ザ・グレート・展開予測ショー

これからの情景 IV【終】


投稿者名:Alice
投稿日時:(04/12/ 7)

 
 
 
 
 
   これからの情景 IV
 
 
 
 
 逃げなければいけない。さもなくば死、あるのみ。
 
 我に返った横島である。憧れがどうとか、美神さんが可愛かったとか、気持ち良かったとか、ルシオラすまんとかは別として、不意に思いついてしまった自分の置かれた立場を冷静に、客観的に見下ろしてみれば、余韻に浸るどころではないというのが、十数分の空白を終えた思索の果てで得た答えだった。
 慌てて横島はベッドに中に脱ぎ散らかしたスーツやらなにやらを引き込んで、慌てて着替えながら逃げ出す算段を立てていた。有体に言えば"ヤリ逃げ”である。
 とりあえず当面三ヶ月の仕事は雪之上やピートにでも回してしまえば良い。さもなくばキャンセルしたって構うまい。違約金なぞなんぼのもんじゃいの精神である。
 次いで、GPS付の携帯電話は使い魔を使役して持たせることで、陽動にすれば良い。逃げ出す間際に丁度良いくらいの時間稼ぎになるだろう。
 これからのことを考えた場合、最低でも一ヶ月は姿をくらますための準備は必要だ。一応、いざという時にために偽造パスポートと免許証は用意してある。それらも三通ほどあればなんとかなるに違いない。
 それよりも心配しなければならないの資金だ。逃げるのは存外金が必要になる。今現在の手持ちでは逃げれて三日。当然カードなんぞ使えば一発でアウト。
 横島個人で隠し口座を用意してはいるが引き出せば履歴は残ってしまうためキャッシュを下ろすチャンスは一度。この業界であれば、いかに電子で護られていようが100%バレない保証なんてどこにもないのだ。
 口座のことは仲間には内密にしてはいるものの、どこで足が付くかはわかったものではない。
 せっかく苦労して口座を開いたのに、と思う部分もあったが命あってのなんとやら。死んだら元も子もなければ使う宛てすら失ってしまう。元よりいざという時のためのもの。今使わないでいつ使う。覚悟を決めて解約と同義で現金は下ろす。持って移動できることを考えて下ろす金額は三千万程度が良いだろうと考える。
 これら一連の行動は、正しく、美神令子直系の弟子である証明。おキヌにしたってこれくらいの芸当はできるだろうが、面前で危機に瀕した横島ほどはいかない。そういった意味では美神が自信を持って横島を送り出したというのもあながち間違いではないが、男としてはかなり最低な部類かもしれない。今後成長の余地は多いにあって然るべきである。
 ただ、彼の逃げ出したい気持ちを非難しきれないのも事実。なにせ相手はあの美神令子である。
 彼女が正気に戻ったら自分はどのような仕打ちを受けるだろうと想像すればするほど、身がすくみ上がる思いにさせられる。
 市中引き回しにされて、都庁から紐なしでバンジージャンプをさせられかねない。
 逃げることを失敗すること。ソレすなわち、死に至る病へと繋がる。
 絶望では人は死ねないことを横島は知り尽くしている。であればかのキルケゴールも大したことはない。
 生まれた瞬間から人は泣いて生まれるもので生まれた瞬間だからこそ人は死に対して怯えただそれだけのために純粋に涙を流すわけであってだから自分は今泣いて良いはずでだって死にたくないし! とかなんとか。
 横島の精神状態はもはやぐちゃぐちゃだったが、兎にも角にも逃げの一手で、一通りのシミュレートを終えたのは流石というべきか。
 いざ抜け出さんと、息を潜めてベッドから降りようとした、その瞬間だった。
 
「逃げたら百辺殺しきるわよ」
 
 気持ちを凍らせる美神の声に、横島の動きが止まった。背後から感じる気配に自分の運命が終わったと錯覚してしまうほどの恐怖。
 逃げる前に捕まえられてしまえば、その意欲を削がれてしまった時点で敗北は必至。
「まったく、あんたの考えなんてお見通しだけど………」
「……」
 横島は振り返ることもできずに返事ができないまま固まっていた。
「今はまだ、その、もうしばらくで良いから、アンタに…そばにいて欲しいんだけど……それでも、アンタは逃げる気なの?」
 美神が、しどろもどろに告げた。いっぱいいっぱいだった。自分でも顔が赤くなっただろうとわかくらいに。
 対して横島は真っ白になった。人生でこれほどに気持ちが空白だった瞬間はないくらいの純白。
 驚きを通り越して、ただ、白くなった。逃げようとしたことなど、一瞬で彼方に消し飛ぶ。
 誰だ、この女は? この人は、俺の知っている人なのだろうか?
 ゆっくりと仕草で美神へと振り返った。
 
 
 
「      」
 
 
 
 言葉をかけようとして、なにも出てこなかった。
 
 目の前には顔を真っ赤にしながらも、不安を隠せずにいる美神令子。
 
 同じように、息を呑んで突っ立っているのは横島忠夫。
 
 それは、多分きっと、これからの情景へと繋がる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ・時代はツンデレ。ビバ美神令子。
 ・長々鬱々と一筆で書き殴ってしまい、読みにくいやもしれんです。
 ・一文を40文字区切りするのはだるかったので勘弁。
 ・下手糞な投稿ですまんです。
 ・連続投稿すみません。
 ・美神令子らしくないかもしれませんが、あくまで俺的な未来予想図。あとちょっとだけ美化。
 ・初めてのGS−SSということで許して下ちぃ。
 ・台詞少ないのは癖です。
 ・気が向いたらいずれまた鬱々と書くかもしれんです。

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