ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫奮闘記 17〜the movie goes on 2〜


投稿者名:ぽんた
投稿日時:(04/12/ 3)

俺の名は横島忠夫。最近体力の限界に挑戦するのが日課になってる高校生だ。
俺は今、高校生、GS、映画スタッフの3足のワラジを履いている。

今回、映画製作の苦労話なんかを聞いてもらおうかな。

{ロケ地にて}

エミさんが銀ちゃんにまとわり付きながらバラ色のオーラを迸らせている。周囲の人達は
若干ひき気味だ。あ〜銀ちゃんビビッてるビビッてる。しゃあない助けるか。
そう思い近づいていくと、
「おう、横っち、このキレイな人お前の知り合いか?」

おお!さすが人気商売。腰はひけててもポイントは外さないね〜。
あ〜エミさん怖いから睨まないで下さい。わかってます・・・わかってますって!

「ああ、その美人は小笠原エミさん、その実力と美貌で知られたランクAの超一流のGS
だよ。俺たちにとっては偉大な憧れの先輩でもある。」

こんなトコでどうでしょう?おお!サムズアップ!ご満足いただけたようで・・・

「そっか、相変わらずオイシイやっちゃ。どこでこんな美人と知り合うたんや?」

う〜ん何て答えたら良いんだ?と思ってたら
「横島とは一緒に危険な相手と戦った仲なわけ、あの時は本当にタチの悪い敵でなんども
危ない線を潜り抜けた戦友ってワケ。」

タチが悪いって、あんときゃエミさんの方がよっぽどタチが悪かったような気がするんで
すけどね・・・そうですね〜だいたい1.25倍ぐらい(当社比)

「そうですか、そんな実戦経験豊富な方に協力していただけるなんて光栄です。」

おお、さすが銀ちゃんキレイにまとめたな。
「それじゃエミさん準備の方お願いします。」

そう言ってそこを離れたらそのまま監督に捕まってひきずっていかれた。
そこには主なスタッフが全員が難しい顔をして座っていた。

「なんか、あったんスか?」
そう聞いてみるとヒロイン役のコがボイコットして来ていないらしい。

「ボイコットってそんな登校拒否児童じゃあるまいし・・・」
そう言うと詳しい話を聞かせてくれた。
なんでもそのヒロイン役のアイドル(本人は女優を自称しているそうだ)元々二世タレン
トで他のコに決まりそうだったこの役を親の七光りで強引に奪い取り演出にまで色々と注
文をつけて(銀ちゃんとのカラミを増やせとゴネたらしい)かなり顰蹙を買っていたそうだ。その上今回の撮影に対しても当初の予定よりかなり過密なスケジュールになった事に
ついてさんざんブーたれていたそうだ。

それに関して彼女の所属しているプロダクション(業界最大手らしい)がスケジュールが
過密になった事に対してのギャラの割増とそのせいで流れたほかの仕事に対する補償を求
めてきていたそうだ。当然普通ならそんなふざけた要求は黙殺されるのだが相手が最大手
であるという事とその親である大御所が怖くてむげにもできず回答を引き延ばしていたら
今回のボイコットになったらしい。要するに最後通牒というヤツだ。

取り敢えず今日いる人間で撮れる分だけでも撮る事にして、残った人間で話し合いになっ
た。当然のように俺もその席に座らされた。しかしだこんなもん受けるか蹴るかのドッチ
かしかないだろう?そして受けられないから引き延ばしたんじゃないのか?

受けた場合、当然余計に発生した支払いが予算を圧迫し他に廻すぶんが足りなくなる。
蹴った場合、映画の後半からヒロインがいなくなる。 そりゃ無理があるだろう?
要するに蹴って尚且つ映画が成立するようなアイデアを出さなきゃ駄目って事か?

う〜ん、あ・そうだ!
「死んでもらいましょう。」
俺のこの発言は当然のように物騒な誤解を呼んだようだ。

「いや物騒な意味じゃなくて、映画の中で、オカルトテロの犠牲者になってもらってその
事に対して主人公達は怒りを募らせて一層奮起するってな流れはどうですか?」

この発言が全員に支持されて話し合いは一気に加速した。その結果後半のシナリオを大幅
に書き換えて演出もそれに応じて変更する事。新しいヒロインは実力があってコネが無い
無名の女優から起用する事が決定した。それは良いのだが何故かシナリオの書き換えを俺
がやる事になっていた。当然ゴネたが後からチェックに時間を掛けるぐらいならチェック
する人間が最初から書けば時間の大幅な節約になると言われたのだが何かが間違っている
ような気がする・・・一応俺がおおまかに纏めたものを脚本家が手直しするという分担で
話が決まってその日は解散となった。俺はそのまま除霊現場へと直行した。

