ザ・グレート・展開予測ショー

聖夜は魔女と・・・


投稿者名:殿下
投稿日時:(04/12/24)



がつがつがつがつ
ここは世にも珍しい魔法料理の店『 魔鈴 』
むしゃむしゃむしゃ
閉店時間を過ぎているにも関わらず店内では一人の男が料理を貪っている。

「 いやぁ、いつも申し訳ないっす。魔鈴さん 」
料理を貪っている男、横島忠夫が食事の手を止め頭を下げる。
「 別に構いませんよ 」
その横島に対して笑顔で応対する女性、この店のオーナーである魔鈴めぐみである。

「 ホントすんません。閉店時間も過ぎてるっていうのに・・ 」
「 ふふ・・、横島さんらしくないですね。そんなこと気にするなんて 」
「 それに・・・・ツケも大分たまってるし・・・ 」
「 料金はいつでも構いませんよ。困ってる時はお互い様じゃないですか 」
「 すいません 」
申し訳なさそうに再度頭を下げる横島

「 さっきから頭下げてばっかりで全然食べてないじゃないですか。気にせずどんどん食べて下さいね 」
「 あっ、はい 」
がつがつがつがつ
この様な光景が最近『 魔鈴 』では当たり前になっている。最初はツケがきくという理由で『 魔鈴 』に通っていた横島だったが、最近は魔鈴に会うために何かと理由をつけて毎日のように『 魔鈴 』に出入りしている。
魔鈴の方も最初はただ料理を出すだけだったが、最近は横島が来店するたびにご機嫌になり、ずっと横島のそばで色々な話をしている。



食事を再開して数分後、料理を食べ終え、横島が大きくため息を吐いていた。
「 どうしたんですか?あまりお口に合いませんでした? 」
それに気がつき心配そうに横島の顔を覗き込む魔鈴
「 いえ、魔鈴さんの料理はいつもどおり美味しかったですよ。ため息をついたのは、仕事でちょっとヘマしちゃったからなんです。いや、いつものことなんですけどね。この仕事を随分してるのに未だにつまらないミスするんで俺って成長しねーなって・・・・・ハハ 」
弱々しく笑い少し落ち込みながら話す横島
「 そんなことないですよ!横島さんは私が初めて会った時よりもずっと成長してるし、それに・・・・・・ずっと男らしくなりましたよ 」
ポッと少し頬を赤くしながらつぶやく。
「 そ、そーすか?ハハハ、そうかな?ハハハハハ 」
予想外の魔鈴の言葉に少し照れる横島

「 そ、それよりもうすぐクリスマスですね 」
照れくさくなったのか慌てて話題を変えようとする横島
「 そ、そうですね。横島さんのご予定は? 」
その意図に気づいてのか魔鈴も少し焦りながら返事をする。

「 俺は事務所のメンバーで冥子さんの家で開かれるクリスマスパーティーに行く予定です 」
「 へー、クリスマスパーティーですか。いいですね 」
「 そうだ!良かったら魔鈴さんも一緒に・・ 」
「 えっ!?私ですか?行きたいですけど、お店がありますし・・・ 」
「 休みにしましょうよ 」
「 で、でもクリスマスは忙しくなると思ってバイトの子を雇ってしまったんです。今さら休むというわけには・・・ 」
「 ・・・そうですか。無理言ってすいませんでした 」
少し肩を落としながら返事をする横島
「 いえ、誘ってくれてすごく嬉しかったですよ。実は言うとクリスマスってあまり楽しかった思い出ってないんですよね 」
「 えっ!?イギリスにいた時とかは?西条なんかに誘われたりしなかったんですか? 」
「 西条先輩は色んな女性とデートしてましたし、私は私で魔法の研究に夢中だったんでクリスマスとかに興味が無かったんでクリスマスは一人で過ごしてたんです。でも去年のクリスマスで楽しそうな横島さん達を見てちょっと羨ましくなっちゃったんですよね。だから出来れば行きたいんですけど・・・・・・仕方ないですよね 」
ニコッと微笑みながら話す魔鈴だが、横島の目にはその笑顔が少し寂しく見えていた。




