ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネと羽根と混沌と』 第20話 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/12/28)



〜appendix.19 『愚か者の選択』


澄み渡る石英の床。深い黒夢。
静寂に包まれたその場所は、優しく、導くように男を招き入れた。

決して明けることのない夜空には、煌々と上弦の月が輝いている。
幻想的な、どこか現実離れした光景・・それらは彼に、“死“を容易に連想させる。

「水晶の迷宮に、銀の乙女か・・。この世の見納めとしては、悪くない風景だ。」

老木のごとく枯渇した声。
目の前に降り立つスズノを見つめ、フェンリルは―――――否、その年老いた人狼は、深々と一つ嘆息をする。
先刻までの荒々しい様相とは一変し、その瞳には理知の光が宿っていた。

「・・・!・・やはり、まだ意識が・・・」

老魔族の声を聞き、スズノの顔が目に見えて明るくなる。
安心したように息をつくと、そのまま無防備にフェンリルの元へ近づこうとして・・。・・魔狼はわずかに苦笑した。

「じきに、俺の自我など消えてなくなるさ・・。君こそさっきは名演だったな。」
「・・・・・。」

キョトンとしたスズノの顔。しかし、彼の言葉の意図を汲み取ったのだろう・・すぐさま申し訳なさそうに頭を下げてくる。
その表情に邪気は無く、フェンリルの笑みをさらに深くさせた。
・・・3日前、件の公園で事件を起こした時も思ったが・・。この少女は・・・。

(・・闘いにくい、な・・)

柔らかな、真摯とさえ言える光を放ち、こちらを見つめてくるブルーサファイヤの瞳。
いざ戦闘が始まれば、この瞳が悲しみの色で縁取られるのだろう。・・彼には、それがひどく罪悪感を伴うものに感じられた。

「あの・・1つ、訊いてもいいか・・?」

「なんなりと。」

ポツリと、銀髪の妖狐が声を漏らす。
彼女は気づいているのだろうか?目の前の魔獣の正体に。
数日前、自分を瀕死にまで追いやった爆弾魔。数多の命を奪ってきた裁かれるべき罪人。・・いや、それが分かっても、きっと彼女はこう言うのだろう。

「・・どうして、そんな姿に・・。もう元には戻れないのか・・?」

泣き出しそうに歪んだ顔。
やはり、自分の見立てに間違いはない。この少女は、優しい娘だ。愚直なまでに他人のことしか考えない・・優しい娘。
だから自分はこう答えよう。彼女を嘲る嘲笑を作って・・。

「《力》だよ・・。」

・・と。

「・・・?」

案の定、少女は顔を上げた。その先の言葉を期待しているのだろう。
せめて相手の目的が分かれば、説得の糸口が・・。そんな、淡い希望にすがった甘い考え。・・可哀想になるほど甘い。

「・・俺が欲しかったのは力だよ。戻ることもできないし、戻るつもりもない。」
「?・・力・・力を手に入れて・・その後は?何がしたいんだ・・?」

もどかしそうな問いかけ。あぁ・・やはり君は分かっていない。
『後』。俺に残された時間の中に、そんなものが入る余地は存在しないのに・・。

「それは、力持つ者が抱く疑問だ・・。違うかね?」

「・・?」

笑って答える。言わんとすることが理解できないのか・・少女はひたすら困惑の表情を浮かべ続ける。
そのしぐさは、滑稽と言うほか言いようがなかった。

「私がこんな姿になったのは・・力が欲しかったから。目的は、今後も力有る者で在り続けること。」

「で、でも・・それじゃあ・・」

―――――「俺が何故、爆弾魔などを始めたのか・・それも教えてやろうか?」

「・・・・・。」

食い下がる少女の声をさえぎり、饒舌な口を振るう。今日の自分はいつになく雄弁だった。
脳内の無意識が、一体、何を考えているのかは知らないが・・。
ひょっとすると残したいのかもしれない。俺は・・俺が生きていた、何か証(あかし)になるものを。


「・・俺は・・霊波を持たない人狼だった。」

大した盛り上がりはない、そう前置きして話を始める。
事実、その通りだ。その証拠にこの物語は、たったの2行で・・尻切れトンボのように終わるじゃないか。

「・・・お前に想像できるか?」

「・・・・え?」

「霊気を持たない魔族というものが、どれだけ惨めな存在か・・。想像できるかと訊いているんだ!」

「!?」

「俺は・・耐えられなかった!月の加護を受けた、人狼族の暮らしの中で・・一人だけ取り残されていくことに・・!
 嫌だった!霊波刀1つ作れず、同族から見下されることが!
 だから里を出た・・ネオサインが『ムカついた』から、なんとなく街を『燃やしてみた』!」

