ザ・グレート・展開予測ショー

絶対可憐サンタクロース


投稿者名:斑駒
投稿日時:(04/12/25)

「皆本! クリスマスプレゼントは何をくれるんだ? あたしの希望としては、オトナなランジェリーセットとかがいいんだけど」
「ウチは現金でもかまわへんで?」
「私は新しいお化粧道具とかがいいなぁ」

 24日の朝、皆本の顔を見るなり三人の少女が開口一番に放ったセリフがこれだった。

「クリスマスプレゼント? なんでそんなものを、僕が用意しなきゃならないんだ?」

 それに対する皆本の反応も、実に率直なものだった。
 ……それが、いけなかった。




 ※※※多少見苦しく聞き苦しいので、音声と映像をカットしております。しばらくそのままでお待ちください※※※




「まさかとは思ったけど。本当に用意してないなんてな」
「クリスマスに、一番身近な女性へのプレゼントを用意するのは、ジョーシキやで?」

「だからって、イキナリこれは無いんじゃないかっっ!?」

 窓を突き破って中空に放り出され、実に地上100mからのフリーフォールを一瞬のうちに体験してきた皆本が、いまは屋上の避雷針に逆さ吊りになりながら抗議の声を上げた。

「純真な子供の夢を裏切ったんやで、これくらいされてトーゼンやろ?」

「どこの純真な子供がクリスマス・プレゼントに現金をねだるというんだッ?」

 静かに鋭く切り返す皆本の反応からは、怒気というよりはむしろ疲労の方が強く感じられた。

「だいたい、君たちは『女性』って言うにはまだ無理があるだろう。子供は子供らしくサンタにでもプレゼントをねだれ…ば……?」

 セリフの途中だが、皆本は妙な殺気を感じてふっと顔を上げた。
 しかし、目の前にあるはずの屋上の地面や少女達の姿は見えず、軽く戸惑う。
 慌てて周囲を見回すと、目に入るのはただ空・空・空。

―落ちるっ?

 無意識に手をジタバタさせるが、一向に落ちる気配は無い。
 ここで皆本はやっと、自分が葵のテレポートで上空に放り出され、薫のサイコキネシスで空中に縫いとめられていることに気づいた。しかも、ご丁寧に逆さのままで。

 落ち着いて“真下を見上げて”みると、四角い平面の上から、三人の少女が不機嫌を絵に描いたような顔でこちらを見上げていた。

「おい、いったい……」

「皆本はんの、アホおぉ!!」
「あたしらのこと『子供』とか言うんじゃねーー!!」
「サンタなんて、居るわけないじゃない!!」

「うっ……」

 皆本は、器用に空中で『退き』のポーズをとりながらたじろいだ。
 そういえば、あの子たちは『ガキ』とか言われるのを異常に嫌うのだった。

―仕方ない。ここはひとつ謝って……

 ずっと空中にいるわけにもいかないし、このままでは頭に血が上ってしまう。
 皆本はしぶしぶながら譲歩しようと口を開きかけた。
 しかしその瞬間、皆本の身体をものすごい衝撃が襲った。
 ラグビーで横様にタックルを食らったかのような衝撃だ。

「ぅぐっ、薫、ちょっとおまえ、短気すぎる…じゃ………?」

 空中に居る自分にこんな力を与えることが出来る心当たりは、一人しか居ない。
 皆本は、悪態も半ばで、あまりの衝撃の強さにあっさりと意識を手放した。










クリスマスプレゼント交換SS
    〜絶対可憐サンタクロース〜










「どうしてくれるんやっ! 子供の夢、台無しやないか!!!」

 皆本の意識に、関西弁で話す声がかすかに届いてくる。

―葵か? まだあんなことを言って……いや、待てよ?

 だんだんと意識がはっきりしていくにつれて、皆本はその冷静な思考と分析能力を取り戻す。
 今の自分の考えには、見逃すにはあまりにも重大な矛盾点があった。

―葵があんな、年寄りのようなしわがれ声を出すはずが無いじゃないか!


