ザ・グレート・展開予測ショー

THE MOVIE「踊るゴーストスイーパー」(2)


投稿者名:3馬鹿鳥男
投稿日時:(00/ 5/14)

第2章 「ほたる」

4人はオードブルが出されたテーブルに着き、軽い雑談をしながら食事をしていた。
おキヌはどこかで見た感じのする美少女、
黒いストレートな髪が腰まであり、目元がはっきりしている、
服装は黒をベースにした、おキヌとは対象的なシックな感じのする
どこか寂しげな15歳の少女に尋ねた。
「先ほどの映画のヒロイン役の方ですよね?あの殺し屋術師の・・・」
ほたるは微笑んで、
「はい・・・映画の方はどうでしたか。私、初めて出演した映画なんですけど・・・」
「とても素敵で・・」
「すごく綺麗な身体でした。特にあの服が破けるシーン。えがったです!」
横島は席の取り合いで、ほたるの横の席に座れなかったのがくやしかったのか、
おキヌの前に身を乗り出して話し出した。
「僕としては、もっとあの素晴らしいスレンダーな身体を惜しみなく出した方が、ぐはっ!」
「落ち着いて食事をして下さい。」
おキヌは横島の頭にフォークを刺して、冷たい微笑を浮かべていた。
横島は頭から血を流しながら大人しくなった。
何事も無かったように、おキヌはウェイターにフォークを取り換えてもらい、
ほたると銀一に微笑んだ。
「これ美味しいですね。」
「そっ、そうだね。」
「えっ、ええ。」
2人は見てはいけない物を見てしまったような感じを受けながら、
おキヌの映画の感想を聞いていた。
白目を出している横島を見ないようにして・・・。

「横っち、大丈夫か?」
銀一が小声で話しかけた。
「ああ、何とか」
食事がデザートになったころ、横島が起き出し、ぶつぶつと呟いた。
「ほんとうに、美神さんと似てきたのじゃないかな。おキヌちゃん。」
「何か言いましたか?」
おキヌは微笑みながら、でも目が笑っていなかった。
「いえ、なにも・・・」
横島は目をそらして、冷や汗を浮かべて銀一の方を見た。
「そういえば、銀ちゃん。話って何? ほたるちゃんに関係があるのだよね。」
おキヌも怒るのをやめて、銀一とほたるの顔を交互に見た。
銀一とほたるは見詰め合って黙った。
ほたるがうなずくのを見て、銀一が決心してように話し出した。
「ほんまは、美神さんも居た方がいいのやけど・・・そういえば、美神さんは?」
「美神さんはICPOに・・・美神さんのお母様から呼び出しがあって・・・」
おキヌはちょっと考えて、確か美神隊長が極秘と言っていたので曖昧に答えた。
「おかん?そうか・・・。なら仕方ないはな。
実はもう1人来る筈やったんやけど、先に話すとするわ。
全部話すと長くなるのやけど・・・
簡潔に言うとほたるちゃんを護衛してほしいんや。」
「護衛?用心棒ってことか?」
「いや、護衛や。あと、彼女の素性も調べてほしいんや。」
「はあ?」
横島は間抜けな声を出してほたるを見た。
ほたるは真っ直ぐ横島を見ながら言った。
「その話は私の方からします。」
「そうやな、その方がええわ。」
銀一はそう言うと、愁いた表情でワイングラスでシャンパンを飲んだ。
おキヌは銀一を見てかっこいいとうっとりし、横島は「けっ」と鼻くそをほじった。
ほたるはそんな銀一、横島、おキヌを見てから話し出した。

