ザ・グレート・展開予測ショー

年越し。


投稿者名:cymbal
投稿日時:(04/12/18)


「ふ、二人きりでって奴ですか!?そーだ!!そーに違いない!!」

時期は年末。東京都内のとある場所。美神除霊事務所と呼ばれるこの建物から、非常に大きな歓喜の声が辺り周辺に響き渡った。

「ちょっと・・・近所迷惑でしょーが!」
「ぐっ!!」

その除霊事務所のオーナーである美神令子が、大声を出した主、ここの仮社員でもある横島忠夫のみぞおちに肘打ちを入れる。実に手馴れた角度で。この二人のこのやりとりは、ここでは日常的な光景であった。ある意味お互いの事を理解し合っているとでもいうのかも知れない。

「ふふふ〜、も〜、令子ちゃん〜、あのね〜、あんまり暴力に訴えるのは良くないと思うの〜。」

二人の側にはもう一人の人物が、黒髪のおかっぱ頭、一見すると少女にも見える女性がソファに座っていた。彼女の名前は六道冥子。目の前で繰り広げられている光景をにんまりと笑いながら見ている。

「・・・冥子には一番言われたく無い言葉ね。」
「全く何を言ってるんすか・・・ちょっとはやられるこっちの身にもなって下さいよ!」
「あら、横島クンは丈夫なんだからこれぐらいでちょうど良いと思うんだけど。」
「・・・そ、それは俺の事を一番分かってくれているという事で・・・」

どすっ!・・・という衝撃と共に再び横島は床に崩れ落ちる。

「はいはい、都合の良い解釈は禁止ね。」

美神は寸分の狂いも無く、彼の顔面に一撃を加えた。そこで彼の意識は途絶える。





「まさか気絶しちゃうなんてねえ・・・。」
「だから言ったのに〜。」
「もうっ、こういうのは程々にして下さいね美神さん。」

美神は横で意識を失っている青年の顔を眺めている。その隣にはここの従業員の一人である氷室キヌが座っている。横島の額にはおキヌが持って来た濡れタオルがかかっていた。

「でも・・・本当に仕事の手伝いは横島クンでいいの冥子?こんなの連れてったら貞操の危機よ。」
「美神さん・・・だからあんまりそーいう言い方は。」

言いたい放題だが、普段の彼の行動が行動なだけに仕方無いことである。だが彼女の口の悪さも愛情の裏返しとも取れるかも知れない。事実、少しやり過ぎたかと心配そうに美神はタオルを何度もひっくり返したりしていた。

「え〜、でもね〜、前に一度手伝って貰った事もあるし〜、それにね〜、これは・・・っと、駄目駄目〜。」
「・・・?どうしたの冥子?」

何かを言いかけて冥子は自分で口を抑えた。隠し事が出来ないタチとでも言うのか、目に見えて何かを隠している節が分かる仕草である。

「・・・良く分からないけど、横島さんて意外と信頼されてるんですね。」

何気に少し失礼な言葉を口にするおキヌ。本人に悪気は無いのだろうが。

「何を隠してるのかしら冥子?」

美神は訝しげな表情をして冥子に問いかけた。

「え、ええ〜?別に〜、何も無いわよ〜。ほ、本当よ〜、私は〜、嘘つかないんだから〜。」

冥子の顔は笑っているが、顔には汗が浮かんでいた。美神はあからさまに怪しいとは感じていたが、ここで無理に問いただして、冥子に泣かれでもしたら厄介である。ゆえにこれ以上、何も口を出そうとはしなかった。

(・・・怪しい・・・けど。別に断る理由もそんなに無いなあ。六道家に恩を売っておいて損は無いし。)

「だ、駄目なの令子ちゃん〜?」
「そうね・・・・・・まあいいわ。貸したげる。その代わり報酬は折半よ。」
「・・・ありがと〜!!令子ちゃん〜!!だから好き〜!!」

まるで自分の所有物みたいな言い方をするが、いや事実それに近いのかも知れない。そしてそんな事とは全く関係は無く、冥子は美神に抱きついてすりすりと頬を寄せる。それを見て彼女はやれやれとため息を吐いた。

(まあ、そんなに深く考える事も無いか。どーせ大した仕事でも無いだろうしね。)