「………ッ!?」

 一気に目が覚めた皆本は、その場で飛び起きた。

「まあ、とりあえず落ち着いてもらえないかネ。こちらとしても事情が把握しきれないのだヨ」
「これが落ち着いておれるかいっ! 今日がイブだってのに、トナカイが目を覚まさんことにはプレゼントを配りに行けん! どないせいっちゅうねん!!」
「そんなんウチらに言われても困るわ。ぶつかって来たのはそっちやろ」
「そーだぜ。こっちだって皆本が気を失ったまんまなんだ。そっちばっか被害者みたいなツラしやがって」
「どこの世界に、人間が宙に浮いとる思って注意するやつがおんねん!」
「現に浮いてたじゃねーか。そっちの不注意だろ!」
「君たち。まずは責任がどっちにあるかより、これからどうするかを話し合わないかネ。先方も困っているようだし……」

「……………」

 突然耳に入ってきた激しい口論に、寝起きの皆本の脳みそは到底ついていけなかった。
 とりあえず、周囲の状況を確認する。
 桐壺局長が自分のデスクで半立ちになって場を収めようとしている。
 その傍らに三人の少女が立って、口角泡を飛ばしている。
 そしてその対面に、赤い服を着た爺さんがこれまた脳溢血でも起こしそうなくらいエキサイトしている。
 その爺さんの傍らには、ソリのような木製器具が置いてあり、それに繋がれたトナカイのような生き物がぐったりと横たわっていた。

 ……とりあえず、周囲の状況はともかく。
 自分はバベルの執務室のソファに寝かせられていたようだった。
 それ以外のことは、聞いてみないことには間違いなく理解できなさそうだ。

「あの、局長。これは……?」
「おおっ、皆本クン! 起きたかネ?」

 皆本の介入により、口論が一端途切れる。

「なんだ。皆本、生きてたのか」
 セリフとは裏腹に、ホッとしたような表情の薫。
「言ったじゃない。私が診たときに。ただ気絶してるだけだって」
 自分の感応能力による診断に自信を持ちつつも、それでもどこか落ち着いたような表情の紫穂。
「ウチがここまでテレポートしたったんやで♪ 感謝しい」
 さっき上空数千メートルまでテレポートしてくれたのは、ケロッと忘れたかのような表情の葵。


「……どうもご心配をおかけしたようで。それで、一体なにがあったんです?」

 皆本は、赤い服を着た老人をしげしげと眺めながら聞いた。

「うむ。実はこちらのサンタが、上空で君に衝突してしまったらしくてネ。その際にトナカイが気ぜつ……」
「ちょっっっと待ってくださいっ!!」

 重大な事実が、さらりと流されようとしたのを、皆本は必死になってせき止める。

「サンタって、あのサンタのことですか?」
「サンタって、他に何か心当たりのサンタがあるのかネ?」
「いえ。それじゃ、あのサンタクロースなんですか? クリスマスに子供にプレゼントを配って回るていう、あの……」
「その仕事の最中だったそうなんだがネ」
「…………」

 なんとなく、そんな気はしていた。
 老人の服装は、いかにもそんな感じだったし、肩に背負った袋やトナカイやソリと言った小道具だってそれらしかった。
 しかし……

「なんや、その疑うような目は? わしは世界で唯一、正真正銘、正式なサンタやっちゅうねん!!」

 誰が想像するだろうか。本物のサンタクロースが、こんな関西弁をしゃべる爺さんだなどとは。

「話を続けていいカネ?」
「……あ、はい」

 皆本は、心の片隅で何か大切なものが崩れ去るような感覚を覚えながらも、理性でどうにか自分を納得させて体勢を立て直した。

「君との衝突でトナカイが気絶したために、ソリが飛べなくなったらしい。それでプレゼントを配って回ることができないということでネ」

「それは……たしかに困るのでしょうね」

「他人事やないで! おまえらがあんなトコで遊んどらんかったら、あんな事故は起こらんかったんや。世界中の子供の夢、どう責任とってくれるんや、ワレ!」

 事情は飲み込んだものの、いまいち現実性に欠ける事態に、皆本の返答は微妙に他人事のような雰囲気を漂わせていた。
 そこに、サンタの爺さんが、出来損ないのヤクザのようなタンカを切る。
 ちょっと世界中の夢ある子供には、見せられない姿だった。

