ザ・グレート・展開予測ショー

『GS美神another story』 NO:1


投稿者名:とらいある
投稿日時:(04/12/30)

痺れが残る体を意思でもって無理やり動かし、よろけながらもなんとか立つことできた。
次に指先を動かしてみる・・・はっきりいって思うように動いてくれない。頭の芯も靄が掛かったような状態で思考が定まらない。だがそんな事を言ってる暇など無いのだ。

「止めさせる」

考えていた事を無意識に呟いていた。そうだ早く止めさせなくては、手遅れにならない内に。深呼吸して息を整えると少し体が楽になった。
ゆっくりと移動を開始する、目的地はすぐそこだ。なぜなら相手は林を抜けたすぐ目の前の林道にいるからだ。
声が聞こえ、姿を確認した所で一旦歩むのを止め木陰に身を潜めつつ様子を伺う。
二人いる。闇のため表情はよく見えないが、なにか言い争っているみたいだ。距離にして約4、50m。
流石に会話の内容までは聞き取れないが自分には関係ない。悟られぬよう少しづつ手に霊気を溜めていく。早く、早くと内心急いてしまうがバレてしまっては元も子も無い。正面から戦った場合、男の方は何とかなるかも知れないが、女のほうは別だ。今なら一撃でやられてしまうだろう。だから少しづつ、ゆっくりと溜めていく。
しばらく会話が続き、やがて二つの影が一つになった。それが何を意味しているのかを悟り、ハラワタが煮え繰り返る思いがした。躊躇しない、手に溜めていた霊気を収束させいつでも撃てる状態にした。
無論悟られぬように。一つになっていた影が再び二つに戻った。

『今だ!』

音を立てぬようスッと立ち上がり、収束させていた霊気を一気に掌から撃ち出した。だが放つ寸前に腹の底
に溜め込んでいた“殺気“も放っていた。
            
月明かりの下、ルシオラは横島に詰め寄っていた

「何ムチャクチャ言ってるのよ!?そんなこと、おまえに・・・」

“出来るわけない”と続けようとしたがその前に横島は

「無理じゃねえッ!!奴さえ倒せば、あんたも・・・べスパやパピリオも自由だ!そのあと必ず、寿命のこともなんとかしてやる。俺にホレたんなら、信じろ!!」

と、一気に捲くし立てた。ルシオラが口を挟む暇も与えずに。

「今までずっと、化け物と闘うのはほかの誰かで、俺はいつも巻き込まれて手伝ってきたけど・・・でも今回は、俺が闘う!!」

そう言って横島はルシオラを引き寄せそっとキスを交わした。触れるような、撫でるような軽いキス。
ルシオラは最初こそ混乱したが、徐々に胸を満たす何かを感じていた。胸がとても暖かく感じられた。
だがそんな動揺を横島に気づかれるのも何か気恥ずかしく思い、横島に動揺を悟られぬようワザと余裕を見せるように、ちょっと悪戯っぽく尋ねた。

「バカね・・・ちょっと誘惑されただけでそんなに熱くなっちゃって。やりたいだけでそんな約束していいの・・・?」

すると横島は、およそこの場の雰囲気に似合わないようなニヤリとした笑顔で胸を張りつつ答えた。

「俺の煩悩パワーを信じなさいっ!自慢じゃねーけど、俺のスケベは筋金入りだぜっ!」

雰囲気を外した表裏のない下心ミエミエのこの科白も、今のルシオラにとっては目頭を熱くする科白であっ
た。表裏が無く着飾った言葉でないため、真摯に感じられたからだった。

「バカ・・・!」

くすっ、と笑い横島に抱きつこうとした・・・が、その時左手から発せられた殺気を感じた。
その殺気を放った人物と、その人物の狙いを瞬時に察知したルシオラは狙いの対象であろうヨコシマを守るべくそのまま地面に押し倒した。
押し倒された横島の方はただ混乱していた。だが押し倒された直後、自分の頭を消し去る事ができる程の出力の霊波砲が通り過ぎたのを見て一気に現実に戻る。

