この子までいなくなったら。また。またあの無力感を味わうのだろうか。



「愛してるよ」

「ヨコシマぁぁ……」

もう一度誓う。だからってもう愛さないのか。
否。悲しい蛍は絶望の荒野に種を蒔いた。

私の好きなあなたのままでいて

気が付くと彼の頬にも涙が伝っている。
彼女のためにも不甲斐ない生き方は赦されない。
あんないい女に愛された。それは彼に生まれた初めての誇り。




「愛してるんだ」

最後にもう一度。この子を愛し抜いてみせる。守り抜いてみせる。
あの時は出来なかったけれど。

「……うあああぁぁぁぁぁぁあああ」

抱きしめて出来る限り優しく撫ぜる。



そして





「…独り身の私の前で惚気話とはいい度胸じゃない。マゾだとは思ってたけど自殺願望まであるとはね(ゴゴゴゴゴゴゴ)」

かつて(?)は横島に恋心を抱いていた令子。嫉妬と怒りの余りジョジョのポーズになり神通鞭を構える。

「ヒイッ!!!!か、堪忍やーッ!ライクからラブに変わってもーてんッ!!」

「ッ!!死にさらせーッッ!!」

ひゅんッ、バシィッ、びゅん、ピシィッ、ヒュン、バシッ

「はぶんッ!?ブッ!ブブゥッ!!??死ぬッ、死ぬッ!?」

「おキヌちゃんッ、ヒーリングよッ!」

「はい!」

令子の掛け声で手早くヒーリングを施す。

「横島さん、もう大丈夫ですか?」

「あ、ああ。ありがとう、おキヌちゃん。おかげで助かっ……」

「美神さーん、もう大丈夫ですって」

「……え?何何!?どういうこ…へブッ!?助けておキヌちゃん!!」

おキヌは青筋を立てて横島を見る。横島は未だ訳が分からない。

「まだ分からないの横島クン!?あんたはおキヌちゃんの霊力が続く限り永遠に半殺しを味わうのよッ!!」

「あんたらグルなんかッ!つーかレクイエム!!??」

横島に戦慄が走る。

「っとまぁ冗談はこのくらいにして……」

「冗談で済むかいッ!!話は最後まで聞いてくださいよ!」

「続きあんの?」

「そしてー、って書いとろーが!!」

「はいはい、お惚気は勘弁してよね」




…………
………
……


そして

タマモを離した。
顔が涙でグシュグシュになってしまっている。

「ヨコシマ……んぅ」

瞳を濡らして見つめてくる彼女に優しく口付ける。

「ッ!?」

舌を入れられた。珍しく積極的なタマモに驚く。

「ンッ、…ちゅ、チュッ、んんん、はぁッ!」

「ん、愛してるぞ、タマモ」

「はぁ…私も、愛して…………愛して……ッ…」

「ど、どうした?」

「………………」

続きを紡がないタマモに不安になる。どうしたのだろうか?みるみる顔色が悪くなっていく。

「……何でもないわ。ねぇ、ヨコシマ」

「おう」

いきなり無表情になった彼女は微妙な速度で告げた。

「……結婚の話、無しにして」

「おう。………おお?」

「じゃ、おやすみ」

彼の隣を通り抜け布団に入る。

「………………」

答えない彼女。

「………………………………」

頭が真っ白になるとはこういうのだろう。婚約成立と破棄がここ数分で成されてしまったのだから。
その夜横島がタマモを起こす為に歌あり踊りありのステージを繰り広げたが、最後まで相手にされなかった。







「つー訳で埒あかないから朝話そうと思ったんですけど…」

「もう居なくなってたというわけね。性質悪いわね〜」

あんたも人のこと言えないけど、と突っ込もうとしたが先ほどのレクイエムの恐怖がそうさせない。
生きるべきか、死ぬべきか?いやしかし!関西人として仕事はきっちりせにゃならん、
よ〜し、こうなりゃやけだ!さーん、にいー、いーち、
と、横島が無意味に命を捨てようとした時、

「いくら相手が横島クンでもそりゃ変だわ」

令子が続けた。

「そもそも金毛九尾っていうのは自己防衛のために時の権力者に近づく妖怪なのね?横島クンは馬鹿だけど
GSの中でもトップクラスの実力者だしアシュタロスの件で協会はともかく神界、魔界に顔が利くわ。馬鹿だけど。
その横島君を自分から近づくどころか向こうから求婚してきたのよ。タマモにとっちゃいわばタナボタ。自分から
手放すなんてありえないわ」

横島は考え込む。令子の言い方はタマモの行動を妖怪としての本質から捉えているのでいい気はしないが、
きっと自分には出来ないアプローチでの意見を述べてくれているのだろう。タマモは何を考えているのか。
一度はOKしたタマモが、泣いてまで喜んだタマモが態度を一変させた。理解不能、お手上げだ。

「美神さん、今日有給もらえませんか?」

脳みそババロアの彼がいくら頭を捻っても果汁しかでないだろう。馬鹿は馬鹿らしく素直に聞くべきだ。

「はいはい、今のあんたじゃどんなポカやらかすかわかんないしね。さっさといってらっしゃい」

「ありがとうございます!!」

事務所を飛び出した横島はすぐさま『捜』と『索』の文殊を発動させた。








初めましてtaraです。
生意気にも続きます。
すいません。

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