ザ・グレート・展開予測ショー

存在理由


投稿者名:蒼空
投稿日時:(04/12/30)

何のために生まれたのかわからない。
俺は、どうして存在しているのだろう。

「ちわ〜す」
「こんにちわ、横島さん」
「よう、人口幽霊一号。みんなは?」
「居間にいます。おキヌさんは夕食の準備をしています」
「そっか、サンキュー」
「はい」

横島は居間に向かう。

「ちわ〜す」

居間では美神は書類仕事をし、シロはテレビ、タマモは雑誌を読んでいた。
横島の挨拶にシロが一番に反応する。
タマモはちらりと見るだけで雑誌を読みつつける。

「先生〜。こんにちはでござる」
「だぁ〜、顔を舐めるな」

横島がシロとじゃれていると、美神が声を掛ける。

「今日は仕事ないでしょ?またご飯たかりにきたの?給料上げてあげたんだから自分で何とかしなさいよ」

あの戦い後、無事、なんとか、ぎりぎりで進級できた横島は
給料も大幅に上がった。
正確な金額は伏せるが、極貧から三流GS並に。
そんな横島だが、

「ですけどねぇ〜、みんなと食べたほうがおいしいじゃないですか?」

と、苦笑しながら答える。
それを見た美神も、仕方ないと言った感じで、

「も〜。ちゃんと食費はだしなさいよ?」

と言うが、今まで一度も食費を請求したことはない。
横島も苦笑する。
そんな感じでシロも加わり、会話を続けているとおキヌが来た。

「皆ご飯できましたよ。横島さんの分もありますからね」

笑顔のおキヌに、横島も笑顔で答える。

「いつもいつもありがとう、おキヌちゃん」

そうして夕食を食べ、食後に皆でお茶しながら楽しく過ごしていた。
そして、十一時過ぎになり横島も帰り、シロとタマモも屋根裏部屋に帰った。
それから、美神とおキヌがそろそろ休もうかと思ったころ、

「オーナー。美知恵様がお見えです」
「ママが?こんな時間に何のようかしら?いいわ、通して」
「わかりました」

しばらくして美知恵が入ってきた。

「こんな夜更けにごめんなさいね?」
「別にいいわ。で、何のよう?」
「いえ、ね。大した事じゃないんだけど、横島君のことでね」
「横島君の事?」

美神とおキヌも、横島の事と聞き真剣な顔になる。

「何かあったの?また、魔族神族がらみ?」
「いいえ。神界魔界も横島君の事を大きく評価しているわ。魔神を倒した人間ってね」

その美智恵の言葉に、美神だけでなく、おキヌも顔をしかめる。
横島の絶望と哀しみ。そして、アシュタロスの苦悩を知っているから。
しかし、今する話でもないことはわかっているので、とりあえず口は挟まない。

「それで?神族魔族絡みじゃなければ何?」
「そんなに大げさなことじゃないんだけど、最近の横島君どう?」
「どう?って、言われても・・・」

美神はおキヌと顔を見合わせる。

「言い方が悪かったわね。例えば、自暴自棄になったりしてない?」
「ああ、そういうこと。大丈夫よ、毎日いつもどうり」
「そうですね。あの戦い前とあまり変わりありません」

美知恵は二人の言葉を聞いて少し、違和感を感じた。
それがなんなのかは、まだ分からなかった。

「そう?最近は単独での仕事も与えてるそうじゃない?給料も上げたようだし?」
「まぁ、あいつの成長振りは、少しは認めないとね」

美知恵は、素直に横島の成長振りを認める美神に少し驚いていた。
それから少し話をして、

「それじゃぁ、帰るわね。おやすみ」
「おやすみ、ママ」
「おやすみなさい」

と、美智恵は帰っていった。

そしてここは横島の部屋。
横島は、布団に横になりながら考えていた。
(いつかは、気づかれるだろうな。
誰が初めに気づくかな?
やっぱり隊長かな?
できるだけ・・・気づいて欲しくないな
もう、時間もないしな)

