ザ・グレート・展開予測ショー

24-hour


投稿者名:MIZU
投稿日時:(04/12/22)


午前6時20分。

くっ、しまった。何故こんな簡単なことに気がつかなかったのだろうか。少し考えればこうなることぐらいは予想できてただろうに。

体中が痛みを訴えかけてくる。ズキズキとした裂傷、ジンジンとした打撲。それらすべてが自らが置かれた状況の悪さを自覚させる。

ツーっと頬を伝う赤い液体。今までにも幾度と無く流してきたであろうその液体だが今回は少しばかり勝手が違っていた。止まらないのだ。

彼の持つ超人的と言ってもいいほどの回復力を持ってしても未だその傷を塞ぐことは容易ではなかった。長時間休むまもなく傷つけられたせいだろうか。

やばい、だんだん体が寒くなってきた・・・・俺はこのまま死ぬのか?まだ彼女を転生させることすら出来ていないのに。

日の当たらない森の中、湿った土の上、流れ出る血液。それら全てが彼の生命活動を停止させようとしている。

先日の除霊のせいだろうか。激しかった戦いにより彼の霊力は殆どゼロに近かった。これでは治療も出来ない。

冷たくなっていく体は動かそうとしても動かせないようだ。前にも一度こんなことがあった気がする。ふっ、また神にでも祈るか?

そのとき、近くに何かの気配を感じた。神への祈りは届かなかったのであろうか?

どうしようもないな、と覚悟を決めていたがなにやら様子がおかしい。その気配の主は襲い掛かってくるわけでもなく、ゆっくりと彼に近づいてくる。

気配が遂にすぐ側まで来た。霞んでいた視界にぼんやりとした何かが入ってくる。痺れた脳で情報を解析していく。

手ぐしを通せばサラサラと言う擬音が奏でられるであろう長い髪、低めではあるが成長を期待させ得る身長。スレンダーで健康的なスタイル。

解析の結果それは街でアンケートでも取れば確実にトップレベルの類に入る美少女であろう事が分かった。

ならもう自分のやるべきことはきまっている。体中の筋肉に今一度指令を出してみる。動く。

彼の力の源、そしてそれの供給源であるモノが今目の前に在るのだ。彼女には不幸なことではあろうがこちらも生命がかかっている。しかたがないことだ。

動くことを確認した筋肉を総動員して爆発的な推進力を産み出す。超加速並みのスピードで向かった先は彼女の喉元。思わず生唾を飲んでしまう。

すべての条件は整った。彼女に襲い掛かれば霊力は回復する。ギュッと少女に抱きつき・・・・・叫ぶ!!!















