ザ・グレート・展開予測ショー

GS新時代 【鉄】 其の四 2


投稿者名:ヤタ烏
投稿日時:(04/12/ 8)



「あんたの初仕事は(護衛)よ」

やってやるさ

強くなるためなら





翌日・・・・・・・・



夢とお伽のデジャブーランド

カップル、親子連れ、友達連れ・・形は違えど皆楽しそうな場所に
およそ夢とお伽と関係のない、黒のスーツに身を包んだ、血と硝煙の臭いがしそうなヤクザ・・・
もとい汰壱15歳がベンチに座って空を眺めていた。


「はぁー」
大きなため息を、汰壱は盛大についた。その顔は明らかに不満たらたらと言った感じになっている

確かに自分はどんな仕事でもすると言ったが、まさかこんな事になるとは夢にも思わなかった。



とある重要人物の護衛・・・・

これが汰壱に与えられた最初の仕事だった・・・無論その仕事には文句はない、寧ろその話を聞いたときは
おおいに張り切っていたのだから・・だが、いざ現場に向かいクライアントに会い事情を聞いて驚いた。
なんと護衛対象は10歳の女の子だったのだ。

まあ別に護衛対象が子供でも何でもするのが仕事だが、はっきり言って汰壱は子供が嫌いだった。
 
うるさい・騒ぐ・落ち着きがない・ぎゃーぎゃー喚く・泣く・我侭が多い

以上、子供が嫌いな人間ならば、誰しも思うところの理由で汰壱は子供が嫌いだった。





・・・・けっしてそれだけの理由でもないのだが・・・・・


依頼主は天上グループという、いわゆる一流大企業だった。
事の発端は、数日前の夜のことだ。
天上グループの社長 天上 高志 (てんじょう たかし) 宅に一つの小包が届けられた。
差出人は不明であり、怪しんだ使用人たちは、主人に渡さずに自分達の所でソレを開封・・・




惨劇がおこった、箱の中はトラップ式の符術式神が仕掛けられており、開けたとたんに中から数十体の式神が飛び出し、
屋敷中の人間に攻撃して回った。
かなりの数の重傷者が出たが、幸いにも死者はでなかったようだ。
運良く家族の者は皆で払っており、事なきを得たが犯行の凄まじさ、符術式神等の、特異性から天上はすぐに
GSに仕事を依頼、自分達と娘の護衛を依頼したというわけである。


まあ正直言ってこの仕事には、かなりの胡散臭さを汰壱は覚えた・・まず護衛を頼むことだ。
狙われているのだから。護衛を依頼すること自体はおかしくはないが、なぜ民間のGSに頼むのか?
これほど大規模に狙われているならば、オカルトGメンに依頼するのが常だろう
わざわざ高い金を払って民間GSに依頼する必要があるのか?
公安のオカルトGメンには頼めない何かがあるのか?・・・・・・・・・

確かに、超一流のGSであるGSのシロとタマモに頼めば確実だろうが、些か大げさな気もする。
オカルトGメンには依頼せず、民間一流のシロとタマモのコンビへの依頼、なぜ?


いい加減思考の無限ループに入りそうなので、汰壱は考えるのを辞めた。
どうでもいいことだ・・・・・別にクライアントが何をしていようが、何処で恨みを買ってようが
しったことではない。そんなことは警察の仕事である。

今自分すべきことは唯一!





































逸れた護衛対象を探すことだ・・・・








「だからガキは嫌いなんだよ!」
イライラしながらベンチから立ち上がり迷子の少女を探し始めた。

最初に会ったときから気に食わなかった、いかにもな御令嬢というやつで、性格もクソ生意気とい言葉がぴったり
というガキだ。容姿のほうは将来性は十分に期待できるが、はっきりいって今はどうでもよい。
デジャブーランドに着く前にあれほど自分から離れて行動するなと言ったのに、着くなりあっと言う間にどこかに消えやがった。
一応二人には連絡したが、自分で何とかしろとの事だ。言われずともそのつもりだ。

