ザ・グレート・展開予測ショー

失言


投稿者名:ダフイ
投稿日時:(04/11/21)




「ふう……」

ため息をつき、マホガニーの机に頬杖をつく。集中して書類仕事をこなしたためか、どうも頭
がぼんやりとする。

そのままの姿勢で、少し離れたところにいる横島をなんとなく見る。

シャツの袖を肘まで捲り上げ、珍しくまじめな表情で除霊道具の整備をしている。

(コイツもまじめにしてればそれほど不細工ってワケでもないのよねぇ…)

まあ、普段の姿はあまりにアレ過ぎるのだが。

などと、どうでもいいことを考えながら横島をぼんやりと眺めていると、


「美神さん、俺の顔に何かついてます?」

顔も上げずに話しかけられてちょっとビックリした。横島ごときに驚かされたのが気に入らない。


「…別にあんたなんか見てないわよ」

「そうッスか」

そう言って、そのまま作業を続ける様子を見ていたら何かむかついてきた。話をする時は
こっちを見ろと言いたい。

いちゃもんをつけて殴ってやろうとも考えたが、おキヌちゃんがお茶を持ってきてくれたので
とりあえずその考えは保留にした。


「横島さん、お茶ここに置きますね」

「あ、ありがとう。おキヌちゃん」

手を休めておキヌちゃんにお礼を言っている姿を見て、また何かむかついてくる。


「先生!サンポ行こっ!サンポ!」

シロが横島の腕を抱え込みながら、おねだりを始めた。いつものことなのだが、そんな姿が
今はやけに気に障る。


「…あのな、今仕事中なんだけど」

迷惑そうにしながらも満更でもなさそうな顔を見て、こめかみに太い青筋が浮かんでくるのを
自覚する。


「アンタ、ほんとに野生の欠片も残ってないわね」

「ケンカを売ってるんでござるか、タマモ?」

「別にそのつもりはなかったけど…アンタがその気なら相手してやってもいいわよ。馬鹿犬」


「おいおい、事務所ん中で暴れんなよ。美神さんに怒られるぞ?」

横島の声に二人がこっちに視線を向け、私の表情を見て、二人とも急におとなしくなる。

そんなに険しい顔をしていたのだろうか?

横島は二人がおとなしくなったのを確認して、作業を再開したようだ。

まじめに仕事をするのはいいことだが、何か気に食わないのでとりあえず睨みつける。


「あの、俺なんかしました?」

少し怯えた目を向けて私に問い掛ける。あぁ、やっとこっちを向いた。


「別に何にもしてないわよ」

「…じゃあ、睨むのやめてもらえません?」

恐る恐る話し掛ける態度が気に食わない。そんなに私が怖いのかっ!


「……アンタの態度しだいね」

「どういう意味ッスか?」

「おキヌちゃんだけじゃなくってシロにまでデレデレしちゃって!」

「なっ、デレデレなんかしてないッスよ…」

「うっさい!口答えするなっ!…アンタは私のことだけ見てればいいのよっ!」

「………………………………へ?」



なんだか知らないが、横島クンが馬鹿みたいに口を開けたまま固まってしまった。いや、実際
馬鹿なんだから、馬鹿みたいにってのはちょっとおかしい気もするが。

周りを見ると、おキヌちゃんもティーカップを口元に持っていったまま固まっている。

シロとタマモもこちらを見て目を丸くして固まっている。よく見ると動物の耳が頭からひょこっと
飛び出している。そんなに驚くようなことがあったの?

とりあえず、自分の発言でこうなったのは間違いないことだ。なんて言ったっけ?



『アンタは私のことだけ見てればいいのよっ!』



自分の発言を思いだし、顔が一瞬で熱くなる。


「あっ、あのね?ふ、深い意味はないのよ?横島クンが私の相手をしてくれないのが気に食わ
ないとか、そんなことはないのよ?」

一生懸命言い訳をしてみるが、なにやら壮絶な自爆をしている気もする。


「あのっ、聞いてる?」

横島の目の前で手を振ってみるが、なにも反応が返ってこない。どうやら完璧に意識が飛んで
いるようだ。

他のみんなもどうやら同じ状態のようで、さっきからピクリとも動かない。


「……どうしよう」

どうやって収拾をつければ良いか、途方にくれる。みんなが意識を取り戻した後の騒動を考える
と頭が痛い。

誤魔化しきれないときはみんなの記憶消しちゃうかな、なんて怖いことも考えつつ、天を仰いだ。




終わり

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