ザ・グレート・展開予測ショー

出撃!ましんろぼヨコシマン。


投稿者名:HF28号
投稿日時:(04/12/ 9)


 ゴガガガガガガッぼんっギュギギギギギ――――――――――ッ!!

 人骨温泉郷から伸びる砂利敷きの道を白いワゴン車が爆走していた。蛇行運転のはてに、飛び跳ね、着地。あまりにあまりなドライビン

グテクニックに、ヘアピンカーブを"すごい"スピードで曲がりきるころには乗っていたうちの1人が限界を迎えていた。

 『・・・ぱ、ぱぴりお・・・後は頼んだよ』

 『だ、ダメでちゅっ。気をしっかり持つでちゅっベスパちゃんっ!!』

 パピリオの好意なんだか悪意なんだかわからないがくんがくん揺する攻撃(!)に、ベスパは益々酔いが廻り、お空も周る。

 ああ、あの空を自由に飛べたらなんかいい感じなのに・・・なんで、よりによってこんな箱に乗って移動せにゃんらんとよ。

 いささかの逃避が許されるくらいベスパは追い込まれていた。

 『ど、土愚羅様っ、ね、安全運転、安全運転でっ!!』

 『にゅああああにおおおおうっ!!こんな辺鄙なところに飛び出す物なんぞおらんっここは我が運転でいくじょ――――っっう!!』

 助手席のルシオラが止めるのも聞かず、真っ赤に燃えがった土愚羅魔愚羅。

 彼は瞳に怪しげな光を灯し、せいやっと新たなるカーブに突っ込ん・・・


 「うわっ!?」

 『きゃ―――――――――――――――――――ッ!!』

 ガン、ポ―――ンっ。ぼて、ごん、ごとごと。

 ルシオラの悲鳴が響く中、辺鄙なところに飛び出した"もの"は車のスピードで吹っ飛び、それでも止まらなかった車で再び轢かれた。



 しーん・・・。


 『や、やばっ』

 ち〇ぽ口をもっとすぼめて、我に返った土愚羅が見たものはその"もの"が逝って気絶したままの魂が抜ける瞬間だった。

 『ほ、捕縛よっ!そんでもって、証拠隠滅だ!!パピリオっ』

 『は、はいでちゅっ』

 逸早く車から抜け出したベスパは車酔いもなんのその、事故のショックで唖然としているパピリオに指示を下す。

 妹が気絶した魂を手づかみで確保するのを背景に、彼女自身はエアバッグで溺れている土愚羅魔愚羅を窓から引っ張り出してそこらに捨

てた(ひでえ)。
 更に、余った左手でライター用のソケットを押し込むと、運良く積み込まれていたルシオラ謹製隠蔽道具をそこらに放す。

 『ケッス―――――――ッケシマッスウウウウッツ!!』

 奇怪な雄叫びを上げながら、その道具は飛び散った血痕やらその他諸々を手際よくお掃除してくれる。これは頼もしい。

 『あーんっ逃げちゃダメでちゅ――っ』

 手づかみを諦め、虫取り網のようなもので必死に魂を追い掛け回すパピリオ。

 あんまり頼もしくない・・・け、けどきっと捕まえれるさっ!!

 一抹の不安を覚えたベスパだが、とりあえず自らを納得させると何時の間にか魂の抜け殻を診ている姉の下に駆けよった。

 『どうだい?』

 『肉体の方もまだ化学的には生きているみたい。巧くすれば或いは・・・』

 フラフープくらいの直径に展開したリング状探査装置で、頭の先からつま先まで少年のデータをスキャンしていた彼女は、作業が終わり

元の指輪サイズまで戻ったソレと死体寸前を手に立ち上がる。

 『すぐに緊急措置を施すわ。準備は出来てる?』

 『勿論』

 ベスパがくいっと親指で示した先には、

 『これ以上ないくらいにね』

 変形しなんかわからんがともかく治療できそうな見た目になった車(もどき)と円筒ケースにしっかり魂を確保したパピリオの姿があっ

た。




 あーとなんだったっけか?そうそう、そうだ。今日は美神さんの色香に騙されて、除霊道具をたんまり詰めたリュックを背負って山道を

歩いていたんだったか。人骨温泉に出る幽霊を退治する依頼を受けて。つーか、あんだけの道幅ありゃ普通、車で来るだろ?山道はタイヤ

が減るッ!!とか、舗装してなきゃ道路じゃないわっ!!とか我侭言わなきゃ、どわあああれがっあんなとこ歩くかああっ。
それから、山道を必死こいて登っている俺の前に幽霊が現れて殺されかけて逃げてる途中だったんだっけ。


 そんでもって・・・

 そんでもって・・・

 (なんだっけ??)

 と・も・か・く!酸素不足でぶっ倒れた俺を放って強欲女が先に宿へいきよった、それこそが全ての元凶じゃあ――――――ッ!!

