ザ・グレート・展開予測ショー

デッド・ゾーン!!【4】から(中の前編)


投稿者名:HF28号
投稿日時:(04/11/27)




 3発の砲を軽々放った男は早々に方向転換し何処かを目指していた。


 己の存在意義、そして、今日の煩悩を満たす為に!


 滾る煩悩のままに世間を騒がせあっちこっちセクハラ他を働きまくると、それを糧に次の獲物を探す。

 それが彼の崇高なる趣味であり、検非違使などに追われる理由なのだ。




 彼は、生まれてしばらくは神界で治安を維持する業務に疑問を持つ事無く着いていた。

 しかし、ある日、やっぱり疑問を持ってしまった。

 道場で体を鍛え、男ばかりのむっさい詰め所で夜を明かす・・・

 なんてつまらん生き方じゃっ!

 辛抱堪らなくなった彼の行動はそれはそれは早かった。先ず、セコイ取引で上司を誑かし(やっばい本を継続的にプレゼント♪)、現世最高のコーチをつけてもらった。意味も無く才能溢れる彼は、どんどんどんどん力をつけて行き、神界警備部で誰も敵うものがいない地位に上り詰めたのだ!

 体を鍛える反面、勉強にも勤しんだ。天変地異の前触れ雹が降る蛇が降る言われまくったが最後の勝利を手に入れる為なら一切妥協を惜しまない性格が災いし、あっという間に図書館の主にのし上がった。


 パタン、最後の1冊を閉じた彼はしばしの瞑想に耽る。


 空間に開いた歪みの位置と月からエネルギーを補給する理論、

 神通力の方向性と魔力の御し方、

 人間とまぐわいを禁ずる理由、

 魔族をおとす注意点、

 犯罪者の心理学、正義を振りかざす『敵』の心理学とそのパターン、

 神界、魔界で現在効力を発揮する全ての法、

 そしてその抜け穴・・・


 読みこなし理解しつくした数多の本の内容が脳裏を駆け巡る。


 期は熟した。今こそ、努力を形にする時だ!


 本を戻しドアに手を掛けた彼の瞳は、獲物を捕らえたハンターのように爛々と輝いていた。

 その後の快進撃はあえて書くまでも無い。一言言わせて貰えば、奴は『最凶』それだけである。




 さて、この時代、乙女が現代のような下着をつける習慣は無く、あーれーっと服をひんむくと艶やかな肌着に包まれたお宝を拝める。そんな風習をこの男はいたく好いていた。

 魔族の体に張り付く衣装もそれはそれでおいしいが、見えそで見えない際どいところがああっ堪らんっ!てな事らしい。

 どこまでもどこまでも好色家でスケベな野郎である。

 
 『おおっこっちに良い気配が!!』


 そして今、彼の優秀な女体センサーに2人の巨乳と1人の貧乳が引っ掛かっていた。

 美神、メフィスト、ヒャクメの1人1魔1神だ。貧乳が腕を挙げコチラを指差しているのが見えたが、見えるからといって反応出来るわけじゃないと武術に長けた彼は身を持って知っていた。


 (もらったっ!!)


 狙いを研ぎ澄まし獲物へ襲い掛か―――――。


 「『『やめんかっ!!』』」

 ドカ、ズガ、バキぼこッ



 神風特攻破れたり・・・



 良い顔でリンク(屋根)に沈んだ男に同属の薫りを感じた横島と高島が心から哀れむ視線を送った。








 『な!?超加速なんて身につけていたのか?彼は』

 時の流れを遅くする韋駄天の持ち技。並の神では身に付けることさえ叶わない至高の裏技、超加速。

 『あらー凄いのねー』

 隣りに佇む女性が、ロリっぽい間延びした口調で関心を示す。彼女は、メガネの男が携帯で呼んだ今度の件に関する助っ人。月の逆光で顔こそ見えないが、風になびく絹のような髪が首元で切り揃えられているようだ。

 『でもー彼女も十分凄いわ〜』

 感激〜。

 『・・・確かに』

 2人の視線の先にはその『彼』とデッドヒートを繰り広げる1人の神族の姿があった。







 『ゆるっさ――――――――――――――――――――――――――――んッッッ!!』

 キ――――――ンッ

 空気を切り裂き飛び回る『彼』ことさっきの神族とヒャクメ。どごーんっと破裂音が響き、煙から2人が飛び出す。


 『よーくも、薄いって思ったわね――――――っ!!』


 ヒャクメが心を覗けるのは既に知られてるが、インパクトの瞬間、邪な感情が強烈に見えわかってしまったのだ。


 『やっぱ薄いなあ・・・』


 という、心の呟きが!!