「神様ありがとうッ!!どこのどなたか存じませんがその胸の中で死なせてくださいーーーーーーーーッ!!」ペロッ。

「ひゃんっ!?ちょっ・・・ちょっと・・・・・!?」


「せ・・・・先生!?こんなところで――――――拙者、心の準備はもう出来ているでござるが、流石にこんなとこでは・・・・・・・♪」

「シ・・・ シロ!?」


抱きついたのがシロであると認識するまではそれはもう煩悩はうなぎ上りであった。そのおかげで霊力は文殊1個分くらいまでに回復した。

文殊を使用し体を『癒』すと冷静になって今の状況を確認してみる。


午前5時。備考:横島の住むアパートにてドンドンと叩かれる扉。中には不機嫌ながらも眠りから覚める横島。外には元気良く尻尾を振るシロ。

「せんせぇーー!朝の散歩に誘いに来たでござるよ〜。」

「わかったわかった!だからその騒音を何とかしろ!!」


渋々起き上がって顔を洗い、昨日寝るときに着たままだったジージャンの臭いを嗅ぐ・・・・あと2,3日はいけるな。

体はベタつくがまぁ風呂は帰ってきてからでいいか等と考えながら扉を開く。


「せんせっ、今日は昨日見つけた山のほうに行きたいでござる。拙者の生まれ育った山と似てるんでござるよ。」


シロが尻尾を勢い良くバタつかせながら笑顔で出迎えてくれた。これが無ければ横島はシロとの散歩を日課とすることは無かっただろう。



「山ぁ〜??別にいいけど俺が止まれって行ったらちゃんと止まるんだぞ!それが出来なきゃしばらく散歩はお預けだからな。」

「もちろん、わかっているでござるよ。」



昨日の夜、横島が眠りについてから通り雨でも降ったのだろうか?わずかにアスファルトが黒くにじんでいる場所がいくつかある。

そのときは今日は冷えそうだな、と考えていただけであった。



「んーっと、よし。自転車のチェックOK。そっちはちゃんと結んだか??」

「OKでござるよ〜。それじゃあ早速出発でござるッ!!」



横島がサドルに、以前からの学習から座布団をまきつけた上にまたがった瞬間凄まじい勢いでシロが走り出す。

あたりの景色がにじんだ状態で素早く後ろに流れていく。俺は今間違いなく世界一早く引っ張られた自転車に乗っている。今度ギネスにでも申請しようか・・・


午前6時17分。備考:峠の道路を爆走中。横島忠夫、1コーナーごとに打撲、裂傷を負い続ける。


「シロッ、スピードを落とせ!!死ぬーー死んでしまうーーーーーッ!!」


おがーん と奇声をあげながら横島はシロに速度を落とすように命じた。


「えー、さっきスピードを落としたところでござるよ〜。ちょっと我慢してくだされ〜。」

「そのさっきからまたスピードが上がったから言ってるんだろうが!!」



横島がワライナキの状態で素早く突っ込む。別にシロはボケたわけでは無いのだがそういうさりげない会話にも突っ込みを欠かさないのは関西人の性か。


「そうでござるか?いやー、やはり山の霊気が人狼の里と似てるからでござるなー。はっはっは。」

「はっはっはじゃねぇ!!あぁ!空気抵抗が目にしみるーーー!!!」


今回の学習点はここか、今度サングラス買わねーとなぁ。などとこんな思いをしてるにもかかわらずちゃんと散歩に付き合うことを考えていたそのとき。

横島の視界が、今までも日常からすれば異常だったのだが更に異常なことになっている。何故俺は地面に寝そべっている?

何故自転車が倒れている?ん、あれは水溜りか。いや、氷じゃないか。って事は





そして時は動き出す・・・・・・


ガシャン!ガガッガガガガガ!!



凄まじい衝突音と共にシロと繋げたロープが千切れ、自転車が転がり続けガードレールに衝突する。

一方横島は一度地面にバウンドし、宙を舞い、ガードレールを飛び越し、崖に落ちる。


「ぷべらっ!!はべしっ!ひでぶっ・・・・・」


全身を強打しながら崖を転がり落ちる横島。自然と出る悲鳴はまるで某真拳を受けた雑魚キャラの様だ。


「先生ーーー!!」


ロープ伝いに後方に違和感を感じたシロが振り向くがそこには既に横島は居ない。

慌ててガードレールから身を乗り出すと相変わらず奇声を上げ続けながら落下していく横島が見えた。

「あわわわわ・・・・・やってしまったでござる。先生!今助けに行くでござるよーーー。」




午前6時20分。備考:横島、人生で2番目に大きな怪我。シロ、横島発見。恐る恐る近づく。


午前6時21分。備考:横島、シロに襲い掛かり首筋を舐め上げる。シロ、大人の階段に足をかける。


「く〜っ、だからスピードを落とせと言ったんだ!!もう明日から散歩は無しだからなっ!」

「そんな〜、殺生でござるよ〜。」

「俺は殺生どころか本気で死に掛けたわ!!!」


日の当たらない森の中。かすかな木漏れ日。湿った地面。幻想的な景色に不釣合いな叫びが響いていった。









※後書き※

MIZUでございます。
えー、とりあえず前編ということなんですけども、多分後半と一緒にしたほうがいいんだろうなぁ〜。
とか思いながらもとりあえず1日1作ということで書き上げた分で区切りのいいところまでを前編としました。
実は以前は違う名前だったんですがGTYの移転に伴い駄作を書き続けた自分を変えたいと思い、名前を変えました。
一応この作品は俺の中では1番まともなのですが、まだまだ至らないところがあると思います。
どうか見捨てずに、ここがあかんよ等と指摘していただければ幸いです。
もし良いと感じてくださる方がおられたなら賛成票を入れていただければもうテンションは青天井です。
それではまた。

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