百貨店パーティー☆11F
投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(04/12/15)
―――地下下水道―――
《 はあっ はあっ はあっ はあっ‥‥ 》
ムラマサはゼロの追撃を避けるため、広く、迷宮のように張り巡らされた下水道の中を駆け回っていた。
《 なんでゼロがヨシカネとつるんでやがんだ!?
‥‥とりあえず、あゆみを巻きこまずに済んだのは良しとしておくとして、
俺の探査機能とかあったんじゃあ、長く隠れていられそうにねえしな‥‥ 》
もとより、犬とネズミでは圧倒的な体力差がある上、相手は武器を内蔵した本格的な生物兵器。
まともに戦って勝つ見込みはない。
ムラマサは唯一の武器である、知識のみを駆使し、この危機を乗りこえる方法を考えている矢先‥‥
ドサッ!
《 見つけたであります! 》
バサバサバサッ!
《 逃げてもムダだぜムラマサー! 》
《 ゲッ!! 》
マンホールから下水道に降りてきたゼロとヨシカネが、ムラマサに向かって走りだした!
ムラマサもあわてて逃げるが、その差はどんどん縮まっていく―――だがその時、
≪≪ ゴパアアアアアッ!!!!!!!!!! ≫≫
水中から巨大な白ワニがゼロの前に立ちはだかった!
《 カーッ! なんだこいつは!? 》
《 都市下水名物、白いハチュウ類であります!! 》
白ワニは大口を開けたまま、ゼロとヨシカネに襲いかかる!
バシャアッ!
≪≪ ゴガアアアッ!!!!! ≫≫
ゼロたちはかろうじてワニの牙をかわした!
《 カ―――ッアブネ―――ッ!! 》
《 キサマー!! 上官に牙を向けるとは懲罰ものだぞ―――!! 》
日須持の制御装置が妙な方向で作用してるのか、ゼロは上官モードに入っていた。
まるでどこかの魔族が帽子をとったような‥‥
《 ふふふ‥‥どうやらキサマは“飼い主”共々イタイ思いをせんとわからんようだな〜 》
《 ‥‥なんか知らんが今のうちだ! 》
白ワニとゼロたちが揉めあってるうちに、ムラマサはその場から離脱した。
( 誰だか知らんけど、こんな所にワニ捨ててくれて助かった、恩にきるぜ! )
「 へくしょい! 」
その頃地上では、ゼロに痺れ攻撃を受けた氷雅が、寝たままくしゃみをしていた。
「 なんだかイヤな予感がしますわ 」
「 こういうとき、普通誰かがウワサしてるって言わない? 」
そばにいた氷雅の主、せいこうが言った。
しびれて立ち上がることのできない氷雅は、少し青い顔をすると、
「 違いますわ若、本当にイヤな予感がするのです。 このままではとんでもないことが起こりそうな‥‥ 」
「 とんでもないことって、ゼロが? 」
「 いえ‥‥でもわたくしのカンって恐ろしいほどに当たるのです。 そうですわ若、お耳を‥‥ 」
「 なに? 」
せいこうが氷雅に顔を近づけようとしたそのとき―――
「 あれっ? どうしたんですか氷雅さん!? 」
そこに声をかけたのは、偶然通りかかった中島だった。 道端で倒れている氷雅に気づき、驚いてる様子である。
「 せいこう、氷雅さんいったいどうしたんだ!? 」
つい先日、氷雅のアプローチを断り、千鶴と彼氏彼女の仲を取り戻した中島。
昨日の今日で氷雅と対面するのはさすがに辛いようだが、
知り合いの女性が道端で倒れているのを見て、知らぬふりを出来るはずもなかった。
「 実はゼロが――― 」
「 ―――若、わたくしが話します。 中島クン、ちょっとお耳を‥‥ 」
せいこうの説明を止める氷雅。
弱弱しい小声で話しかけてきた氷雅に、中島はしゃがみこみ、自然と氷雅の口もとに耳を近づける‥‥
ス―ッ‥
すると氷雅は、マヒした体で精一杯腕を上げ、中島の顔を両手ではさむ。
「 えっ?? 」
そしてそのまま自分の唇を、中島の唇に重ね合わせた―――