そういや、タマモさんから万が一の為に武器を渡されていたっけか・・・

タマモに渡されたカバンをのなかを見ると、中には40センチ程の大きさのジェラルミンケースが入っていた。
取り出して中を空ける。


パカ


・・・・・・・・・・・・・・・チャカ(拳銃)・・・と・・・・ヤッパ(小太刀)・・・・・・・・



パタン



「ナニ考えてんだあの人は!!!」
汰壱はコメカミを押さえて立ち尽くした。
どうしてあのクールビューティーは自分に、ヤクザ御用達の二大アイテムを自分に渡したのだろう・・・。
こんな物もっていれば間違いなく自分は捕まる、ってゆうか取り押さえられる。
pi pi pi pi trtrrrr trrrrr trrrrrr


ガチャ


「何汰壱?」


「タマモさん、あんたナニ考えてんですか!」
閉口一番叫んだ。

「なんのこと?」


「何のことじゃないですよ、何で俺の武器がチャカとヤッパなんですか!?」


「あら私は、汰壱に一番合ってる武器を選んだだけよ」
心外ねぇと言った感じにタマモは返答した。

「似合ってるの間違いでしょうが、明らかにおれの今の服装とコーディネイトしてるじゃないっすか」

「べつにあんたに、『命(たま)とったらぁ』とか『オジキの仇じゃぁああぁ』とかは期待してないわよ」

「嘘つけぇぇ!ご丁寧にトカレフなんざ渡しやがって、それにヤッパは聖柄(ひじりづか)じゃねえか
敵は符術式神使いでしょう?式神でこられたら、ただの銃と小太刀じゃ効果は薄いですよ」

当然の疑問として汰壱は質問した。

「そんなことは解ってるわよ、そのトカレフの銃弾は法儀浄銀弾、それにマガジンのところに簡易魔方陣を私が念を込めておいたから
精霊石とまではいかないけど、結構な威力が有るから安心して、予備のマガジンは二本だから、大事に使いなさいよ。
小太刀の所には刃が純銀で出来てるから霊も切れるわ、・・あっそうだ柄のところ見て、小さな突起があるでしょ?」
「突起?」
何だろうとばかりに、刃を自分方に向けながら見ると丁度、鍔の部分に当たる所に小さな突起が有る。
「押してみて」
「うい」

カチっ







バシュ!!   サク
強力なスプリングで、刃の部分が凄まじい勢いで飛び出し、後ろの壁に突き刺さった。





「どう!すごいでしょ、お手製のスペツナヅナイフよ奇襲にはもってこいよ。」
こころなしか嬉しそうだ。
「・・・・・危うく俺の魂が持ってかれそうになりましたよ」
自分に刃を向けていたせいで、飛び出した刃が綺麗に自分の首を掠めていった。

あと少しずれてたら・・・・・あまり考えたくない結果である。
「まだあるわよ」

「まだあるんですか」
「もう一度スイッチ押してみて」
「へい」

カチ

シュルッ

飛び出した刃が柄まで巻き戻されもとの位置に納まった。

『中に高性能モータが仕込んであるから。刃を引っ掛けたらあんたぐらいの体重なら引っ張れるわよ。
これぞタマモ印の仕込み小太刀【任侠道】よ」

なるほど柄と刃の尻の部分と強化ワイヤーで繋がっている。
なかなか使えそうだ。しかし・・・

「任侠道ってどうよ?」
さあ?

「私達はもう少し現場を調査するから、一時間程したら連絡するわ、その間にしっかり見つけておきなさいよ、
あんたがやる以上しっかり責任持って護衛しなさい、子供が嫌いだろうがなんだろうが、勝手にどこかにいこうと
報酬を受け取る以上はプロなんだからね、ヘマするんじゃないわよ。」

厳しい口調で汰壱に促した。

「・・・わかってますよ。」
pi

そういって電話を切った。



要するに、いちいち愚にも着かないつまらないことで、電話するなということだ。
今現在の自分がどうであろうと、依頼主からすれば汰壱は頼るべき存在なのだ。
その自分が満足に子供一人すらお守りもできない様では話にならない。




