ザ・グレート・展開予測ショー

英雄のその後…-6-進む道!


投稿者名:熊
投稿日時:(04/12/13)

思い切り息を吸い込む…

「ウム!まずい!」

もう一杯!等と叫びたくなる心を抑え辺りを見る。

排気ガスの匂い…汚れた空気…ゴミ捨て場から放たれる臭気…

「は〜なんかやっと帰ってきたって感じがする…」

妙神山を下山し、ようやく懐かしの我が家(ボロアパート)の前まで帰ってきた。

あの後何だかんだ言って1週間程妙神山へ逗留していた。

本来ならもう少し早く帰る予定だったが、帰ろうとするたびパピリオが足にしがみ付き、

小竜姫様が「帰っちゃうんですか?」と悲しそうに見つめてくる。

まあ、そんなこんなでずるずると長引いてしまったのだが流石に学校が始まってしまうので帰ってきたのだ。

(そういえば結局師匠と会わなかったな…)

「ただい…ジリリリ!!!

横島がドアを開けたのを見計らったようにけたたましく電話が鳴り響く。

「…な〜か悪い予感が…」

横島の鍛えられた第六感が警報を鳴らしている。

間違いなく余りいい内容の電話ではないだろう…

心なしか呼び出しベルもささくれて聞こえる。

かといって出なければ後ででどうなるか分からない…

さらに言えばこの第六感に反応があった時は大抵不幸が回避できない…

意を決しゆっくりと受話器を耳に当てる。

「…はい…「今まで何やっとた!このドラ息子が!!!」

受話器を耳に当てると同時に怪音波が横島の鼓膜を直撃する。

「お、オカンか?!」

「『オカンか〜』じゃないやろ!この一ヶ月何やっとった!さぁ!吐け!

今すぐ吐け!お前に弁護士を呼ぶ権利も黙秘する権利もあらへん!」

「ちょ…まて「まさか!モッソウメシ(臭い飯)食うてたんか!

忠夫〜…かあさんは、かあさんはそんな子に育てた覚えは無いで〜」

横島(忠夫)の声を完全に無視し、電話の主…横島 百合子が何処かへ突っ走る。

「安心おし…アンタがお勤め終えてくる頃には、

アンタと私達の繋がりは辿りようが無いくらい隠蔽しておくから…」

何がどう安心なのは不明だし、会話自体が突っ込みどころ満載なのだが今は置いておこう…

「…え〜…お母様…そろそろ真面目にお話したいのですが…」

「そうね…賛成だわ」

今までの態度が嘘のように落ち着いた声で同意する百合子に受話器を持ったまんまずっこける。

(あ、アカン…未だオカンには勝てる気がせん…年齢なら同じ位かかこっちの方が高いはずなのに…なんでやろ…)

「で、忠夫、この夏休みどこ行ってたの?ずっと居なかったでしょ…夏休みの最初から電話したのよ」

「あっ…ああ、GSの修行で妙神山って所に行ってたんだ…」

「…ふ〜ん…嘘は付いてないようだね…」

(おいおい…声だけで嘘付いてるか分かるのか?)

普通なら有り得ないと一笑するところだが、この人に限っては嘘だと断定できずに背中に冷たい物が走る。

「あっそうそう…先生に聞いたよ…何とか留年は回避出来そうなんだって?」

「ああ、一応がんばったから…」

「そう…ねえ、忠夫…真面目話なんだけどね…アンタ来年3年でしょ?どうすんだ?」

「えっ?前にも言ったじゃん、卒業したらGSになるよ」

行き成り真面目な話といったので身構えたが、前にも話し合った内容なので軽く答える。

「…母さんはGSについて大して知っちゃ居ないけど、プロになるにはえらい狭き門なんだろ?

それもアンタが受かったのも知ってる。多分才能もあるのかも知れない…だけどね…正直、大学に言って欲しいと思ってる…」

「ちょ、ちょと待て!あの時高校卒業したら好きにしていいって…」

「分かってるよ!でもね!GSってのは妖怪を払ったり殺したりするのが仕事だろ?

正直アンタに向いてないと思うんだよ…なんだかんだいってアンタはやさしいからさ…

だからGSになるより営業や商売人なんかの方がずっとあってると母さんは思う…才能があるのと向いているかは全く別だから…」

「……向いてない?…」

「…私はね…まっ、今すぐ決めろって訳でもないし…幸いまだ2年でしょ…3年になるまでに結論を出せば良いよ。いや高校卒業までだっていい…

もし、大学に進みたいって言うならお金の心配はしなくていいよ、きっちり出してやるし…浪人したいって言えばさせてやるよ」

「…」

「それとね、忠夫…最後に決断するのはアンタだよ…どんな結果になろうとアンタの人生だ…選ぶのはあんたの自由さ…頑張りな…」

「…ありがと…」

「じゃぁ元気でね…あっ!どんな道を選ぶのもあんたの自由だけど高校位卒業すんだよ!

