ザ・グレート・展開予測ショー

秋の王様


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(04/12/14)

ここは何時もの横島の家。雪之丞が遊びに来ているのも然程珍しい事ではない。
通例との違い目の前には四つほどマツタケがある。
秋の味覚の中で王様、あのマツタケがである。
「雪之丞、こいつをどーしたんだ?」
「ちょいとした用で妙神山に行ってきたんだけどな、お土産に貰ったンだ」
この年も異常気象といわれてきたが、マツタケは大量に取れたようだ。
「で、折角だからコイツを食おうと思ったんだが」
雪之丞、今の所定まった家を持っていない。
つまり料理するにも一通りの道具を揃えないと目の前のご馳走にありつけないのだ。
ホテルにでも泊まってというのは金銭的に難しい。
なら、
「半分の量になっても、お前の台所を借りようと思ってな」
「なる・・、でもなぁ、マツタケってどーやって料理するんだ?」
「さぁ?」
横島も簡単な食事の用意は出来る、が本格的な食事の用意はどうだろうか?
精々がご飯を炊いて、タマゴを暖めてという程度。
雪之丞に至っては。
少々可愛そうになるので割愛しよう。
「とりあえず、一番有名なのがマツタケご飯じゃないか?横島」
「あ、駄目なんだ、今電子ジャーが壊れててな」
「電子ジャーが?ナンで?、大魔王でも封印してるのか?」
「へ?壊れてるだけだけど?」
「・・・・判らなければいい」
雪之丞、冗談が理解されなかったようである。
「じゃあ、後は串焼き、とかだよな」
「あー、駄目駄目、俺ンとこ電気コンロだし」
「カセットコンロ持ってないのか?」
「そんな高級品持ってるかよ」
「だな」
結局のところ、火もない、コメも炊けないという所だ。
「なぁ、雪之丞、マツタケって生で食えねぇのかな?」
「そいつはムリだな、一個試したけど、食えたモンじゃねぇ」
試す方も試す方である。
だが、折角ここに高級食材があるのだ。
手をこまねいている場合ではない。
「しょうがねぇなぁ、おキヌちゃんにでも料理の仕方聞いてみようか」
「分け前減るけどしょうがねぇかだけどな、」
「だけど?」
「美神の旦那や獣娘ズにはぜーったいバレるなよ」
分け前が減るからな、だそうである。
「判ってるよ。えっと事務所の電話番号は・・」
電話番号を控えたメモを目にしてジー後ロゴ。
覚えてない横島もどうかと思うがそこは高校生許される範疇という事だ。
『はい、美神GS事務所です。本日は・・』
運良くおキヌちゃんが電話に出ている。
「あ、おキヌちゃん?俺、俺だよ」
『・・?俺々さん、それとも最近流行りの詐欺?』
「いや、俺だよ、横島。横島忠夫」
『判ってますよぉ、どうしたんですか?』
「実はかくがくしかじかで・・・」
マツタケの調理法を教えて欲しいと頼んでいると。
『え?横島さん、マツタケ手に入れたんですか?』
電話口から大声が雪之丞にまで聞こえた。
「わっ!おキヌちゃん声が大きいって、落ち着いて」
だが。
『ほー。奴隷の分際で私に黙ってマツタケねぇ』
怒りのマークがくっきりと現れた美神令子の顔が二人とも浮かんだ。
「み、美神サン!こ、これは雪之丞から貰ったマツタケっすから・・・」
『雪之丞?なら私も関係者じゃない!二人とも今すぐ事務所に来なさい』
強引な論法である。
「で、でも美神さん・・」
『大体、アンタのトコで料理できるわけないでしょ?で幾つマツタケあるのよ』
口で勝てる相手でない事を二人とも知っている。
それに、事務所で料理してくれるという事だ。
「雪之丞、そういう事にだ。許してくれ」
「・・食い物の恨みは深いぞ、横島」
道すがらややギスギスした関係になっていたのだが。
「あ、いらっしゃーい、横島さん。雪之丞さん」
出迎えたおキヌちゃんの笑顔がすべてを解消したようである。
加えて。
「マツタケですよね。私も調理法よくわかりませんけど、お鍋にしたら簡単ですから」
確かに、もう既に秋、そろそろこのお鍋の季節である。
そして主婦顔負けの調理の腕前を持つおキヌちゃんである。
これで不味いものが出てくるわけがない。
「折角高級なマツタケさんがあるんですもの。今日は奮発して牛肉入りですよ!」
そう、お肉屋さんの一番高い牛肉を合わせて買ってきていたという。
雪之丞、顔がにんまりである。
時に。
美神令子、大酒のみにして味にもそこそこ拘っている。
という事は。
「うふふ。マツタケの蒸しびん、蒸しびんちゃ〜ん」
おキヌちゃんをそっちのけで、こちらもにんまりしている。
「あ、これは炊き込みご飯ようですよぉ」
マツタケの妙、ちゃんと心得ている。
「あら、マツタケの匂い」
何時もは食事の直前までテレビを見ているタマモまで料理を手伝っていた。
さて、お茶碗の用意も終って水炊きのナベもグツグツいってきた。
「はーい、用意出来ましたよ〜、お食事ですよぉ〜」
家庭の味が目の前にある。
それだけでも雪之丞にしてみれば、ありがたいことである。
「ほら、アンタが持ってきてくれたから、最初に食べなさいよ」
少々フライングで酒蒸のマツタケを摘んでいた美神令子であるが、それはそれとしよう。
「あ、じゃあ遠慮なく」
生まれて始めてのマツタケ、思わず箸が震えるのは可愛いとしよう。
そして口に放り込む。
「もぐもぐ・・ん。もぐもぐ」
よく噛んで、味を確かめているのだが。
「・・?これがマツタケって奴か?・・ふん・・そうか」
何か妙に納得した顔をして、
「あ、牛肉も貰うぜ、いいよな?おキヌちゃん」
「どうぞどうぞ〜雪之丞さん」
むしろ、肉の方が美味しそうな顔をしているではないか。
実は横島とて同じである。
初めて食べたマツタケ。神妙な顔をして食べたはいいが、
やはり、肉を食べたときの反応の方が上である。
そいつを見た美神がにやりとして。
「はは、アンタ達にはマツタケの美味しさはわからないんでしょ?」
「反論はねぇよ。美神の旦那」
「俺は肉の方がいいっすね。・・ってこら、シロそれは俺の肉だ」
「へへーん。早い者勝ちで御座るぞ」
シロと横島の肉争奪戦に雪之丞も加わっていく。
その横ではナベ奉行おキヌ様が仕切り始めていく。
タマモは野菜少々と大量の油揚げでご満悦のようだ。
マツタケは一応、人数分等分されてはいるが。
少々多く美神令子が口にしているも、
誰からも文句は出なかった。

FIN

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