クリスマスの小咄 前編(絶対可憐チルドレン)
投稿者名:偽バルタン
投稿日時:(04/12/25)
師走…その語源には諸説あるが、その一つに『年末で、日頃落着いてる学校の先生も忙しくて走り回る月…という所から来た』とゆうモノがある。
そう、年末は何処も忙しい…そして、それはこの僕…皆本光一が所即する組織、特務機関バベルにおいても例外ではない。
クリスマスの小咄 前編(絶対可憐チルドレン)
「お…終ったぁ…」
んん…と、伸びをすると、固まっていた背骨がばきぼきと音を立てた。
今日は朝からずっと、デスクに詰めっ放しでの事務仕事だったのだから無理も無い。
時計を見ると、退社時刻は過ぎてしまっている物の、どうやら残業は免れそうだ…これ位の時間だったら、“彼女等”もきっと許してくれるだろう…多分…
と…
「お疲れ様でした…皆本さん。」
そう言って、僕の目の前にそっ…と、マグカップを置く女性……
スーツの上からでも解る均整の取れたプロポーション、整った顔にウェーブのかかった長い黒髪…局長付の秘書官である柏木朧さんだ。
「あぁ、どうも…有難うございます、柏木さん…」
「いいえ…」
カップの中は熱い珈琲…仕事で疲れ鈍くなった頭には有り難い。
でも…この香り…安物のインスタントじゃないなぁ…もしかして柏木さんが手ずから淹れてくれたのだろうか?
…ラッキーかも知れない。
「今日はまた随分とお仕事に熱が入ってたみたいですね?
仕事の間ずっと…何て言うか…“鬼気迫る”って雰囲気の顔されてましたよ?」
「へ?…そ、そうですか?」
口ではそう言いつつも、僕にもその自覚があった。
何せこの日(のみならず年末のココ最近は毎日)のノルマは、残業確実…イヤ、もしかして残業したとしても終えるコトができるだろうか?…って位の量だったから。
勿論、その膨大な量の仕事をそこまでして片付けたのには、当然ワケがある…今日だけはどうしても遅く帰る事は出来ないのだ。
「…もしかして…今日は皆本さんを置いてさっさと帰っちゃった“あのコ達”に関係してたりします?」
「…えぇ……まぁ…」
流石柏木さん…勘が鋭い…
…いやいや、彼女の事だから全部解ってて話を振ってきたのかもしれない。
「そうですよね…あのコ等、余程遅くならない限りは皆本さんの仕事が終るまで待ってますからね〜…おかしいと思ったんです。」
「…まぁ…待ってるとゆーか、邪魔してるとゆーか…
今日…クリスマスじゃないですか?…3人とも『パーティー』やるんだって張り切ってましてねぇ…」
あのコ等…僕の担当する超能力者の少女達…“ザ・チルドレン”の3人娘…薫・葵・紫穂のことだ。
業務時刻終了と共に、速攻で僕の家へと帰っていた3人…クリスマスパーティーの準備の為だ。
…食事から部屋の飾りつけ…プレゼントに至るまで全部自分達で用意するんだ…と、可也前から計画を立てていたらしい。
…あれ?
そーいえばいつの間にか、薫たちが 『“家に帰る”=“僕の家に行く”』とゆー図式が成立しつつある様な…
…な…何だかこのまま行くとなし崩しに同居って事もありえる…ヤバイかも知れない(大汗
ま、まぁそれは兎も角…
「あら、それは良かったですね♪…楽しみでしょう?」
「…とんでもない…」
自宅で待ち変えてているであろう惨状を思い、僕はゲンナリとしてしまった…はっきり言って憂鬱ですらある。
何をするにしても『やり過ぎ』る傾向のある彼女等の事…しかも今日は(一応は)監視役である僕の目が無いのだ。
食事の用意…火や刃物の取扱には充分に注意する様言い渡してあるが…それでも、調理器具や食材相手に悪戦苦闘している彼女等の姿以外想像できない。
…特にそーゆーの苦手で不器用そうな薫は本当に心配だ…まさか怪我などして無いだろうか?
いやそれもあるが…帰ったら『キッチンが廃墟になってました♪』何て事になってなきゃいいんだが…あの3人だと、それも洒落になってない(汗
部屋の飾付もどうなる事やら…過剰な物になってなきゃいいんだが…葵辺り“瞬間移動能力”を使って、部屋にとんでもなく巨大なツリーを搬入して…とかやってそうな気がする。
普段なら、暴走するふたりのストッパーになってくれる紫穂も…今回は期待できそうに無い…
なにより、パーティーは彼女等の体力の続く限り…夜を徹して大騒ぎとなるに違いない。
…僕は明日も早くから仕事があるというのに…
しかも、その全部の後片付けをするのは、多分きっと…いや、間違いなく僕なのだ。
…不安と憂鬱の種は尽きるコトが無い…
「……ですからねぇ…とてもじゃないですけど…“楽しみ”だなんて…
……あ……(汗
す、すいません…愚痴ばっか言っちゃって…柏木さんにこんな事言ったって仕方ないのに…」
…仕事で疲れていたのだろうか…ついつい思ってる事全て柏木さんにぶちまけてしまった。
…自己嫌悪…オトコの愚痴ほどみっともない物は無い…
でも…
「くす…」
柏木さんの顔に浮かぶのは、本当に、本当に愉しげで可愛らしい微笑み…
……妙齢の女性に対し“可愛らしい“というのは失礼だろうか?…
それは今の僕の醜態を嘲っているとゆうワケでは無さそうだ…思わずドキッとしてしまう。
「な、なんですか?」
「いえ…ね?皆本さん…愚痴って言う割には…すごく嬉しそうな顔してましたから…」
「う…“嬉しそう”…ですか?」
「はい…とっても♪」
柏木さんの優しげな眼差しにどぎまぎとしながらも、その言葉に衝撃を受けた…
ついつい考え込んでしまう。
「…嬉しそう?僕が…嬉しそう?」
「…ご自身じゃあ解らないのかも知れませんけどね…?」
後編に続く
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