ザ・グレート・展開予測ショー

百貨店パーティー☆13F(最終話)


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(04/12/30)


陸曹長が現れて10分後‥‥防衛隊のトラックが2台やってきた。
もともと休日が今日までだったゼロは、この車で防衛隊へと戻ることになってたのである。

「 ゼロ‥‥ 」
《 千鶴どの、また任務が終わったら帰ってくるであります! 》
「 うん、待ってるから、いつでも戻っておいで 」

一時の別れを惜しむ千鶴とゼロ。
一方、あゆみとムラマサ、そして陸曹長は‥‥

「 いやっ! 」

あゆみは陸曹長に取られまいと、ムラマサをかばうように胸に抱えこんでいた。
陸曹長はしゃがみこんで、あゆみと目線を同じ高さにすると、

「 あゆみちゃん、そのネズミは本来私たち防衛隊‥‥
  いえ、政府の研究機関にあったものなの。 だから‥‥ 」
《 だからなんだよ! 俺はおまえらのもんじゃねえぞ!! 》

ムラマサはあゆみから飛び降り、陸曹長に向けて言い放った。

《 人の都合で勝手に生き物つかまえて、勝手にカラダいじくりやがって‥‥
  ゼロだってそうだろ!? そんなカラダにされてなんでこいつらに黙って従ってんだよ!! 》
  
車に乗り込もうとするゼロに向かって言い放つムラマサ。
ゼロは足を止め、少し考えると、



《 ‥‥自分は、本当は10年前に死んでいた身でありますから‥‥ 》



‥‥サイボーグ犬のゼロは、ムラマサやヨシカネとは違い、遺体からつくられた生物兵器である。
蘇えった後、ゼロは防衛隊での厳しい訓練と任務を遂行していくことになるのだが、
防衛隊には、誰より逢いたかった千鶴に、こうして再び逢わしてくれたことには感謝していたのだ。

《 で でもそれでいいのか!? 結局こいつら、おまえをいいように利用しているだけだぞ! 》
《 それでも防衛隊が手を貸してくれなければ、千鶴どのに逢えなかった‥‥ 》
《 ゼロ‥‥ 》

「 私も感謝してる 」

《 なっ 千鶴まで‥‥!? 》

「 機械の体でもゼロはゼロ‥‥あのとき、交通事故に遭ったゼロに、また逢えてうれしかった‥‥ 」

千鶴は祈るように両手を組み、瞳をを閉じた。
彼女にはトラックに轢かれるあの瞬間が、今でも鮮明に浮かびあがる。

「 それにゼロの体は機械だし、定期的にメンテしないといけない‥‥
  だからゼロの防衛隊での活動も認めていた‥‥いえ、知るのが怖かっただけだと思う‥‥ 」
《 千鶴どの‥‥? 》

千鶴は陸曹長をまっすぐの視線で見ると、

「 陸曹長さん、ゼロがどんなことをしているのか私は詳しく知らないけど、
  そこまで秘密にしておかないといけないような任務を、ムラマサにもさせるんですか? 」

軍事機密のため、ゼロが防衛隊でどんな活動をしてるのか千鶴は知らない。
ゼロも機密にかかる情報を話せば即・休暇剥奪になるため、絶対に話せなかったのだ。

「 ‥‥千鶴さん、私たちがムラマサを引き取るのは、軍事機密だからということだけじゃないわ、
  人と会話ができる動物を世間に知られるのは、今はまだ早すぎるのよ 」
「 早すぎるって‥‥? 」
「 生物のサイボーグ化・蘇生術・知識と言葉‥‥ここ10年による、政府の技術の急激な発展に
  まだ一般市民の感覚が追いついていないし、彼らの存在を素直に受け入れない人も多いわ。
  それに零式犬佐やムラマサ、生物兵器にあてた技術がもし解析でもされされたら‥‥
  使用者によっては、本当に悪魔の兵器ともなりかねないわ‥‥ 」

重く発言した、陸曹長の“悪魔の兵器”の言葉に、千鶴とあゆみは息を呑む。

「 あゆみちゃん、決して悪いようにはしないわ。
  ムラマサは私が責任もって保護してあげるから‥‥ね? 」
「 ‥‥ 」

あゆみは少し考えこんでしまうが‥‥

《 な なに黙ってんだよあゆみ! 冗談じゃねえぞ! 俺は行かねえ、行かねえからな! 》

必死に行くことを否定するムラマサ。
研究所で行われ続けたことを考えれば、彼が必死に嫌がるのも無理はない。

「 あたしは‥‥ 」

あゆみが迷いながら、口を開こうとしたその時、


「 だったらぼくたちみんなで守るよ 」


そう声をかけたのは、同じクラスの伊能せいこうだった。
彼の後ろには、痺れからかろうじて歩ける程度に回復した中島と、家の手伝いを終えたばかりの香山夏子、そしてペットのシロもいた。

「 小田切さん、迷うことないと思うよ 」
「 そうよ、ムラマサは政府のものじゃだないんだからね! 」

「 伊能くん、香山さん‥‥ 」

クラスメイトに励まされるあゆみ。
一方で夏子の飼い犬・シロは、ゼロが乗った車に駆け寄り、

《 ワンワン! 》
《 シロどの‥‥! 》

ゼロに向かって、哀愁を感じるような声で吠え続けていた。
シロがゼロと別れたくないという気持ちは、千鶴たちにも伝わっていた。

《 クーンクーン‥‥ 》
《 くっ‥‥別れはつらいでありますが、自分にはやるべき任務があるのであります‥‥! 》

別れを惜しむシロとゼロ。
大切な人と別れたくない気持ちは、人も動物も変わらない。

「 ‥‥あたしは 」

あゆみはムラマサを抱きかかえると、陸曹長に向かいはっきりとした口調で、


「 あたしはムラマサといっしょにいたい!
  ムラマサはあたしが守るからあたしに預からせて! おねがいします! 」


《 ‥‥守るっておめー( “ナイト”の俺の立場はどうなんだよ(汗) ) 》

何気なくプライドを傷つけられたような気がして、素直に喜べなかったりするムラマサはさておき、
せいこうや夏子・妖岩も、あゆみと同じ想いで陸曹長を見つめていた。

( ‥‥私、すっかり悪者ね‥‥ )

陸曹長はひとつ、ため息をつくと、

「 わかったわ、ムラマサを連れていくのは辞めるけど‥‥ 」

ゼロとは別の車に積まれていた、2メートル四方ある大きな金庫を見た。
その金庫は、鎖と南京錠でグルグルに巻かれているが‥‥



ドンドンドン!
『 姉上〜ここ開けてくださいまし〜! 』



その金庫の中からは、かすかに氷雅の声が‥‥

「 この娘(氷雅)は連れていってもいいかしら? 」

腕を軽く組んで、しれっと言う陸曹長に対し、


《「「  どうぞご自由に  」」》


千鶴・せいこう・ムラマサが口をそろえて言った。 同情の余地はない。

『 そんなっ! 若まで! 』

陸曹長はただひとり、姉の連行に動揺してる妖岩に近づくと、

「 妖岩、あなたはちゃんとお役目を果たすのですよ 」
「 ‥‥! 」

妖岩はせいこうの護衛という自分の使命に、うなづいて答えた。

「 それでは私たちはこれで 」

陸曹長は千鶴たちに軽く敬礼すると、車に乗り込んだ。

《 クーン‥‥ 》
《 シロどの、時間であります‥‥千鶴どのも元気で! 》
「 ええ、また帰っておいで 」

涙をこらえながら敬礼したゼロを、千鶴は笑顔で見送っていた。
一方で、状況がつかめないまま成り行きを見守っていた中島は、氷雅が入ってる金庫が気になり、

「 氷雅さんどうなっちゃうんだろう‥‥ 」
「 あの人のことは心配するだけムダよ 」

千鶴がまったく気にすることなく、さらっとそういった直後―――

『 中島クン? その声は中島クンね! 』

金庫の外で中島の声が聞こえた氷雅は、

『 中島クン、先ほどあなたがわたくしにしてくれた熱いベーゼ‥‥
  わたくしはこの思い出を胸に秘め、このつらい試練を耐えてみせますわ! 』
「 ちょっ‥‥氷雅さんしてくれたって――― 」