「 !!?? 」
「 なっ‥‥!? 」
はたで見ていたせいこうも、それは驚いた。
当の中島も、氷雅が両手を顔に合わせたとき直感的にこうなる可能性を感じていた。
そして唇が重なって数秒の間は、自分から離れることもできていた。 だが、
「 ンッ‥‥ 」
絡みつく舌、今までに感じたことのない心地良い感触、
彼は離れなかった、 離せなかった、 離すことができなくなっていた‥‥
( あれ!? からだが‥‥ )
‥‥そしていつの間にか、離せるチャンスを逃していた。
( 動かない‥‥!? )
からだがどんどん重く感じた中島は、地面を支えてた両手の力を抜いていく。
そして氷雅の唇から離れ、地面にうつ伏せになるように倒れていった。
「 うふふ 」
代わりに、先ほどまでしびれて動けなかった氷雅が、ゆっくりと上半身を起こした。
「 さすがですわ中島クン、あなたの情熱的なベーゼに思わずとろけてしまいましたわ♪ 」
氷雅は自分の唇に人差し指をあてると、顔を赤らめながら―――
「 乱破忍法“風邪うつしの術”、実戦初成功ですわ♪ 」
【乱破忍法・風邪うつしとは!?】
“風邪は人にうつしたら治る”‥‥それを粘膜感染させることにより即座に実行する術のことである。
熟練の忍者であれば風邪のほかに、麻痺・毒などいろいろなものがうつせるらしいが、
行為と効果を考えると、いろんな意味で危険な術であることには違いない‥‥
「 氷雅さんなんで‥‥ 」
「 ごめんなさい中島クン、でもわたくし、どうしても行かなくてはなりませんの 」
そして驚きのあまり、しばらく静観していたせいこうは―――
「 ひょっとして、中島のお兄ちゃんが来なかったら僕にするつもりだったの? 」
「 ‥‥ 」
「 ‥‥ 」
「 ‥‥いやですわ若、ちゃんとご自宅のベットにお届けするつもりでしたわよ♪ 」
「 やっぱりそのつもりだったんじゃないか!! 」
仕える身でありながら、この悪気のない言動はどうだろう。
一方、せいこうの身代わりとしてマヒ状態の中島は―――
「 2回目にしてはじめてのディープが‥‥
しかもかなり気持ちよかったのがちょっと悔しいというか
かなり嬉しいというか据え膳食わぬは男の恥というか‥‥
ていうか赤城すまん! 俺はバカだ! どうしようもなく男の子だったんだあああ!!!!! 」
激しく後悔する中島に、氷雅は
「 言ったでしょ中島クン、わたくし強引なんだって。
乱破の女はね、一度決めた愛は最後まで貫き通すものなの
1%でも可能性があるのならわたくし、あきらめませんことよ 」
‥‥この話、全てが解決したのではなかったのだろうか。
さすがのせいこうも、もしかして本気ではないだろうかと、少し考えはじめていた。
「 ありがと中島クン、この恩はいずれまた――― 」
そう言うと氷雅は急ぎ走り去っていった。 残された中島とせいこうは‥‥
「 ‥‥俺はまた罪を犯してしまった‥‥またときめいてしまった‥‥ 」
「 だ、だまされちゃダメだ! 氷雅さんはただ自分の痺れを解消したかっただけなんだってば! 」
―――別の場所では‥‥
「 はあっ はあっ はあっ はあっ‥‥あと300メートル‥‥こっちね! 」
千鶴は住宅街の中、陸曹長からもらった小型の探知機を見ながら、ゼロを探していた。
そして走っていた千鶴が交差点の角を曲がろうとしたとき―――
キキィ――――――ッ!
「 きゃっ! 」
向かいから来た自転車に乗った少女にぶつかりそうになるが、間一髪でお互い衝突せずにすんだ。
「 ごめん! 私よそ見してたから―――ってあれ? あゆみちゃん? 」
「 千鶴お姉ちゃん‥‥ 」
自転車に乗っていたのは、ムラマサを探していた少女、あゆみだった。
「 お姉ちゃん! ムラマサとゼロが大変なの!! 」
下水道にて、ゼロVS白ワニの行方は‥‥
バシャ―――ン!
≪ ゴギャアアアッ!!!!! ≫
都市下水のヌシ、白ワニの断末魔。
そのワニが腹を上にしてプカプカ浮かんでいる所に、今まで隠れていたカラスの生物兵器ヨシカネが現れた。
《 コイツ(白ワニ)のせいでかなり時間をくってしまったカー! 》
《 ヨシカネどの、少しは手伝ってほしいであります‥‥ 》
《 オレは情報調査専門だ、戦闘はオマエのオハコだろ! 》
《 それはそうでありますが‥‥ 》
《 そんなことよりムラマサの後を追うぞ、サーチングするでやす! 》
‥‥マンホールのフタ。
‥‥ひょこっ
《 ハアッ ハアッ ハアッ‥‥ 》
マンホールのスキマから地上に出たムラマサは、疲れた表情でトタトタと歩き、コンクリートの柱の影で腰を下ろした。
《 ここまで逃げればヨシカネも追ってこねえだろー ‥っていうか、ここどこだ? 》
辺りをキョロキョロ見回すムラマサ。
はるか上方に見えるコンクリートの天井、それを支えている無数の柱。
その広い敷地には、人の侵入を拒むかのように2メートル近いフェンスで囲まれていた。
ゴオオオオオオ――――――
コンクリートの天井の上から聞こえる電車らしき音。 どうやらここは線路下の空き地らしい。
《 まいっか、ちょっと休んであゆみのトコ行こ 》
そうしてムラマサが一息つこうとしたそのとき!
バコッ!
《 ムラマサみ―――っけ!! 》《 でありま―――す!! 》
ヨシカネとゼロが、ムラマサが出てきた所からマンホールのフタをはじき飛ばし、勢いよく飛びだした!
そしてムラマサの前に立ちはだかる!
《 しつけえぞおめーら!! 》
《 やかましい裏切り者め!! 零式のダンナ、捕まえるでやす!! 》
《 了解であります!! 》
ガシャン ギュルルルルルル!!!!!
背中から2本のドリルを出して回転させると、ムラマサに襲いかかる!
( マズイ! ここじゃ隠れる場所が‥‥! )
ムラマサ絶体絶命! だがその時!
ガキィィィィィン!!!!!
ゼロの工作用ダブルドリルを、2本の小刀で受けとめる少年の影!
《 キサマは‥‥!? 》
「 ―――! 」
キィィィィン!
両者離れる! ムラマサはその銀髪少年の顔を見ると‥‥
《 おめえ‥‥妖岩!? 》
妖岩は“忍法・気合眼”によりムラマサを発見したのだ。
ある意味、ゼロのサーチング能力よりすごいかもしれない。
「 ‥‥ 」
《 助けてくれるのか? 》
コクッ‥
妖岩はゼロに対して警戒したままうなづいた。
《 恩にきるぜ! 》
走りだすムラマサ。 だがその前方に黒い影が立ちはだかる!
《 オマエの相手はオレだ!! 》
《 ヨシカネ!! 》
《 体育館では不覚をとったが、戦闘能力はオレのほうが上でやす! 》
ヒュォォォォォォ―――−−‐
ムラマサ(ネズミ)VSヨシカネ(カラス)、妖岩(忍者)VSゼロ(サイボーグ犬)の戦いが今―――
《 姉弟まとめて撃墜してやるであります!!!! 》
「 ‥‥‥‥! 」
《 カ―――ッ!!!! 》
《 チクショ―――ッ!!!! 》
―――始まった!!
バサバサバサッ! キィィィン!
空を舞うヨシカネのクチバシ&ケリ攻撃に、自前のフォークで対抗するムラマサ!
情報調査専用の生物兵器とはいえ、空を自由に飛べるヨシカネのほうが有利である!
一方、妖岩とゼロの戦いは―――
《 バトルモード!!!!! 》
「 ‥‥‥!! 」
戦闘モードになったゼロの攻撃をすばやい動きでかわし続ける妖岩!
《 ‥‥こいつできる! 》
ゼロが妖岩の動きに驚いているとき―――
ガシッ!
妖岩がゼロの鋼鉄の爪をかわし、アームをつかんで投げ飛ばした!
《 な なんてバカ力でありますか―――!? 》
電信柱を引っこ抜いてベンツを串刺しにできる妖岩(原作参照)にとって、この程度のことは難しくはない。
ゼロはコンクリートの柱に叩きつけられる前に、ロケットエンジンを噴出させてブレーキをかけると、柱を蹴って再び妖岩に襲いかかる!
ギュィィィィィン!
《 くらうであります、工作用超硬質ドリル!!!!! 》
ドガガガガガッ!!!!!
妖岩は間一髪でドリルをかわすが、砕かれたコンクリートの破片が妖岩の頭をかすめる!
