ザ・グレート・展開予測ショー

迷子の横島。その先は・・・


投稿者名:蒼空
投稿日時:(04/12/16)

後悔先に立たずと言うように、後悔とは、後に悔やむ事。
時間があり、考え事をする余裕があるほど悩み、苦しむ。


「さぁ〜て、久しぶりの大きな仕事よ!みんな、気合入れていくわよ!」
「「「「おぉ〜!!」」」」

美神の掛け声に皆、気合を入れて答える。




「そんじゃ〜お疲れ様〜っす」
「お疲れ。明日も遅れないようにね」
「お疲れ様です」
「お疲れ様でござる、先生」
「・・・お疲れ」

上から美神、おキヌ、シロ、タマモ。
今日の除霊も終わり、横島は帰路につく。

「私、もう寝るわね」
「拙者も寝るでござる」

シロとタマモも屋根裏部屋に引き上げる。

「おやすみなさい。シロちゃん、タマモちゃん」
「明日は昼からだからゆっくり休みなしよ」

横島は帰り、シロとタマモは部屋に。
美神とおキヌは二人でお茶を飲んでいる。

「やっと前の生活に戻れたって感じね?」
「そうですね。シロちゃんとタマモちゃんも事務所に慣れてくれた感じですし」

しばらくし、美神はおキヌに話し掛ける。
おキヌも美神に微笑みながら答える。

「でも・・・横島くんは・・・」

しばらくの沈黙後、美神は唐突にそう切り出す。
「・・・そうですね」

美神の脈絡のない話にも、付き合いの長いおキヌは美神が何のことを言っているのか理解し答える。
「ルシオラを失って間もない頃の横島君・・・見ていられなかったわ。
表面上、今まで道理だったけど無理してるのが分かって、見ていて痛々しかった」

「そうですね。横島さん優しいから。私達の前では元気に振舞ってました。ほんと、今まで道理に」

そこまでオキヌが言い、また沈黙。
そして、今度沈黙を破ったのは、おキヌ。
「でも・・・でも!?私、見ちゃったんです。夕日を見つめる横島さんを。」
「・・・私も見たわ。正直・・・ぞっとしたわ」



夕日。横島にとってそれは、ルシオラとの絆であり、約束。
美神がそれを見たのは少し前。
まだあの戦いの余波で大口の仕事もなく、ひまを持て余しているとき。
その日は除霊の仕事がなく書類仕事をしていた時。
ちょっと休憩し様と顔を上げると窓からの夕日で部屋が真っ赤だった。
なんとなく夕日をもっと見ようと思い屋上に行くと、横島がいた。
その時の横島を一言で表すのなら、“儚げ”。
美神がそう思うほどに横島は今にも消えそうなほど、儚げだった。
絶望、悲しみ、怒り、そして僅かな希望が交じり合ったような感じだった。
現実に絶望し、ルシオラを失った事を悲しみ、救えなかった自分に対しての怒り。
そして、自分の子供の転生体として再び会えるという僅かな希望。
それを見て、美神はぞっとした。
理由はわからない。が、確かに美神はそう感じた。


「その時は、なぜそう感じたのかわからなかった。
でも、今なら少しは分かるわ。
あの時の・・・いいえ、今でも思う。横島君は、迷子の子供なのよ。
親とはぐれて、泣きたいけど泣けない。前に進みたいけど、どう進んでいいのか分からない。
そんな、迷子の子供なのよ」

美神の話を聞き、おキヌもそうかもしれないと思う。
どうすればいいか分からない。
迷子の子供。
今の横島を表す言葉。
「私達は、何も、できないんで、しょうか?」

おキヌは何かに耐えるように、俯き、震える声で美神に尋ねる。
「・・・分からないわ。これは横島君の心の問題。
私達はただ、少しでも彼を支えてあげるだけ。
横島君自身が答えを見つけ、前に進むその時まで」

美神はそう言い、深く、ため息を吐く。
「なんだか、そんなに想われているルシオラさんに、嫉妬しちゃいます。
・・・私って、いやな女ですね」

そんなおキヌの言葉に美神は答えず、窓から見える月をじっと、見つめる。



『それを渡せば、お前達を新世界のアダムとイヴにしてやろう』

魔神の甘い誘惑。
『後悔するのは・・・お前を倒してからだ!アシュタロス!?』

砕け散る、魂の結晶。

ガバッ!?

「!!はぁはぁはぁ・・・クソ!?またあん時の夢か」

横島は毎晩夢を見る。
魂の結晶を破壊し、ルシオラ復活の最後の手段を自らの手で潰したあの時の事を。
「うっう、うぅ、っう・・・ルシオラ。うっう、会いたい。会いたいよ・・・ルシオラ」

この日も、横島は泣き、ルシオラを想い、眠れない。


ー数日後。東京タワーー

横島はいつものように夕日を眺めていた。
だが、そんな横島を見つめる人物がいた。
見た目中学生。特徴的なナインテール。
タマモだ。
(なに?誰?あれは?あんな横島・・・知らない)

なぜタマモがここにいるかというと後をつけてきたのだ。
なんとなく街をブラブラしているとたまたま横島を見つけたのだ。
狐うどんでもたかろうと近づいていくと横島が文殊で東京タワーに忍んで上っていく。
興味が湧いたタマモは変化し後をつけ、ある程度離れた鉄塔の影から覗いているというわけである。
夕日を見つめる横島の雰囲気に声を掛けそびれ今に至る。
そして、しばらくたち夕日が地平線に沈みかけた時、意を決して話し掛ける。
「・・・横島」
「んっ。タマモか?」

タマモが話し掛けたことによって、横島の雰囲気がいつものそれに戻る。
「なにしてるの?こんなところで?」
「・・・たいしたことじゃないさ。夕日を見てたんだ」
「夕日を?うわぁ〜、きれいな夕日」
「だろ?・・・昼と夜の一瞬の隙間、短い間しか見れないから美しいんだ」
「なに?あんたにしては詩人的なこと言うじゃない」
「昔な。ある女が言った言葉だ」

そう言った横島はまた静かに夕日を見つめる。
横島が黙ったことによって自然にタマモも夕日を見つめる。
夕日が半ばまで沈んだ頃タマモが横島に話し掛ける。
「ねぇ、さっき言ったある女って誰なの?恋人?」

そうタマモが言うと、横島の雰囲気がまた変わる。
いままでのどこか優しい雰囲気から、悲しみを含んだなんともいいがたい複雑な雰囲気に。

!ゾクッ!?

(!何!?)

タマモに訳も分からず悪寒が走る。
「そうだな〜・・・おまえ、魔神大戦って知ってるか?」
「うん。私が復活する前に魔神が起こした戦いのことでしょ?」

タマモは魔神大戦について美神やおキヌからあるていど聞いていた。
だが、その話の中で横島と夕日が繋がるような話はなかったはずだ。
タマモはそう思い不思議そうな顔をする。
「そっか。ルシオラ、あぁこれは女の名前な。
ルシオラのことを話すには初めから話さなくちゃいけないな」

そして横島は語る。
自分が敵側に初めはペットとして連れて行かれたこと。
そこで同じくペットとして連れてこられたヒャクメと再会し
ヒャクメを逃がした後、殺されないように媚びを売りまくったこと。
そんな中、三姉妹の寿命が一年しかないことを知ったこと。
それを隊長(美知恵)に報告し、敵兵鬼ごと殺されかけたこと。
なんとか逃げ延びるシオラと恋仲になったこと。
ルシオラにアシュタロスを倒すと誓ったこと。
南極での戦い。
短い期間だったけどルシオラとの幸せな日常。
美神が魂の結晶を奪われ、コスモ・プロセッサの起動。
ルシオラとべスパの戦い。
自分がルシオラを庇い、死にかけた自分をルシオラが文字道理命を掛けて助けてもらったこと。
そして・・・自分でルシオラ復活の最後の手段を潰したこと。
自分の子供の転生体として生まれてくる可能性。
横島は淡々と話す。だが、タマモには横島が涙を流さず泣いているようにしか見えなかった。
「・・・」
「・・・」

横島が話しおわり、辺りを沈黙が支配する。
タマモは横島の話を聞き終わりその時の横島の境遇を思う。
味方のはずの人類に裏切り者に仕立て上げられ、敵ごと殺されかける。
どんなに悲しかっただろう。どんなに苦しかったろう。
だが、横島は世界の為に戦った。
恋人を犠牲にして。
「・・・そう」

タマモはそれだけ言うのがやっとだっと。
「情けないやつだよ、俺は。
ルシオラの命で助けられたのに・・・見殺しにしたんだ」

そう言い、横島は自嘲する。
タマモには横島に掛ける言葉が分からなかった。
当事者でもなく、戦いにも参加していなかった自分。
何を言っていいのか分からない。
「百回でも二百回でも一緒に夕日を見ようって約束したのに」

更に横島は言葉を、自らの想いを吐く。
タマモは何も言えない。自分は何もできないと思う。
だが、大戦以降皆横島の前ではあの戦いの話をしない。
横島をこれ以上傷つけない為の、暗黙の了解。
それが、横島を傷つけたか分からない。
ルシオラが、まるで最初からいなかったように振舞われることが、どんなに傷つくか。
偶然でも、タマモは横島にルシオラのことを尋ねた。
そのことがどれだけ横島の心を救ったか。
タマモに知る由もない。
正直、タマモは横島の事があまり好きではなかった。
いつもバカみたいに笑い、幸せいっぱいという感じの横島が。
だが、横島の話を聞き、そのいつもの態度が皆に心配掛けないように
心の傷を隠す為の偽りの仮面だったと知り、自己嫌悪する。
自分は横島の表面しか見ず、勝手にそう思っていた自分が。
「正直、おれはどうすればいいかわからないんだ。
ルシオラを忘れない為にいつもの様にバカやってるけど
・・・毎晩夢を見るんだ。あの時の、ルシオラを見殺した時の事を」

「そんなことないよ!横島は見殺しになんかしてない。
横島がルシオラを今でもどんなに愛してるかわかるもん!?」

「・・・同情ならやめてくれ」

「同情なんかじゃないよ!?」

タマモは横島の言葉に無意識にそう叫ぶ。必死に。
タマモ自身、どうしてこんなに必死なのか分からなかった。
でも、これは自分の本当の気持ちで同情心なんかじゃないとだけ理解していた。
同情しているということはある意味、相手を見下していること。
それを本能的に理解しているから。
「・・・横島。横島は、ルシオラの事、今でも本当に愛してるんでしょ?」

タマモは、横島に静かに語りかける。
「・・・ああ」

「でしょ?でもね?愛しているからこそ、後悔して立ち止まらず、前に進むべきじゃないの?」

「わかってる。わかってるんだ!!」

そこまで言って、横島が叫ぶ。
「ルシオラの転生の可能性もある!?
だが、それは俺の子供としてだ!でも・・・俺に誰かを好きになる資格なんてないんだ!?」

今まで溜まりに溜まった想いを吐き出すように。
「好きになる資格ってなに?愛する事に資格がいるの?」

「そ、それは・・・」

「ほんとは横島もわかってるんでしょ?
でも、気持ちはそう簡単に分かりきれない。
だから、前に進んで、また本当に誰かを愛することができた時
答えは見つかるんじゃない?」

だが、タマモはあくまで静かに、優しく語りかける。
「・・・そうかもな。まだ答えなんか分からない。
でも、後悔し立ち止まるんじゃなくて、前に進むべきなんだってことわかったよ」

しばらく考え込んでいた横島が顔を上げ言う。
今まで横島を包み込んでいた雰囲気は消え、
優しい、とても優しい横島本来の雰囲気に戻る。
何かを吹っ切った笑顔と共に。
それを見たタマモも、優しい笑顔を浮かべる。
夕日はいつのまにか沈んでいた。
昼と夜の一瞬の隙間が終わる。
そして、また未来を照らす太陽が昇る。


ー翌日。美神除霊事務所ー
「おっはようございま〜す」
「あ、おはよう(あら?)」
「おはようございます(あれ?)」
「おはようでござる!」
「・・・おはよう」

美神とおキヌは昨日までの無理に明るく振舞う横島ではなく
自然体の横島に気づく。
「?どうしました?美神さん、おキヌちゃん」

「え!?いや、あの、その・・・」

おキヌは横島に不思議そうに尋ねられちょっとパ二くる。
「いや、な、なんか、いい顔になったわね」

美神はどもりながらも答える。
「え!?美神さんがそんな!?これはもう愛の告白と受け取っ!?ボグッ!?っで」

「なんでそうなるのよ!?」

美神は顔を真っ赤にしながら横島をシバキ倒す。
おキヌはその光景を微笑ましく見る。
シロは血まみれの横島を散歩(と言う名のフルマラソン)に誘う。
タマモはそんな横島を見つめ、目が合い微笑む。
横島もタマモに微笑み返す。感謝を込めて。

また、いつもの日常が回りだす。
それでもしっかりと、前に進みながら。



ー後書きー
前の作品は大失敗してしまったので
今回は後悔しながらも前に進む横島君です。
迷子の横島でタマモが店員って感じですかね。
手を差し伸べながらも道を示す。
知らないからこそ分かるってこともあるってことで。

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