ザ・グレート・展開予測ショー

百貨店パーティー☆10F


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(04/12/ 3)

 
「 〜♪ 」

よく晴れた日曜日のお昼前。 忍び服を着た氷雅は、鼻歌交じりで住宅街を歩いていた。
すると目の前を、丸々と太ったコーギー犬が周囲を見回しながら歩いていた。

「 ‥‥あら? ゼロではありませんこと? 」
《 ‥‥ 》

その犬は立ち止まり、黙ったまま氷雅を見つめていた。

「 ちょうど良かったですわ、いまお宅の家にいく所でしたの
  あなたとは再戦の約束をしたままそれっきりでしたからね 」
《 ‥‥ 》

目つきがさらに厳しくなり、低くうなり始めるゼロ。
忍びである氷雅には、殺気だっているゼロの気配を敏感に感じていた。

ガルルル‥
《 ‥‥‥敵性忍者、確認 》
「 おや? いきなり心地良い殺気ですわね、そうこなくては面白くありませんわ 」

氷雅は、スッとフトコロから手裏剣を取りだすと―――

「 先手必勝ですわ! 」シュバッ!

手裏剣を投げた!

ズガガガッ!

普通の犬とは思えないほどのスピードでかわしたゼロは、氷雅に向かい走りだした!
そして背中から“工作用超硬質ドリル”を出現させ、高速回転させながら氷雅に放つ!

ギュイ〜〜〜ズガガガガガッ!!!!!

ドリルをジャンプでかわす氷雅。 そのドリルはコンクリートブロック塀を貫き、破壊する!

「 おほほほっ たのしくなってきましたわ♪ ―――えっ!? 」

氷雅が着地する前に、ゼロは背中の開口させ小型のロケット弾を発射させた!
そして氷雅の着地点でそのロケット弾は閃光を放つ‥‥!


「 しまっ‥‥‥‥! 」




             眩しいほどの白い閃光の中に消えた氷雅。
             これが少年少女生物兵器たちの、長い1日の始まりであった―――




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                  ここまでのあらすじ
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0F 氷雅・妖岩とゼロ・千鶴のファーストコンタクト。
【乱破+ゼロ】
1F 氷雅・妖岩・せいこう・夏子とゼロ・千鶴・中島の出会い。
【乱破+ゼロ】
2F 千鶴が夏子の母の店でアルバイトを始める中、氷雅と中島が親密になっていく。
【乱破+ゼロ】
3F あゆみ・ムラマサがゼロの存在を知り、日須持教授もゼロの存在に気づく。
【乱破+ポケット】
4F 妖岩が小学校に編入。 あゆみが日須持と初会話。
【乱破+ポケット】
5F 氷雅が高校に編入。 中島と千鶴の仲がますます険悪に。
【乱破+ゼロ】
6F 妖岩の紹介で千鶴とあゆみ・ムラマサが出会う。 一方でゼロが日須持に捕獲される。
【乱破+ゼロ+ポケット】
7F 千鶴・中島・氷雅の三角関係に一応決着。
【乱破+ゼロ+はじめての】
番外編(8F) 蜘蛛巣姫のその後の展開予想。 7Fとリンク。
【乱破+蜘蛛巣姫】
9F ムラマサ家出話。 謎の少女登場。
【ゼロ+ポケット+はじめての】


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                  中編SS『零式・ミッション』
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「 ‥‥! 」

