ザ・グレート・展開予測ショー

〜『キツネと羽根と混沌と』 インターミッション2〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/11/13)



「・・怪しすぎるわ。やっぱり部屋に縄で括りつけたほうがいいんじゃ・・」

「一体どこまで信用ねえんだよっ!?オレは!」

・・廊下の中心で獣が咆える・・もとい、タマモに睨みつけられ横島が叫んだ。

夜。夕食を終え、連れ立って大浴場に向かおうとしていた美少女2人に、血に飢えた狼が声をかけ・・・
そこからこの騒動は始まった。

キョトンとしたままの神薙を取り残し、横島とタマモはさっきからずっとこんな調子であり・・

「あ・・あの。」

「『じゃあ、オレは先に寝てるから。2人ともお休み〜』・・ね。大方、大人しく部屋に戻るフリをして、覗きの用意でも整える算段でしょ?」
「ぐ・・なんで分か・・・じゃなくて。しねえよ、そんなことは!?お前だけならともかく、神薙先輩までいんだぞ!?んな読者にひんしゅく買うようなマネできるか!」

・・いや、ひんしゅくどころか、一部の男性読者は思いっきりそれを求めているような気がしないでもないが・・。
神薙本人は、といえば、2人の様子を見て楽しそうにクスクス笑っているだけである。

―――――・・。

「く・・仕方ないか・・。本当に、信用していいのね?」

(けけっ・・いい訳ねぇだろ。こんなチャンス、オレが逃がすかっつーの。タマモもまだまだ甘い甘・・)

「・・・横島?」

「・・へっ?あ・・い、いや。おっけーおっけー、バンバン信用しちゃって。」

――――・・。

・・などというやり取りの後、タマモは渋々・・神薙はよく状況が把握できないまま、その場を後にすることになり・・。
先ほどから顔が緩みっぱなしの横島に、去り際、神薙が声をかけた。

「横島くん・・少し、いいですか?」

「・・?はい・・?」

そう言って、近づいてくる神薙の手に握られていたのは・・リボンで包装された2つの小さな紙包み。
意味も分からず横島が受け取ると、それに彼女は少し微笑み・・

「先ほど、タマモさんが焼いたクッキーです。横島くんはきっと夕食だけでは足りないだろうからって・・。
 一生懸命作っていたようですから・・暖かいうちに食べてあげてくださいね。」

「・・ってマジっすか?なんで直接手渡さないんだ?」

言いながら振り向くと、ちょうどタマモと目が合った、一瞬、硬直したような動きを見せて、そのまま彼女は目をそらしてしまい・・
横島はますます首をかしげる。

「・・?え〜と・・じゃあ、こっちは・・?」

「?ぁぁ、それは・・」

そそくさと立ち去ろうとしていた神薙が、横島の指摘に苦笑して・・

「へ?え・・もしかしてこれ・・」
「私も、手持ち無沙汰でしたから・・。タマモさんの分を食べて・・もしも足りなかった時は、つまんでください」

何かの間違いでしょ、といった顔で尋ねる横島にそれだけ言って・・神薙は会釈とともに遠ざかっていく。

・・・。


「・・・・・。」

そして廊下には横島が一人。

「ぐ・・・うぅ・・」

タマモと神薙・・・そして手のひらに残る小さな包み。それらを交互に見つめながら、横島は額にイヤな汗をかき始めて・・・
クッキーの温かみが身に染みまくる。

・・オレはこのまま欲望に任せて突き進んでしまっていいのだろうか?下手をすると、人間として大切なものを失ってしまうんじゃあ・・

そう考えた瞬間!!横島の心にキラキラと天使が舞い降りた。

よし!やめておこう!やっぱ犯罪は良くないよ!ここは大人しく部屋に引き・・・・・

――――――・・。

「ここ・・露天風呂になってるみたい・・。少し興味あるかも。」

「そうなんですか・・。今夜は月が綺麗ですから・・楽しみですね。」

――――――・・。

・・・・引き・・・・・・・・



「・・って今のを聞いて引き返せるかよっ!?な〜に、バレなきゃいいんだよバレなきゃ!!
 ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒ(以下略)」   

