ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫奮闘記 7〜捨てる神と拾う神〜


投稿者名:ぽんた
投稿日時:(04/11/28)


その日、俺は久しぶりに朝から学校に登校した。
すると何やら妙に教室中がざわついているので、隣の席の机妖怪、愛子にきいてみた。

「なんかエラく雰囲気がざわついてるけど理由知ってるか?」
あれ?なんでそんな呆れたような目で俺を見るんだ?

「やっぱり横島君が朝から学校にいるのが珍しくて何かの前触れかって不安がってるんじゃないかしら?」

アッサリと言われてしまった。俺ってそういう扱いだったのか?これはイジメか?イジメなんだな? い・いや早まるな!俺にはまだピートにタイガーという親友がいるじゃん!

「よ・横島さん!?どうしたんですか一体?」

「横島サンに一体何が起きたんジャー?」
訂正:テメエらなんて親友でもなんでもネェや!

「うるせえなぁ!バイトを昨日付けでクビになったんだよ。」

「なんでまた・・・セクハラのしすぎですか?」

「いんや、賃上げ交渉したらクビになった。」

「「な・なんて無謀な・・・・」」
やっぱ周りから見るとそうなのか。まぁ過ぎた事は忘れよう。本当は学校なんぞ辞めて働こうかとも思ったんだが、それをやるとあのババアに殺されかねんからな〜
そーゆー訳で出席日数を確保しつつ稼げるバイトっていうとガテン系かな?それとも0円の
スマイルでもふりまくかな?

「まぁ、だから今日から新しいバイトを探さにゃならんのだがその前に一旦学校に来てリセットしようと思ってな。」

「リセットって?どういう意味よ?」

「う〜ん要するに生活リズムの見直しだよ。朝起きて学校に行き放課後にバイトする。」

「「「そ・それじゃぁまるでまともな人みたいだ!!」」」
こいつらが俺の事をどう思っているかは、よ〜くわかった。今後の参考にしよう。

「だから、まともになるんだよ!もう良い!今日はお前らとは口きかん!」
俺はそう言い捨てると買ってきた求人情報誌を読みふけった。



放課後、俺はバイトを決める前にGS免許の廃止手続きをしなきゃならない事を思い出していた。なんでもGS業界から完全に身をひく場合はGS協会で廃業届を出さなければいけないそうだ。別に免許に未練は無いがやはり事前に小竜姫様の許しを得るべきだろう。

とりあえず妙神山も再建後、電話が通じるようになったので連絡を入れてみた。

「はい妙神山修行場です。」 いきなり小竜姫様がでてしまった。

「あ・横島です。・・・実は
俺は最近の事情を説明した後で廃業に関する許可を切り出してみた。

「お話しはわかりましたが、何故私の許可を求めるのですか?」

「え?いや、だって何の取り柄もなかった俺にきっかけを与えてくれて、その後も教え導いて見守ってくれたじゃないですか。GS免許を取れたのなんて100%小竜姫様のおかげですからね。」
俺は本音をそのままぶっちゃけてみた。

「・・・わかりました。貴方が私に対して弟子として礼儀を尽くしてくれるのは嬉しく思いますが、貴方自身の人生です。思うように生きなさい。」

小竜姫様ならそう言ってくれるだろうとは思っていたけどやっぱりホッとする。
「ありがとうございます小流姫様。」

「ただし一つだけ言っておく事があります。たとえGSを廃業しても貴方が私の弟子である事は変わりません。妙神山の門はいつでも貴方の前に開く事を忘れないで下さい。」

うわっ!マズイ!泣きそう・・・
「はい、わかりました。」

「パピリオも待っていますよ。」

「・・はい。」 
いかん、小竜姫様には一生アタマがあがらんぞ。姉のような、と言ったら神様に対して失礼かもしれんが何とも包容力があるよな〜。神様だからなのか小竜姫様だからなのか・・

「よっしゃあ!廃業届出しに行くか〜。」
俺はGS協会に直行した。


さて、これが廃業届の用紙か。当たり前だが初めて見るな。 ん?理由?さて何と書こう
ー時給255円で雇用されていたが生活苦の為、賃上げを要求したところ「才能の無い丁稚の
分際で分不相応な要求をしたので解雇」された為ー

うん、大体こんなトコだよな。間違ってる所はひとつも無い。事実のみでの構成だよな。
「すんませ〜ん、この書類お願いしま〜す。」
俺は窓口のお姉さんに提出すると、タマモの待つアパートへの家路を急いだ。




