ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫奮闘記 8〜新生活〜


投稿者名:ぽんた
投稿日時:(04/11/29)

{六道邸 応接間}

美神美智恵は冷たい汗をかきながらこの家の当主と対峙していた。

「先生は、横島君をどうするおつもりなんですか?」
自分が劣勢にあることはわかっているが、このまま引くわけにもいかなかった。
”彼”は戦闘力に関しては世界最強というだけでなく人界唯一の文殊使いという希少な存
在なのだ。加えて娘の令子にとっては(本人は絶対に認めないだろうが)精神的な支えに
もなっており、ある意味彼に甘えきっていると言っても良い。何とか美神家に取り込みた
いと以前から思っていたのだ。

「それはまだ〜わからないわ〜、本人と話してみない事にはねぇ〜。でも〜ウチの娘は令
子ちゃんと違ってまだまだ未熟だから〜彼みたいにしっかりした男の子がサポートに付い
てくれたら安心できるわね〜〜〜」

「つまり、冥子さんのお相手として横島君の事を考えているという事ですか?」

「それは本人達の気持ち次第だから〜、わからないけれど〜もしも冥子が彼に好意を持っ
て〜彼がその気持ちに応える気になったら〜反対する理由は無いわね〜」

要するに今まで令子のいたポジションに自分の娘を据えて、一族に引き込もうとしていた
動きを六道家がそのまま引き継ごうとしているのだ。 冗談ではない!
「で・ですが先生、今の横島君の状態がはっきりとわからない間は・・・そう!令子に直
接彼に会って話しをするように言いますので・・・」

「この廃業届の横島君の待遇の欄を見たらね〜、色々と気になったからお友達にお願いし
て調べてもらったの〜。これがその報告書なんだけど〜、見てくれる〜」

そう言って差し出された報告書に目を通してみると・・・あるわあるわ、まず所長本人よ
り多くの除霊件数をこなしている事、にも関わらずとっくに見習のノルマを果たしている
彼を正式のGSとして認定していない事。申告されている彼の去年の収入が2億円を越え
ているにも関わらず実際に到底そうとは思えず差額分の金額など財務上の不透明さ。そし
て東京都の最低賃金基準をはるかに下回る待遇の改善を求めただけで解雇された事・・・

これが明るみに出ればGS協会、国税局、労働基準監督所の一斉査察が入るだろう。
その結果出てくるのは認定時における不正、脱税、不当労働行為、不当解雇のオンパレー
ドだ。・・・駄目だ!ある程度までならお灸をすえる意味でも見過ごすつもりだったが、
幾らなんでもこれでは確実に免許剥奪のうえ永久追放だ。なにせ虐待した相手が悪すぎる

彼の事は本人の希望でマスコミには一切流してないが業界の上層部で彼の名前を知らない
者はいないのだ。あの悲恋を含めた彼の功績を知るほとんどの者が彼のシンパと言って良
い。本人だけが知らないだろうが・・・

要するに令子本人を動かせば、破滅させる事は簡単だという事だ。加えてこれが提出され
てからの短時間でこれだけの事を調べ上げたということは協会内の六道家のシンパの多さ
と根回しはすぐにでも完了するという示唆だろう。 くっ!完全に手詰まりだ。

「そういうば先生、ウチのひのめは横島君にとても懐いていて、横島君もまるで自分の妹
のように可愛がってくれているんですよ。近いうちにひのめを連れて会いに行こうと思う
んですけど先生もご一緒にいかがですか?」

さて、どう出る?
「そうねぇ〜、横島君は子供が大好きみたいだから喜ぶと思うわよ〜。私は遠慮するから
二人で行ってきたら〜〜〜。」

これで最低限私が直接彼に会うことだけは確保できた。
ある程度は調査済みのうえ、こっちの出方は予測済みってわけね。向こうもすぐに動くつ
もりはなく、じっくりと身上調査からってとこかしら? 上等!これは長期戦になるわね
かなり大きなアドバンテージを取られたけどまだ勝負は終わっていないわ! 美神家の女
には”やられっぱなし”など似合わないのだから・・・





翌日放課後

俺は学校からの帰り道、昨日の銀ちゃんとの会話を思い出していた。

「おう、横っちココやココ。スマンないきなりで。」

「いや、かまへんよ。俺も頼み事する立場やし。」

「ああ、バイトやったな。けど美神さんとこはどないしてん?」

「あ・クビんなった。ほんで急ぎで金がいるんでアセッてんねん。」
そう食費だけならなんとかなるが、やはりタマモも女の子。着るものとか小物とか色々と
買ってやりたいではないか。

「クビか〜、まぁ、あそこハードそうやったもんな。せやけどそんな横っちにピッタリの
バイトがあんねん!」

「どんなん?」

「まぁ局のバイトやねんけど名目上は大道具やけど実質は雑用使いっパシリ全般や。体力
的にはキツイけど金はエエで。それに急ぎで金いるんやったら最初の一月だけでも日当制
にしてくれるよう頼んだろか?」

「マジで?うわぁメッチャ助かるわ銀ちゃん!さすが幼馴染!」

「まぁええって、困った時はお互い様やないか。  ほんじゃバイトの話しはこんくらい
でエエか?ほんならお互いの近況っちゅうヤツでも話そうやないか?」

そんで結構遅くまで話し込んでタマモの事も一応銀ちゃんには話したんだよな〜、もちろ
ん九尾ってとこだけはボカしてね。けどタマモの服を買う為にって話をしたら「なに父親
みたいな事言うてんねん!」って笑われちまったけどな。まぁ良いか。