「 ‥‥ッ! 」
妖岩は一端ゼロと距離を置いた。
彼はゼロが正気ではないことを薄々感じてるせいか、思いきった攻撃ができないでいた。
そんな中、ゼロがロケット弾の開口を開こうとしたそのとき―――
「 ゼロ!! 」
妖岩の背後に、探知機でここを探し当てた千鶴とあゆみがいた。
「 妖岩くん、ムラマサは!? 」
「 ‥‥ 」
あゆみに問われた妖岩は、ゼロの後ろのほうを指差した。
ゼロの後方では、遠くで1羽のカラスが地面にいる何かと戦ってるように見える。
「 ヨシカネと戦ってる! 助けないと! 」
するとあゆみは、ヨシカネのいる所へ向かって走りだした! それを見たゼロは―――
《 任務の邪魔をする敵は即・排除であります! 》
ゼロは、妖岩からあゆみに標的を変えると―――
「 ゼロ!! 」
「 ‥‥‥! 」
《 発射(ファイヤ)――――――!!!!! 》 ドンッ!
ロケット弾を放った!
「 えっ!? 」
カッ‥ ド――――――ン!!!!!!!
ロケット弾はあゆみの目の前で眩い閃光を放つ!
反射的に目をつぶったあゆみが、再び目を開けたとき―――
「 妖岩くん!! 」
「 ‥‥ 」
自分をかばったと思われる妖岩が、目の前で倒れていた。
妖岩は氷雅と同じく、麻痺攻撃を受けたようでほとんど動くことができない。
《 はずしたが‥‥まあいい、一番厄介な敵が落ちてラッキーでありま――― 》
「 ―――ゼロ!! 」
ゼロの名を叫ぶ千鶴。
「 あんたって犬は‥‥ 」
《 ‥‥ 》
湧きあがる怒りをおさえながら、千鶴はあゆみのほうを見た。
「 あゆみちゃん、早くムラマサの所に行ってあげて! 」
「 千鶴お姉ちゃん‥‥ 」
「 ゼロは飼い主の私が面倒見るわ‥‥今度はちゃんと、リードは掴んでおくから‥‥ 」
ゼロをまっすぐ見る千鶴。
あゆみも千鶴の意思を感じたのか、軽くうなづくとムラマサの元へ再び走りだした。
《 逃がさないであります! 》 「 ―――待て!! 」
ピクッ‥
千鶴の言葉にゼロの動きが止まる。
《 な、なんでありますか、体が動かないであります‥‥ 》
「 日須持教授って人に何されたか知らないけど、あんたいい加減にしなさいよ! 」
ゼロはゆっくりと振り返り、千鶴のほうを見た。 そして
《 ‥‥キサマ、誰でありますか? 》
「 おーっほほほほほほほ☆ 」
民家の屋根の上を、笑いながら駆けていく氷雅。
「 やってくれましたわねゼロ、このわたくしが敗北を記すなんて……“あの方”以来初めてですわ 」
氷雅は、とある人物を想像した。
「 ―――この借り、さっそく返させていただきますわ♪ 」
【本日の対戦成績】
○ゼロ―――×下水道の白ワニ
○ゼロ―――×妖岩
今までの
コメント:
- アニマルバトルついに勃発。 でも戦闘シーンはサクサクっとね(笑)
白ワニの飼い主については、このクロスの原点になった、過去ログ03/10/10の投稿にて判明してます。
この生物兵器編もあと2回、なんとか年内にお届けできそうです。
このお話もそこでひと区切りつきますので、最後までおつきあいして頂ければ幸いです。 (ヴァージニア)
- ペットとの心温まる絆が展開される一方で、一人我が道欲望のまま突っ走る氷雅さん。
中島も災難ですなあ〜まあ同情はしませんが。(笑
ゼロの連戦連勝、このままいけば千鶴と戦うことになりそうだけど、氷雅さんの動きが怪しすぎる・・・
あいかわらず各・主役クラスのキャラがバランスよく絡み合ってるし、ここまで椎名百貨店の話が主になってる作品は他にないです。
この中篇もあと二回のようですが、最後まで楽しみにしています (秋風)
- 鼠とカラスと忍者と犬のバトルって、どんなんよ?
まさに夢の対戦だったさ、そんな混ぜっぷりが気に入ったさ・・・・・・ (R-大志)
- 某現場運用主任並に女難につきまとわれている中島君にエールを送りたいですね。何とか、氷雅女史の魔の手から逃れられるよう頑張って欲しいものです。(まあ、無駄とは思いますが)。
それから、早々とリターンマッチ?! 氷雅女史が対戦成績を五分に戻すか、それとも、今一度、ワンマンアーミー(ワンワンアーミー?)・ゼロが制するのか、楽しみにしております。 (よりみち)
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