「どういうつもりなの?べスパ!」

鬼気迫る勢いで闇に潜むべスパに声を荒げる。呆けていた横島がその声につられて左手の林に視線を向けるとそこにはすごい形相で二人を睨みつけているべスパが居た。

「なに当たり前のこと聞いてんのさ、ポチを始末しようとしただけさ」

軽く受け流すように答えるべスパにルシオラは苛立ちを募らせる。

「何言ってるの!ふざ「巫山戯るなとはこっちの台詞だよ!さっきも言ったとおりポチには借りがあるが、ここで死んでもらうよ。それにね・・・」 

腰を落とし、戦闘態勢をつくり

「私達の絆をかき乱すその男は危険なんだよ!」

そう言って横島に突っ込んでいった。ルシオラは横島を守るかのように立ち塞がり、突っ込んできたべスパを交差した両腕で受け止め、そのまま上空へと弾き飛ばし自らもその後を追う。べスパは空中で既に体勢を立て直していた。

「べスパ、攻撃に鋭さがないわ。さっきの麻酔がまだ残っているみたいね。そんな状態で私を倒せると思って?」
「たしかにあんたは無理かもしれないけどね、ポチを殺すには十分さ」

すらすらと出たその返答にルシオラは再び怒りを募らせる。

「ヨコシマはやらせないって言ってるでしょ!それに・・・私達の絆をかき乱すってどういう事よ!」
「アンタだけじゃないって事だよ!パピリオの奴もそうだ。あいつのヨコシマに向けている感情は既にペットの範疇を越えている」

そう言って霊波砲を放ち牽制する。 

「あれだけ密に接すれば、感情や考えだって変わるわよ!むしろパピリオの成長を喜ぶべきじゃないの?!」

放たれた霊波砲を避け、再び麻酔を打ち込むべく接近を試みる。

「パピリオの成長は正直嬉しいよ。でも私たちはアシュ様によって生み出されたからアシュ様の障害の要因は絶つべきなんだよ!」

接近しようとするルシオラに迎撃の霊波砲を撃つが手応えが無い。幻影と瞬時に判断し後退する。

「ヨコシマがその要因だと言うの?!」

幻影を囮にした横からの不意打ちが避けられたため、腕の下から触手を伸ばし動きを止めようとする。

「そうさ、ポチの奴がお前やパピリオの心を攫っていく。あたしら3人の絆はバラバラさ」

伸ばされた触手を紙一重でかわし、逆に触手を掴む。

「アシュ様に創られたアタシ達の最優先事項は魂の結晶の回収、肉親はアタシ達だけだ、三人が結束しなきゃいけない時に・・・それをポチの奴は」

触手を掴んだまま地上へと叩きつける。

「くうっ」

地面に叩きつけられたルシオラが呻き声を漏らしながら上体を起こすと、既に目の前にべスパが立ちはだかっていた。好機とばかりに麻酔を喰らわそうと襲い掛かる。

「そんな奴とくっつこうとしているお前に・・・裏切られ、残された時の肉親の気持ちを考えたことあるかい?」

その言葉を聞きビクッと体を硬直させるルシオラ。そのルシオラの首筋にべスパの指が優しく添えられる。ルシオラは動揺のためか体を動かせないでいた。

「今は眠ってて。目覚めた時には前みたく3人だけだからさ」

その言葉とともにルシオラは首筋に痛みを感じた。除々に痺れていく四肢。その時になってべスパにも麻痺毒があったことを思い出した。

「毒は弱くしたから明日の朝には抜けるよ、それまでお休み」

べスパはそう言って踵を返し横島に向き直った。横島はへたりこんだままこちらをボーっと見ている、そんな横島に違和感を抱きつつも近寄っていった。横島の目の前に立ち塞がっても、あいかわらずルシオラが倒れている方向をじっと見つめている。

「助けてもらった時の事感謝しているよ」 

反応を見せぬ横島に語りかけるようにべスパは呟きだす

「それだけじゃない、ルシオラの言うとおりパピリオも成長したんだと思う。ルシオラの奴もさ、あれで変わったんだ。儚くて、今にも消えちまいそうな奴だったのがお前と出会えた事で強くなれたのだと思う」

月が雲に隠れたため周囲を闇に包まれ、横島の表情はわからない

「本当に感謝してるよ。でもね・・・だからなんだよ」

右手に霊気を溜めていく

「勝手に連れてこられた上にこうなった事がお前にとって理不尽なのは分かるよ。でもこれ以上私達がお前に心を許さぬ内に・・・心惹かれない内に消えてもらうよ」

霊気を纏った右手を大きく振りかぶる

「じゃあなポチ・・・いやヨコシマ。嫌いじゃなかったよ」

そして大きく振り下ろされた右手は、狙い違わず横島の首を跳ねとばした。
 
  
  

  
 


  

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