除霊と訓練を終えて帰って来るとマンションの入り口で銀ちゃんと出くわした。
「どないしてん銀ちゃん?」

「いや横っちが今日徹夜仕事や言うてたから応援にきたったんや。」

「応援〜?あぁなるほど・・・なんかシナリオにリクエストがあるんやろ?」

そんな会話をしながらドアをくぐるとタマモがいきなりの来客に驚きもせずに機嫌よく迎
えてくれた。タマモは結構人見知りするタチで、他人に対する警戒心が多重構造の装甲の
ように展開しているのだが、相手が俺の友達だとかなり装甲が薄くなるようである。どれ
くらい薄くなるかというとビグザムが量産型ザクになるくらいだ。

「おおタマモちゃん、いきなり悪いな。今日は横っちの手伝いにきたんや。」

「かえって邪魔になったりしないでしょうね?」

憎まれ口を叩いてるように聞こえるが、これは親しみを込めた挨拶みたいなもので実際の
ところ二人は結構仲が良い。タマモがこちらの様子を窺っているのを尻目に俺達は向き合
って話し始めた。

「なあ横っち、この映画の前作ってのは割りと単純な勧善懲悪モノでアクションシーンが
評判をとってヒットしたようなもんなんや。」

「ヒットしたんならそれでエエやないか。」

「一作目はな、今回は続編やからな単純に悪者やっつけて終わりっちゅう展開には不満が
あったんや。せやから直しがはいるのは助かったわ、しかも横っちやし。」

簡単に言ってくれる・・・でもまあ、主役の要望も大事か?・・・
「そんでな、できればホロッとくるような部分も加えて欲しいねん。」

「そんな元のシナリオにまったく無いような事してエエんか?」

「そら横っちの腕次第や。お前ガキの頃から話考えるのウマかったやないか!」

・・・古い話を・・。あの頃のは想像力というか妄想力の産物なんだが・・・・
結局銀ちゃんは言いたい事を言い終わると翌朝仕事で早いからと帰っていった。残された
俺は徹夜仕事になりそうだ。ホロッとするような部分ねぇ〜・・・

結局朝までかかって何とか書き上げることはできた。少しだけ悲恋の要素を入れてみた。

困ってる処を主人公に助けられた妖魔の少女(人間に化けている)が主人公に興味を引か
れ近づこうとする。その為に邪魔な前ヒロイン(七光りアイドル)を殺して側にいようと
するが却ってその事で怒りをかってしまう。命に対する価値観が違いすぎる為に最初は理解し合えないで争いになる。妖魔の少女にとって人間の命など何の価値も無いが目の前の
男だけが、少女にとって大切なものである事を伝える為に敢えて主人公の攻撃を受けて、
倒れ伏す少女。忌わの際の告白を受けて、違い過ぎる価値観とそれを超えて尚、心が惹か
れてしまう事実に気付く主人公。「異種族同士でも心は通じ合う」事に気付く主人公。

まあ、こんな感じだ。ボツになったら後は知らん顔して本職の人に任せよう。
それでも実際に読んだ人の反応が知りたかったので学校に持っていって愛子にだけ見せて
感想を聞かせてもらった。愛子が言うには今までのこのテの映画で”異種族との友好”は
一度もテーマになった事が無いそうだ。というより頭からその可能性を否定している為に
発想自体がでてこないのだろうというのが愛子の意見だった。愛子は目の下にクマを作っ
ている俺を心配しながらも、初の試みという斬新さで押し切れと助言してくれた。

結果としてほぼ愛子の助言通りに話は進んだ。ほとんど手直しも無しですませるらしい。
その次は演出の見直しだ。俺は眠いからと言って帰ろうとしたのだが「シナリオを書いた
人間が参加しないのは無責任だ」と言われて参加させられた。
その後は女優の選考だといって審査員席に座らされてしまった。俺に女優の何をどう判断
しろというんだ?そう思いながら目の前に立っている三人の女優に目をやる。

左端のコは赤みがかった茶色のセミロングで背は低めだが出るトコは出てるトランジスタ
グラマーってタイプだ。真ん中のコは茶色がかった黒髪のロングヘアー、中背タイプだが
左のコより更に肉感的だ。以前の俺ならこの時点で飛び掛っていたかもしれない。
右端のコは黒髪のショートのストレートボブ・・バランスの取れたスレンダーな肢体・・