「実は私、1年前くらいより以前の記憶がないんです・・・。」
「記憶が無い?全然?」
横島が驚いて尋ねた。
「いえ、全然無いわけではないのですが・・・、
ある人に拾われる前の記憶で、微かに覚えいるのが・・・
自分の名前「ほたる」と、東京タワーの夕日、そして・・・
ある男の人の笑顔だけ・・・。」
「男の人?どんな顔なんですか?」
おキヌは横島がいきなり真剣な顔付きになったのを気にしながら聞いた。
「はっきりとは覚えていないんです・・・。
ただ、思い出すと胸が締め付けられるように苦しくなるんです。
何故だか解りませんが。」
「そう」
おキヌは残念そうに呟いた。
「それでその人、私にとっては恩人にあたるのですが、
そこでしばらく養生をしていて、半年くらい経ったある日、
その人に映画の演出依頼がきたのです。
そのとき、この映画にスカウトされて・・・」
「それで、俺と共演したわけだ」
銀一が横から話しだした。
「ほたるちゃんが言っている恩人というのが、
代々魔族を従えることのできる一族、織田家というわけだ。」
「銀ちゃん、標準語になっているぞ。」
横島がちゃちゃをいれた。
「ええから、大人しく話を聞けや・・・。
えっと、どこまで話したっけ。
そうそう、演出依頼の内容が「魔族」を借りることやったんや。
でも織田家はもう跡取りが居なく、5年ほど前に弟子がおったらしいけど、
ゴーストスイーパーになるというんで、今はもう居なかった。
始めは織田家のばあさんにと思ったら・・・・」
そこで銀一はほたるを見て黙った。
「おばあちゃん・・・。私は織田家の当主をそう呼んでいるのですが
おばあちゃんには魔族をコントロールする魔力がもう無いのです。
織田家で支配していた魔族、全部で三体居たのですが
1年ほど前の魔族の反乱で、コントロールを外れたらしく襲ってきたらしいです。
なんでも、魔力の供給が無くなった上、強力な他の魔力を受けてた影響だといっていま
したが、おばあちゃんは、残った魔力で1体を滅ぼし、1体は封印し、
あと1体には逃げられた・・・
その際、おばあちゃんは魔力を使いはたした・・・。」
「一年前・・・・アシュタロスの件か・・・」
横島はみんなに聞こえない小さな声で呟いた。
そんな横島をおキヌは心配そうに見つめた。
銀一は2人を不思議そうに見て話を続けた。
「自分らは、映画の出演にその残った魔族を借りようとしたんやけど、
コントロールできんの一言で断られた。しかし・・・
映画のスタッフで雇った馬鹿なゴーストスイーパーがその封印を解いたんだ。」
「それで?」
横島はほたるを見た。
「だれもコントロールすることができない魔族は、殺戮をするのです。
一番先におばあちゃんが襲われました。私は夢中で・・・」
銀一は自分の手柄のように言った。
「ばあさんもびっくりしていたよな。いきなりほたるちゃんが魔族を支配できたんやから」
横島は目を見開いて、ほたるを見た。
「魔族を支配?一族でもないのに?」
「ええ。どうも強力な魔力があれば、あと一族の儀式を受ければ支配できるらしいです。」
「でも儀式はしていない・・・」
「はい。・・・どうも私は・・・」
そこで、ほたるは口を閉ざし下を向いてしまった。
横島はしばらくほたるが話すのを待ったが、続きを話すつもりはないように感じたので
「だいたいの背景は解った。それで、なんで護衛なんだ?
まあ素性はわかなくもないけど。」
と話を促した。
ほたるは顔を上げた。その顔は今でも泣き出しそうな顔だった。
「素性については今はどうでもいいです。いっしょにおばあちゃんを守って下さい。」
「守る?誰から?」
「逃げ出した魔族からです。」

「そう。それが今回の事件だったのね。」
いつ来ていたのか美神がそう言って横島たちのテーブルに着いた。
「えっ、美神さんいつのまに・・・それに」
「は〜い。銀一く〜ん。まったワケ?」
と、その人物は甘えた声でいきなり後ろから銀一に抱き着いた。
「うわっ、エミさん。止めて下さい」
銀一は赤くなってエミさんから離れようとした。だがエミは離れようとはしなかった。
「相変わらずガキが好きね。」
「美少年が好きと言ってほしいワケ。」
エミは美神の嫌味も今の状態、銀一に抱き着いているので負け惜しみにしか聞こえなかった。
美神はそんなエミをほっといて、ほたるの顔をまじまじと見た。
「そう彼女が「ほたる」なの・・・」
美神は意味有りげにそう呟いた。

第2章終わり。
第3章「魔族」に続く。

お言葉に甘えまして続きを書いてみました。
第1章は「銀一」です。

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