さって「ただい「お帰りヨコシマ!」ま」

くぅ〜やっぱ迎えてくれる人がいるって良いな〜。ヨッシャ!今日から頑張るぞ〜
「あ・タマモ俺今日からTV局でバイトだから。あ・これお前の晩ごはんな、あと遅くな
りそうだったら先に寝てて良いからな!って言うか夜更かしせずにちゃんとねろよ!?」

タマモはちょっと淋しそうだったが笑顔で「行ってらっしゃい」と言ってくれた。う〜ん
俺の中で労働意欲がフツフツと湧いてくるぜ〜。さぁっ!どんな仕事でもかかって来い!




ヨコシマがやたらと張り切って出かけて行った。そんなに楽しみなんだろうか?話を聞い
た限りでは、霊能力とは全然関係ない仕事のようだったが何であんなに楽しそうだったん
だろう?紹介してくれた友達のせいだろうか?それとも「てれび局」の仕事が楽しいのだ
ろうか?いまひとつ良くわからない・・・とりあえず、てれびを点けてみよう。ヨコシマ
が出るかもしれない。

てれびを点けてしばらくたつと誰かが訪ねてきたようだ。誰だろう?扉を開けてみると・

「こんばんは、タマモちゃん。」
そこには長くて綺麗な黒髪をした優しそうな女の人が立っていた。あれ?この人確か・・

「こんばんは・・・《おキヌちゃん》だっけ?」

「うん、そう。ちゃんと覚えててくれたんだ?」
ふわりと、とても柔らかい微笑を浮かべながら部屋の中に入ってきた。

「そりゃ名前ぐらいはね。・・・ところでどうしたの?いきなり。」

「うん、タマモちゃんどうしてるかなぁ〜って気になっちゃってさ・・・」
そう言いながらキョロキョロと何かを探している。こんな狭い部屋で・・・

「気になったのは私の事だけ?」
野暮を承知できいてみた。

「う〜んと、あと横島さんの事もチョッピリ・・・えへへ。」
ちょっと赤面しつつも微笑みながらこたえてくれる。

あぁ、なんだろう?この人の笑顔はとても安心できる。この人は信じて良い人だ。絶対に
裏切らない人だ。 私の魂がそう言っている。

「ヨコシマなら出かけたわよ。バイトだって言ってた。」
一応そう教えてあげることにする。

「え?バイトってなんの?」 あれ?おキヌちゃんには言ってないのかな?

「友達に紹介されたてれび局の仕事って言ってたわよ。」

「友達って?・・・お・男の人かな?」  何やら不安そうだ・・・

「わからない、《銀ちゃん》って呼んでたけど?」   あ・露骨にホッとしてる・・・

「ああ、横島さんの幼馴染ね! でも横島さん急にバイト増やしたりして大丈夫かな?」

増やす?どういう意味だろう?ヨコシマは一つしか仕事はしてないハズなのに・・・

「増やすってどういうこと?何を言ってるの?」

「え?だって美神さんとこのバイトだけでも大変なのに、更に増やすなんて・・・」

どういう事だ?おキヌちゃんはヨコシマがクビになった事を知らないんだろうか?言うべ
きだろうか?黙っていた方が良いのだろうか? でも知っていて黙っていたのが後でバレ
たら嫌われるかもしれない。 人間なんかから幾ら嫌われようが構わないが、おキヌちゃ
んとヨコシマに嫌われるのは何だかイヤだ・・・

「ヨコシマは美神の事務所はクビになったって言ってたよ。だから新しいバイト探すんだ
って《銀ちゃん》に紹介を頼んでたみたいよ?」

「そんな・・・私なにも聞いてない!」 あぁ真っ青になっちゃった。

「私も詳しい話は聞いてないから確認してみたら?」

「うん、わかった。帰って美神さんに聞いてみる。ゴメンね、バタバタしちゃって。あ・
これ来る途中で買って来たのいなり寿司、よかったら食べてね。じゃぁまた!」

それだけ言うと血相を変えて走り去っていった。あんな状態でも私を気遣ってくれるなん
て・・・なんだか悪い事したみたいだ・・・  ヨコシマ早く帰って来ないかな・・・




さてTV局での初仕事だが・・・ とにかく目が回るような忙しさだ、次から次に用事を
言いつけられる、さながら戦場のようだ。周囲の人の名前もまだ覚えられないけど俺が最
年少なのは間違いないんで全員に敬語を使って言われた事をハイハイと聞いてりゃ大丈夫

そんなこんな初日当をもらってビックリした。4時間しか働いたないのに5千円ももらって
しまった。こんなに沢山もらっても良いんかな? それともこれが富の偏在ってヤツか?

まぁ、給料が多くて文句を言ったらバチが当たる。ありがたくもらって帰ろう。
さって急いで帰んないとタマモが待ってるかもしれん。いや、もう寝てるかな?

とりあえずこのバイト料で何を買ってやろうかと色々考えながら俺は家路に着いた。







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(あとがき)

冒頭にブチかました権謀術数の応酬は書いてて楽しかったんですが読んでみて如何だった
でしょうか?重いか?暗いか?クドいか?さてどれでしょう?

あと恋人=???未定のままですが 、ママはおキヌちゃんになりそうです。

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