・・・・とんだ甘ったれである。
自分の認識のいい加減さに嫌気がさすが、そんなことを考えてる場合ではない。
前の事件から大して時間がたっていない。
すぐにでも、狙う可能性は十分にある。


渡された武器を確認して、拳銃を懐に小太刀を腰に差して上からジャケットを羽織って隠す。

「うっし」

小さく気合を入れ直し、楽しき喧騒が流れる広場を走り始めた。
何かいやな感じがする。霊感ではない。ただの勘であるが
汰壱の周りの人が驚き人の波が割れて行く。

俺は猛獣か何かか?・・

少しへこむ



走りながら、護衛対象の容姿・服装を思い出す。
髪の色は栗色で髪型はツインテールにしていて、身長は130センチ程
眼は少し釣り眼で整った顔立ちをしており、そしてピンクのパーカーを着ている。
名前は天上 留美 (てんじょう るみ)



三十分程駆け回っただろうか、メリーゴーランド近くのベンチにチョコンと座っているのをようやく見つけた。
女の子が好きそうなアトラクションを中心に探してようやく見つけた。


こっちに気付いたのか、ぎょっとした表情をしている。
「どこいってたの?おっさん」

ぴくっ

「かってにウロウロするなって言っただろう、そろそろ帰ろうな」      (だれがおっさんじゃゴラッッ!!)
出来るだけ、優しい声で話す様につとめた。

「別にそんなの知らないもん、なんで私があんたの言うこと聞かなきゃなんないの?」

ぴくっ ぴくっ

「今狙われてるんだし、勝手に行動すると危ないだろ?」    (この糞ガキ、一発どつこうか?)
内心(ドツいてやろうか)と、思いつつ出来るだけ笑顔で話しかける。



「だったら守りなさいよ。できなかったら職務怠慢ね。」     
ぴくっ ぴくっ ぴくっ
「・・・・了解」                       (何様のつもりだ)

それだけ言うとスタスタと次のアトラクションの所に向かっていった。こちらの言うことを聞く気はサラサラないようだ。
子供相手にマジギレしそうになるのを、どうにかこうにか押さえ付け、今度は見失わない様にしっかり後からついていった。

二時間後

どうやら先程自分が感じた危機感は杞憂だったようだ。
いくら、狙われてるとはいえ休日の真昼間の遊園地で、白昼堂々狙ってくるのは考えづらい。相手の頭がイカレてなければ、だが。
無論その可能性も視野に入れてタマモは、自分と、このチビを一緒にさせたのだろう。

しばらくの間、汰壱と留美はあちこちのアトラクションを一緒に回った。
一緒にと言っても、汰壱は留美の少し後ろをずっとついていただけだが・・・・。
周囲に気を配りながら、護衛を続ける。何度か留美が、明らかにそっちの趣味がある男に、声を掛けられたりしていたが
そのたびに極道ルックの汰壱が、前に出て

「ドタマ、弾かれたいか兄ちゃん?」
と言うと蜘蛛の子散らすように逃げ去っていった。

だんだん何かを吹っ切りつつある汰壱であった。





留美はお化けや屋敷の前でウロウロしていた。入りたい、だが入れない。
金銭の問題ではない、自分は年間フリーパス券を持っている。何処だって入れるし、お金の問題は無問題である。
身長が足りないと言う問題でもない。身長がいるお化け屋敷って何?と言う話だ。
要は・・・・・・怖いのだ。
一緒に誰かと入ってほしいが、そんな相手がいない。
後ろのボディーガード(留美はヤクザだと思ってる)に頼むのは癪である。
でも入りたい。
でも怖い。

