ザ・グレート・展開予測ショー

おもわずこっくり。


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(04/11/18)

タマモはどうも車の中は苦手のようで。
「大丈夫?タマモちゃん」
心配そうに覗き込むおキヌちゃんである。
言われた当人も頑張ってはいるが。
「だ、大丈夫よ、このぐらい・・。うげぇえ」
吐き気を催すても中は空っぽ。
以前は、トランクに隠れ入っても大丈夫だったのだが。
ここ数ヶ月前から体調の変化に伴って車酔いの症状が出始めている。
丁度夏から秋に変わる、この時期にである。
先ほど峠で休んだ時に飲んだ水だけが胃液と一緒に吐き出される。
悪いとはしっているが、車中に汚物の匂いが充満するのはたまらない。
思わずブレーキをかけた美神令子である。
「アンタってホント車に弱いわねぇ。ったく」
美神本人はこれで車好きで、何より運転が好きだ。
折角スピードにノってきたところなのに、といった風体である。
「はぁ、しょうがないわね、えっと・・」
古い車の事、カーナビなぞ付いていない。
少々古い地図を確認する。
「現在地は・・ここね。で依頼場所はこっち。近くに電車は・・あぁ、あるわ」
地図を畳んで。
「タマモ、この直ぐ先に駅があるの、そっちで行きなさい」
えっ、と驚くタマモである。
「・・いいの?お仕事遅れちゃうじゃない」
という建前も。
苦い顔ながら笑顔のタマモである。
それほどの苦痛を伴う車中の旅と言う事か。
「そうだけどね。GSの仕事って体調管理も重要よ。依頼先にいってもへばってるようじゃあ」
使えるものもつかえなくなる、という事か。
少し遠回りになるが、到着駅に迎えに行くからとい。
「そこからなら、数十分で依頼先へつけるわ。いいわね」
とうぜん反論はないが。
「でも・・美神さん」
妙に体をくねらせてちょっと困ったという顔を見せたタマモ。
「あの私電車に乗った事ないから・・ちょっと怖いかな・・えへ」
「えへ、じゃないわよ。ったく、手のかかる子ねぇ」
誰かと一緒じゃないと怖いといった所か。
さて車中のメンバーは。
元幽霊に狼娘。この二人もあまり電車という物に対して抵抗が無い。
となると。
「へいへい。俺が付き添えばいいッすね。美神さん」
何時も助手席に座る横島だ。
これが、案外地図の読み解く能力やらスピードに関しての抵抗で、
役に立ってはいるのだが。
「・・・ま、しょうがないか。ほら直ぐそこが駅だから」
財布から小額紙幣数枚横島に渡してから。
「多分車の方が先に着くから、待ってるわよ」
「判りました。俺達も急ぎますんで、ほらいくぞ、タマモ」
タマモを引っ張るようにして駅に向かった二人であった。
後姿を追ったシロの素直な感想が。
「あー、いいなぁ、で御座る。拙者も電車でぇ」
であったが、既に車は発進されていた。

さて。電車に乗った事がない者。どうやって切符をかうかすら知らぬもの当然である。
いやそれ以前に。
「へー。電車に乗るのって最初からお金払うんだ」
妙に感心するタマモである。
「・・・当たり前だぜ。タマモ」
あきれるのも当然であるが。
「ちょっと、知らない事を馬鹿にするのは良くないのよ!ヨコシマ」
「へいへい」
タマモの発言は最もであるが苦笑が漏れる横島も普通と言えるか。
「ま、いいわ」
笑われたのが癪にさわったのか、ぶっきら棒のタマモ。
「で、何処で買うのよ。乗車券はぁ」
「いや、電車の場合切符つーんだけどな。券売機は、あぁ、そこか」
今では手売の方を探す方が難である。
ちゃんと判りやすく券売機の場所が案内されている。
やや田舎であるこの出発駅は機械の数は6っつ程。
それで十二分のようだ。
「えっと、目的地までの料金は・・」
値段を確認しつつお札を券売機に入れようとするが。
「あ、こいつ又弾きやがった」
美神令子から貰ったお札が古いのか三度ほど、戻ってきた。
「ねぇ違うお札にすれば?」
「いやこいつを意地でも入れてやる!」
何を熱くなってるのか、とでもいいたげなタマモであった。
あと数回繰り返えすと、機械も根負けしたのか、しぶしぶそのお札を咥えた。
「おしゃしゃ、じゃあ・・・ってタマモ一つ質問があるんだが」
「ン、何?」
「お前って歳幾つだ?」
「年齢・・多分5000歳はいってると思うけど」
「そっか、じゃあ大人二枚だ」
いくら券売機が発達したとは言え、妖怪専用というのは出来ないであろう。
「ほい、切符だ。失くすなよ」
「当たり前じゃない!子ども扱いしないでよ」
とはいえ。
初めて持つ切符がうれしいのか、ポケットにもいれず手にぎゅっと閉まったタマモであった。
尚、自動改札のやり方がわからず。
「ね、ねぇ、どうすればいいのよ?」
狼狽したのも、知らぬが故当然である。
「ほら、ここに切符をいれるんだ。入れたらダッシュで改札だっ!」
「OK!横島」
小走りを見せたタマモであった。