・・。

口にしてみれば、自分でも情けなくなるほど呆気ない。笑えるほどに薄っぺらい理由だ。
俺がやったことは、ただの腹いせ。いつか仲間を見返してやろうと・・必死で学んだ膨大な知識の・・その一端を使って・・。
これでも自分では満足していたつもりだった・・霊波はなくとも、それなりに世間を騒がせる自分の存在に。
見下していたつもりだった・・誰にも知られることなく、ただ無為に日々を送り続ける、かつての仲間たちを。

・・・しかし、その実・・。


「・・・俺は・・・力が欲しかった・・・。」

結局、それが本音だった。
今まで頑なに否定し続け・・・老いを迎えるまで、顧みようともしなかった、ちっぽけな原点。
各地を転々と渡り歩き、飽き切るほどに罪を重ねて・・。人生の黄昏時になって、自分が『ふりだし』で足踏みしているだけだったことに気づく。
・・・・そこに待っていたのは、悪魔の誘惑だった。

―――――――ねぇ、強くなりたくない?

空を舞い散る灰色の羽根。
混沌を名乗る女が提示してきたもの・・・それは、あまりの魅力的な条件。

―――――――人狼のハシクレなら、フェンリルぐらい知ってるでしょう?私ね、その霊体破片を持ってるの。

正直に言おう。
血が躍った。一度は諦めていた《力》・・それも、神にも匹敵する強大な力。
そんな力を、俺が手に出来る!神になれるのだ!この俺が・・!

―――――――・・召喚の準備は、もう整ってるの。私には妖刀にも勝る最高の触媒が備わってる・・満月も近い・・。
       あと必要なのは、フェンリルの肉体を構成する『素材』だけ。


―――――――ねぇ・・イケニエになってよ・・。


・・・。
・・・・・。


「俺は・・二つ返事で応じたよ。そして今、こうして君の前に立ちはだかっている・・そういうわけだ。」

銀の少女を見つめ、俺は静かに瞳を細めた。
空を覆い尽くさんばかりの、圧倒的な巨体が揺れる。見るがいい、このたくましい腕を。見るがいい、この強靭な脚を。
俺を愚か者と罵る者も居るかもしれない。しかし、それでも構わない。
力さえ、力さえ手に出来るなら・・・俺はあえて、『愚か者の選択』をしよう。

「・・・。」

「『くだらない』・・とは言わないんだな、君は・・」

やはり泣きそうな顔。
俺を哀れんでくれるのか・・それとも、ただ悲しいのか・・。
こうやって自分たちが対峙していることが。目の前の相手が・・・もはや拳でしか止められない存在だと、そう知ってしまったことが・・。

「私には・・あなたの気持ちが、分からない・・。」

少女がつぶやく。白銀の霊気に触発され、水晶の壁がざわめき立つ。
そして・・続ける。

「だけど、これだけは言える・・。私には、今あなたが一番だと思ってるモノより、もっと大切なものが一杯あるし・・それはあなたも同じ。
 これから絶対に見つけられる・・!」

「・・・・・。」


――――――――・・


「―――――力よりも大切なもの・・。それもまた・・力持つ者のみが抱く心理だよ。」


・・2つの力に震撼する、幻影の世界。
刹那、巨大な炎の嵐が巻き起こり、闇夜に魔狼の咆哮が木霊した。


                              ◇


横島忠夫は走っていた。

赤い非常灯が灯る平坦な通路を、蟲たちの群が覆い尽くす。
十では利かない・・三十、四十・・あるいは百。爛々と輝く硬質の双眼が、一斉に侵入者へと向けられる。

「てめぇらに構ってられるほどヒマじゃねえんだよ!どきやがれ!」

足を止めず叫ぶと、横島は蟲たちの足元に1つの文珠を投げつける。
『柔』と記されたその珠が、閃光を放った・・・その直後。一帯の床がグニャリと歪み、クッションのように沈み始める。

『キィィイイイイイイ!?』

一体につき、数トンはあるであろう蟲たちは、自重に吊られ、思うような身動きを取ることが出来ない。
混乱し、もがき続ける彼らをかわし、横島は器用にも移動を再開する。
軽快にクッションの床を飛び跳ねながら、一気に管路の奥へと走り去り・・・。