そこまで考え、横島は静かに涙を流す。


数日後。オカルトGメン日本支部、支部長室。
そこに、美知恵と西条がいた。

「西条君。調べてもらった結果は?」
「はい。仕事、私生活において、以前となんら変わり在りません。」
「そう」

美知恵は西条が持ってきた資料を見る。

「確かに、変わりないわね」
「ええ。完璧なぐらい」
「西条君はどう思うの?」
「あんなことがあったんですし、演技とも考えましたが・・・」
「完璧過ぎると?」
「はい。確かに、誰かと一緒にいるときはできるかもしれません。
それを24時間続けるのは不可能かと。しかし、初めの頃は全く行ってなかったあの場所に最近になって行ってます」
「そうね。もう少し様子を見ましょう。引き続き頼めるかしら?」
「はい。喜んで。彼は僕の友人ですからね」
「お願いね」

西条が部屋を出て行き、美知恵は椅子に凭れながらため息を吐く。

「ふぅ。気のせいならいいんだけどね」

西条が持ってきたレポート。それの表紙にはこう書かれていた。
”横島忠雄 監視記録”と。


東京タワー。そこに横島は来ていた。

「もうそろそろだな。何とか誰にも気づかれなかったよ。
これで、僕が消えても、大丈夫。
悲しむ人は、いない」

横島は、自分が泣いていることに気づいているのだろうか。

そして、横島にとっての、最後の日。
横島は、その日もいつもと変わらなかった。
仕事が終わり、いつもの様に夕食を食べ、横島が帰ろうとした時、
横島の予定を狂わす者が現れた。

「オーナー、美智恵様と西条様がお見えです」
「ママと西条さん?通して」
「分かりました」

そしてドアが開き、美知恵と西条が現れる。

「ごめんなさいね、令子。今、時間ある?」
「いいわよ。私だけ?」

美神の問いに、西条が答える。

「いや、できればみんないてほしいな。いいかい?横島君」

こっそり帰ろうとした横島に、西条が問い掛ける。
見つかった横島も、不満顔ながら席に着いた。

「で?今日は何のよう?」

美神の言葉で、美知恵に視線が集まる。

「今日は、横島君についてよ」
「お、俺っすか?」

美神が、あんた、なんかやったの?という目で見る。
そんな美神を無視して、美知恵が西条を見、西条が頷く。

「みんな。今日が何の日か覚えてるかい?」

突然関係ないような話をしだす西条に、不信な目を向ける。
だが、そんなこと気にせず、西条は続ける。

「今日は、あの戦いから、ちょうど一年目だ」

西条が言ったとたん、美神とおキヌが西条を睨み付ける。
シロとタマモは初耳っぽい。
横島は、俯いている。
そんな周囲を見、西条は続ける。

「シロ君とタマモ君は初耳だね?」

西条の問いに、シロとタマモは頷く。

「なら、初めから話そう。君達にも知ってもらいたいからね」

そして、西条は知りうる限りの事を、シロとタマモに話す。
美神の前世から始まり、アシュタロスの事。その娘の三姉妹のこと。
横島が敵に攫われてからのこと。
戻ってきてまた、今度はスパイとして送り返されたこと。
その間に、人類の敵に仕立て上げられたこと。
また戻ってきた時、何かを決意した顔をしていたこと。
南極での一戦。魂の結晶。最終決戦。
西条は、自分が知りうる、”人間側”の事を話た。
スパイや人類の敵のあたりで、シロが何か言っていたが、無視。
美神、おキヌは、改めて聞かされ、悲痛な顔をしている。
横島は・・・俯いている。

「さて、これが僕の知っている全てだ」
「・・・それが、何か関係あるの」

美神の、怒りを押し殺したような声が響く。
そして、今度は美知恵が口を開く。

「ええ、関係あるわ。
・・・横島君、今度は”敵側とあなた”のこと、教えて頂戴」

これを聞いた美神は、美知恵に殴りかかろうとしたが、

「動くな!!」

西条に銃を突きつけられ、力なく椅子に座る。
おキヌとシロは、その目に涙を溜め
タマモも、冷静に見えるが、その目には怒りが浮かんでいた。
そして、少しして、横島がしゃべりだす。




ー後書きー
一話に収まらなかったので、前編後編に分けました。
今回は、はっきりしたカップリングはないです。
強いてあげるなら、ルシオラかな?
心の広い方、後編も見てやってください

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