さて田舎の事。
本数もあまりないのだが、幸い数分待てば電車は来るようだ。
ちゃんと次に来る電車の行き先も調べて。
「お、ラッキー、ちゃんと目的地まで行ってくれんじゃん」
時間表を見る横島であるが。
「数字が一杯ね。難しいなぁ」
「そっか?こんなの慣れだけどな」
「ま、そうでしょうけどね、えっとあと少しで来るのね」
「まぁな。そいじゃ駅弁でも買ってきますか」
美神令子の渡したお金、そこそこの余裕があるというのか。
「駅弁ってお弁当の事?」
「あぁそうだよ、これが電車に乗って食うと美味いんだ」
「あーぅ」
「どした?タマモ」
「ほら、アタシって機械に弱いじゃない?だから又ご飯食べちゃうと」
吐いちゃうかもしれないという事だが。
「大丈夫だと思うぜ。万一乗って気持ち悪くなったら食うの止めたらいいんだよ」
「・・・駅弁ってホントにおいしいの?」
「あぁ、保障してやるよ」
「じゃあだまされたと思って」
「へいへい。つっても安いの二つだぞ。あとはお茶でも買うか」
「うん。お茶は冷たい奴でね」
「もう冷えてるのに?」
「だって、猫舌だし、アタシ」
「OK。じゃあタマモはお茶買ってきて俺はホットな」
実はタマモ。
自動販売機でジュースを買うのがすきなのである。
本人曰く。
「楽しいじゃないの!機械がべーってジュースだすの」
だそうである。
横島も山の幸を謳い文句としたお弁当を二つ購入した。
売り子さんが男だったのは幸か不幸か。
そして電車がやってきた。
気だるいアナウンスもタマモには新鮮でも横島には何の感慨も無い。
いまどき珍しい電子音楽で無い、無機質なベルが発車確認音であった。

田舎路線に時間的な余裕から電車内はほとんど人がいない。
遊びに行くのであろうが、子供を二人連れたお母さんに、
何時大学にいってるのであろうか、疑いたくなるカップル。
あとはちらほらである。
それに今時不経済なボックスシートの車両もあった。
「へー、車とは全く違うわね」
車酔いから完全に開放されて嬉しそうなタマモである。
こうなるとお腹が空っぽの事、なお更横島の買ってきた駅弁に興味がいく。
「ね、ね。お弁当食べようよぉ」
ところが、横島。
「慌てるなよ。タマモ駅弁ってのは三駅過ぎてからがマナーだぞ」
「マナーって誰が決めたのよ」
「ふ。これだからロマンのわからん奴は」
「人間のロマンなんていいじゃないのぉ」
ここはタマモ。
異性であれば自分の意にそぐわせる事などお茶の子歳々だ。
うるうるとしたお目々で横島を見れば。
「あ・・うっ。判ったて。ほらこれな。零すなよ」
「子供じゃないわよっ。失礼な」
すこし膨れている仕草は、子供のそれと変わらないじゃないか。
横島心の奥に閉まっておいた。
駅弁は冷えた状態でもおいしく食べられるようにはなっているが。
矢張り温度が無いと匂いは少ない。
タマモも手に取った時点で理解した。
「ったー!これってお稲荷さんはいってるじゃないの」
「え?そうか」
横島も山の幸という謳い文句と値段だけで買ったのだ、そこまで詳しくは調べてない。
匂いをかぐタマモに対して横島は直ぐにふたを開けた。
「・・・いや意識した訳じゃないんだけどな」
「うふふ。ありがとヨコシマ」
にっこり顔を見せたのでつい、
「じ、じゃあ、こいつもやるよ」
お稲荷さんを一つ、タマモの弁当に渡したようだ。
「うん!アリガト。じゃあ、いただきまーす」
「こちらも頂きます」
横島も箸を付けた。
「もぐもぐ、けっこうイケるわね。これ」
「だろ?これで景色を見ながらが最高の贅沢なんだぜ」
「・・そうかもっ!あ、お茶取って」
ささやかな食事が続く。
タマモも横島もすぐに平らげた。
ゴミは電車備え付けのゴミ箱に入り。
「ふぅ。電車っていいわねっ」
「・・そうか、気に入ってくれたようで」
「うん!」

しばらくは車窓を楽しんでいたタマモであったが。
「おい、タマモ・・って寝てるのか」
無防備な状況で瞳を閉じていた。
「寝かしておいてもいっか」
あと目的地まで一時間弱である。
ふと目を床にやると切符が一枚。
目的地までの料金分の切符。
間違いない。
タマモが落としたようだ。
「・・たくっ。何が『私は落とさない』だよ」
その切符を拾い、自分が持っててもいいのだが。
そっとタマモの手を握り指を開いて切符を掌に置いてから。
指を閉じさせた。
美味い具合に切符はタマモの手に戻ったようだ。
「・・ン・・アンがト・・ZZZ」
「寝言か、はん」
どういたしまして、と小声で横島は言った様だ。
カタンコトンと電車はリズムを続けた。
目的地の駅では。
「じゃ、早いけどご飯にしますか!」
とっくに付いていた美神令子の車である。
ほとんど何も無い駅の近くで早めの食事としゃれ込みたいが。
あくまで何もなかった。


FIN

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