アパートに帰ってすぐ布団にもぐり込み何か考え始める横島
( 魔鈴さんには何かと世話になってるし、なんとかしてあげたいなぁ。去年と同じようにクリスマスパーティーを魔鈴さんの店でやるってのは・・・・・・ダメだな。ただ魔鈴さんの仕事を増やすだけになっちまう。
・・・・・そうだ!何かプレゼントをってそんな金があるならツケを払うのが先だよな。あ〜〜、何も思い浮かばん )
その夜からクリスマスまで色々と考えたのだが、結局いい案が思い浮かばずついにクリスマス当日を迎えた。


昼になり、家を出て何の当ても無く町中をさまよう横島
その時、横島の目の前にいきなり身なりがきっちりとした見るからに裕福そうな老紳士が助けを求めてきた。
「 た、助けてくれ!化け物が 」
慌てて老紳士が指差す方向を見てみると、身の丈2メートル位の悪霊が今にも老紳士に襲いかかろうとしていた。
”ギャギャギャギャギャ、この指輪は俺のもんなんだよ!貴様なんかにやるものかぁー!! ”
悪霊はそう言い放つと老紳士の首を掴み持ち上げた。
「 ぐっ、苦しい・・・・離・・せ 」
老紳士も必死に抵抗するものの全く歯が立たない。

”死ねぇ〜!! ”
ズバァッ!!
次の瞬間、老紳士の首を掴んでいた腕を横島の霊波刀が切り裂いた。
”ぐぎゃーーーー!!!な、何者だ貴様は ”
「 ふっ、この横島忠夫、悪霊に名乗る名など持ち合わせてないわぁ!! 」
ばっちりと決めポーズをしながら言い放つ横島

”・・・・・・・ ”
「 ・・・・・・・ 」
悪霊・老紳士ともに声を失う。

「 どうしたぁ!かかってこい 」
”・・・・・・ってる ”
「 なに! 」
”ギャギャギャギャギャ、名乗ってるじゃねーか!こいつバカだ!ギャギャギャギャギャ ”
派手に笑い飛ばす悪霊
少し笑いをこらえているような老紳士
決めポーズをしながら赤面する横島

「 くっ、人の失敗を笑うんじゃねぇ!! 」
カッ
”ギィァァァァァッ!? ”
バシュゥッ
『 滅 』の文珠によって悪霊を消滅させた横島

そこに襲われていた老紳士が近づいてきて横島の両手を握りお礼を言ってきた。
「 いやぁ、若いのにすごいのぉ。ありがとう 」
「 いいんすよ。それよりなんで悪霊に襲われてたんすか? 」
「 うむ、実はこの指輪を買ってからというもの我が家に不幸ごとばかり起こるのでな、心配になって知人の霊能者に見てもらった所、この指輪に悪霊が憑いていると言うんじゃ。しかし、その知人にはとても除霊できんと言われてな。それで紹介してもらった所に持って行こうとする途中にさっきの悪霊が出てきたというわけなんじゃ 」
「 な〜るほど 」
「 本当に助かったよ。これは少ないがほんのお礼だ 」
バサッ
「 へっ!? 」
横島の手には少しという言葉には程遠い三つの札束が置かれていた。そう、300万円である。
「 こ、こんなに!? 」
あまりの事に思わず言葉につまりながら話す横島
「 いやいやいや、命を救ってもらったんだ。当然だよ。それではわしはこの辺で 」
そう言って老紳士は去っていった。
横島は突然手にした大金に数分間ボーッとした後、我に還った。

「 ふむ、思わぬ大金が入ってしまった。・・・・・・さて、どうするか 」
手の中にある大金と向き合いじっと考える。

「 ・・・・・・・・飯でも食いに行くかな 」
横島はそう口にするや否や走りだし、どこかへ行ってしまった。



日も落ち始めた頃、魔鈴は急に入った用事を終えて店へと帰ってきたところだった。
「 ふー、少し遅くなっちゃったな。バイトの子たちで大丈夫だったかしら?あれ? 」
店のドアには何故かCLOSEの看板が立てかけてあったのだ。
これからお客も多くなる時間帯だというのに店を閉めてしまっているのを見て何かあったのかと思い急いで店へと入る。