・・・柱の影。
そこには彼の様子を眺めるように、一匹の蝙蝠(こうもり)がぶら下がっていた。
カサカサと音を立て、その蝙蝠は、横島の後を追跡する。
まるで監視・・蟲たちには目もくれないその姿は、一種、奇妙と評することさえできた――――――――。

―――――――――・・。

そこは、不浄の玉座にして、荘厳なる神殿。
とこしえの瘴気が立ち込める、すべての生命を呪う大地・・。城内を闊歩する屍たちは、口々に生有る者への冒涜の言葉を吐き散らす。
狂気の発端。
全てのアンデットの頂点に君臨する不死の王は、薄笑みを浮かべ、祭壇の中央に鎮座していた。
ところどころから包帯が覗く、褐色の長いローブ。
引きずるように動きながら、彼女は虚空に向かって言葉を紡ぐ。声を上げて嗤う不死王の手には、拳大の水晶球が握られていた。

『愉快じゃな・・文珠とは、かような事も出来るのか・・』

神界、魔界・・両界から失われて久しい文珠の力。『ほぼ』唯一と言っていい、その使い手である青年は、水晶の中を必死の形相で走り回っている。
一部始終を観察しつつも、彼女の瞳は冷ややかだった。
いかに文珠の使い手といえど、所詮はこの程度・・人間の域を出るものではない。
《ただ面白い》・・それが彼女の率直な感想だ。
・・・・・と。

「違う」

その時、闇の中から声がする。
姿は見えないが・・ただ、起伏の無い無感動な声だけが・・王の広間を反響し・・・。それに不死王は喉を鳴らした。

『ほぅ・・口を開くとは珍しいな・・。違う、とは?』

「文珠にあのような真似は出来ない。物理法則への干渉・・完全に能力の限界範囲を逸脱している。」

感情というものが、著しく欠如した男の口調。
しかし、その平坦なトーンの中に、わずかな驚きが垣間見える。それ程に意外なことなのか・・何にしろ、滅多に見れるものではない。

『ふん・・お前が言うのだ、間違いないのだろう。では、アレは何だと思う?意見を聞きたい。』

「さぁ・・。おそらくは、あの男自身気づいていない、一種の能力だろうが・・。
 何であれ、文珠はただの媒介役に過ぎない。彼の持つ特殊な『何か』が、文珠という『わかりやすい形』を利用して表出た・・それだけだ。」

・・しかし、それにしても奇異な話だ。
素人目にも分かることではないだろうか?彼の、あの横島忠夫が今、やってのけたことは・・霊能の力を超えた域にある現象だ。
本人はおろか、周りの者すら気づかない。気づくことができない。・・それとも『それ』も作用の一端なのか。

『本人すらも無自覚の力、か・・。面白いな・・この横島忠夫という男・・まったくもって興味深い。』

初めて彼を見かけたのは・・すでに随分と昔の話。
彼女たちの狩り場の1つである、街の一角。美神除霊事務所の門を、横島がはじめて叩いた時のことだ。
・・また五月蝿いハエが一匹増えた。美神という害虫の親玉につきまとう、下らぬ人間。・・最初の印象はそんなものだった。
しかし・・。
それがじょじょに滑稽なモノと映るようになり、時を重ねるにつれ、それは驚愕・・・やがては戦慄へと姿を変える。

―――――――何故、死なない・・?

生まれる1つの困惑。

霊能力など何一つ備わっていないはずの、無能な男が・・数多の悪魔を、あまつさえメドーサほどの高位魔族と闘いながら・・何故?
また、その奇異に周囲の人間は何の疑問も差し挟まない。
『横島だから』。
その一言だけで全てを片付け、当然のことと『思い込んでいる』。それは本人自身も言えることだが・・。
・・ほどなくして、彼は文珠という強力な力を手に入れ・・そして・・・。


