ザ・グレート・展開予測ショー

デッド・ゾーン!!【その4】から(中の後編)


投稿者名:HF28号
投稿日時:(04/11/27)


 ヒャクメの目の前には物凄いパワーをさり気なく隠す1組の男女が佇んでいた。

 『あらー捕まえてくれたの?ありがとー』

 それはそれは嬉しそうに、ボブカットが可愛らしいどこかで見覚えがある顔の女魔族。

 『助かりました。さすがヒャクメ様』

 こっちは神族だ。頭髪が後退し、寂しさと切なさが伝わってくる丸メガネの彼も覚えがあるような気がする。

 『え?え?どういう事??』

 『わたしはー魔界保安部のー捜査官ですー。その神族がー』

 『その彼が、魔界と神界で――ああ、私は神界警察で警部をしている。立場の都合上、名前は教えられないのが心苦しいが・・・』

 魔界保安部と神界警察・・・噂で聞いたことがあったが実在しているなんて思いもしていなかった。しかも、合同捜査中に見える。

 『・・・え、えーと、もしかしてこの彼が何かやったんですか?』

 そろっと、足をどかすヒャクメ。すかさず警部が特殊な術で括られた手錠を破廉恥神族に嵌めた。こんな事をされてなお、男は目を覚ます様子が無い。ちょっとやりすぎたかなーとか良心の呵責に芽生え始めたヒャクメに女捜査官が力説する。

 『それが酷いのよー!魔族と神族、それに人間の美人さんをーかたーっぱしから煩悩だけで襲ってー、もー大迷惑だったのよーっ』

 両手に拳を作って、なおも言い募る彼女。

 『おんなの敵はー葬らないとーっ!』

 魔族なだけあってやっぱりどこか過激な思考があるが、言っている事はそう外れちゃいないようだ。

 『貴女はご存知ありませんでしたか?』

 前科数千犯は数える悪辣卑猥な指名手配犯をまるで知らないように対応するヒャクメを警部が注視する。

 『なるほど、未来のヒャクメ様でしたか。そう言えば、あなたはまだ産まれてそう経っていない時期でしたっけ』

 『そーなのー?けどーここでヒャクメ様が捕らえるのはーきっとー歴史に組み込まれているのよーそうじゃなきゃ可笑しいものー』

 『??』

 会話が理解出来ないというか、ぶっちゃけどうすりゃいいのか判らないヒャクメ。

 『ああ、いいですよ。我々のことは気にしなくても』

 『そーそー。それにープライバシーの問題もあるからー、あんまり情報を教えたくないのー。ごめんね〜』

 『いえ、心得ておりますので、お気になさらずに』

 あ、そう言えばとヒャクメは気付いた。

 『あの、少し質問いいですか?』

 『答えられる範囲なら』

 半ハゲ警部がやんわり言った。

 『見たところたいした罪を背負っているように思えないんですが、何故神魔で合同に捜査しているのですか?』

 『えーっとそれはー』

 『彼は、元々神界警察の優秀な警備要員だったんです。しかし、何時の頃から女性の色香に迷って、細かい罪を重ねていって・・・』

 『それがぜ〜んぶセクハラとか痴漢とかだったから、女の子みんな怒っちゃったの〜』

 『だから罪の割りに、その逮捕が急がれていたんですよ・・・』

 『へ、へー・・・』

 さすが、横島さんと高島さんの前世なだけある。やることなすことセコイくせに何故か才能があるなんて・・・。

 『けれど、彼はそう悪い男でもないから困るというかなんというか・・・』

 はーああ、言い難そうに警部が口篭もる。

 『おんなのホントの敵はーちゃーんと潰してくれるしー、ホントにピンチに陥ったらー種族を越えて助けてくれるのー』

 女の本当の敵・・・きっと悪質なストーカーやねちっこい嫌がらせをする迷惑極まりないセクハラ上司などだろう。

 本当のピンチは万策尽きて退く事すら出来なくなったり、差別等で理不尽な退治をされそうなときなどか。

 『それにー抱きついたりする相手もー弱い子とか反発できない子とか避けてー気が強くて芯のしっかりした相手ばーっかり選ぶのよー』

 ね?悪いんだか悪くないんだか判らないでしょー?