 『貧乳ならまだしも―――――――――――っ』

 そっちは良いらしい。


 『ま、まままま、待てっ待つんだヒャクメ!!』

 神界最凶にのし上がった俺の実力で敵わぬ女なんて、それが下っ端にいるなんて信じられん!!

 ズタボロにやられ、体力の限界が近付く自分に対し、経験実力共に劣っているハズの彼女はどうして、どうして、



 余裕の笑みを浮かべ銃を構えているんだ・・・!!



 『は、話合おう、な!なっ?』

 『問答無用!!』

 再びどごーんっ。何かが命中した男はくっと目を覆った。その一瞬が命取り。


 爆風を乗り越え、敵を確保したヒャクメ。

 『成敗っ!』

 回り込んで腕を捕らえると小川の土手にデリャーッと投げ飛ばした。







 その日、北欧から遊びに来ていた月と狩猟の女神、アルテミスは東洋の島国を見物していた。

 頬に当る風が気持ちよく、存在感ある満月に体が癒され力が満ちてくる。

 そよそよ、そよそよ、ふわーりふわり・・・。

 しかし、その静寂を打ち破る男がここへ降って来た。



 『ぐはっ』

 何だ何だ?立ち上がったアルテミスは、呻き声を上げ、地面にめり込んだ男をそおっとそおっと窺う。


 『だ、大丈夫ですか?』

 『ええ、平気です!貴女がいればもーう大丈夫っ!!』


 どう見ても生死の境を彷徨っていたはずなのに男は直ぐ復活にした。さすが東洋の神秘。

 『あの、えーと・・・』

 手を掴まれ、そして










 さわさわ、もみもみ、つんつん、えへ。









 『イヤじゃ―――――――――――――――――――――――――ッ!!』


 全身に鳥肌を立て、渾身の力で空へ蹴り飛ばす。


 『男は嫌じゃ―――ッ!!』


 アルテミスは泣きながらどこかへ去って行った。

 それ以来、彼女の男嫌いは拍車がかかったらしい。







 『はっはっはっはっ』

 神通力の息切れに、浅い呼吸を繰り返すヒャクメ。許せん、許せん、許せんこの男っ!

 邪欲に満ちたこの神をどう葬り去ってしまおうか・・・。

 アルテミスの攻撃で綺麗な放物線を描いて地上に落ちたそれを、どっかのだれかの影響か、躊躇い無く足で踏みつけ黒い笑みを湛える。

 ここへ来る間、トランクに忍ばせていた圧縮空気銃で横島さんの文珠(いつ入手したかは聞かないこと)を数発ぶち込んでやった。

 さすがの神族でも『爆』を連射で喰らえば、死線を彷徨うだろう。

 この機会を逃せば、2度と再び同じ手が使えない!そういう相手と、見抜ける自分が悲しく嬉しい。


 そう、今、更生出来れば、もう薄いなんて言えない人格に・・・



 『ふーっふっふっふっふっ・・・』


 怪しすぎな思考を巡らせていると、眼前に力をキャッチし思わず顔を上げた。








 さて、話の途中だが屋根に、未来に、それぞれ置き去りされた人物の様子を見てみよう。



>side美神


 メフィストの協力で屋根から脱した4人は、珍しい客人として家人に迎えられ、それは楽しく酒を酌み交わしていたという。


 「よーっしゃカラオケいくぞーっ!!」

 「ラジャー!」


 どうやって取り寄せた、いや、電気は何処に?謎を残しつつ彼等は歌い騒ぎ盛り上がっていた。



>side西郷


 置いていかれ、ぽつんねんと立ち尽くす西郷はやっぱり1人だった。ぎゅっぎゅっと弓なんか弄って暇を潰す姿には哀愁が漂っている。


 平安京の真ん中で、屋根に登って妖しげなことを企んでいた2人組みはあまりな事態に取り乱していた。

 『なぜだ?メフィストの気が急に2つに増え、今度は跡形も無く消え去るなぞ信じられん!』

 アシュタロスその人でさえ考えの及ばない行動を起こしたヒャクメを誉めるべきかどうなのか。

 『・・・このまま帰りますか?』

 『悪に二言は無いのだよ、道真』

 とりあえず、そのまま都を眺めることになったそうな。



 side美神はともかく、side西郷はなんだか不憫である。

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