『妾(わらわ)は・・アシュタロスが起こした反乱において、1つ腑に落ちないことがあるのだよ・・』

虚空を見上げ、不死王がつぶやく。
絶え間なく流れる不浄の霧と、魔神をも威圧すつ規格外の魔力。それらは、彼女の王国の象徴でもある。

『宇宙の反作用。《アシュタロスという異物を排除する》。それが、宇宙の意思だったというのなら・・。
 最後の、あの横島忠夫の選択はどう説明する?』

アシュタロスはあの時、横島忠夫にこう言った。

――――結晶を渡せ!今すぐ返せば、お前とルシオラを新世界のアダムとイヴにしてやろう。

・・・・。

『確率の問題だよ・・。あの場に居た人間の中で、アシュタロスに結晶を渡す可能性が最も高かったのは・・一体、誰だ?
 美神令子や、氷室キヌ・・・奴らにさえ渡っていれば、何の不安要素もなく破壊できたものを・・。
 よりにもよって何故、横島忠夫に?宇宙の反作用がそんな分の悪い『賭け』をするか?ナンセンスだ。』

・・加えて、と不死王は思う。
アシュタロスとは兼ねてからの浅からぬ縁がある。彼女はあの魔神の気質というものを、十二分に理解しているつもりだった。

『一見、冷酷そうに見えるが・・アシュタロスは、あれでなかなか義理堅い男だ・・。案外。本当に約束を守ったかもしれんぞ?
 横島忠夫をアダムに、ルシオラをイヴに・・』

・・それはそれで存外、面白い新世界になったかもしれない。
無論、そうなる前にいざとなれば自分か・・もしくはドゥルジが阻止しただろうが。しかし、それにしても・・。

「つまり、こう言いたいのか?あの時、どちらの選択肢を選んだところで・・・」

『結局、横島忠夫だけは生き残る運命にあった・・』

無言の影の眼前で、不死王はケラケラと笑い続ける。
どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか・・。アシュタロスが消滅した今、その答えを知る者は誰も居ない。

『まぁ、あくまでも仮説だ。仮に、横島忠夫が《何か》によって守られているのだとしたら・・。その《何か》、確実に頭がイカレているな・・。
 世界の命運より、一人の男の生死を優先する、狂った《何か》』

主神さえも介入できないという、宇宙の反作用・・。それに干渉し、一体あの男に何をさせようというのか・・。
興味が尽きない。そして、ひどくシンパシーをくすぐられる。

『フフッ・・今見た限りでは、横島忠夫がドゥルジ側に回るのは、ほぼ確定と言っていい・・。
 つまり、いずれ妾(わらわ)に牙を剥く・・「お前」との激突も、避けられんということだ・・』

「・・・・。」

『見てみたいものじゃな・・。この世で唯二人、文珠を操る者たちの・・闘いというものを。』

「・・・・。」

影は何も答えない。
しかしその時、不死の王国の天空に・・青白の雷鳴が轟いた。
けたたましい落音。次いで、一筋の紫電が暗闇を照らし・・視界が目映い光に包まれる。
ぼんやりと、幽鬼のように浮かび上がったのは、闇に溶けるようなダークスーツと・・・

「・・・・。」

幻霊《ファントム》の仮面を被った・・1人の奇妙な男だった――――――――。


                           ◇




〜appendix.20 『 voice 』



今まで当たり前だと感じていた絆が・・・ある瞬間から馬鹿げたものへと変わる。
そんなことはよくある話だと、彼は昔、そう考えていた。


他人へと歩み寄る・・人と人とが結びつくこと。
それは、ただその人間の在り様(ありよう)を受け入れることとは、勝手が違うものだ。
在り様・・それはむしろ枝葉。
本当に重要なのは受け入れることではなく、他人の感情・考えにまで踏み込んで、理解しようと努めること。
その時になって初めて・・人は個という最小単位を脱ぎ捨てることができる。・・もしくは、そうだと錯覚できる。

“情“や“愛“と呼ばれる、形無い何かによって惹かれ合い・・・。


・・だからこそ、と彼は思う。


だからこそ、それはひどく脆く・・そして壊れやすいものなのではないだろうか?
思慕、友情・・幾つもの形無いモノによって築かれた砂上の楼閣。
終わらないものなど無く、まして絆など・・・・崩壊の音とともに生まれてくるようなものだ。

・・・・。

そう、思っていた。


・・昨日までの常識が、今日通用するとは限らない。そんなことは知っている。
だが『知った』ところで、『信じる』者など何処にも居ない。

逆に聞きたいぐらいだ。
数秒前まで何不自由なく歩くことができた、足元の大地・・。それが崩れることを恐れるあまり、一歩を踏み出せないものが、何処に居る?
居はしないのだ、そんな者は・・・!