「じゃあ今日〜、夜の七時に〜、横島君に来るように言っておいてね〜、この紙に場所を書いといたから〜。」

そう言って冥子は鞄から紙を取り出して、机の上に置いた。美神はその紙を手に取って、さらっと目を通す。

「・・・・・・ねえ冥子。場所は書いてあるけど何をするのかが全く書いて無いじゃない。」
「えっ、い、いや〜ね〜令子ちゃん。大丈夫よ〜。ちゃんと〜、横島君には向こうで教えるから〜。」
「・・・・・・ふーん。向こう・・・でね。」

(・・・一体何を企んでるのかしら?バックに何かついてるみたいだし。それにこの筆跡・・・、冥子の文字じゃ無いわね。どっかで見た事ある気がするんだけど・・・。)

美神は腑に落ちないものを感じつつも、また口に出そうとはしなかった。代わりにカップを片付けにキッチンに行ったおキヌの方へと足を向ける。どうやら何か確認する事があるようだ。そしてそこに残された冥子は、気絶している横島に顔を近づけるとこう呟いた。

「今日は〜、色々あると思うけど〜、よろしくね〜、横島君〜。」
「・・・へ?」

冥子の言葉に反応するかのように、横島は意識を取り戻した。彼が左右に頭を振ると、濡れたタオルが床に落ちる。

「えっ?は、はあ?あいてて。」
「それじゃあね〜。」

何も理解していない横島は、冥子の言葉に素直に反応した。楽しそうに事務所を出て行く冥子。軽いステップで。ぞろぞろと式神達を引き連れて。





「・・・何か訳分からんな・・・ああ、アザになっとる。ちょっとはあの人も手加減してくれればいいのに。」

冥子が去った後、横島は自分の顔をガラスに写して確認していた。殴られた場所は軽く紫色になっている。そこへキッチンでの用事が済んだ美神が部屋へと戻って来た。

「あらっ、起きたのね横島クン。そういや冥子は・・・帰ったの?いつの間に?」
「は?えっ、ええ・・・そうみたいですね・・・いちち。」
「・・・ふーん、そっか。ああそういえば、悪かったわね横島クン。さすがにちょっとやり過ぎたわ。」

思いがけない美神の言葉に横島は目を丸くする。珍しい事もあるものだと。彼はまじまじと美神の顔を見た。それを受けて美神は照れたような仕草を見せる。

「な、何よ。人の顔をじろじろと。」
「えっ・・・いや・・・・・・何か変なもんでも食べました?」





どごおっ。





彼は再び気を失う事となった。

一方その頃、表に出た冥子はと言うと、事務所の近くに隠れていたある人影に近づいていく。そこで何やら会話が為されたようであった。怪しげな会話が。

そして空は暗くなっていき・・・。










夜七時半。東京都内某所の緑地公園。

「横島君〜、遅い〜。」

六道冥子は先程からずっと横島を探していた。予定の時間になっても彼が一向に現れないのだ。彼女の涙腺が少しづつ緩みつつあった。だがその時彼女の耳に、後方の茂みの中から待望の声が聞こえてきた。

「おおっ!そこだ!いけっ!」

横島の視線はある二人の男女に注がれている。それゆえに彼は時間を見る事を完全に忘れてしまっていた。実を言えば予定の時刻の三十分前にはもうここに居たのだが、時間潰しに・・・周りを散歩している内に監視活動に目的が変わってしまっていたのであった。これも若さゆえで?あるのかも知れない。

「あっ、横島くん〜?そこで何やってるの〜。」
「あ!あかんて!声出したら!ほら屈んで!!」
「えっ?きゃあ!!」

横島は後ろからかけられた声が冥子である事に全く気付いていなかった。そして彼女の身体を掴んで地面に引き倒す。冥子に抗う力がある筈も無く、彼女は横島の横に並んでうつ伏せになった。





「華子ちゃん・・・い、良いよね。俺、もう我慢出来ないから。」
「・・・先生。」

ごくり。と横島の唾を飲む音が響き渡る。横の冥子は訳が分からないといった面持ちでそれを見つめていた。

「先生・・・わたし、私。・・・ごめんなさい!こんなのはやっぱり嫌です!嫌なんです!!」
「あっ!華子ちゃん!ちょっと待って!!まだズボンを履いてない・・・!!」

だだだっ。





「・・・・・・おい。」
「あら〜。」

「姉ちゃんそこまで来てそれは無いだろーが!!観客を馬鹿にしてんのかー!!があぁ!!」

男の気持ちを代弁するかのように叫び狂う横島。その横でポカンとした顔で冥子が彼の顔を覗き込む。それを機に横島の視界に彼女の顔が納まった。彼の顔に冷や汗が浮かぶ。

「・・・・・・ど、どわっ!め、冥子ちゃん!?来てたの!?」
「・・・そ〜よ〜。横島君は何をしてるの〜?」

気付けば彼は冥子の身体に手を回していた。音を立てさせない為にと彼女の身体を押さえつけていたのだが、横島は慌てて手を離す。ところが冥子は別段嫌がっていた様子も無く、逆に名残惜しそうにも見えた。

「ご、ごめん!!ちょっと気付いて無かった!!・・・あ、もうこんな時間か!?」
「ねえ〜、何してたの〜?」

冥子はゆっくりと立ち上がり、服に付いた砂を払いながら横島に問いかけた。彼女の黒く大きな目が好奇心をあからさまに表している。物凄く純粋な光りを目に湛えて。

「いっ、いやっ・・・そんな目で見ないでーー!!!違うんだ!!これは社会勉強というか、最初はそんな気はこれっぽっちも無くて!!周りの人達を仕事の為に少し避難させようかなーとか思ったりなんかしたり・・・!!」
「えっ・・・偉いのね〜、横島君〜。私〜、そんな事〜、考えもしなかったわ〜。」

半分嘘で半分本当といった所だが、横島の言葉は彼女の心を少し刺激したようだった。彼の目には冥子は素直に、本当に感心しているように見えた。横島の胸に湧く少しの罪悪感。

「横島君て〜、意外と〜、色々と考えてるのね〜。」
「・・・・・・。」

彼女に特別な意識があるのかは知らないが、横島の顔をにっこりと笑いながら見つめている。その表情を見て、横島の中である意識がすこーし芽生えつつあった。彼の胸は大きく躍動する。





(・・・これはやばいかも知れない。だって・・・普通にカワイイし。あんまりまじまじと見た事無かったけど。)





冥子の黒い髪が闇に溶け込むように風に揺れる。彼女は乱れないように髪を耳の辺りで手で抑えていた。その仕草一つ一つが、今の横島には魅力的に見える。何か彼女が呟いたように聞こえたが、それは彼の耳には入らなかった。暗くて分かりにくいが彼の顔は真っ赤に染まっていた。

「ん〜?どうしたの〜横島君〜?私の顔になんか付いてる〜?」
「えっ!?い、いや、何でも無い・・・です。」

横島は明らかに動揺していた。何だ何だこの感じは。少しおかしいぞと。彼は平静を装う為に言葉を紡ぎ出そうと頭の中を急ピッチで回転させていた。

「・・・し、仕事の内容はどんなものなんだろーなーって。なんか紙に書いて無かったし。」
「えっ?し、仕事?え〜とね。その〜・・・。と、とりあえずベンチにでも座りましょう〜。」
「はっ?・・・はあ、そ、そうですね。それじゃあ。」

横島が出した「仕事」という単語に、今度は冥子の方が動揺をしているように見えた。必死に何かを誤魔化そうとしている空気であった。横島は冥子に連れられ、彼女の指差す先にあるベンチに並んで腰を降ろす。妙に新しいベンチであった。まるで新品のような・・・。

ここで横島は先程のドキドキとは別の感じを受けていた。この違和感は何だろうと。この空気は何だろうと。

「・・・え、えーと、それでどんな内容なんですか。」
「な・・・・・・何か寒いね〜横島君〜。」
「・・・そ、そう?そんなに寒い・・・かな。いや寒いか。」

確かに年末だけあって、東京といえどかなり気温は冷え込んで来ていた。冥子は指先にはーっと息をかけながら手の平を擦り合わせている。表情は少し固く、何かを考え込んでいるように見える。

「・・・どうかした冥子ちゃん?何かさっきから変なんだけど。」
「・・・うー、あ、あのね〜・・・も、もうちょっと〜・・・側に・・・寄っていい〜?」
「・・・はっ・・・・・・っ!?」

横島の意識は完全にパニックを起こしていた。まさか彼女の方からこんな事を言って来るとは露ほども思っていなかったのだ。それに彼はこういう経験が不足しまくっていた。冗談でなら手を出せるが、本気ではどうしても手が出ない。

(・・・これは夢じゃなかろうか。)

頬をつねりながら彼はそんな事を考える。そうこうしている間に彼の腕には冥子の身体がおずおずと寄りかかって来ていた。その刹那、後ろの茂みが大きく揺れたが緊張している横島にそれを気付く余裕は無かった。

(何してんのよ一体!)
(横島さん・・・。)





