ザ・グレート・展開予測ショー

百貨店パーティー☆9F


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(04/11/23)


ネズミの生物兵器・ムラマサ。

毛並みは白く、人の言葉が話せる。 現在、小田切あゆみ(小学5年生)の家に居候中‥‥



「 ムラマサのバカ―――ッ!!!!! 」



小田切家に鳴り響くあゆみの声。
その数十秒後、家の門からムラマサが飛びだしてきた。


《 あゆみのわからずやー!! もー二度とこんな家に帰ってやるもんかー!! 》


そのまま町の中へと駆けだしていくムラマサ。

《 あゆみのばっきゃろー、俺の気持ちも知らねえで‥‥! 》

若干涙ぐんでたムラマサは、前方を見ずにただ前に向かって走っていた。 すると、

トンッ
《 うわっ! 》

女子高生の足にぶつかり、ムラマサは弾き飛ばされた。

《 ってえなー、どこ見て‥‥!? 》
「 ムラマサ君‥‥? 」

《 ‥‥千鶴か? 》




―――駄菓子屋 竹同商店―――


「 おばちゃーんこれくださーい 」
「 あいよー 」

千鶴はジュースと駄菓子をいくつか購入すると、店の前のベンチに座りムラマサに話しかけた。

「 で どうしたの? あゆみちゃんのウチ飛びだしてきたって‥‥ 」
《 なあ、今日おめえんトコ泊まらせてくれねえか? 》
「 理由も聞けてないのにいきなり泊められるわけないでしょ
  今は防衛隊に戻ってるけど、ウチにはゼロも飼ってるんだし‥‥あゆみちゃん心配してるよ 」

心配そうに話しかける千鶴。 ムラマサはうつむいたまま、

《 いいんだよあんなわからずや‥‥ 》
「 ‥‥なにかあったの? 」
《 実はよー‥‥ 》


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ムラマサが言うには、実は今日あゆみの誕生日らしい。
彼はあゆみが小学校に行っている間、あゆみを驚かせようと彼女の机の上で、ささやかなパーティーの準備をしていた。
コップで代用した花瓶や折り紙やリボンなどを使い、机の上を彼なりに飾っていたという。

そしてあゆみが下校する頃、彼は誕生日祝いに欠かせない、ローソクが乗ったケーキがないことを思いだした。
ケーキは見つからないものの、タンスから小さなローソクだけは見つけることができたので、
机の上にローソクを立て、父親の部屋から持ってきたライターで火をつけようとした。

そして事件は起きた。

身長10センチに満たない体格。
不安定に立てられたローソク。
重ねた本を足場にして、ライターで必死にローソクに火をつけようとしたそのとき、

バタッ

火をつけた瞬間、ムラマサの持つライターがローソクに当たって倒れてしまい、
ローソクの火は幼いあゆみと母親の写った写真に燃え移ってしまったのだ。
ムラマサは慌てて写真立てを倒し、水の入ったコップを倒してハンカチで濡らすと、写真立てにかぶせた。
幸いにも、机も写真立てのケースも燃えにくい素材でできていたため、それ以上火が広がることはなかったが‥‥

‥‥その数分後、あゆみが帰ってきたときは、悲惨な状況だった。
飾られたはずのあゆみの机の上は、水でグシャグシャ‥‥
なにより、ぬれた机の上に写真立てが倒れていたのを見て、慌てて駆け寄ったあゆみが写真を見ると‥‥


‥‥母親との写真が、半分以上焼かれていた状態だった。


その後あゆみとムラマサの口論は‥‥‥‥想像通りだろう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「 ‥‥それでウチを飛びだしちゃったんだー 」
《 確かに燃やしたのは悪かったけどよー ワケぐらい聞けってんだよ‥‥ 》

話を聞いて納得する千鶴。
ムラマサに悪気がなかったことは、今の話で充分理解できた。

「 ちょっと時間を置いてちゃんと謝れば、あゆみちゃんもきっとわかってくれるはずだよ 」
《 なんで俺が謝るんだよ! 向こうが悪かったって頭さげなきゃ絶対帰ってやんねー! 》

腕を組んで顔をそむけるムラマサ。
千鶴は彼の意地っ張りな所を見て少し微笑んでいると、



「 気持ちはちゃんと伝えなきゃ伝わらないよ 」



後ろから声がした。 千鶴たちが振り返ると、いつのまにかそこに5・6歳の少女が立っていた。
少女はオーバーオール‥‥胸当て付きのズボンをはいており、胸には“SUNDAY”の文字が刺繍されている。

「 キミも意地張ってないで素直になるべきだよ、うんうん 」

少女はひとりで納得してうなづいていた。
周囲に注意していたはずのムラマサと千鶴は、気配を感じさせず後ろに立たれていたことに驚き、

「 あっ あのね、このネズミが話してたことは誰にも――― 」
「 言わないよ、それよりどーするのキミ? お互いすれ違ったまま離れてしまってホンットーにいいの? 」
《 うっ‥‥! 》