店に入った魔鈴の目に映ったものは高く積み上げられた何十枚もの皿といそいそとその片づけをするバイトの子たちだった。
「 ど、どうしたの?いったい何があったの? 」
「 あっ、店長。実は店長が出て行った数分後くらいにお客様が店に来たんですが、そのお客様がいきなり300万円出して店にあるものを全部注文されまして・・ 」
「 全部!?それでそのお客様はどこにいるの?もう帰ったの? 」
「 そのお客様ならあちらに・・・ 」
バイトの店員が指差す先には見知った男が腹を抑えながら苦しんでいる姿があった。

「 よ、横島さん!? 」
慌てて横島の方へと駆け寄り、声をかける魔鈴
「 ・・ま、魔鈴さん 」
「 こんなになるまで食べて・・・・それにあの大金はどうしたんですか? 」
「 あのお金は除霊で貰ったお金です。そんな事より一緒にパーティーに行きましょう。もう料理の材料もなくなっちゃたからお店を閉めても大丈夫でしょ? 」
「 横島さん、そんな事のために・・・ 」
「 一緒にクリスマスを楽しみま・・・・・・しょう 」
バタッ
無理して体を起こそうとした次の瞬間、横島はその場に倒れてしまった。
「 横島さん!?横島さん!! 」



















ピトッ
( ん?なんか冷たくて気持ちいい。・・・・なんだろ? )
「 気がつきましたか? 」
「 えっ!?あっ!?魔鈴さん 」
横島が目を覚ますとそこには濡れたタオルを横島の額にかけている魔鈴の姿があった。

「 もう!心配したんですよ 」
「 すいませんでした。あの後どうなったんですか? 」
「 バイトの子たちに手伝ってもらってここまで運んだんです 」
「 そうだったんすか。悪いことしちゃいましたね 」
申し訳なさそうに話す横島
「 そうでもないですよ。バイトの子たちは喜んでましたよ。横島さんのおかげで早く帰れるって 」

「 そうですか・・・・あっ!それより魔鈴さん、早くクリスマスパーティーに行き「 ダメですよ!まだ安静にしてないと! 」
起き上がろうとする横島を再び寝かしつける魔鈴

「 そ、それじゃあ俺のことはいいですから一人でパーティーに行って来てください 」
「 何言ってるんですか!こんな状態の横島さんを残して行けるわけないじゃないですか 」
「 俺は大丈夫っすよ。たんなる食べすぎですから、大丈夫ですから 」

「 ・・・・・・ 」
何故か何も返事をしない魔鈴
「 あの、魔鈴さん? 」
不思議に思い声を掛ける横島に魔鈴がつぶやく。
「 ・・・・・・ですか? 」
「 えっ? 」
「 本当に・・・・・行ってもいいんですか? 」
「 ・・・・・・ 」
「 このままずっと私が横島さんの看病をしなくても・・・・・いいんですか? 」
真剣な表情で横島をじっと見つめて話す魔鈴


「 ・・・・・・ 」
「 ・・・・・・ 」
二人の間に無言の時が流れる。




「 やっぱり・・・・・・。やっぱりここに居てください 」
「 ・・・・・はい 」


二人の聖夜を彩るように外には雪がしんしんと降り出していた



       【 おしまい 】



   《 あとがき 》
どうも、殿下でございます。
自分としては初の横島×魔鈴の話でございます。老紳士とかかなり不自然&強引な点が多かったと思いますが、お許しを・・・。
本来ならラストに老紳士はサンタだったとかいう展開にしたかったんですが、上手く表現できる技量がなく断念してしまいました。

ではでは皆様よいクリスマスをお過ごし下さいませ♪

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