「おい、オッサン。さっきから黙って聞いてりゃ、ずいぶん勝手なこと言ってくれるじゃねーか!!」

 売り言葉に買い言葉。サンタに掴みかかりそうな勢いで、薫がつっかかった。
 彼女とて決して、いままで黙っていたわけではなかったが。

「トナカイが潰れたぐらいでギャーギャーわめきやがって。そんなに言うんなら、あたしらがオッサンの代わりにプレゼント配ってきてやるよ」

 言うが早いか、左手をかざす。
 サンタの肩から、プレゼントが入っているらしき袋が浮かび上がって、薫の手の中に収まった。

「薫が行くんなら、ウチも付き合うで」

 葵が、薫の肩にぽんっと手を置いて、次の瞬間には二人一緒にソリまで短距離テレポートする。

「ソリの方は、無事みたいよ。これ自体は飛ばないけど、乗るだけなら問題無いみたい」

 紫穂が、一足先にソリに触れて状態を調べる。

「あっ、ちょっと待てっ、おまえら!!」

 皆本が、薫の能力で浮き上がったソリの足に、慌てて掴まる。

「ソコで待ってろよオッサン! 帰って来たら、駄賃にプレゼントの一個もくれよな!」

 薫が捨て台詞を残すか残さないかのうちに、ソリはテレポートしてクリスマス・イブの夜空に飛び出した。















「……さて、景気よくタンカを切って飛び出して来たのはいいけど。プレゼントって、どう配ったらいいんだ?」
「って、薫っ! 考えてなかったんかい!」
「あきれた。どうする? 今から戻ってサンタのおじさんに聞く?」