今日はヨコシマが教えてくれた「図書館」というところで一日中、色々な書物を読みあさっていた。身に付けるべき知識は膨大な量になりそうだ。

カン・カン・カン・カン
階段を昇る足音がする、この音は・・ヨコシマだ!
「お帰りヨコシマ遅かったわね。」

そう言って出迎えるとこの男はとても嬉しそうに優しく微笑む。
「あぁ、ただいまタマモ。ちょっとしたヤボ用ができちまってね。」

「ヤボ用って?」

「うんGSの廃業届を協会に出してきた。」

事も無げに言われた内容は「ちょっとした」どころではなく、
「廃業って本当にやめちゃうの?」

「ああ、別に問題無いだろ?」

問題が無いどころではない。技能職というのは昔も今も能力に応じて高い報酬が得られる
はすだ。この男程、強大な力の持ち主ならいくらでも稼げるだろうに・・・
「もったいないんじゃないの?」

「?ああ、別に良いんだよ。金儲けの為に強くなったわけじゃない。」
???ますます訳がわからない・・・

「じゃあ、なんの為にそんな大きな力を身につけたの?並大抵の努力じゃかった筈よ?」

「単純だよ、大切なものを守りきれるだけの力が欲しかった。それだけさ。」

それだけでココまで強くなれるものだろうか?今までに何人もの退魔師を見てきたがこの男程の力を感じた事は一度も無かった。「守る為の力」のためだけに人はここまで強くなれるものだろうか? それとも過去に何かあったのだろうか?この男にこれほどの決意をさせるだけの「何か」が・・・ 無性にその事が知りたかったがそれを聞くべき時が今で
はないことを私の中のなにかが囁いていた。

その時急に「電話」という機械がなりだした。

「はい横島です、え?銀ちゃん?うん今? 出れるけど・・ あっ!そうや銀ちゃん日銭の稼げるバイト知ってたら紹介してくれへんか?・・・ある?うんわかったスグにそっち
向かうわ!ほな!」

「タマモ!ひょっとしたらバイトが決まるかもしれん。ちょっと出かけてくるから留守番頼むな!」

急に元気よくなったヨコシマを私が不思議そうに見ていると・・・
「心配すんなタマモ! 絶対お前にひもじい思いなんかさせんからな!」

そう言い終わるやいなや飛び出していってしまった。
そういう心配をしていた訳ではなかったのだが・・・ 本当に不可解な男だ。自分の為に
という発想が全くと言って良い程ない、すべてが誰かの為、他人の為だ。私以外の誰かの
事もああやって心配しているのだろうか?それとも私の事だけを考えてくれているのだろうか?  私の事だけだったら・・・・・・・・嬉しいカナ・・・・




その日の深夜、六道邸応接間にて

オカルトGメン隊長、美神美智恵は六道家当主である幽子女史に急な呼び出しを受け応接
間のソファーにその身を沈めていた。

幽子女史の教え子だったことのある美智恵としては呼び出されれば応じない訳にはいかなかったがそれにしても珍しい事態ではあった。
(一体何事かしら?こんな時間に呼び出しなんてちょっと普通では考えられないけれど)

美智恵が黙考している時にドアが開き幽子女史が入ってきた。その手に何か書類のような
もの持っているようだが・・・

「美智恵ちゃ〜ん、こんな時間に急に呼び出して〜ごめんなさいねぇ〜〜〜」

「いいえ先生、どうかお気になさらずに。何か相応のあるはずと思っているのですが?」

「話しが早くて助かるわ〜。まず、これを見てちょうだい〜〜〜」

そう言って先生が差し出した書類を見ると廃業届のようだ。珍しい物でもない、毎年必ず
廃業するものは少なからず出る仕事だからだ。GSという職業は・・・ 一体これが・・
「よ・横島クンッ!?」

本気で驚いた。横島君は娘の事務所に勤める見習スイーパーであるが実力では上司である
娘をも上回り、アシュタロス戦役を勝利に導いた英雄でもある。彼にとっては大きすぎる
犠牲と引き換えにして・・・
いや、今はそれどころではない

「先生、何故この書類がここに?」 私は当然の質問を発した。

「今日の午後に〜横島君が届を出しにきた時に〜偶々協会の幹部が窓口のある事務所内に
いたのよ〜。その彼が横島君の名前に気付いて私に連絡してくれたから〜私の一存で差し
止めたの〜 あの戦役の英雄が廃業なんてぇ〜まずいでしょう〜〜〜」

マズイどころの話しではない!一体何故廃業なんて馬鹿な事を・・・そう思いながら書類
の理由の欄に目を留めた時、全身の血が音をたてて引いていったような気がした。

「令子ちゃんが〜放り出しちゃったみたいね〜」

私はかろうじて喉から声を絞り出した。 多分、今の私の顔色は真っ青だろう。
「私に・・・何をしろと・・・?」

「何もしなくて良いのよ〜と言うよりして欲しくないの〜。ただ美神家が切り捨てたもの
を六道家で〜拾おうと思ってるだけなのよ〜〜〜。良いでしょう〜〜〜?」

満面の笑みを浮かべながらの発言だがなんとも背筋が冷たくなるような笑顔だった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(あとがき)
タマモ=娘、小竜姫=姉、だと恋人=???誰にしましょうかね・・・


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