「 ‥‥行って 」
「 はっ! 」

助手席に座っている陸曹長の合図により、防衛隊の2台の車は発進した。

『 わたくし少々この町を離れることになりますが、
  あなたの 【 愛 】 に報いるため、いつかまた、この町に帰ってきますわ――― 』
「 ちょっと待って氷雅さーん! 」

何のフォローもないまま去っていく氷雅に対し、彼女の発言に動揺を隠せない中島。

「 はっ!(汗) 」

背後には、微笑みながら口もとをヒクヒクさせている千鶴の姿が。
嘘の中に多少の真実を含んでいるだけに、中島もどう千鶴に説明しようか混乱している。

「 ち 違うんだこれには深いワケがあって――― 」
「 それじゃみんなー帰ろっか! 」

( む、無視‥‥怒ってる‥‥! )

中島に背を向け、あゆみたちに話しかける千鶴。 すると夏子は、

「 ねえ、これから私んちでお昼にしない? 」
「 あ そういえば私、バイトの途中でお昼まだだった‥‥ 」

「 小田切さんもどう? お昼ごはんもう食べた? 」
「 あたしもムラマサ探しててまだ‥‥ 」
「 じゃあウチにおいでよ、ムラマサも美味しいもの食べさせてあげる! 」
《 ホントか!? 》

こうして千鶴たちは、夏子は自宅の喫茶店で、ささやかな昼食会をすることに決まった。

「 それじゃあ行きましょうか! 」


ヒュオォォ―――−−‐
「 ‥‥‥‥ぁ 」

中島ひとり残したまま、喫茶香山へ向かう千鶴たち。 少しの間、ポカーンとしていた中島は、


「 ま まってくれ赤城! 話を聞いてくれ―――!! 」


ムラマサ・あゆみ・妖岩・せいこう・夏子・千鶴・中島‥‥お昼時に起こった、彼らの戦いが幕を閉じた―――




【日須持邸】

一方、防衛隊の手が入る前に逃走したヨシカネは‥‥

「 なにいーっ!? 失敗しただあ〜〜〜!! 」
《 す すんませ〜ん!! なにせ政府の防衛隊の姿が見えたもんすから‥‥! 》

ヨシカネは羽根を床につき、土下座のような形で日須持に謝っていた。
彼は陸曹長を確認した後、すぐにその場を離れたのだ。

「 まさか政府に私らのこと感づかれてないだろうね!? 」
《 さあ‥‥ 》
「 ムラマサをかくまってるガキの顔は!? 」
《 ‥‥わかりやせん、すぐ逃げてきたモンで‥‥ 》

怯えながら答えるヨシカネに、日須持は怒りに震えながら、

「 こんの役立たずが―――っ!! 」
《 ひぃぃっ!! 》

「 ちっ‥‥ゼロが防衛隊に戻ったのなら、しばらく派手なことはできないねえー
  くそっ、これというのも全部ムラマサのせいだ!
  おのれムラマサ〜このままで済むと思うなよ〜この借りは必ず返す!! 」

意気込む日須持の後ろ姿を眺めながら、助手の男はお茶をすすりながら、

ずず〜っ
( ‥‥無理だと思うなあ〜‥‥ )

‥‥そう考えていた。




【防衛隊本部】

「 ―――以上が“零式犬佐誘拐事件”に関わる報告書です 」

防衛隊本部の広い一室に陸曹長ともう一人‥‥
陸曹長は上官と思える人物に敬礼し、今回のゼロの経緯を報告していた。

「 零式犬佐を捕えていた犯人の目星はついています。
  以前、東都大学の生物研究所で所長を任されていた日須持桐子女史、彼女が黒幕でしょう。
  彼女と‥‥そしてムラマサはいかが致しますか? 」

すると、重役のイスに座っていた人物は、

「 ‥‥ほっとけば? 」
「 え? 」
「 なにもせっかくの出会いを無に帰すことないじゃない?
  この広い宇宙で巡り会った大切な友達を‥‥奪うことなんてできないよ‥‥ 」

イスから降りた人物は、背も陸曹長よりかなり低く、声も幼い、見た目5・6歳の少女だった。
少女はオーバーオール‥‥胸当て付きのズボンをはいており、胸には“SUNDAY”の文字が刺繍されている。
 
