ザ・グレート・展開予測ショー

『GS美神another story』 NO:3「愛憎の果てに」


投稿者名:とらいある
投稿日時:(05/ 1/ 9)

鬱蒼とした森は地表に降り注ぐ僅かな月の光をも遮り、森を闇に染めあげる。
だが遮光装置・暗視装置・その他もろもろの機能持つバイザーのお陰で足元はまるで日の光に照らされているかのように鮮明に映りだされていた。
だが、麻痺によって満足に動かない足を引き摺らざるを得ないため、何度も下草に足を取られそうになる。
その度に体勢を立て直し、そして再び歩を進める。
べスパに言われたことが、縋り付くような視線が頭の中でちらつく。
いくら説得しても聴いてくれないだろう。
今の彼女はヨコシマを殺すことしか考えていない。
それが最上の解決方法だと思い込んでいるのだから。
愛か、家族の絆か。 
まるでB級映画に出てきそうな陳腐なテーマの様。
なんて滑稽なのだろうか!
状況がそうさせるのならば、いっそのこと状況を変えればよい。
ヨコシマがうまくべスパの隙をついて、当初の予定通り逃げ延びる事ができるならその必要もないが、多分駄目だろう。
べスパの戦闘能力に関しては実際に戦った自分がなによりも分かっている。
横島とべスパの戦闘能力差は余りにも大きすぎる。
虫けらを殺すが如くヨコシマを殺すことができるだろう。
自分が戦おうにも先程の麻痺毒がまだ残っており碌に戦えそうにない。
出来る事と言えば、身を挺してヨコシマを守り、その後べスパを納得させるため、ヨコシマにある決断を迫らなければならないことぐらいだ。
ヨコシマにとってこれ以上にない残酷な選択肢になるだろう。
悩んだ末に彼がどの道を選ぼうと、選んだ方を尊重するつもりだ。
だが・・・

(私って嫌な女ね)

自嘲的な笑みを口の端に浮かべる。
自分がヨコシマを好きなように、ヨコシマも自分の事を好きだという事を、何よりも自分を優先してくれる事を計算にいれた・・・打算に満ちた選択肢。
これを考えた私を”嫌な女”と言わずして何と言うのだろうか。
だけど今は”嫌な女”ども構わないと思う。

(今はヨコシマを死なせない事を何よりも優先しなくては)

それが原因で溝が生じ広がってしまったとしても、いつかは埋める事ができる。
だが死んでしまってはそれまでなのだ。
ヨコシマも家族の絆も両方守る。
その為だったら汚れ役にでも何にでも喜んでなるつもりだ。


だがそこでもう一つの可能性も考える。
べスパが納得してくれなかった時の事を。

(どうしても納得してくれないその時には・・・)

新たな決意と覚悟を小さな胸に秘め、ヨコシマとべスパの居るであろう場所を目指し足を運ぶ。


  ――――『GS美神another story』 NO:3「愛憎の果てに」――――
          
べスパの両腕から放たれた霊波砲は、横島の目かなり手前で幾十もの数に拡散した。
放たれた直後、横島は盾を前方に構え自分の方向に向かってきそうな霊波砲を受け止めながらべスパとの距離を詰めようとした。
如何しても避けられようが無いものは盾で受け止める。
直撃を何度か受けたにもかかわらず損傷は全く見られず、受けた霊波砲をあさっての方向へと反射させた。
それを見たべスパは、横島を近づけさせぬよう再び拡散霊波砲を放ち、今度は霊力を収束しはじめた。
横島は自らが生み出した盾の頑丈さに自信を持ち、回避しながらの接近を止め、攻撃を盾で受けつつ距離を詰める事にした。
2撃目が炸裂し再び霊波の光芒が視界を覆う。
盾を前方に構え、体勢を低くし突進する。
次々と盾に着弾していくが盾を傷つけることはできず、反射した霊波砲が周囲の木を傷つけていく。
だが一際強い衝撃により後方へ吹っ飛ばされた横島にべスパが迫っていた。
霊気を纏った拳が迫ってくるのが見えた横島は咄嗟に盾を構え何とか防ごうとした。
―――ガキンッ