思考ループに陥りながら、留美はちょっと中を覗いたり、少し戻ったりウロウロしている。

むんず

急に自分の身体中に浮いた。というより首根っこの辺りを摘まれている。
自分の意思とは関係なく、そのままお化け屋敷の中に入っていった。

無論、掴んでいるのは汰壱だ。前の方で入るのか入らないのかウロウロしているのに、業を煮やして(周りの視線に耐えかねて)
首根っこ掴んで中に入ったのだ。

「なにすのよ!」
下ろすなり、怒鳴られる。
「後ろの人が待ってたんだよ、入りたかったんだろ?」
「そうだけど・・・」
少し小声になる。
「ならいいだろうが」
付き合ってられんとばかりに汰壱は暗がりの中をスタスタと歩き始める。

実は汰壱はお化け屋敷に入るのは初めてだったが、どうせ子供騙しとタカを括って中に入った。
置いてかれた留美は慌てて、汰壱の腰の辺りにしがみ付きながら、歩き始めた。

中にはゾンビや幽霊などが、いきなり脅かしてくるというお決まりなパターンだった。だがどれもこれも一流の機械や人材を使った
おどろおどろしい造りになっている。流石、夢とお伽のデジャブーランド、半端なく恐ろしい。
脅かされれるたびに、留美は悲鳴をを上げていたが、汰壱は一言もしゃべらない。

グオオオオオオオ
「きゃー!」
「!#?・・・・・」

ガオオオオオオ
「わー!!」
「!!!!・・・・・・」

ウウワアワアワアワ
「いやー!!!」
「???!!!””!”・・・・・・」


「おっさんは怖くないの?」
半泣きの留美が聞いた。
「・・・・・・・・・・」
ビビリすぎて、声が出ていないだけだったりする。

お化け屋敷の恐ろしさをその身を持って体感する。汰壱と留美であった。


結局、留美はあまりの恐ろしさに泣きながら、汰壱は半ば放心状態でお化け屋敷から出てきた。
しばらくの間ずっと留美は、汰壱にしがみついていたが不思議なことに、汰壱は最初ほど留美のことを鬱陶しいと思わなくなってきた。
共通の恐怖を体験することで、溝が少し埋まったようだ。

話を聞けば、父も母も仕事仕事でろくに自分の相手をしてくれなかった用だ、自分の世話は家政婦や召使に任せきりで、
同じ家族だ言うのに会うのは年に数回、というなんとも希薄な家族関係である。
そんな両親でも、数年前にまだ自分が小さかったころに、このデジャブーランドに連れて行ってもらったのだ。
楽しかった。本当に楽しかった。本当に楽しい思い出だった。
それゆえ彼女は汰壱が帰ることを促しても帰らずにいた。
本当ならば今日は両親と来るはずだった。だが事件のせいでそれは、適わなくなった。
彼女は心のどこかで両親が来るのではないか?という切なる願いがあった。

「そっか・・・」
留美の話を聞きながら汰壱はつぶやいた。
なんとなく自分と似ているような気がした。

「でもな、嬢ちゃん・・親父さんも、お袋さんもまだこの世にいるんだろ。だったら、ちゃんと腰を据えて話し合ってみなよ」
「何度もしたもん、でも聞いてくれないの・・・・」
うな垂れながら小さな声で話す。
「そうか?現に今回の事件が無けりゃ、一緒にこれてたんじゃないか。もう一回頑張ってみな
自分が伝えたいことを何時までも、後生大事においとくもんじゃない・・・相手がいるならこちらの声が届く
声が届くなら気持ちは通じる。だから諦めんな」

今度は汰壱は芝居ではなく本当の笑顔で笑いかけた。

「うん」
少し元気が出たようだ
「OK!しかし腹減ったな、なんか」








言葉は途中で途切れた。

何時の間にやら自分達の周りは、囲まれていた。


十数人の道化師に・・・



その道化師たちは皆同じ格好である。派手な緑の服に、真っ白い笑った顔の仮面を着けている。
周りの空気が殺気を帯び始める。
だが誰も動かない、ピクリとも・・・
汰壱は自分の後ろに留美を隠し、懐のトカレフに手を掛けた。

「なんだ?ピエロの軍団を呼んだ覚えはないんだけどな?」

一人のピエロが口を開く

「人狼と妖狐は預かった、返してほしくばその少女をよこせ」


汰壱は絶句した。


















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