道を歩いていた妖岩が突然立ち止まると、急にある方向に向けて走りだした。

「 妖岩!? 」

いっしょに歩いていたせいこうも後を追う。
―――そして妖岩が向かった先には、道端で倒れていた氷雅を囲むように、通行人が何人か集まっていた。

「 ―――! 」

妖岩は姉の氷雅に掛けより、揺さぶり起こそうとした。
その間に走ってきたせいこうが追いつく。
そして妖岩の必死の揺さぶりにより、氷雅はゆっくりと目を開けた‥‥

「 ‥‥妖岩‥‥ 」
「 氷雅さんどーしたんですか!? 」
「 痺れ薬ですわ、若‥‥ゼロにやられてしまいましたわ‥‥ 」

ゼロの閃光ロケット弾による攻撃で、体が麻痺してしまった氷雅。
それを聞いたせいこうは、少しホッとした表情になり―――

「 自業自得だよ、ダメだって言ったのにちょっかいかけるからー 」
「 否定はしませんが今日のゼロ、様子が少しおかしかったですわ 」
「 様子が? 」

「 あら? 伊能くんどうしたの? 」

そこにせいこうのクラスメイト・香山夏子が通りかかった。

「 氷雅さん、ゼロと戦って負けたんだって 」
「 ゼロと? 」
「 ちょっと油断してただけですわ、次こそは乱破の名にかけて必ず‥‥ 」
「 またそんなこと‥‥ 」

こりない氷雅にあきれ顔のせいこう。 すると夏子は、

「 ヘンねー 千鶴お姉ちゃん、ゼロはもう防衛隊のほうに戻ったって言ってたけど 」
「「 え? 」」

夏子の言葉に疑問に思う3人。 防衛隊に戻ってるはずのゼロがこんな街中にいるはずないからだ。

「 香山、それ本当なのか? 」
「 う、うん 」
( 様子がおかしいゼロ、この街にいるはずのないゼロ‥‥ひょっとして‥‥ )

せいこうは先日、同級生の小田切あゆみから聞いたことを思いだしていた。
ゼロの存在を知ってる日須持先生のことを‥‥(6F参照)

「 香山、千鶴お姉ちゃん今日香山んちの店にいる? 」
「 いるよ 」
「 悪いけど、急いで千鶴お姉ちゃんにこのこと知らせてくれないか? 」
「 いいけど‥‥ 」
「 妖岩はゼロを探すんだ、まだ近くにいるかもしれない 」
「 ‥‥ 」コクッ

せいこうの指示にうなづいた妖岩は、フッと姿を消し、夏子は自宅へと戻っていった。
残った氷雅とせいこうは―――

「 若、素晴らしい采配っぷりですわ、将来上に立つものとしての資質が目覚めてきたようですわね 」
「 あのねー(汗) 」

主君に天下取り(?)を願う乱破にとって、せいこうの的確な指示に喜びをかくせない氷雅。 だが‥‥

「 しかし、なにかおもしろそー‥‥もとい大変そうな予感がいたしますのに、
  この身が動かないとは残念でなりませんわ‥‥ 」

( 氷雅さんは寝ててくれたほうが、話がややこしくならなくていいかも‥‥(汗) )

ムラマサのことを知らない氷雅がこのことを知れば、クラスメイトのあゆみにも迷惑がかかるかもしれない‥‥せいこうはそう考えていたのだ。  


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ちりんちりん‥
あゆみは弁当屋の前で自転車をとめ、かごの中の手さげ袋に話しかけた。