金属同士が擦れ合う様な耳障りな音と共に感じる衝撃。
インパクトの瞬間思わず目を瞑ってしまった横島が目を開けた時、目の前には拳を押さえて苦悶の表情を浮かべているべスパの姿があった。
一瞬呆けてしまった横島が我にかえり身を起こそうとしたところでべスパも後退する。
横島は盾の状態を確認して、先程の攻撃により盾表面が拳状に凹んでいる事に言葉を失った。
一方べスパの方も驚きを禁じえなかった。
2撃目のあと撃った収束霊波砲は盾を打
ち破るために撃ったものだったのだが打ち破れず、直接攻撃も打破することは叶わなかった。
硬度が高かったためか仕掛けた攻撃がそのまま自分へのダメージとなって返ってきたらしい。
自分の拳を確認してみるが骨はやられていないようだった。
どんな隠し玉を持っているか分からない相手に、接近戦は不利だから先に盾を潰して横島にとって不利な遠距離からの霊波砲戦を仕掛けようとしていたのだが、思いの外盾が堅固だった。
同じ箇所に2度3度直接攻撃を当て続ければ破壊できるだろうが、そう何度も隙を見せることもないだろう。
やはり霊波砲で隙を作るか盾を破壊するかしかない。
そう考えているべスパに横島のハンド・オブ・グローリー襲い掛かってきてべスパの二の腕を掴む。
何時に間に接近を許していたのか、と横島に目を向けるとどうやらハンド・オブ・グローリーを伸ばしたらしい。
小賢しく思いながら伸び切ったグローリーを手刀で叩き切って牽制の霊波砲を放つ。
横島は呆気なく破壊されたグローリーを見て彼我の戦闘力差を肌で感じた。
盾で霊波砲を受けた後、右手にサイキックソーサーを作り出したが、いざ投擲しようとした所で動きを止める。
先程まで目の前にいたべスパが何時の間にか居なかったからだった。
あわてて周囲を確認しようとした所で頭上から殺気を感じとり、確認しないままに右手のソーサーを投げつける。
予想以上に接近していたらしく、投げつけてすぐ着弾時の爆発が起きた。
爆風とべスパの攻撃から身を庇う為、盾を構えたのだが、ギンッという音が盾より発せられ直後、腹に衝撃が走り訳も分からぬ内に後方へ吹っとばされた。
地面を引き摺り止まる事ができたが、上体を起こした所で体に激痛が走り、その場にうずくまる。べスパに蹴りを入れられたらしい。
骨に罅が入ったか
折れたか、だが内臓はやられなかったようだった。
急いで文殊を取り出し『癒』の念を込める。
すぐべスパは駆けつけてくるだろうから早目に済ますために纏めて二つ使う。
回復しながら盾に目を向けると、盾は横一文字に切り落とされていた。
その位置は、横島が盾を構えたとき丁度首の位置にあたるところだった。
一番最初にべスパに攻撃を仕掛けた時より段々動きが鋭くなってきていると感じた。
確実にソーサーが着弾していたにも拘らず怯まず盾に、そして自分に間段なく攻撃を仕掛けた。
自分とルシオラの逢瀬の前にルシオラと一戦あったらしいが、その時の傷が癒えつつあるのだろうか。
ならば時間が経てば経つ程こちらのチャンスは失われていく。
文殊による応急処置により、まだ鈍い痛みが残るものの戦える状態に回復できた。
守りに徹しながら、隙を伺って攻勢に移るつもりだったが肝心の盾のほうが後1・2撃で破壊されてしまうだろう。
残された道は完全な奇襲のみ。
単体の文殊が殆ど効かない以上『眠』の文殊一つだけでは効果が薄いだろう。
『眠』の文殊と効果が薄かった時のことも考え『睡眠』に使う2つの文殊を残し、残り3つの文殊を全て使ってでも攻め込むしかない。
それを行うには意表をつく攻撃か、圧倒的な速度が必要だ。
最も文殊を効果的に使うには細部までイメージが浮かぶこと。
それなら使い道は一つしかない。
いつだったか・・・文殊を同時に複数の文字を使うと応用範囲が劇的に広がる、と教えてくれた人がいたが、そんな重要なことを教えてくれた人の顔をなぜか覚えていなかった。
自分に近しい人だった気がするから猿神か小竜姫だろう。
3つ同時はおろか、2つ同時も今回が初めてだ、普段は1つで間に合っているからだ。
漠然とだが、やれそうな気がした横島は3つの文殊に念を込めいつでも使える状態にしてから、盾を構え直しべスパのいる所へ戻っていった。

べスパは自らの体が次第に調子を取り戻してきたことを自覚していた。
先程も飛び掛ったとき予想以上に体が素早く反応できたことと、力を集中して練ることが出来るようになったことがその表れだった。
手刀に魔力を込めた事によりあの厄介な盾を切り裂く事ができ、その後の蹴りも考えずに勝手にだせた。
体が思うように動かず、魔力も半分以下くらいもだせないもどかしさから開放されたべスパにとってもはや横島は敵ではない。
だがどんな隠し玉を持っているか分からない。
べスパは迂闊に動かず待ち受けることにした。
その時右側から何かが飛び出してきた。
あわてず霊波砲を放ち相殺する。
攻撃に加える直前に喰らった物と同じようだったが、たとえ当たっていたとしても霊的防御力も回復した為、殆ど効かなかっただろう。
ところが今度は背中の攻撃が直撃し爆発した。
これには流石のべスパも虚を突かれ、よろけてしまう。
飛んできた方向に体を向け、霊波砲を撃つも再び背後に直撃。
今度は倒れこんでしまった。

(なっ!どういう事だ?)

罠にでも嵌まったのだろうかと考えてみるが、横島が罠を仕掛けたような素振りは見られなかった。
また自分は先程から一歩も動いていないため、仕掛けられた罠の中に飛び込んだという事も考え
にくい。
となると考えられるのはただ一つ、横島が人間の移動速度からはありえない速度で移動・
攻撃している事になる。
それが事実となると横島は奇襲と強襲の両方を兼ね備えた攻撃を仕掛けることが出来るという事だった。
しかもこちらは捕捉さえできないような速度にて。
霊的防御力が回復した今、これらの攻撃は殆ど痛くもないがこちらは注意が散漫になってしまう上、あの速度だと接近を許してしまう。
たいした攻撃力を持っていないというのは分かっているが、何か頭の中で「接近させると危険だ」と警鐘を鳴らす。
立ち上がり間断なく注意を払う、主に後方を。
すると左手斜め前方から再び飛び出してくるものを感じた、だがこれはダミーだ。
本命は後方からの奇襲。
そして背後から迫ってきた殺気・・・おそらく横島本人をわざと気づかぬ振りをして、霊波砲を放ち左手斜め前方からの攻撃を相殺、その勢いのままに振り向きざまに魔力を込めた裏拳を叩き込んだ。
だが・・・
真っ二つに切り裂いたのは横島の持っていた盾のみ、気がついたときには横島は頭上にいて、
伸びた腕からなにかビー玉のようなものを押し付けられた。
それと共に襲い来る耐えようのない程の眠気。
べスパは眠気を振るい去るように腕を振り回し横島を掴まえようとしたが逃げられてしまった。
その時に見た横島は、全身が黄金色に薄く輝いていた。

(やはり1つでは駄目か)

荒い息を上げながら状況を確認する。
確かに効くには効いた。目に見えて反応・動きが鈍くなった
からだった。視線の先のべスパはどことなくよろよろとしている。
さながら眠気と闘っているテスト日前夜の、机に向かう学生のようだった。
盾を右手に持ち替えべスパの背後から突進、ハンド・オブ・グローリーを展開して、べスパが裏拳を叩き込むために振り返る寸前に盾を軸にグローリーを伸ばし跳躍、べスパがグローリーによって支えられた盾を破壊した隙に頭上から『眠』の文殊を叩き込んだ。
効きが弱ければ更に強力な『睡眠』を叩き込むつもりだったが掴まりそうになったため、やむなく離脱。

(くっ、思った以上にキツイぞこいつは)

べスパの腕を掻い潜った後、再度突撃するつもりだったのだが急に意識が遠くなりかけ慌てて離脱したのだった。
息を整え手の中にある3つの光り輝く文殊に目をみやる。
描かれた文字は『超』『加』『速』。
超加速は横島自身、既に何度か経験している技だった。
韋駄天八兵衛VS韋駄天九兵衛・そして月面での竜神の武具を用いた時。
あの時の感覚を思い出しながら文殊を発動させた。
超加速に必要な霊力は文殊から、効果を持続させるために自分の霊力も削りながら行ったため霊力の消耗が激しい。
だがそれよりも・・・

(か、体がだるい、重い、痛い!)