「 ‥‥小田切あゆみや赤城千鶴をはじめとした子供たちならまだしも、
  日須持女史は“あなたがたの”正体を知らないとはいえ、技術は知りすぎています。
  やはり“記憶抹消装置”で、彼女の生物兵器に関する記憶の削除を‥‥ 」

陸曹長はそう言いながら、本棚の片隅に置かれてあるマッチョな置き物に目をやった。
しかし少女は、やれやれとした表情をしながら、

「 まー都合の悪いことをすぐ消そうとする“種族”はたくさんいるけど、あたしは好まないよ。
  人の思い出って結構切実だし、日須持のおばちゃんのことだって、
  元をただせばここのお偉いさんたちが、彼女を勝手に切っちゃったことが原因なんだし 」

「 ‥‥ 」

「 ‥‥ま、あんたがあの娘や零式たちのことを心配してるのはわかるけどね、
  今回の件で教授も自粛するだろうし、あたしらが介入しなくてもあの娘たちの絆、結構強いよ 」
「 ご存知なのですか? あの娘たちのこと‥‥ 」

少女はうなづいて応えた。
先日、町を視察していたときにムラマサや千鶴と会い、あゆみの姿も確認していたのだ(9F参照)

「 零式やあたしたちのこと、いつかこの星のみんなが知るときが来るだろうけど、
  急に知ったらみんな、きっと混乱しちゃうからね。
  あの娘たちがうまくいっているのなら、とりあえずいいんじゃないかなー? 」

少女は、窓の外に広がる遠くの空を眺めていた。
その瞳は自分の故郷を懐かしんでいるような、遥か遠くを見据えるような目をしていた‥‥とそのとき、




《 なんですと―――!!?? 》




サイボーグ犬部隊の訓練所であるグラウンドのほうから、ゼロの叫び声がした。

《 な なんでキサマがここに!? 》

ゼロの後ろには、ピンシャー犬尉や彼の部下である同じサイボーグ犬が10数匹並んでいた。
そしてゼロの目の前には、



「 あなたとの再戦の約束、どうやらここで、思う存分果たせそうですわね 」



そこには軍服に身を包んだ氷雅の姿が‥‥

「 姉上の命で、しばらくここで働くことになりましたわ。 ゼロ犬佐、以後よろしく 」

怪しく微笑みを浮かべた氷雅。
ゼロはこれから起こるであろう、彼女との対決が避けられないことを確信した。



「 ふふふ‥‥お楽しみはこれからも続くのよ♪ 」



ゼロと氷雅の対決は、千鶴の知らないところでまだまだ続きそうである―――





【本日の対戦成績】

ゼロ―――氷雅  ‥‥‥‥?
 

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                     百貨店パーティー登場人物
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【ポケットナイト】 小田切あゆみ ムラマサ 日須持桐子教授 助手 ヨシカネ 岸上

【乱破S.S.】 氷雅 妖岩 伊能せいこう 香山夏子 夏子の母 シロ 桜井先生 丸太町 白ワニ

【ゼロといっしょ】 赤城千鶴 ゼロ 中島 陸曹長 ピンシャー犬尉 千鶴の母

【はじめてのおつきあい】 少女 少女の犬(?) 駄菓子屋のおばちゃん

【蜘蛛巣姫】 ヤツメ シジミ 八郎太 蜜姫

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                           未定な予告
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すべては10年前からはじまった‥‥

街角で‥‥
   キキィ―――
   「 ゼロ―――!! 」 あの事故から‥‥


宇宙研究センターにて‥‥
   「 異星人からの友好メッセージだ!! 」 あのファーストコンタクトから‥‥


病院にて‥‥
   「 オギャアッオギャアッ‥‥! 」
   「 姉上‥‥ 」
   「 氷雅、この方が将来あなたが御仕えする若様よ 」 あの主君との出会いから‥‥


そして時輪家‥‥
   「 おばあちゃん‥‥ 」
   「 使ってみるかい? 十年の時を超える、一度限りの大博打を‥‥ 」


“時を駆ける少女”時輪コヨミの参入が、彼女たちの運命を変えるかもしれない‥‥‥‥‥‥
 

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