「右端のコに一票、あとはお任せします。」

それだけ言うと俺は席をたった。後ろの方でガヤガヤいっていたが、すべて無視した。
その日はもう映画の仕事をする気がしなかったので除霊現場に直行してから帰宅した。

次の日の朝、考えてみると昨日は動揺しすぎたようだ。ただちょっとだけ面影が、髪型と
体型が似ていただけだ。選考に落ちていればもう会う事もないんだし忘れてしまおう。
それよりも昨日の態度の事でウダウダ言ってくるヤツがいるかもしれない。だがちょうど
良い機会だ、最近の俺はトラブルシューターのような位置付けになっていたような気がするんだ。俺は飽くまで監修役でしかないとガツンといってやろう。決めた!

新しい決意を胸に現場に着くと、雰囲気が暗い。何事があったのか尋ねてみると・・・

「はあ?特殊効果処理の業者から軒並みキャンセルされた?」

詳しい事情を聞くと、SFX処理や映像の特殊処理を請け負っているスタジオから、契約
を破棄してきたらしい。契約書を交わしている分に関しても違約金を払ってまで仕事を断ってきているそうだ。更にその他の業者に打診してみたが結果は同じ。これでは予定して
いた戦闘シーンが撮影できなくなってしまう。原因を聞いたら呆れかえってしまった・・

なんとヒロインから降板した(させられた)アイドルの所属プロが、イヤガラセで圧力を
アチコチに掛けているらしい。黙って言いなりにならなかったのが、余程頭にきたのかも
知れんが随分と形振り構わないエゲつないやり方だ。こうなるともう八方塞がりだ。
そんな中、皆の視線が俺に集まり、声が揃った”何か良い考えはないか?”と・・・

この件を聞くまでは、もう監修役に徹して余分な仕事は一切するまい、と思っていたのだが流石にこの汚い遣り口には頭にきた。トラブルシューター?上等だ!今日から思いっき
りでしゃばってやるからな。要するにSFX抜きで戦闘シーンが撮れれば良い訳だ。

「皆さんは香港で制作された”九龍幽撃道士”という映画をご存知ですか?」

これは、邦題を”九龍ゴーストバスターズ”というタイトルで日本でも公開された映画で
リアリティー溢れる戦闘シーンが評判を呼んでこのジャンルでは初めて世界的なヒット作
となったものだ。ここの関係者は当然知っていた。

「あの映画の戦闘シーンに協力した本職のGS達の大半がこの映画に参加しています。」

これは意外と知られていなかった事実のようで皆驚いていた。

「彼らの能力をフルに活用した戦闘シーンを作り上げます。その為に必要な演出の変更等
は総て俺がやります。ただしその分の特殊効果の予算は彼らへのギャラに振り替えて下さい。今から一時間で変更を終わらせます、その後の撮影スケジュールの調整等は監督以下
の皆さんでお願いします。その間、俺はGSの皆に協力を要請します。」

そう言って変更点の検討にはいろうとしたときに銀ちゃんが、

「ちょっと待った横っち、それやと俺の”キメ技”の撮りはできんやろ?」

銀ちゃんの言うキメ技ってのは主人公・横山GSの持ち技で一言でいうと分身技だ。
ただし、分身両方の攻撃が実体を伴っていて”次元反転分離攻撃”(ミラー)という技で
子供達にも大人気だ。(もちろんそんな技、実際には無いが)

「アレは一回づつ別の立ち位置で撮ったのを合成するしかないんや。俺のソックリさんで
もおって一回で済むっちゅうんなら話は別やけどな。」

う〜んそりゃ困ったな〜、ソックリさんね〜・・・・ん・ん・ん・ん?

「わかった、それも俺がなんとかする。信じて任せてくれ!」

そう言うと一同はただひたすら頷くだけのようだった。
俺は変更後の演出プランを監督に渡してすぐにエミさん達のもとに足を運んだ。
皆に内幕を含めた事情を総て正直に話し、頭を下げて協力をお願いした。

ピートとタイガーは俺がそこまで深く制作に関わっていることに驚いていたが、あっさり
とOKしてくれた。
エミさんは今回の大手プロの権威をカサにきた遣り口が相当気に食わないらしく俺より燃
え上がっていりようだった。
ただこの男だけはまったく素直じゃなかったが・・・

「ところで横島、お前最近引っ越したか?」

「うん?ああ、先月にな。」

「いや、この間偶々近くを通りかかったんで寄ってみたら無人だったんでな。」
素直にメシをたかりにきたと言え。

「おかげで餓死しそうになったぞ。」

「俺のせいか?」

「なもんでお前がどうしてもと言うなら奢られてやらんでもないが?」
素直に男気に感じたんで力を貸すとか言えんのか?