また一学期みたいにサボりまくったら承知しないからね!じゃ!」

そお言うと百合子はさっさと電話を切ってしまった。まるで嵐のようだ…

「…向いてない…か…」

畳に転がりポツリとつぶやく。

奇しくも少し前に師匠に言われたばかりだ。

『主が戦いに向いているとは思えない…』

『才能があるのと向いているかは全く別だから』

二人の言葉が脳裏に蘇る。

「ハーなんか…疲れたな…事務所は…明日でいいか…」

妙神山での疲れが出たのかゆっくりと瞼が重くなっていき、

幾らもしないうちに横島の意識は闇に飲まれた。

………
……


「うわ〜こんなんだった!…懐かしい〜」

横島にとって20年ぶりに来たバイト先の建物の前ではしゃいでいた。

正直気、母親の言っていたことは気にならない分けではない…

(悩むのは俺らしくないし…悩んだからってすぐ出る答えでもないからな…まっ!なる様になるさ…)

という結論に達したのだ。

「ちわーっす!横島です!久しぶりに出勤しました〜」

「あっ!、ようやく帰ってきた!」

「あぁっその言葉!美神さん、俺がいなくて寂しかったんですね…すぐにベットの上でなぐさゴヘッ!!」

飛び掛ろうとした横島を美神がとこからか取り出した神通棍で殴り倒したのだ。

「…あんた見事なくらい成長して無いわね…」

「いや〜お褒めに預かり光栄です!」

「褒めてない!」

ドン!という鈍い音と共に再び床に叩き付けられ
る。

(いや〜こうなると、なんか'帰ってきた'って感じがするなぁ)

床に叩きつけられながらくだらないことを考えていると、勢い良く奥の扉が開いた。


〜おキヌside〜

なんか…さっきから随分うるさいですね…もしかして…またひのめちゃんの面倒でも頼まれたのかしら…

美神さん…面倒だ!大変だ!って言ってたから…

そう考えたら皿を洗う手が急に止まる。

でも…子供の面倒を見るのにあんなにドンドンやる必要って有ったかな…

横島さんなら踊ったりする時がありましたけど…美神さんが?

そういえば前に泣き出したひのめちゃんに猿轡か噛ます!って…

次におキヌの脳裏に不吉な予感が走る。

『白昼惨劇!20歳年下の妹を撲殺!犯人は20台S級GS!?

問われる母親の責任!次代を担う若者の凶行に世間はどう対応すれば良いのか!?』

止めに上記のテロップが頭の中に踊り出す。

ど、どうしよう!警察に連絡!そうだ、その前に救急車!って!そうじゃない!まず止めないと!

ひのめの面倒を頼まれたこと自体が仮定なのだが今のおキヌはそのことに気が付いていない。

「美神さん!」

洗剤の泡と飛ばしながら勢い良く扉を開ける。

…あれ?

当たり前だがおキヌの想像とは違いひのめの姿はなかった。

「あの…美神さん…ひのめちゃんは?」

「ひのめ?ひのめがどうかしたの?」

「いえ…その…さっき凄い音がしていたから…」

「ああ、それはコイツをしばいていたから…」

ガンと景気良く神通棍を振り下ろした先を見ると…

「よ、横島さん!!」

「や、やあ、おキヌちゃんお久しぶり…元気そうだね」

「は、はい!えーと…帰ってきてくれたんたんですよね…」

うわーん私ったら何言ってんのかしら、今ここに居るんだから当たり前じゃない。

「うん…おキヌちゃん、ただいま…」

そう言ってドキリとするような笑顔を私に向けてくる。

「えっ…あっ…お、お帰りなさい!」

「ところで…おキヌちゃん…なんかあったの?」

先ほどの笑顔が嘘の様に深刻そうな声で横島さんが私に聞いてくる。

何かまずかったかな…髪型は変えていないし、

一応整えてある…服装だって…あっ!

おキヌの住んでいる美神の家は女所帯だ、

しかも暦の上で夏が終わっても未だ暑いく一ヶ月横島が居なかった…

何にを言いたいかというと、美神の家に居る限り外の目…特に男の目を気にしなくていいのだ。

前までは横島が良く来るためキッチリとした恰好をしていたが

ここ一ヶ月横島が居なかったため美神は元よりおキヌもダレてしまったのだ。

そして今は残暑の厳しい時代…当然以前では有り得ないほど薄着でラフな格好であった。

「き、きゃ〜〜!!よ、横島さんの馬鹿!!」

ガン!とまだ床に転がっていた横島さんを蹴っ飛ばして私室に向かう。

その後ろで、

「おキヌちゃんにまでセクハラするなんて!横島!」

と言う声と共に鈍い音と横島さんの悲鳴が聞こえてきましたが…

ちょっと可愛そうだったかな…別に横島さんが悪かったわけでもないのに…


〜追記〜

「ところでおキヌちゃん何で最初部屋に入った時ひのめがいると思ったの?」

「え゛…何と無くです」

「ふ〜んそう…私てっきり、ワイドショーに感化されて『20歳年下の妹を撲殺!』

なんてことを心配してくれてるんじゃないかな〜と思ったの」

「あはは…そ、そんなわけないじゃないですか…」

「そうよね…おキヌちゃんがそんな事考えているわけ無いわよね…ふふふ」

「あはは…」

「…ふふふ」

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