 三人の少女を乗せて勢いよく飛び出したソリは、最初っからあてもなくふらふらと夜空を漂っていた。

「いまさら戻れるかよ。……でも、ホントにどうしようか」
「だから待てと言ったじゃないか!」

 顔を見合わせる三人の前に、やっとこソリの下から這い上がってきた皆本が顔を出した。

「なんだ、皆本。居たのか」
「またこんな高いところに」
「ひょっとして、皆本はんってアレか? 高いところ好きなんか?」

「誰のおかげで再三高いところに飛ばされてると思ってるんだ!!??」
「そら、ウチのおかげやな」

 受難続きの皆本のせめてもの叫びも、さらりと受け流される。

「……まあいい。それよりプレゼントの件だが、君たち三人が居ればなんとかなると思う」

「はっ?」
「えっ?」
「へっ?」

 皆本の発言に、三人が一様に声を上げた。

「……どうした?」

「……あ。いや、止めないのかなって思ってさ」
「皆本はん、ウチらが勝手に能力使うの嫌うやん?」
「面倒事に首をつっこむのにも、いい顔しないし」

 戸惑いの表情を浮かべる三人を見て、皆本は思わず苦笑した。

「まあ、いつもはいつもだけど、今回は特別だ。こっちにも非があるんなら、責任を持って事故の保障をするのも、大人の行動だからな」

 皆本は、メガネの位置を直す仕草をしながら、言った。

「今日は僕が許す。能力の限りを尽くして、子供の夢を守るぞ!」

 半ばヤケクソで笑いながら豪語する皆本を見て、頭がどうにかなってしまったのではないかと、三人の少女は顔を見合わせて、少し心配したりしたのだった。








 ……その数刻後。
「薫ッ! 次は山口県○○市○○ 1-771-3、因幡源五郎くんち!」

 紫穂が、サンタの袋から取り出したプレゼントに触れて、情報を読み出す。

「了解っ! トバすぜっっ!」

 薫が、指定された家までソリを文字通り飛ばす。

「あった。あの家じゃないか? 葵っ!」

 皆本が、GPS端末を片手に、行き先までのナビゲーションを務める。

「ほいなっ、プレゼント一個、お届けっ♪」

 葵が、指定された家の子供部屋の枕元に、プレゼントをテレポートさせる。

「ぃよっし! 紫穂! 次はドコだ?」

 皆本の考案したシステムによって、プレゼントの宅配は調子よく進んだ。
 サンタ服に身を包んだ三人は、もうすっかりノリノリだった。

「サンタの仕事なんて、ラクショーだなっ♪」
「ウチらひょっとして、サンタに向いてるんとちゃう? 失業したら、これで食ってくかな」
「毎日がクリスマスだったらいいのに。そうしたら毎日この服も着れるし」

 紫穂はどうやら、自分が着ているサンタ服が気に入っているらしかった。
 三人が着ている服はさっき、皆本にねだって買い揃えてもらったものだ。
 そして……

「僕は、毎日どころか、二度とこんな格好はしたくないけどな」

 皆本だけ違う格好で、少しブルーが入っていた。
 服を買うために立ち寄ったショッピングセンターで、三人の勢いに丸め込まれたのだが。

「いいじゃん。似合ってるぜ」
「皆本はんには、それしか無いって♪」
「子供ウケは、すると思う」
「……………」

 三人は全く意に介していない様子で適当に流した。
 しかし、皆本は憮然とした表情で、1ミリも納得の行かない様子だった。

 皆本だけは、トナカイの着ぐるみを着て、ソリの前に繋がれていたのである。
 ご丁寧に、真っ赤なお鼻までつけて。
 着ぐるみの上からかけられたフチなし眼鏡が、妙にシュールだった。

「まあ、トナカイが居ないソリってのも妙だし。これも子供の夢を守るためと思えばいいけどな。それで、紫穂、次の目的地は?」

 皆本は眼鏡の位置を直しながら、なんとか気も取り直す。

「ちょっと待って。ええと……ソウルの5番街7丁目の……」
「ちょい待ちっ、ソウルって、韓国やんか!」
「ええっ? ウソだろ!? プレゼントって、日本だけじゃないのか? 聞いてないぞ!!??」
「そういえば、あのサンタ、『世界中の子供たちの夢』とか言ってたっけ……?」

 愕然と顔を見合わせる四人の前に、いまだにズッシリとした内容量を感じさせる袋が横たわっていた。















「……か、か、帰ったぞー。ちくしょー」

「も、もうクタクタや。けっきょく明け方近くまでかかってもうたやないか」

「眠い……お肌荒れそう………」

「まさか、世界を一周させられるとはな」

 やっとのことで執務室に戻ってきた三人は、思い思いにソリから床に転がり落ちて、ぐったりとした様子を見せた。

「君たち! 大丈夫だったかネ!? 危ないことはなかったかネ!!?  コラァ! 皆本オォ! おまえがついていながら、子供たちを夜遅くまで連れ歩いて。夜遊びするクセでもついたらどうするんだネ!!??」

 まっさきに局長がすごい勢いで飛び掛ってきたが、その暑苦しい勢いに対応できる元気を残した者は、その場には居なかった。
 みんな無言でうつろに局長の方を見上げる。

「おー、ごくろうさん。前に配達を任せたヤツらは25日の夜までかかったもんだが、おなえらはなかなか早かったやないか」

 サンタが、まるで他人事であるかのように脳天気に話しかけた。

「他人事…じゃ、ねーだろ………おまえ」
「分かってたんなら、はよ教えてぇな」
「ってゆーか前に任された人って、超能力もなしにどうやって部屋までプレゼント届けたの?」

 三人が、だるそうに思い思いの言葉を吐く。

「そんなことより。君たちはもう寝た方がいい。いくら超度7だからって、一晩中精神を使い続けて疲れたろう」

 そういう自分も肩で息をつきながら、皆本。
 しかし、薫は首を振って立ち上がった。

「いーや。まだだね。まだ、オッサンからプレゼントを貰って無いっ!」

「……そ、そや。貰わんうちは、寝ても寝付かれへん!」

 葵もつられて立ち上がった。

「私……も…………ダメ」

 紫穂も……立ち上がるかと思ったら、そのまま力尽きて床に横たわってしまった。
 しばらくして、すぅすぅと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。