 と、そこでケダモノが目を覚ました。


 右見て左見て後ろ手にされた手首見て見上げる。

 『おおっ!』

 男は真上に見えたハゲが月光を反射して煌めく姿にソイツが何者か思い出した。

 『警部、久々ッスねー』

 『変なところで判断するな!!』

 警部怒りの鉄拳で、彼はまた意識を飛ばした。


 『お見苦しいところをすみません・・・。あー、まだ質問なんかありますか?』

 何故かフランクなった警部はとってもとっても怖いです。

 しかし、聞くべきことは聞いておきたかったのでヒャクメは勇気を振り絞った。

 『この者と同じ魂を持つ男が私が住む時空に居るのですが、その彼の前々世の記憶にプロテクトが掛かっていて気になりました。もしかしてそれが今回の捜査に関係あるのでしょうか?』

 『・・・ある、というしかないですね。それ以上は』

 ペケ。魔族が口元に指でペケマークを作った。

 『そーそー、それに関することなんだけどー、もしその男が生まれ変わるとしたらー何か希望がありますかー?』

 『あ、こら!』

 ハゲが止めるが。

 『だーってー、捕まえたのにご褒美が無いなんて変だわー。それくらい良いじゃないーわたしの権限でなんとかできるわー』

 と、いうわけでありますかー?

 『希望って言ったって・・・』


 あった。あったあった!


 『その者が、胸の小さな女性をなじらない性格にして下さい!それだけで私の行動全てが報われます!!』

 『おっけーっ!きっと次に世に生まれでた時は、貧乳も巨乳も別け隔てなく好む者になってるわー♪』

 ぴーすっ。可愛く決めた女性捜査官。魂で性格が決まるわけじゃないが、少なからずその人物に影響力を持つのだ。


 『それから、これは私から』


 ぽうっとハゲの指先に点った神通力の塊がヒャクメの手の平に乗って体内に吸収された。すると、さっきまですっからかんだったパワーがみるみる蘇り疲れが消えていた。


 『うわっ・・・凄いですねー』

 『これぐらいは、ね。本来なら私と彼女でそこの彼を・・・殺す、予定だったんですが、性格矯正後、転生させる道に進める可能性が出来たのです。心より感謝いたします』


 かなり、怖いことを言われた気がする。


 『だってーその人、すっごく強くってホントに強くって、つよ、すぎたの・・・』


 消さないと神魔のバランスが狂ってしまうって、上から圧力が掛かっていたの・・・。

 魂を化学的に分解して、もう生まれ変われないように、輪廻転生から外れるように・・・。

 それが出来るのがわたしと警部の能力だから・・・。

 根は善い男なのに・・・。


 しゃがんだ女捜査官が眠る男の頭をそっと撫でた。無言でその様子を見たハゲもくっと目を反らす。

 『ねー、ヒャクメ様ーコレの来世はどんな感じ〜?』

 『そうですねー逢って間もないけれどそれでも、悪くない、とは思います。相変わらずスケベは直っていませんが・・・』

 『そっかー』

 心から嬉しそうに楽しそうに言う魔族捜査官。ぽむぽむとスケベの頭を叩くとよいしょっと立ち上がり、ハゲに目配せした。

 『それでは、これで失礼します。また、どこか来世にでもお会いしましょう』

 男を引っ立てながら警部が言った。2人と被疑者の姿が段々透けて行く。


 『じゃーねー』

 『ご協力、ありがとうございました』


 そうして、彼等は空に消え入るように神界ないし魔界へ帰っていった。


 ヒャクメもクルリ、身を翻すとその場から掻き消えた。

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