「 じゃああたし買ってくるから、ムラマサここで待っててね 」
《 おう! 》

手さげ袋の中にいた白ネズミ・ムラマサが返事をする。
あゆみが店の中に入るのと同時に、建物の影にいたゼロがその自転車を目標に捕えた。

バサバサバサバサッ
そこに1羽のカラスが飛んできた。
日須持の部下であり、ムラマサと同じ生物兵器のヨシカネである。

《 ムラマサは見つかったカーッ? 》
《 ‥‥今、見つけたところであります 》

ヨシカネの首には、3センチ四方の小型の機械が巻かれている。
時おり赤く点滅するたびに、ゼロの目も赤く点滅していた‥‥

ガタガタッ
《 ん? あゆみもう買ってきたのか? 》

ムラマサは自転車のゆれであゆみが戻ってきたと思い、顔を出した。 すると―――

《 ムラマサみ―――っけ! 》
《 ゲッ、ヨシカネ!? なんでここが!? 》
《 零式のダンナの探索機能のおかげだ! 》
《 ゼロ? 》

ムラマサは下をると、大きなコーギー犬がこちらを殺気あふれる目で睨んでいた。

《 おまえがゼロ? でもなんで日須持の‥‥!? 》
《 カーッカッカッ! 零式は貴様を捕まえるための秘密兵器さ! 》

ゼロとは初対面のムラマサであったが、話に聞いていたのとは雰囲気がかなり違っていた。

《 ‥‥捕獲するであります‥‥ 》

さらに、サイボーグであるゼロの戦闘能力が、自分とは格段に違うことを知っていたムラマサは‥‥

《 じゃあな!! 》
《 あっ、逃げた!! 》

ムラマサは自転車を飛び降りて走り去っていった。

《 零式のダンナ! 裏切り者を捕まえるでやす!! 》
《 了解であります! 》

ガシャーン!
ゼロはあゆみの自転車を倒してムラマサを追う。
その音にあゆみが気づき店の外に出てみると、犬が走り去っていく姿が見え、その上空にはカラスが1羽飛んでいた。

「 あのカラスまさか‥‥ムラマサだいじょうぶ!? 」

あゆみは自分の自転車に駆けより手さげ袋の中を覗いてみたが、中にムラマサはいない。

「 あのカラス、もしかして日須持先生のところのヨシカネ? じゃああの犬は‥‥ 」



《 はあっ はあっ はあっ はあっ! 》
《 カア―――ッ! 待てー裏切り者―――!! 》
《 誰が待つかばっきゃろー!! 》

小さなネズミの速さに比べ、カラス・サイボーグ犬のスピードはそれを上回る。
だがムラマサは、人ごみの中に紛れ込んだり植栽の中を通ったりして、ヨシカネとゼロの追っ手から逃れていた。

( ―――! あそこだ! )

ムラマサは側溝から下水道のほうへと身を隠していった。

《 あっくそっ、逃げられた! 零式のダンナ、居場所はわかるな! 》
《 もちろんであります 》
《 いくぞ! 必ず捕まえるでやす! 》
《 了解(ラジャー!) 》


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


―――喫茶香山/赤城家―――


「 ゼロがこの町にいる!? 」

お昼時でほぼ満席状態の喫茶香山。
ここでウェイトレスのアルバイトをしていた千鶴は、買い物から戻ってきた夏子から事情を聞いていた。

「 そんなはずないわ、だってもうとっくに防衛隊に戻ってるはずだし‥‥ 」

トゥルルルルルッ トゥルルル…カチャ
「 はい、喫茶香山です‥‥‥‥いえ、こちらこそー‥‥千鶴ちゃん、お母さんから電話よー 」
「 お母さんが? 」

カウンターで電話をとったマスターは、千鶴に受話器を渡した。

「 ‥‥もしもし、なに? 」
≪ 千鶴、いま陸曹長さんがゼロを向かえにきてるのよー ≫
「 えっ? だってゼロは急な任務が入ったからってこの前――― 」

電話の向こうでは、千鶴の母親が居間でお茶を飲んでる陸曹長を気にしながら、小さな声で話していた。

≪ そうなんだけど、そのとき向かえに来たのはいつもと別の人だったのよー ≫
「 ちょっ‥なんでそんな人にゼロを渡したのよ! 」
≪ だってゼロのことに詳しかったし、ゼロもその人に黙ってついていっちゃったし‥‥
  確かにいま考えたら、そのときのゼロちょっと様子がおかしかったかなーって‥‥ ≫
「 お母さ〜ん‥‥(汗) 」
≪ どうしよう千鶴、いま陸曹長さんには千鶴が散歩に連れてってることにしてるんだけど、正直に話したほうがいいかしら? ≫
「 ちょっと待って! 」

千鶴は電話を置くと、自分のカバンの中から小型の機械を取りだした。
それは陸曹長からもらった、ゼロに取り付けられた発信機を探知する機械である。

ピッ‥ピッ‥
「 確かにこの町にいる‥‥お母さん、私がゼロを連れていくまで陸曹長さん引き止めておいて! 」
≪ いいけどー 大丈夫なの? ≫
「 ゼロがさらわれたって知られたら、今度こそ自宅休暇が取り消されちゃう!! 」

軍事機密であるサイボーグ犬のゼロは、部隊での優秀な活躍で『犬佐』という役職を与えられており、
特別に外出許可をもらい自宅での休暇を許されている。
以前、家出・部品の老朽化により暴走を起こしたゼロにとって、
再びトラブルを起こしたことを防衛隊に知られれば、休暇中の外出許可は取り消しになりかねない。
千鶴はそのことを心配していたのだ。