「あのね〜横島君〜。今日が仕事ってのは〜嘘なの〜。」
「えっ?」

辺りはシーンとしていた。奇妙な程静かに。まるでこの空間の時間が止まっているみたいだった。二人が寄り添い合って、どのくらいの時間が経ったのかは分からなかったが、ふいに冥子の口からそんな言葉が飛び出した。ぼーっと、何も考えられず空を見上げていた横島は驚きの声を上げる。

「仕事が嘘って・・・、じゃあ今日は何しにここに来たんでしょう?」

当然の質問を横島は投げ返した。訳が分からないといった感じで、自分にもたれかかっている冥子の温もりが急に少し冷えたような気がしていた。





「えーとね・・・、その〜・・・言いにくいんだけど〜、これはね〜・・・・・・・「お見合い」なの〜。」





ぴしっと。空間に亀裂が入る音がした。二人の周りと、後ろの茂みの中も。

「おっ、おっ、おっ・・・お見合い!?」
「そうなの〜。お見合いなの〜。」

横島はずるっとベンチから滑り落ちそうになったが冥子の腕がそれを引き止める。だが彼の表情には焦りの色が浮かんでいた。頭の中はフル回転でその言葉の意味を検索している。

「そ、そ、それは・・・あの男女とその家族が会って、結婚のきっかけを作ったりするアレでしょうか。」
「それ以外に何があるの〜?」
「で、で、でも家族とかも来てないし、それにはちょいとばかり無理があるかと・・・!!」
「横島君の家族なら〜、今〜、家に来てるわよ〜。」
「な、何ぃーーー!!!全然聞いてねえ!!あの馬鹿夫婦何をしとるんじゃー!」

(何その話!?いくら何でも突然過ぎるんじゃない!!!)
(・・・横島さんが結婚、横島さんが結婚、横島さんが結婚、横島さんが結婚・・・。)
(ああっ!?おキヌちゃんが逝っちゃってる!!)





何とか現状を理解しようと悪戦苦闘する横島。しかしいくら考えても、いきなり突きつけられたお見合いという事態を、たった二十年程しか生きていない青年にすぐ理解しろという方が無理であろう。

「そ、そ、それに・・・別に付き合ってもいない訳だし・・・。」
「・・・横島君は私の事・・・嫌い?」
「なっ、何で普通の喋り方に・・・!!そいつあ卑怯だよ!」

横島の腕に押し付けられた冥子の感触が彼の正常な思考をどんどん奪い去って行く。上目遣いに彼の顔を覗く冥子の視線はまるで小悪魔のように可愛らしく微笑みかけている。

(いかーーーん!!!!!一時の感情に流されるなんて!!!しかしこれは・・・!!!)

「私はね・・・嫌じゃないの。横島君さえ、良ければ〜・・・。」





横島の心の戦場にて。

「駄目です!!これ以上!これ以上この攻撃には耐え切れません!!」
「そんな情けない顔をするな貴様!!男にはなあ!!やらなければならない時ってのがあるんだよ!!」
「そんな事を言ったって・・・この感触が、この言葉が・・・自分にはもう無理です!!すいません!!」
「やめろー!!!早まるな!!一時の感情に・・・」





「・・・こ、今夜は〜、帰らなくても良いの〜。」





「・・・!」

・・・あっさりと陥落。





「お、俺も・・・」
「ちょっと待ちなさいあんたら!!!」





今まさに二人の心が一つになろうとした瞬間。後ろからの聞き覚えのある声がそれを引き離した。

「令子ちゃん〜!!やっと来たのね〜!!」
「み、美神さん・・・!!・・・とおキヌちゃん?」

勢い良く飛び出して来たのは当然、美神令子であった。背中にはちょっと目が虚ろなおキヌちゃんが背負われている。意識がどこかに飛んでいるようだ。冥子が今不思議な事を言ったようだが、そんな事を考える暇も無く、令子は言葉をまくし立てる。

「ちょっと、黙って聞いてりゃ「お見合い」ってどーゆう事なのよ冥子!!」
「・・・あら〜?別に横島君と私が〜、何をしようと〜、令子ちゃんには関係無いと思うの〜。」
「そ、そりゃあそうだけど・・・い、いや仕事だって言ってたじゃない!嘘ついたのね!?」
「酷いわ〜、令子ちゃん〜、嘘じゃないもの〜。これだって〜、大事な人生のお仕事よ〜。」
「なっ!」

予想外に冥子に会話で押されてしまっている美神。確かに彼女に関係無いといえば関係は無いのだが・・・。どこかで彼女はここで引き下がってはいけないと感じていた。そう、彼女のプライドがそうさせるのかも知れない。

