ザ・グレート・展開予測ショー

海外極楽大作戦![その2]


投稿者名:桃子
投稿日時:(05/ 1/ 8)

2.


「バリ?」
美神除霊事務所のメンバーが、いっせいに声をそろえて言った。
「たまたま福引で当たっちゃって・・・それで、あのう、○月×日から一週間ほど休みが欲しいんスけど・・・」
ゴニョゴニョと言葉の語尾をにごす横島であった。
一週間も?と明らかに不機嫌な表情を浮かべた美神であったが、
「まあ、貧乏なあんたがそんな南国へタダで一週間もいけるってんならまるで夢みたいな話よね。せっかくだしいってくれば?」
と、アッサリ旅行を許可した。
「いいな〜横島さん!それってどこですか?インドネシア?常夏?じゃあ冬でも泳げるんですねっ!」
いつもの明るい笑顔で羨ましがるおキヌ。
「先生〜拙者もついていくでござるよ〜〜!」
知らぬ地にはどんなおいしい食べ物があるのだろうかとヨダレをたらすシロ。
「・・・・」
さして関心のなさそうなタマモ。
ペアで、ということは言えなかった。
この場で言ったらどうなるか・・・。横島は本能で恐怖を悟っていた。
この中で一番自然に誘えそうなのはシロなのだが、身元不明の妖怪がパスポートなどまずもらえないだろう。
タマモも同様だが、たとえ発行してもらえたとしても横島との旅行についてくるとは思えなかった。
ひとり悶々と悩む横島をよそに、美神の命令がとぶ。
「○○町の貯水池で仕事よ。これはそんなに難しくないから・・・そうね、シロと横島クン、二人でいってちょうだい」
「やったー、先生帰りは散歩してくるでござるよ〜♪」
「あほっこの寒い中散歩なんぞできるかっ。さっさと終わらせて帰るんだぞ」
はしゃぐシロを抑えながら、二人は事務所を出て、貯水池へと向かった・・・。


翌日。
吐く息も白い、真冬の朝。
窓の外は東京にはめずらしく、うっすらと銀色に染まっている。
横島は重くだるい体を無理やりおこし、オカユを作るべく鍋に火をつけた。
彼は昨日の貯水池での仕事で見事に風邪をひいてしまったのであった。
真冬の屋外での除霊などはいつものこと。
それにただそれだけのことで、このバカ頑丈な横島が風邪をひくはずはない。
そう、あの除霊が終わった瞬間、シロがとびついてこなければ・・・
足をすべらせなければ。
真冬の貯水池にダイビングすることもなかったのだ!
「・・・旅行に向けて、ダイビングの練習でもしてきたの?」
ずぶぬれで事務所に戻り、出迎えた美神の第一声がこれである。
がっくりとうなだれ、
(真冬に誰がそんなことしますかっ!)
と内心反論した横島だったが、寒さで震えて声にならなかった。
キヌはあわてて暖炉に薪を足し、事務所の風呂も大急ぎで沸かしてくれた。
「先生、先生大丈夫でござるか!拙者のせいでだいびんぐの練習が!すまんでござる〜〜!!」
あわてふためくシロは訳のわからないことを口走り、おろおろしている。
とりあえず風呂を借り、多少なりとも温まってから帰路についたが、さすがの彼も真冬のダイビングにはかてず、その夜熱を出して寝込んでしまった。
こんなに高熱を出すのは何年ぶりだろう。
もうろうとする頭で、冷凍庫からラップにつつまれた冷ごはんを取り出す。
以前、キヌが料理をしてくれたときの残りだ。
解凍もせず、そのまま鍋につっこみ、なんとかオカユらしいものを作ったはいいが、食欲は無かった。
オカユにロクに手もつけず、もぞもぞと万年床にうずくまる。
もはや体温を測る気もおきず、いよいよ熱は絶頂期に差し掛かった頃・・・。
コンコン、とドアをノックする音が。
「横島さーん!おはようございます、いますか?」
こ、小鳩ちゃん?
「ちょっと知り合いからみかんをたくさん頂いちゃって、おすそ分けしようと思って。入りますよ?」
返事もまたずにドアを開ける小鳩であった。
昨夜はどうやら鍵をかける気力も無かったらしい。
「きゃっ、どうしたんですか、横島さん!」
真っ赤な顔で力なく布団に寝そべっている横島に、小鳩は驚いた。
「うう・・・ちょっと風邪ひいちゃったみたいでさ・・・ゴホゴホ」
「大丈夫ですか?何か私にできること、あります?」
「大丈夫だよ、こんなの寝てれば治るって。・・・ヘーックショ」
くしゃみをした横島に、サッと箱ティッシュを差し出す小鳩。
とりあえずオカユでも、と思い台所に立つが、すでにオカユは作ってあり、しかも手付かずのまま冷めている。
何をしようか思いあぐねていると、ふと、テーブルの上の書類に目がとまった。

「バリ旅行五泊六日ペアご招待」

「これってあのスーパーの福引の景品ですよね、すごい横島さん!当たったんですか!」
バリ旅行のことなどすっかり忘れていた。
「ああ・・・う、うん・・・小鳩ちゃんも・・・ゲホゲホ・・・タダの旅行、行ってみたいよなぁ・・・」
高熱でもうろうとする意識の中、もはや横島は正気ではなかった。
ただ何となく口にしたこの言葉。
小鳩には、「一緒にいかないか?」と誘われたように聞こえた。
「えっ?」
「・・・・」
横島はそれ以上何も言わなかった。いや、言えなかった。
そのままぐぅ、と深い眠りに落ちた。(注:死んでませんよ)



続く




前回、初投稿にもかかわらず駄文にコメントいただきまして、ありがとうございました。この場を借りてお礼を申し上げます^^
色んな意見がありましたが、果たして横島は誰とバリへ行くことになるのか。
第二回を迎え未だにハッキリさせてませんが、今後にこうご期待!

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