月面の時は竜神の武具を用いたためその加護を、九兵衛戦の時は八兵衛の力もあった為肉体に
かかる負担はかなり軽減されていた(最も八兵衛の時は、複合的な理由により後で激痛に
苛まれたが)
文殊はあくまで超加速を再現させる為だけの道具で身体防御効果は無い。
超加速時は持続させるために自分の霊力も消耗しながらだから霊的防御力も殆どない。
だから負担がモロにきた。

(れ、霊力はともかく、肉体はあと一回が限度だな、)

あまり休んでいる暇も無い。
べスパが立ち直る前に『睡眠』を叩き込まなければならない。
休むのはその後たっぷりとできる。
再び集中して超加速を発動しべスパに向かっていった。
フラフラしながらも間断無く周囲を見回しているべスパに再び背後から接近していった。
途中でべスパがこちらに気づいて放った霊波砲をやけに遅く感じながら易々と避けて見せ、べスパの懐に入った。
左手に握り締めていた『睡』と『眠』の文殊を発動させようとしたその時、超加速が解けてしまった。
文殊の複数同時使用は霊力と共に集中力も必要なのだが、先程蹴りを入れられた脇腹に鈍い痛みが走り、集中が途絶えてしまったからだった。

超加速が切れた直後横島の身を襲う激痛と倦怠感。
だがべスパにはそんな事は関係が無かった。
すかさずべスパの蹴りが入り、横島はガードも出来ないまま後ろに派手に吹っ飛ばされた。
思いっきり背中から地面に叩きつけられた為、一瞬呼吸もできなくなる。
蹴りを左腕の方から受けたためボディに直接のダメージは無かったが、左腕は無残にも折れてしまった。
左手の中から文殊が転がり落ちる。
それを何とか拾い上げようと右手を動かそうとするが、体中に激痛が走り動けなかった。
仰向けに倒れた横島にべスパが近づいてくる、横島は己の死を覚悟した。
だが、べスパの歩み寄る音が途絶える。
頭だけを軽く持ち上げ、霞む目でべスパのいる方角を見てみる。
そこには横島も知っている二人の姿があった。
その内の一人がべスパに向かって怒声を張り上げ、もう一人が横島に駆け寄ってきた。

「べスパちゃん、どういうつもりでちゅか!?」
「・・・・・・」

だが、その問いにべスパは答えず無表情のまま黙って掌を横島に翳した。
だがパピリオの問いかけにも反応しなかったべスパの表情に変化が表れた。
パピリオもべスパの急激な表情の変化を疑問に感じ、横島のいる方に振り返る。
するとそこには・・・

「ゴメンね」

横島の頭を自分の頭の上に乗せ・・・

憂いの表情を浮かべながら横島にそう呟き・・・

横島の首筋に麻酔を打ち込む・・・

ルシオラの姿があった・・・




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ネタは浮かべど 筆は進まず 
OS入れ替えど マシン稼動せず
 
どーも 遅くなってしまいました、戦闘シーンが上手く表現できず凹み&鬱気味です。
前回、「3話編成〜」「次回で決着つきます」なんて言ってましたが表現が悪かったです。
横島VSべスパ戦が決着つくわけで、このお話に決着が着く訳では無いです。
まだまだ続ける予定です。
かなりに方々が、ここで原作合流と思われていたようですが、自分は言われてはぢめて気づきました(笑)でもその「展開」も面白そうですね。
コメントを下さった方々の是非も聞きながら『特別編』として原作合流ストーリーを書くか判断するつもりです(骨子は纏まってます)
それでは、また。


















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