ザ・グレート・展開予測ショー

青春代理人 最終回


投稿者名:コンキリ
投稿日時:(00/ 5/15)

0−0
最後の試合の最後の攻撃のチャンスが来た。
もし、この回で得点がとれず、延長戦に持ち込まれたら、
俺達の負けは決まったようなものだ。
どうしてもこの回で、得点しなければならなかった。

打席は9番の田中君からだった。
しかし合えなく凡退。
不穏な空気が、ドンヨリと辺りを流れた。

「雪之上君!何とか・・何とか塁にでてくれ!!」
「・・・、まかせとけって。」
「頼んだぞ、雪之上。」
「あぁ、」

「皆がオレに期待している・・・。
 俺は最初、この話に乗り気じゃなかったが・・・
 こうなっちまった以上、勝つしかねぇよな。
 負けることを、ママは望んじゃいねぇハズだ!
 こい!!」

ザッ!
『さぁ、ピッチャー振りかぶりまして・・・、第一球!』

派手な轟音を立てながら球はキャッチャーミットに吸い込まれていった。
しかしその進行を止めるべく雪之上はひとつ、剣を出した。
その剣は、球が来るのを待ちわびているようだった。
剣は待った。いや、実際はヒトが感じることもできない一瞬だったのだろう。
しかし、剣は待った。
球は来た。剣は球をつかみ、そして、球を振り払った。
球は飛んでいった。地をはって、信じられない速さで。

「ヨッシャァァァァァアアア!!」
雪之上は一塁ベースをめがけて走った!
『雪之上君安打となりました!サヨナラのランナーです!
 サヨナラのランナーが出塁しました!』
山中先輩が俺の隣から声を張り上げた
「よくやったぞ、雪之上君!
 最高の安打だ!よくやったぞ!!」
「ピート、次、お前の番みたいだぜ。」
「解ってますよ・・!行ってきます。」
「ピート君!波に乗るんだ!」
「やってみます。」

実際のところ、ピートは野球というものに露程も興味を抱いたことが無かった。
まぁ、あのような辺境の土地にいたのだから当然といえばそうなのだが。
しかし、根が真面目な彼はこのような地に立つことになり、
必死の努力をしたのであった。
美神は言う、
秀才は天才には勝てぬのだと。
彼はどちらかといえば天才だったのかもしれない。
だが彼は同時に努力家であった。
誰かと違い才能にあぐらをかかなかった。
そして、努力は報われるのである。

『ピート君、打ちました!!
 ヒットです!雪之上君がすかさず二塁に進塁します!
 球が一塁に送球されました!ピート君、滑り込みます!
 アウトか!?セーフか!?
 
 ・・・・・セーフです!どうやらセーフのようであります!!』

「良し・・・、良いぞ!かなり良いぞ!
 これなら・・勝てるかも・・・!!」
隣の池上先輩はかなり興奮しているようだった。
そしてタイガーがむっくりと立ち上がった。
「センパイ!横島サン!行ってきますケンノー!」
「あぁ!気楽に行ってくれ!頑張れよ!!」
「気楽に頑張るってなんスか。
 と、とにかくタイガー。やれるだけのことはやって来いよな!」
「・・・・」
奴は無言でうなずいた。
プレッシャーがのし掛かっていたのであろう。
でかいずうたいしながらなぁ・・・。
俺は軽くそう思った。

タイガーはいつもそうなんだよな。
いつも力みすぎて・・・。
そんでもって、アガって、実力発揮できなくて、
見せ場を作れなくって、それがまたプレッシャーになって、
じたばたするけど・・。効果はないんだよなぁ。
不器用なんだよな。俺と違って!
あぁ、あんなにホラ、前かがみの姿勢になって・・・
あれじゃぁしっかり球を打ち抜けないだろう・・。

スカーーーーーン・・・・。
『ああっと!打ち上げてしまいました寅吉君!!
 これは内野が処理します。』

あぁ〜あ。まぁ、しょうがねぇか。
だからってそんなに落ち込むことねぇと思うんだけどなぁ・・。
・・・・ふぅ。

「残念だったな。タイガー君。
 まぁしかし、よくやってくれたよ。」
「すまんですノー。センパイ・・。」
「気にすることはないさ。まぁ座って応援しててくれ。」
「そうだぜ、タイガー。
 心配しなくってもなぁ、池上先輩が何とかしてくれるさ!」
「・・・。なんだかなぁ。」
池上はそう思いながらバッターボックスに向かった。

しかし池上を待ち受けていたのは
三年間耐え続けた彼にはあまりに残酷な仕打ちであった。
四球。そう、フォアボール。
彼はチャンスを形にすることができないまま塁に走ることとなった。

0−0、九回の裏、ツーアウト、満塁。
でき過ぎた条件の中(って言うか俺が設定したんだけど)
横島はバッターボックスに向かっていた。

どうする、俺!文殊はひとつ残っているけど・・・。
でも、この状況、スクイズでも決めれば・・・
いや!今回ばかりは相手も警戒しているだろうしなぁ、
とっ、とにかく俺の実力じゃあ
あのピッチャーの球に当てるのが第一だよな!
『当』だ、『当』!!
俺は文殊に念じた。

バッターボックスに立った俺は堂々としていた。
文殊の力、即ち俺の霊力に自信があったからだ。
今の自分になら目をつぶっていたってヒットにできる自信があった。

『さぁ、もう後がありません横島君!』
構えをとる。
ピッチャーをにらむ。 

『ピッチャー振りかぶりましたっ!』
ピッチャーが振りかぶる。
気のせいか悪寒がした。

『ピッチャー、独特のフォームから・・・』
ピッチャーが足を踏み込む。
俺は足をあげる。

『投げましたぁッ!!』
ボールが迫ってくる。
ボールが大きく、大きく、大きく、大きくなってくる。
まるでスカパーのCMのようだった。

いや、でもこれはデカ過ぎじゃぁ・・・・?

そう思った、
しかし体は動かなかった。
もッ!もしかして文殊!!
『当』ってのはもしかして・・・・・!!!

ドゴォォォォオオオオオオオオオオンンンンッッ!!
遅かった。
ヘルメットは吹っ飛び、ヒビが入っているようにも見える。
俺は思わず倒れた。
しかし、ヘルメットにぶつかっただけで済んだのは幸であった。
ヨロヨロしながら塁に進む。

アレ、一塁には先輩がいたはずだよな?
んで、二塁にはピートが、
最後に三塁には雪の上が・・・・・!?

・・・・・・!!

『九回裏ツーアツト満塁からデットボール押し出しで一点追加です!
 ゲームセットです!!
 横島選手のデットボールでこのゲームは幕を閉じました!!%8

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa