ザ・グレート・展開予測ショー

GS美神 EP2 エピローグ


投稿者名:純米酒
投稿日時:(04/12/15)

電波塔の展望台のさらに上――― 
一般人にはどうやっても立ち入る事の出来ない場所で、沈み逝く太陽を眺める男がポツリと呟いた。

「やっと約束がはたせるのかな?」

「・・・?どういうことなの、ヨコシマ?」

「ん?『夕焼けの百回や二百回俺が見せてやる!』って約束しただろ?でも一緒に夕焼け見れたのは一回だけだったしな・・・」

男の呟きに応えたのは、少女が遊びに使う人形のように見えた。
普通、いい年の男がそんな物を所持することは恥かしさを伴う物だ。更にソレに話し掛けようものならおおいに怪しまれることになる。

だからこそ、彼はそんなことを気にする必要の無い場所に来たのだろうか?


それは違う。ここは二人にとって、初めてデートした所で、辛い別れともなった思い出の場所だからだ・・・



沈みゆく夕日を眺めながら思いを馳せる。その横顔は優しさと力強さに満ちていた。
男のそんな顔を見るのは始めてではない。ルシオラは、なぜだか安心でき、酷く心が高ぶるその表情が大好きだった。

(そういえば、事務所に戻った時もそんな顔を見せてくれたわね)






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「無言で居なくなるんじゃないわよ!しんぱ・・・じゃなくって!!アンタが逃げたと思われたらウチの評判に関わるのよ!!」

「まぁまぁ・・・」

事務所に怒号が響き渡る。
そして、なんとか宥めようとする声があがる。

雑誌の向こうから、そんなやり取りを盗み見るように観察していたタマモは心の中で思う。
横島が人口幽霊一号に伝言を残して姿を消した事によって、久しく味わえなかった雰囲気の訪れに自然と笑みがこぼれた。

(やっぱりこうでなくちゃね)

言い掛かりにも似た・・・偶に言い掛かりそのものも有るが、怒鳴り声が響き、間髪入れずに宥めるような声と庇う様な言葉が出てきて
情けない謝罪の言葉で締められる・・・

美神除霊事務所の『何時もの光景』が繰り広げられようとしている事にタマモは安堵していた。

だが今日は、情けない声の代わりにはっきりと意思の感じられる言葉が返ってきたのだ。

「その事については謝ります。すいませんでした。で・・・居なくなった理由なんですけど・・・」

素直に、そして真面目な態度で頭を下げる横島に令子とおキヌが凍りつく。

「アンタだれ!?横島クンはこんなにマジメじゃないわ!正体をあらわしなさい!!」
「よ、横島さん・・・何かヘンな物食べたんじゃぁ?」

二人が取り乱すのも仕方の無い事だろう。
タマモは完全に雑誌から目を離して、横島のことをまじまじと見つめてしまっていた。

「美神さん、その・・・今からいきなり居なくなった事について話しますから、そう興奮しないでくれるとありがたいんですが」

「私からも説明するわよ、ヨコシマ」

怒る美神を宥めてるいると、横島のジージャンの胸ポケットから、声がした。
その声は令子とおキヌを驚愕させるのには十分すぎた。

一人事情を知らないタマモは可愛らしく首をかしげるのみだ。

「あっ、ルシオラ殿」

横島の胸ポケットから、触覚のついたおかっぱ頭をのぞかせるルシオラに親しげに話しかけるシロを見て令子とおキヌは考える。

((シロはルシオラの事を知っているらしい。
   ↓
  ルシオラは横島の子供としてしか転生できないハズ。
   ↓
  シロとルシオラの仲が良い・・・つまり、このルシオラはシロと横島とのあいだで間違いのあった結果!?))

令子本人は認めないだろうが、女の嫉妬というものは恐ろしい物で、自分達の得た結論に大きな矛盾がある事に気がつかない。

「あんたついに・・・・・・人狼とはいえ犯罪よ!
 ウチの事務所から逮捕者出すわけにはいかないから、私がキチンと殺してあげる・・・
 大丈夫、除霊中の事故だといえばどうにでもなるわ!!」

「よ、横島さん・・・不潔ですーーー!!」

いつの間にか手にしていた拳銃の安全装置を外して弾丸を装填したいたり、両目に浮かんだ涙をこぼれないように必至になっていたりする。

「ちょっと二人ともなにか勘違いしてませんかっ!?つーか絶対勘違いしてるっ!!」

銃弾を器用によける横島と、息つく暇もなく銃を乱射する令子。そして二人の間でヨヨヨと泣き崩れるおキヌ。
   

「で・・・あなたはだれ?」

「あ、はじめまして、私ルシオラっていいます」

「タマモ!相手に名前を尋ねるときは、まず自分から名乗るのが礼儀でござろう!」

騒ぐ三人とは別に、比較的静かに自己紹介を済ませる三人だった。


弾丸が尽き、令子が神通棍を振り回すようになる頃には、タマモはルシオラ復活について、おおよそ全てを把握していた。
語り手がシロだった為、横島の活躍が若干増えたりもしたが。

「なるほど・・・じゃぁ私たちの先輩になるのかしら?」

「そうなるのかしら?これからも宜しくねタマモちゃん」

「タマモでいいわよ。それよりもあっちはあのままで良いの?下手すると横島死んじゃうかもしれないわよ?」

視線の先には、鞭となった神通棍を振り回す美神から必死で身を守る横島の姿がある。


「銃なら楽に死ねたかも知れないのに!往生際が悪いわね!」

「俺はまだ死ぬつもりは無いです!とにかく落ち着いてくださいっ!」


そんなやり取りを目にしてもルシオラは微笑みを浮かべて「大丈夫よ、ヨコシマですもの」と言うだけだ。
ルシオラは心の底から安心していた。あの顔をした横島が、なんだってやってのけてしまう事を知っているから。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

引き締まった横顔の唇が不意に動く。もうすぐ陽も落ちきる。


「なぁ、ルシオラ――――――







 キスしたいけど出来ないって辛いなぁ」

「いきなり何を言うのよ!!流れってもんがあるじゃない!!あの頃から変わってないの?」

「そ、そんな事言ったって、やっとの思いで復活させたのに手のひらサイズだなんて詐欺やないかいっ!
 ようやくおあずけ状態たから解放されると思ったのにーーー!ちくしょーーー!!」

マジメだった顔がだらしなく崩れるのをみて、ルシオラは心の中でため息をついたが、キスが出来なくて辛いのは自分もそうだ。

これも私に気の使ってくれてるのかしら?それとも私に甘えたいの?

顔が赤くなるのが自分でも解る。

「も〜〜〜〜、ワガママ言わないでよ」

ことさらおおきくため息をついてみせる。彼に触れていると自分の中の女がうずく。

「今はこれで我慢してね♪」

彼への言葉なのか、それとも自分への言葉なのか。

いまはただ、唇に感じる彼の暖かさに酔いしれたい。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa