ザ・グレート・展開予測ショー

GS 新時代 【鉄】 其の四 1


投稿者名:ヤタ烏
投稿日時:(04/11/16)




「そんなことがあったんだ」
忠夫の話をききながら、タマモはコーヒーをテーブルに置きながら呟いた。
シロはステーキ定食をほうばりながら(六枚目)
汰壱はジャンボ・チョコレート・FINAL・DXパフェ (三杯目)を食べながら四杯目を魔鈴に注文していた。
全て忠夫の奢りである。

「・・・・ああそいうわけでな、汰壱にお前達の仕事を手伝わせたいんだ・・・・頼めるか?」
「うーんちょってねぇ・・」

タマモは言い淀み考えた。話はわかるが、汰壱に自分達の仕事の手伝いをするのは無理ではないだろうか?
それがタマモの正直な見解だった。実力うんうぬんは見ないことは解らないが、汰壱から感じる霊力の波動は、
一般のGSより低い、昔から比べれば上がっているが、それでも低いものは低い。
かといってそれを理由に断るほど彼女は冷たくはないが、仕事の話ならば自分もプロなので、ほいほい了解できない。
惚れた男の頼みだから引き受けたいのだが・・・・・どうするべきか?

義理と人情と計算のなかで、悩み続ける狐の苦悩は、意外なほどあっさりと終わることになる。
「ふいでふぇござぁるよ・・・ごくっ・・いいでござるよ。」
一も二もなくシロは了承した、敬愛する師の頼みを断る理由を彼女は持ち合わせていない。
「ありがとなーシロ」
思わず昔の癖でシロの頭を優しくなでてやった。その気持ちよさにシロは、にへらーとしている
「ちょっと馬鹿犬!勝手に決めないでよ。・・・・・っちぇ」

「何すか今の間は?・・・」

「別にいいではござらんか、汰壱の一匹や二匹、大した手間も無いでござろう・・・それと拙者は犬ではござらん狼でござる!」
「さりげに、酷いっすねシロさん」

「すまんな、これから緊急かつ重要な仕事が俺を待っているんだ。ということで汰壱をよろしく」
「今日はなんかありましたっけ?」
不思議そうに首をかしげる、汰壱に忠夫は此れでもかというほど、胸を張り答えた

「蛍花とデートだ!!」

「・・・・・・・・・俺の記憶が正しければ、おじさんは前回で俺を助手にするって・・・いってましてよね?。
いやいや俺の記憶違いならいいんですよ。人間誰しも間違いはあるんですしさ・・・・・・・・・マジですか?」



こっくん
大きく頷く


「いやそんな力一杯頷いても困るし・・・って!!シロさんもタマモさん(ならしかたない)みたいな顔せんでください。
この親父はアホですぞ」


「アホとはなんだアホとは!愛する愛娘とのデートだぞ!これ程大事なことがこの世にあるかあぁぁあ」
ザッパーン!!
背中に大海原を背負い【現世娘愛最優先】とでっかくででおり、効果音もしっかりついている。

「そんなんだから、蛍花ちゃんがファザコンになるんだよ!」

とりあえず、無駄と思うがツッコミをいれた
「家族を思うその御心!このシロ深く感激しました」
「そうでなくっちゃ、ヨコシマじゃないものねぇー」

二人とも眼をキラキラと輝かせている。
・・・・・・・・・何処から突っ込めばいいのやら
まともなのは自分だけかもしれない。

すったもんだの末に結局、汰壱はシロタマが監督するということで落ち着き、忠夫は愛娘とのデートの為に
文珠を使ってすっ飛んでいった。








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兎にも角にも、汰壱の実力を見ないことには、どうしようもないので三人は、汰壱が普段の鍛錬に使っている
川原に足を運んだ。

「んで何、するんですか?」
「決まってんじゃないの、組み手よ、実戦組み手・・・とりあえずシロと戦って」
「とりあえず・・今世紀最初の大剣豪とですか?死にますぜ」
「だれが?」
「いや俺が・・・・・」
「馬鹿ね本気でやるわけないでしょうが・・・ちゃんと手を抜くわよ。解ってるわねシロ」






ブオォン     斬 斬 斬 斬 斬 斬 斬 斬 斬 斬 斬 斬

「ウオォォオオオ!」

両の手に高密度の霊破刀を具現化させ、眼にも留まらぬ疾さで紫電の如く、乱舞している。


「・・・・・・・俺の目が正常ならば、あのワイルド美人は間違いなく本気なのでわ?」

「あんたねぇシロの本気があんなもんなわけ無いでしょ」
しれっとした感じに答えた。

ズバッ!  岩が切れた 

ズバッ!  水が衝撃波で割れた

ズバッ!  地面が裂けた

「岩とか切れてるんですけど?」

「切れるてるわね」

「表面が鏡みたいですよ?」

「鏡いらずね」

「もう一回言います。死にますぜ」

「死なないから」

「・・・・・・・・うそだぁ!本気かどうか置いといて、明らかに手を抜くレベルを間違えている!」


「大丈夫!汰壱は強いもの・・がんばって、私信じてるから」

誰が聞いても解るくらいの棒読みである。

「何で半笑いなんだよ、なんか俺に恨みでもあるんすかぁ!」

「それじゃ開始!」

「死んだら化けて出てやる」
悪態をつきながら汰壱は構えた。
「そんときゃ、タダで除霊してあげるわ(にっこり)」
どこ吹く風といった感じである。

「この悪女」


「昔よく言われたわホホッホホッホホッホ」



高笑いしている狐は置いといて汰壱はシロ相対した。
シロは構えていない、両手はだらりとして肩の力を抜き、いかにも自然体といった感じだ。
隙だらけのように見えて、皆無のようにも見える。
汰壱は冷静に思案をめぐらせる・・・・どうするか?向うが仕掛けてくる気配は今の所ないようである。
ならば!

「コオオォォオオ!!」

【真呼吸】で一気に全開状態まで上げる。
実力差は明白である、ここでやることは思いっきりやることだ。

「いきます!」
「来るでござる」

地面を蹴りシロ目掛けて一直線突っ込んでゆき、勢いそのままに連突きを放つが、難なく身体を捻り交わす。
身体全体を戻さずに半身だけ引き、その力を回転力をかけた左の肘でシロの顎を狙うがこれも外れ、必要最低限の動きで交わす。
その場から連撃を打ち込むが、手を使う使って防ぐどころか、全てを掠りもさせずに回避している。
ならば!最も回避のしづらい対角線の蹴り、ハイからローへと袈裟懸けに蹴り抜く・・が上半身を僅かにスウェーして流された。
・・・・・・・掛かった!シロは足を使わずに上半身だけで回避をした。そして今の体制からは重心が不自然になっている。
(余裕かましてるからだ!食らえ)


袈裟に振りぬいた遠心力をそのまま利用して、シロの前で回転!抉る様に可変型中段蹴りを正中線目掛けて放つ!


「入った!」
ドゴッ!


鈍い音が響いて宙に吹っ飛ばされ、地面に叩き付けられるが、叩き付けられたのは汰壱の方だった。


「シローやりすぎ・・・ちゃんと手ぇ抜きなさいよ」
観戦していたタマモが抗議の声をあげた、シロは汰壱の蹴りにカウンターで、自分の蹴りを被せて動きをを止め、その瞬間に
五、六発、汰壱の身体に霊破刀(峰打ち)をぶち込んだ。汰壱は何がなんだか解りない内に地面に叩きつけられたのだろう。
人狼の身体能力と長年培った鍛錬のなせる、恐るべき技である。
「イヤー思ったより良い攻撃をするものだからつい・・・」
「ついじゃないでしょ!ついじゃ!あんたの標準スピードに普通の人間が付いて来れる訳ないでしょ・・・・
・・・一回で、のしちゃったら、汰壱の耐久力が解んないじゃないの!」
シロクラスの人狼の標準スピードと攻撃力は人間の範疇を軽く超えている。そんな速さで攻撃されたら防御することも出来ずに
叩きのめされて、悶絶気絶コースである。



むく・・




「痛ってー、なんつうスピードだ殆ど見えねえや。」
「「えっ!!??」」

汰壱は痛む箇所を摩りながら起き上がった。ダメージは受けたが戦闘不能になるほどでない。
まだまだ戦える。
驚いたのはタマモである。彼女はシロの攻撃が全て汰壱にクリーンヒットしたのを自分の目で確認している。
少なくともガードが間に合った様には見えなかった。
シロは解っていたようだが、まさかあの程度ですんでいるとは思っていなかった。タマモ程では無いにしろ彼女も驚いていた。
「どうやら相当頑丈な様でござるな」
シロは素直に賞賛した。
「そりゃどーも」

ペッと血の混じった唾を吐きながら汰壱は再度構えた。



その眼には強い光が宿っている


その心には激しい高揚感と羨望があった。


なんと強いのだろう、この戦いはなんと楽しいのだろう、自分の回りにはなんと強い人がいるのだろう。

どうやっても、勝つのは不可能だ自分とシロのいる場所はあまりに次元が違う。
それ悔しくてならないとも思うが、同時にこんな強者と戦える高揚感は確かにあった。

勝つのは無理、ならばせめて一泡吹かせてやる。
瞳に強い意志の光が灯る。
背筋を伸ばして中腰になり丹田から有りっ丈の【氣】を捻り出し、練り上げる。
「いい眼でござるな」
シロも構えた、別段ノーガードでも、問題なく勝てるが彼女の剣豪としての勘が構えることを選択させた。
あの眼をする者は、如何なる実力でも油断することが出来ない。


「今度は拙者からいくでござるよ・・・・」
汰壱は全神経を極限まで集中させた。


眼を凝らして相手の一挙一動を見る。


耳を澄ませ音を聞く。


肌を研ぎ澄ませ気配を感じる。


見落とすな、どんな小さな動作も、音も、気配も・・・・・



(シロさんとの距離は約7メートルってとこか・・・・流石に一瞬でってことは・・・・・!?いねぇ)

ガっン!

気付いた時には、顎を跳ね上げられ蹴り飛ばされた。
「っっっ疾ぇ」

すぐさま反撃するが霞を掴むかのごとく、その姿は消えてゆく。

「幻術かよ!」

半ば叫ぶようにシロ目掛けて、現時点で最速の連突きを穿つが、当たりはするものの全て陽炎のように消えてゆく。
今度は背後から鋭い一撃が加えられ地面にもんどりうった。
立ち上がろうとする頭の上からシロの声がする。
「幻術ではござらんよ・・・お主が先程から攻撃してるのは、拙者速さによって生み出した残像でござる」
「残像拳?」
「ドラゴン○ールじゃないわよ」
タマモが補足した

「くそっ」
這いつくばった姿勢から身体を駒の様に回転させ、足払いをかけるが、遥か上空に跳躍して回避される。
チャンス!

すぐさま起き上がり、自分のすぐ脇にあるモノを渾身の力で持ち上げ・・・・
「空中でこれが!、かわせるかあああ!」
ブゥン!
宙にいるシロ目掛けて・・・・・投げた・・・・岩を・・・。

「!なっ?」

これには流石のシロも面食らった、自分の身長ほどもある岩石が持ち上げて尚且つ、かなりのスピードでそれを投げ付けたきたのだ。
・・・・・・お主、本当に人間か?

「いい狙いでござるが・・・詰めが甘いでござる!発っ!!」

高密度圧縮型霊破刀・・・【壬生狼】発動

両の手を合わせ銀色の霊気が輝く一振りの刃に、飛んできた岩石は紙の如く一刀両断に切り裂かれた。
「拙者が岩程度、断てぬとでも思って・・・・・!?」
その言葉が最後まで発せられることはなかった。なんと両断した岩石の向うには既に汰壱が待ち構えていた。
岩を投げたと同時に自分もシロ目掛けて跳躍していたのだ。
岩は自分の身を隠すフェイク。

「そんなこと知ってますよ。さっき見ましたし・・・・これが本命だぁ!」

右拳全霊力極点集中・・・【霊攻拳】発動
渾身の力を込めた右拳をシロではなく、シロが叩き斬った岩石の片方に叩き付けた。
「砕けて爆ぜろおおぉぉぉ!」
ドン!!
岩の飛礫が散弾銃の如くシロに襲い掛かる。

「小癪な!」

即座に前面にサイキック・ソーサー(ワイド版)を展開し全ての飛礫を弾く。 獣の運動神経と大剣豪の技量は伊達でない。
「くそっ・・・・まだだ!!」
それでも汰壱はあきらめない。
一発ぐらい当ててやる!とばかりに残った破片を足場にして、シロの後方から飛び掛る。
対してシロには足場にするものが何もない。よって自由落下中のシロは身をかわす術を持たないはず・・・
一発当てる!鬼のような根性で掴み取った最後のワンチャンス。





しかしこの時なって汰壱は超一流凄まじさをその身を持って知ることになる。




スカッ!


最後の一撃も空しく、空をきった。

「えっ?」
汰壱は自分の眼を疑った。
(そんな馬鹿なさっきまで自分はシロさんに向かって飛んだはず・・・自由落下中の身動き出来ない筈・・・
・・・・なんで・・なんで・・なんで・・・・・・・・)


「なんで、もう一回ジャンプできんねん!!」
おまえは何処の悪魔狩人じゃー!
万有引力のうそつきいいぃぃぃぃいいいいぃぃ!とドップラー効果を残しながら、汰壱は落下していった。


「はいそこまで!」
タマモの終了の声が響いた。

地面に潰れた蛙みたいに張り付いて汰壱はピクピクしていた。
決着はすぐに着いた。まともに受身が取れずに落下した汰壱だったが、その時はまだ平気だった・・・
問題はその後である。起き上がろうとした時、時間差で上からシロがドンと落下・・・ご丁寧に膝まで入れてくれました。
 
いい感じに地面にめり込んだ汰壱に、タマモは声を掛けた。

「まあいろいろ問題もあるけど・・・取り敢えずは合格ね」
だが汰壱は納得できなかった、なぜ自分の最後の攻撃が、かわされたのか解らなかったからだ。

「何で最後、落下中にもう一回飛べたんですか?って顔してるわね・・・答えは簡単よサイキック・ソーサーを使ったの。」
「ソーサーを?そんな事できるんですか?あれは防いだり、投げたりするものでしょ?」

余計に訳が解らんという顔をした・・・それもそうである。現にシロは飛礫をソーサー(ワイド版)で弾き返している。
投げたりもする事もできることは、知っていたが、飛ぶことなぞできるのか?
「落下中に自分の足の裏にフィールドを展開させ、小規模のエネルギー爆発を起こし、その反動でもう一度飛んだの、
ちょっとした応用技よ」

「えっ!!」

汰壱は開いた口がふさがらなかった。
なにがちょっとした応用だ、確かにサイキック・ソーサーは爆発する性質があるが、それを応用するなんて無茶苦茶である。
自分の身体を持ち上げる程度に霊力を調節し、同時に自分にダメージが行かないようにコーティングして、
そこから爆発のエネルギーをに方向性を持たせる。

霊力が大き過ぎれば不必要に飛んで行き。少なければ飛ばない。

コーティングが弱ければ自爆必至であり。

爆発のエネルギーの方向性が指定できなければ、何処に飛ぶかもわからない。

力・防・技

三種の性質の霊力をバランスよく使いこなしつつ、それらを瞬時に発動・・・・

なまじ知識があるだけにその凄まじさに戦慄すら覚えた。

これが最高峰のGSの力の一角・・・・

汰壱は改めて自分が目指すものの高さを認識した。





【ひとは星の輝きで自分の場所を知ることが出来る。】
そんな、言葉を思い出していた。シロやタマモは星であり、己は地面にいる。
星の輝きを見て、自分のいる位置を汰壱は知った。
だが、星を目指すほど、遠く長い道も積み上げて昇ってゆける。

なぜならば、まだ足りないから・・・・・ 


ぎゅっと拳を握り締める・・・・到達してみせるその高みに・・・



「それじゃ、今回の仕事について話すわ・・・あんたの初仕事は(護衛)よ」
「よろしくおねがいします!」

やってやるさ。

強くなるためなら。





















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