 思い出したが吉日(?)重力に逆らいぱっと起き上がると、スーパー見鬼くんに勝る霊気探査ツールで霊力反応を確認する俺。うむ、4

キロ先で飯食ってるなこの感じは。こっちゃまだまだ先が長いっつーのになんて身勝手な雇い主ぢゃ。

 「・・・・??」

 ちょいまて、どうして判るんだっ!?・・・ってアレ?今、思い出したんだけど、俺ってマジな事故に遭った気がするんスけど・・・。

 (なんで無傷なんだ・・・?)

 冷たい汗が背中を伝う。ツール・・・人間にツールなんてあるか?

 それに4キロ先を感知できるなんて、機械じゃあるまいに・・・。



 思考に一時の間が空いた。



 「うわわわわわわ――――――――――――――ッ!!」


 美神さん美神さん美神さ―――――――――――――――――――んっ!!





 韋駄天もびっくりな俊足を披露した男をカーブの影でこっそり見ている者が居た。

 ショートボブの黒髪にひょこんと生える触角2つ。ルシオラである。

 『ふう、なんとか起動できたみたいね。部品が足りてラッキーだったわ・・・』

 同じくカーブの影に隠れるように置かれた絶望的なまでに部品を取られた車らしき物と、側らに置かれた生命維持装置っぽいポッド。そ

こにはさっき走っていった少年と全く同じ見た目の男が眠っていた。

 魂の抜けた体はただの化学物質の塊だ。そのまま放って置けば霊力の絶対量が足りない。だから、人工的に霊力を与え新陳代謝を促し傷

を癒す物が必要になってくる。それがあの装置。

 では、抜けた魂の行方は?と聞かれれば、さっき走っていったあの"体"にちゃんと宿らせてある。運良く持ち合わせてた巨大な精霊石に

魂を固定し、それを中心にシステムを組んだ。こうすれば、肉体が回復したとき魂が無い!なんてことが起こらずに済むのだ。

 透明なパネルで覆われた部分から覗き込んで、あれこれ話し合う妹たちがなんというか微笑ましい。思わず相好を崩しかけたルシオラは

こそっりそーっとその場から離れようとしている上司の頭をむんずと掴んだ。
 脱走未遂5回目、いい加減逃げるのが不可能なことを察して欲しい。

 『どこへ行くの?土愚羅様・・・』

 『こ、ここここ、この不祥事をアシュ様へ報告に・・・』

 『そんな必要、元からありましぇえん』

 ねー、ポチ。ポッドの少年に早速自分なりの愛称をつけたパピリオがにーっこり笑って同意を求める。無論、眠る男は同意を示せないが

、心なしか冷や汗を掻いたように見えた。

 『私たちがこれ以上人間を殺したら宇宙意志でアシュ様が死んじゃうって忘れたとは言わせないでちゅよ』

 『宇宙意志を掻い潜って野望を成し遂げるのにはそりゃあもう並大抵じゃないんだよなああああああっ』

 歴史に"もし"があるのなら、あそこで横島をああしなければアシュタロスは培養層で溺れ死んでいたらしい。2人の夜叉に見つめられた

土愚羅は滝のように汗を流し、じりじりっと後ずさる。どんっ、誰かにぶつかった。ぎぎぎーっと振り仰ぐと、作業用に着たツナギをその

ままに、解体で使った大きなバールを手にしたメカニック担当が。

 『土愚羅様が私の愛し―――――――――――――――――――いっマシンちゃんを壊す原因を作ったなんってっぜんっぜん恨んでいま

せんから!!』

 (ウソだ―――――っ!!ウソに決まっておる―――――――っ!!)
 最近、人間界のアクセサリーをカスタマイズしたら、えらく刺激的な見た目になったと喜んどったじゃないかっ。

 『わたちも、逆天号が育て直しなのを恨んでないでちゅよ!!』

 パピリオは、逆天号の飼育係だ。タマゴから孵化させた逆天号がもうちょっとで大型キャンピングカーサイズまでいくところだった。こ

こまで来れば成虫(空が飛べる逆天号)まであと一息だったのに・・・。これじゃ軽自動車(しかも2WD)に逆戻り。

 (怨む、怨むにきまっとるっ)

 パピリオにまで睨みつけられ土愚羅は汗の量がいきなり増加した。

 『あんな運転しなけりゃ、私が車酔いすることも無かったんだけど・・・もう過ぎたことさ』

 そしてベスパの静かな本当に静かな呟きが終わると3人娘は一層美しく土愚羅に微笑み。




 『さあーて・・・』

 『覚悟は』

 『いいねっ!!』





 『良くな―――――――――――――――――――――――いっ!!!!』

 怨んどるじゃないいか――――――――――ッ!アシュさま――――――――――――っ!!

 この後フクロにあった土愚羅は、ルシオラの手でどうにか組みなおされた(どうやったかは謎)逆天号に積載量オーバーで載せてもらえ

ず、1人寂しくアジトに帰るハメになったという。

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