「あ〜。ウチも、やっぱりもうダメや〜〜〜」

 紫穂の寝息を聞いて、葵もその場にへなへなと崩れ落ち、床に横たわって寝てしまった。

「あっ、裏切り者っっ……あたしだって…眠い……のに」

 最後までがんばっていた薫が、立ったままフッと意識を手放して、皆本の手に抱きとめられる。

「まったく……こいつらは」

 皆本が、呆れたような、ちょっとホッとしたようなため息をついた。




「大した嬢ちゃんたちや。まあ、助かったで。じゃ、気絶してたトナカイも目ェ覚ましたし、わしはこれでな」

 サンタも、やはり軽くため息をついたあと、何食わぬ顔で袋を背負ってその場をあとにしようとした。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。この子たちに何かプレゼントは貰えないのか?」

「……ああ、スマンが、わしがプレゼントを配る子供は、毎年厳正な抽選によって決まっとってな。不公平があったらマズいやろ」

「それはそうだけど……この子たちは小さな体で一生懸命がんばったんだ。何かご褒美の一つくらいあったっていいじゃないか」

 サンタの言う理屈は分かる……が、しかし三人と一緒に飛び回った皆本には納得し難いところがあった。
 そんな皆本の様子を見て、サンタは目の前まで歩み寄り、言った。

「おまえ、サンタにプレゼントを貰ったことあるか?」
「は……?」

 一瞬、何を問われたのか分からなかった。

「ちなみに、わしはおまえに会うのは初めてや。おまえがガキのころにプレゼントをやった事も無い」
「は………?」

 それは、サンタにプレゼントを貰ったことは無いということを、意味するのではないのだろうか。

「けど、おまえがガキのころは、クリスマスの朝に起きたら、枕元にプレゼントが置かれてたんやないか?」
「ああ………」

 たしかに小さかったころに何度かそういう記憶はある。しかしそれは…………

「わしはさっき自分のことを世界で唯一の正式なサンタやっちゅうたがな。ホンモノのサンタは、べつにわしだけやないねん。そこいら中の…」
「……そういう、ことか」

 皆本が、はっとした顔で、サンタの目を見返した。

「……そういう、こっちゃ。じゃ、わしはこれでっっ。ニィちゃん、仕事手伝ってくれてあんがとな!」

 言うが早いか、サンタはソリに飛び乗り、手綱を取ると、風のように飛び出して行った。


「…………何だったんだろうネ。いったい」

 桐壺局長が、窓の外を見上げて、呆気にとられたようにつぶやいた。

「さあ、なんだったんでしょうね。いったい……」

 皆本は、薫を抱きかかえたまま、微妙にほほえんで、同じく窓の方を見た。
 明け方の空は、もうすっかり白んで、いまにも日が昇ろうとするところだ。

「とりあえず局長。僕はこの子たちを部屋に寝かしつけて来ますね」

「ああ、頼むヨ、皆本クン。そのあとは、“少〜し”話があるから、ここに戻ってくるようにネ!」

 桐壺は、「少〜し」に妙なアクセントを置いてしゃべった。
 にこやかな目だったが、しかしその中身は全然笑っていなかった。

「……はい」

 皆本は、残りの二人を抱え上げながら、げんなりとした顔で返事をした。










 クリスマスの朝。

 皆本が目にクマを溜めながら局長のお説教を右の耳から左の耳に流しているころ。

 三人の少女は、ひとつのベッドに枕を寄せて、天使のような寝顔を見せていた。

 その枕元にはいつの間にか、かわいい包み紙で丁寧にラッピングされたプレゼントが三つ。

 そしてそのそれぞれに、小さなカードが添えられていた。




『サンタクロースより、夢ある子供たちへ』



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