「あのー、俺の意見は・・・」
「あんたはちょっと黙ってなさい!!」
「横島君に〜、そんな威圧的にならないで〜、令子ちゃん〜。」

どこか彼女気取りの冥子。そのもの言いにますます我慢が出来なくなる令子。何かが彼女の中で切れた音がした。ぷちんと、音を立てて。

「・・・ちょっとごめん横島クン。」
「はっ?」

ごすっ。

令子が思いきり拳を振り下ろすと、横島は音を立てて地面に崩れ落ちた。そして一息、大きく息を吸いこむと大声を張り上げて思いっきり爆弾発言をする。





「横島クンはね!「私の大事な」社員なのよ!!そうそう簡単に持ってかれてたまるもんですか!!」





令子の顔はかあっと真っ赤に染まった。今まで溜めていたものを吐き出したせいかも知れない。少しだけ素直な気持ちを表に出したのだ。彼が聞いていたらどんなにか喜びそうな言葉であるが、残念ながらたった今、気を失ったところであった。残念。ところがそこで美神を待っていたのは全く別の状況だった。

「言ったわね令子!!とうとう素直になったわ!!」
「へっ・・・まままままままままままま・・・・・・・・・ママ!!??何でこんな所にいるの!?」

この緊迫とした空間を切り裂くように現れたのは美神令子の母親である美神美智恵。その人であった。その後もぞろぞろと人が後ろから出てくる。ぞろぞろぞろぞろぞろ。

「悪かったわね、冥子さん。あそこまでさせちゃって。」
「いえ〜、私も楽しかったから〜。」
「横島君!!私は許さんぞ!!令子ちゃん早まるな!!」
「うぷぷぷぷぷ、令子。すんごい楽しませて貰ったワケ!!あはははははははは!!」
「・・・・・・もおっ、すっごい青春真っ盛りって感じだったわ!!」
「むう、若いっていいのマリア。」
「イエス・ドクター・カオス。」
「横島さん・・・でも私はまだ負けないわ!!ひまわりさんはもう咲いていないけれど!!」
「兄ちゃん、幸せものやなー!いやある意味不幸かもしれんが!」
「横島さん、大丈夫かなー。」
「大丈夫だろ。あいつは不死身だしな。しかし美神の旦那もあんな事を言うとは・・・。」
「うおーっ!!羨まし過ぎるですじゃー!!うおーん!!」
「忠夫・・・ふっ、羨ましいぞ。しかし、父さんもまだ負けた訳では・・・」
「何か言ったかしらあなた?」
「娘も〜、少しは大人になったのかしら〜?」
「・・・横島さんが結婚、横島さんが結婚、横島さんが結婚、横島さんが結婚・・・。」
「こんだけGSが集まってる今こそ商売のチャンスアルよ!!」
「言うには言ったけど美神さんも本当に素直じゃ無いですねー。もう一度修行し直します?」
「最初から結果は全て見えてたのね。・・・いや嘘じゃないのよ!?ほんとに見えてたんだってば!!」
「おお、神よ・・・。この奇跡に感謝します。」
「やれやれ、馬鹿らしいね。人間ってのは。」
「全くだ。こういう感情は理解できん・・・が、悪くは無いな。」
「ヨコチマー!!」
「わしらも忘れてもらっては・・・ああ、いかんもう時間が無い!!」
「ふふふ、全く素直じゃ無いですねあの人は。魔法の力を少しだけお貸ししましょうか?」
「だうー。」

人の波は止まらない・・・。どこからこんなに出てきたのやら。まだまだまだまだ関係者?らしき人は後ろから次々と出て来ているようであった。

「まあ・・・令子、もうすぐ今年も終りだしね?こういうイベントも悪くないわねーって、ふふふ。」

全ては美智恵の策略であった。しかし、美神がそれに気付いた時には既にもう遅かったのだ。令子の意識は空に飛んだ。彼女はどこか遠くの方へ飛び去ってしまいたかった。しかし、それは叶わない。ベンチに腰を降ろすと空を眺めて放心状態に陥った。横には気絶している横島を携えて。

「るーるーるるるー。」

「うーん・・・ちょっとやり過ぎたかしら?」

そんな彼等の忘年会。酒の肴は出来た。年越しまで続くのかも知れない。人の波はどこまでもどこまでも続く。

「でも〜、私もちょっと悔しいの〜。別に嫌じゃ無かったから。」
「冥子さん!?それは・・・!!」

まだまだ騒ぎは終らないようです。

おしまい。

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