「牛丼代くらいしかもっとらんぞ?」

「ん〜、特盛りなら。」

「わかった、卵もつけよう。」

「OK!商談成立だな。」

まったく、もう少しスマートにやってくれ。大体お前らへの報酬は一人頭300万以上に
なるって説明しただろ? まあ良い後は最後の切り札に電話して呼び出すだけだ。

「あ、もしもし横島ですけど今日の訓練は郊外の空き地でやりますんで、ええ、はい、そ
れじゃお待ちしてます、所長。あ、ついでに吸引済みの封魔札を持ってきてください。」

この際だ、所長の式神使役のトレーニングも兼ねて協力してもらおう。 銀ちゃんの分身
だがソックリさんがいなければソックリに化けてもらえば良いだけだ。式神マコラに。

こうして総ての準備が整えば後は怒涛の勢いで撮影をこなすだけだが、ちょっとした幕間
劇もあった。所長が来た時にスタッフに紹介したのだが、六道本家の御令嬢ということで
全員ビビりまくっていた。普段身近にいると気付かない(というか気付きたくない)けど
こういう時はしみじみと本物のお嬢様なのだなと思ってしまう。
エミさん達は俺が冥子さんの事務所で働いている事を知らなかったらしく驚いていた。
今まで誰一人あの事務所にいついた人はいなかったそうだ。
エミさんは無言で俺の肩に手を置いて何度も頷いた後、労わるような目で俺を見ていた。
・・・・・やめて下さい。悲しくなるから・・・・・

撮影は順調どころか火のついたような勢いで進んでいった。全員アドレナリン全開だった
敵役側にまわった雪之丞とタイガー、味方側になったピートとエミさんもノリノリだ。

札に封印した低級霊を解放した後で、タイガーの感応能力でカメラに映るまで実体化させ
る。それを片っ端から片付けていくんだが画面効果では式神が大活躍だった。サンチラの
電撃、アジラの火炎、ハイラの針、と、所長もキチンと複数の式神を同時にコントロール
できている。もっとも標的に当てるような攻撃精度で良いという条件でだが。
何も無い空間で相手が吸い寄せられる場面ではバサラの吸引を、瓦礫を吹き飛ばす時には
ビカラの体当たり、と正に八面六臂の大活躍だった。六道所長も自分の式神が活躍して、
それを大勢の人が喜んでくれるという経験は初めてだったらしく一層やる気をだしていた

エミさんの霊体撃滅波などは絵的に最高だった。ただ威力も最高だったので予定外に多い
敵が吹き飛んでしまった。その分は雪之丞に派手に暴れてもらい、ピートとエミさん二人
掛かりで相撃ちに持ち込んだ形にした。さして最後の戦場に立つのは主人公と妖魔の少女
二人きり。情感を込めたセリフの応酬の後、最後はマコラの変化した分身との同時攻撃が
キメのシーンだ。ラストのほの哀しいやりとりの後静かに歩み去る主人公・・・

「カーット!!はい、終了!お疲れさん!」

監督の声で総ての撮影が終了した。地獄の二ヶ月間が終わりようやくクランクアップだ。
視線をやるとエミさん達がこちらに歩いてきている。労いにいこうと思って歩きだしたら
いきなりスタッフ全員が寄ってきて囲まれてしまいもみくちゃにされて、背中といわず肩
といわずバシバシと叩かれた。さんざん余計な仕事を人にやらせた挙句、最後には袋叩き
とは見上げた根性だ。二度とこいつらには関わるまい。

その後打ち上げだなんだと監督らが騒いでいたが、俺は無視してエミさん達と一緒に帰った。こっちの仲間達と一緒にいるとやっと終わったとい実感が湧いてくる。つくづく自分
は映画畑の人間ではないよいう事を思い知る。もう二度とやりたくない。
エミさんが全員に食事を奢るといって誘ってくれたのだが疲労のピークを理由に謝絶した

家に帰ってタマモの顔を見て疲れを癒したら、いよいよ明日からは六道除霊事務所の
高難易度業務への挑戦開始だ。



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(あとがき)
一応映画編の続きなので横島の独白で前半と統一しました。
次回は全部第三者視点で書いてみようかな・・・
でもやった事ないんですよね〜
もし何かコツなどご存知の方いらっしゃいましたら是非ご教示を。

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