がちゃっ‥
「 マスター! すみませんけど今日はこれであがらせてください! 」
「 仕方ないわね‥‥夏子、お店が落ち着くまで千鶴ちゃんの代わりに手伝ってくれる? 」
「 えーっ、あたしも探すの手伝いたかったのにー 」

千鶴は身につけていたエプロンをはずしながら、

「 ごめんね夏子ちゃん、今度なにか埋め合わせするから! 」




―――その頃自宅では、千鶴の母が陸曹長の足止めを実行しようとしていたのだが‥‥

「 ごめんなさいー、千鶴ったら約束の時間忘れて――― 」
「 ‥‥ 」

千鶴の母が持ってきたお茶菓子をテーブルに置く前に、陸曹長はスッと立ち上がった。

「 赤城さん、事情はわかりました。 私どもも零式犬佐の探索に参らせていただきます 」
「 えっ? あのー‥‥ 」
「 零式が何者かの手に渡ってしまったのでしょう、千鶴さんひとりに任せてはいられません 」

先ほどの電話の会話をすべて聞かれてたかのような陸曹長の言葉に、千鶴の母は―――

「 ‥‥まさかウチの電話に盗聴器が‥‥? 」
「 民間人のプライベートを探るようなことは致しません。
  私は唇の動きで大体言葉がわかりますし、普通の人より少し耳がいい‥‥それだけですよ 」


家の中でも着帽と、顔を半分隠したサングラスをはずさない彼女。
20代と思えるその若さで、国家機密であるゼロたちの部隊を取りまとめる地位にあり、
名前も年齢も不明、通称陸曹長‥‥謎多き女性である。


「 あのーこのことは引き渡してしまった私の責任です。 どうかゼロのことは――― 」
「 赤城さんご安心ください。 零式は私どもが全力を持って取り返す所存です 」

陸曹長は、責任を感じている千鶴母に、優しく微笑んで答えた。

「 零式のことを知っている者となると、犯人は限られてきます。
  赤城さん、零式が誘拐された時の状況を詳しく話していただけますか? 」



―――日須持邸―――

「 お茶が入りました 」
「 うむ 」

日須持邸の研究室で本を読んでいる日須持に、助手がお茶を差しだしていた。

「 ヨシカネと零式、2人に任せて大丈夫でしょうか‥‥ 」
「 2人じゃないよ、1羽と1匹 」

細かいツッコミを入れる日須持。

「 心配ない、なんせ私のムラマサ捕獲計画『零式・ミッション』は完璧な作戦だからね! 」
( ‥‥ゴミ問題 ) ボカッ☆

‥‥殴られる助手。

「 零式の探査能力と捕獲能力は低くないよ、
  最大の問題だった零式のコントロールも、昔の研究が役立ってよかったよ 」

ヨシカネに持たせた小型の機械‥‥それがゼロを制御する装置だった。

「 ま、知能しか持ちえないネズミが、武装した零式に勝てるわけがないからね 」

お茶を飲みながら窓の外をながめる日須持。
その窓の外―――ずっと離れた所のビルの屋上では、目をギンギンに見開いている妖岩がいた。

じ―――っ

“忍法・気合眼”‥‥遠くのものを見ることができる忍法、らしい。
先ほどからずっと周囲1キロ程度を凝視しているが、なかなか見つけることはできずにいた。
そして‥‥


「 あれ? 氷雅さん‥‥? 」

氷雅とせいこうを見つけた千鶴の彼氏・中島。 更に、


ピチャ‥
≪ グルルル‥‥ ≫

下水道を走るムラマサの前方、水中から目を光らせる都市下水の怪物が‥‥


暗躍する日須持教授。
逃走するムラマサ。
ムラマサを追いかけるゼロ&ヨシカネ。
ムラマサを探すあゆみ。
ゼロを探す千鶴、妖岩、そして陸曹長‥‥‥‥

すべてを巻き込みながら、日須持教授のムラマサ捕獲作戦は最終段階へと移行していた―――

 
【本日の対戦成績】

○ゼロ―――×氷雅
 

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