「・・『信じて』ないから・・僕はまだ縋って(すがって)いるのかもしれないな・・失ったはずの、絆という楼閣を・・」

それも、もうすぐ・・殺意の奔流に押し流され、息を潜めてしまうのだろうが・・。
・・・・。

「暗い・・・。」

この場所も、行き着く場所も、真っ暗だった。
どうしてこんなにも暗いのだろう?少し前の自分は、もっと別の・・・とても眩しいものを見ていた気がした。

初夏の日差し、教室の風景、空の青・・・・彼女の笑顔。




『西条君・・・あの子を、ユミールを・・・守って、あげて・・』

『許さぬよ・・貴殿だけは・・』

「どこ・・?寒いよ・・・お兄ちゃん・・?』


―――――――・・お前は、覗いてみたくないのか?世界の深淵を・・。一度触れれば、ヤミツキになるぜ?


・・・。


「・・・っ!」

彼は、小さく歯噛みした。
唇が切れ、乾いた口内に血の香りが漂う。まるで全身が沸騰するかのように・・鼓動が昂ぶる。

ならば、今は全てを闇に委ねよう。
どこまでも暗く、果てしなく冷たい・・・鋭利なまでに研ぎ澄まされた、殺意の世界。
頃合いもよく、『迎え』が出向いてきたのだから・・・――――――――――

――――――――・・。



「3年ぶり・・・だな。」


再会?邂逅?
放たれた声に、そんな感慨は宿っていない。全ては必然・・ずれた斜線は、いつかどこかで交わるものだ。

「実感が湧かないな・・。僕は、お前の顔を忘れたことなど、一日たりとも無かったよ。」

「くくっ・・嬉しいことを言ってくれるじゃないか・・」

ヒタリ、ヒタリ・・と。
距離が縮まる。開きすぎて、埋めることが馬鹿馬鹿しく感じるほどに離たれた溝。
交差するのは憎悪と嘆き。過去はどうあれ、今は・・。抜き放たれた霊刀が、2人の関係を物語っていた。
それら全てが・・

「・・必然、か。」

わずかな沈黙。しかし、それさえもすぐに終わる。何の前触れも無く、終わるのだ。
終わりの先に見るモノは・・・無幻の闇――――――――――。


・・・瞬間―――――!


静寂の全てを無に帰す剣閃が、凶悪な煌きとともに闇を薙ぐ。
同時に漆黒を切り裂く、黒い刃腕。意思を持つかのような、白蛇と黒蛇が、互いの喉笛を喰いちぎり・・・。

鮮血。衝撃。そして轟音・・・・。

殺意の波動が空間を揺さぶる。飛び交う血滴が、紅水晶の花を咲かせる・・・。
それら全てが必然――――――――!


「会いたかったぜぇ・・西条・・」


「間下部・・・貴様は殺す・・・!」


形無いものは『カタチ』を変えて・・・蒼ざめた大気を朱に染めた。


『あとがき』

・・激突!(笑)
どうも〜今年最後の投稿になります。かぜあめです。ここまでお付き合いくださりありがとうございました〜
今シリーズのメインバトル・西条VS間下部戦がついに開幕ですね〜
そして、今までの全80投稿の中で最も重要な(←強調)今回出てきた横島のナゾ。
・・だって、冷静に考えたら絶対おかしいですよ、横島は(笑)不死王が言ったことそのまま筆者の疑問です。

アシュタロスの上にドラム缶が落ちてきたのが宇宙の反作用なら、その拍子で横島の手に渡った結晶もやっぱり・・そう考えるのが自然ですよねぇ・・。

不死王編の敵キャラまで出てきて・・まぁ、次シリーズは横島が過去との決着を着けるお話なので・・。
彼は横島の合わせ鏡です。横島と同じ力、同じ過去を持ちながら全く別の道を歩んでる人・・みたいな(笑

あと予想外だったのが、スタッフ内で爆弾魔が大人気です。(なんと支持者が6人中3人)
動機や目的が割りと身近に感じられるそうで・・う〜ん?(笑)
横島だったら、きっとスズノとは違った反応を返したんでしょうね。「甘えんな!」みたいな・・(笑
というわけで、2005年ももうすぐですね〜。来年一杯かけても、キツネシリーズは120%終わりません(笑
長い長い不死王編が待ってますし・・。何はともあれ、来年も頑張ります。
次回はタマモ&ドゥルジさまが大ピンチ!!えっちぃシーンは・・まだ、かな?出来れば次回入れてみます(汗
それでは〜皆さん、よいお年を〜

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