少女に鋭い指摘をされ、たじろぐムラマサ。

「 情けないなあ〜 はっきり気持ちを伝える勇気もなくてウジウジしてたんだー 」
《 な なんだとこのガキー! 》
「 口先だけならなんとでも言えるよ 」

少女にあからさまに挑発されたムラマサも、すぐにムキになって、

《 い 言ってやろうじゃねーか! ガキに言われるまでもねーよ! 》
( ムラマサも挑発にのりやすい性格ね〜 )

千鶴はムラマサの単純な性格に、微笑ましく感じた。 そして少女は、

「 じゃ、さっそく見せてもらおっか 」
《 は? 》

少女は道路の真ん中のほうを見た。
ムラマサと千鶴もつられてそっちのほうを見ると、目がうつろな犬が1匹、おすわりをしていた。
妙にその犬が気になり、数秒の間その犬に気を取られていた千鶴が再び振り返ると、

「 あれっ? ムラマサ? ‥‥あの子は? 」

少女もムラマサもいなくなっていた。
するとそこに、駄菓子屋のおばちゃんがゆっくりと出てきた。

「 おや? さっきここにいた子はどうしたんだい? 」
「 さあ‥‥ 」
「 なんだかねえ、あの子そっくりの子を10年ぐらい前に見かけたような気がするんだよ 」
「 10年前に‥‥? 」
「 あんたんとこの飼い犬が事故に遭う少し前のことだよ、
  あたしゃ記憶力には自信があるほうなんだけど、さすがに年かねえ〜 」

そう言いながら、駄菓子屋のおばちゃんはまた店の中へ戻っていった。



そのときムラマサは―――



《 ? あ あれっ?(汗) 》



目がうつろな犬を見た次の瞬間、ムラマサがいた場所はあゆみの部屋の中だった。
目の前には、イスに座って半分焼けた母親との写真を眺めているあゆみの姿があった。
彼女は気配を感じたのか、後ろを振り返ると、

「 ムラマサ‥‥ 」
《 ‥‥よ よお‥‥ 》

あゆみは泣きつかれた後のようで、目元が赤くなっていた。 ムラマサは意を決して、

《 わ 悪かった、悪気はなかったんだ、俺はただ――― 》
「 ‥‥わかってる、あたしの誕生日祝いをしてくれようとしてたんだね‥‥ 」

今日がなんの日かということと、ぐしゃぐしゃになってた机の上の状況を見て、あゆみはそう推察したのだ。

「 ま わざとじゃないんだからしょうがないよね‥‥ちょっと悲しいけど‥‥ 」
《 ‥‥ごめん‥‥ 》
「 いいよ、今日パパがケーキ買って早く帰るって言ってたから、それまで準備手伝ってくれる? 」
《 ‥‥おう! 》



窓の外では、あゆみたちの様子をこっそりうかがう少女の姿があった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



―――某所 防衛隊基地―――


出入口を通過し、基地内を歩いていく少女の姿があった。
隣には、ムラマサと千鶴が目撃した、目が虚ろな犬もいっしょについてきている。

向かいからは陸曹長と、ゼロの部下であるサイボーグ犬・ピンシャー犬尉が歩いてきた。
少女に気づいた陸曹長は、少女が通る道を開けて敬礼した。

「 おかえりなさいませ 」
「 うん、ただいまー 」

陸曹長の前を通り過ぎようとしたとき、少女はふと足を止めた。

「 あ そうだ、ねえ、零式って戻ってきてるの? 」
「 いえ、零式犬佐の休日は今度の日曜日までですが‥‥ 」
「 ふ〜ん そう‥‥ 」
「 犬佐になにか指令でも? 」
「 いや、ちょっと聞いてみただけ。 気にしなくていいよ、じゃ 」

少女と目が虚ろな犬は、そのまま基地内の奥へと進んでいった。
陸曹長の行動により、少女が彼女より上官だと感じたピンシャー犬尉は、

《 陸曹長、あの子供はいったい誰ですかい? 》
「 ‥‥あなたたちサイボーグ犬の生みの親のようなものよ、
  “彼ら”の技術がなければ、犬尉とこうして会話することは不可能だったでしょうね 」

《 生みの親って‥‥サイボーグ犬が誕生したのは10年前ではないのですか?
  あの子供はどうみても6歳ぐらいでは‥‥ 》

( そう‥‥彼女は私が入隊した頃からあの姿のままで、彼女の正体を知る者もほんのわずか‥‥
  しかし“彼ら”の技術がなければ、各地での災害活動や海外遠征での活躍はなかったも同じ‥‥ )


陸曹長は、少女が去っていた後をしばらくの間じっと眺めていた‥‥‥‥
 

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