ザ・グレート・展開予測ショー

デッド・ゾーン!!【その4】から(下)


投稿者名:HF28号
投稿日時:(04/11/28)




 「よー姉ーちゃん!また何時でもよってってなーっ」

 「はあーいありがとーっ」

 屋敷の主人がにっかり笑って手を振った。美神も負けじと腕を振る。


 そう、美神らは朝の清々しい太陽の下、過去に別れを告げることとなってしまったのだ。



 それはこういう事である。



 ヒャクメが戦闘を終え迎えに戻ると、すでに出来上がってる人々が広間に転がっていた。

 おい、横島忠夫や、あんた未成年ちゃうんか?

 聞きたい衝動を押さえ、なぜこうなったかを観察すると、何故か放置されたカラオケと時代錯誤に転がるビールや焼酎、ワイン、ウイスキーなどの空ビンに眩暈を覚えた。どうやって取り寄せたかは聞いていけないのだろう。うん、聞いてはいけない気がするね。


 「よう眠りはってなあ・・・」

 『す、すみません・・・』

 「いいえー、気持ちのい〜い楽しい方達ですし、迷惑なんてとんでもありません。それに明日は何も無い日ですから」

 柔らか〜い微笑みで言う女性に、穴があったら入りたいくらいヒャクメは追い込まれた。

 なぜこんな良い人に迷惑を掛けるんだ、こいつらはっ!

 そして、酔いが覚めるの待っていたら、夜が明けちゃったわけである。



 西郷は・・・まあなるようになってたんじゃない?(投げやり)








 「それで、高島さんの前世って結局なんだったの?」

 時代を戻る最中、移動フィールド内で美神が聞いた。

 『・・・神族です』

 「まさか!」

 あっちでメフィストにキャメルクラッチを仕掛けられた高島さんと、そのまま会話に華を咲かせる横島クンがそんな・・・。

 『それも、極めて強力で神魔の上層部からマークされるほどでした・・・』

 抹殺命令とは流石のヒャクメも言えなかった。

 「それ、言わない方が良いわよね・・・」

 アイツらには。

 『ええ、彼を転生させるのにさえかなり無理をしていたようですから、無闇に自覚させない事が得策です。記憶にプロテクトを施されていたのもそんな理由でしょうし・・・』

 「ま、べっつに良いんだけどねー。アイツはアイツだしさ」

 『そうですね』

 くすっ、ヒャクメが笑った。



 プロレス技で落ちかけていた高島は、今の会話をさりげなく聞いていた。判っていたさ、最初に『3年前』と聞いた時に。

 人間が人間に転生するには大あれ小あれタイムラグが発生するのは知っての通りだが、3年はあまりに短すぎる。

 過去を封じ新たに生を迎える心構えの期間が要るのもあるし、昔に死んだ者を優先する精神が根底にあるからな。

 もしそこからはみ出た転生をしていたなら、それは前世で何か重大な事が起きた証拠だろうに・・・。

 それにしても、神族かあ、実感湧かんなあ。

 けど、親戚縁者を総浚いしても俺だけ霊能持ちなのもそれが原因なんだろうし・・・。


 「高島、何ほうけてんだ?」

 「い、いや、別に・・・」

 『何?もっと『ほれる』ことして欲しいの??』

 メフィストよ・・・君は間違っている。誰でも良いから指摘してやれ。

 ぐぎゅぎゅーっ、何か別の技に変化しかけたところで彼女はぱっと手を離した。

 間もなくこの空間を抜けるようだ。奥に空間の終焉を示す明るい光が見えてきた。

 だから手を離してくれたのだろう『ほれる』の本当の意味に気付く事無く。

 もうコレは自分で教えるしかないんか・・・

 この先を考えるとちょっと泣けてきた高島であった。



 「さってと、通常ストーリーに戻るわよ!みんな、準備は良い?」

 仕切り屋美神が、パンパンッと手を叩く。

 服装チェック良ーし、配置チェック良ーし、文珠準備完了!








 「何をしている!」

 西条、もとい、西郷が弓一式を手にしたまま草むらを飛び出した。彼に寂しい一夜の記憶が無いのは救いだろうかなんだろうか。それでも、元気一杯飛び出す姿に他のメンツは罪悪感に苛まれ見えないところで涙を拭う者までいた。

 「なんで、私に似ているの?」

 微妙に棒読みで美神に向かうメフィスト。

 「そんなはず、そんなはずないわ〜」

 美神もちょっと腑抜け気味に神通棍を振るう。



 こうして、デッドゾーン【4】の残りのストーリーが若干の白々しさを残しつつ滞り無く始まった。








 でもってオマケ。

 『ひどい、ひどいのねー、老師様〜っ』

 さめざめ泣くヒャクメの手元には、カラオケや酒に関することまで事細かに記すように残された千年前の神界警察による始末書請求が届いていた。

 そして、それに同じく、現在の始末書もキッチリ耳をそろえて出すように!と嬉しくないお達しも。

 不幸なりヒャクメ。

 好奇心は身を滅ぼす、そんな言葉が良く似合う彼女であった。

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