※彼はこの作品の主人公です。


〜『キツネと羽根と混沌と インターミッション2(としていいのかが分かりません(爆))』〜


そのころ・・。

「やれやれ・・もうこんな時間か・・」

場所は変わって・・・駐車場からエントランスまで続く、広い路傍。蒼褪めた月の光を浴びながら、西条は玄関に向かって歩を進めていた。
本部を出たのは朝早く。つまり自分は・・半日以上ここを留守にしたことになるのだが・・・

(・・まったく。恨みますよ、先生・・。)

こめかみを押さえ、西条が一つため息を吐いた。数分前、これから帰る旨を伝えた電話での・・美智恵の台詞を思い出す。

――――・・あ。そういえば西条くん、今晩は横島くんと同室に泊まってね?え?いや?だめよ、貴方は一人だと徹夜で仕事しちゃうから。
    男どうし仲良くね。横島くんに元気を分けてもらいなさい♪


・・・。

・・もらいなさい♪と、きたものだ・・。命令口調で言われれば、弟子である自分が断れるはずもない。

(たしかに元気は有り余ってそうだが・・。無理だ、もらうどころか逆に削り取られる・・)

壁に手をつき、彼はかれこれ1時間近く、門をくぐることを躊躇している。
・・・どうする?今日は一人、刀の手入れでもして感覚を研ぎ澄ませようと考えていたのに・・・・。
部屋に戻ればあの男と・・・・おそらくはテレビの有料チャンネルが待ち構えている。

「・・横島君はあれで恐ろしく強いからな・・。試し斬りの素材にするという手もあるが・・・」

・・なんて、デンジャラスな妥協案が彼の頭を錯そうし始めた・・・・その瞬間だった。


(・・・・?)

闇の中、一つの影が生垣を飛び越え、疾走する。壁を伝うように加速するその何者かに・・・一瞬、西条は戦慄を覚えた。
感じ取れる気配はほぼ皆無・・・・にもかかわらずその動きは目を疑うほどに、速い。

(手錬れているな・・・)

負ける、とは思わなかったが、逆に勝てるとも思えない。力量は自分と同等か・・・相手の方が少し上。

・・・。

・・・・・・・面白い。

唇を歪め、西条は霊刀を抜き放つ。刹那、彼の気配も霞むように闇へと消失し・・・・

・・・影が不意に立ち止まった。まだ自分の接近には気づいていない。

―――――殺れる!

必殺を確信し、西条の足が地を蹴った。剣閃が閃く。そのまま彼は、袈裟懸けに愛刀を『何者か』の肩に・・・・

『何者か』の肩に・・・・・・


「・・・って打ち降ろすなぁあああああああああああああああああっ!?」

絶叫が轟く。

紙一重。
まさに一ミリの隙間も存在しない、ぎりぎりの一線で・・・・横島がバク転とともに身を翻した。
刀身は惜しくも空を切り・・・・。それを見た西条は・・・・

「・・・っ・討ち損じたか・・・」

「『討ち損じたか・・』じゃねぇええええええええ!?てめぇ!途中からオレだって気付いてただろ!?なんだ今の本気っぷりは!?
 オレを殺す気かよっ!?」

「ははっ。何を言ってるんだい?そんなこと当たり前じゃないか?」

「・・ぐ・・こいつ・・マジ死なす・・」

・・まぁ、半日ぶりの再会も彼らにかかればこんな所である。
付近に立ち昇り続ける白い湯気。壁づたいの風呂場から聞こえてくる、少女たちの声を聞き・・。それに西条は半眼で・・・。

「Gメンの施設内で覗きとはな・・。正気か、君は?」
「・・どけ・・!お前も男なら分かるだろ・・・このシチュエーションを前にして燃えたぎるオレのパトスが・・!」
「妄想の間違いだろう・・。生憎、僕には分からないな・・・これでも、紳士で通っているんでね。」

肩を怒らす横島に、西条は世も末だと言わんばかりに首を振り・・・。

「さて・・今日という今日は決着を着けようか?横島君」
「上等だ・・。ギタギタ(死語)にしてやるから、念仏でも唱えとけ。」

両者の間に、殺人的な勢いで霊気の嵐が吹き荒れていく――――――――


――――――・・。

「・・?外で・・何かあったのでしょうか?」

「・・・・さぁ・・?」

またまた場所は変わって、風呂場の入り口。
普通ではちょっと考えられない(爆音・斬撃音など)物音を聞き、タマモと神薙はそろって首をかしげていた。

この際、公共施設の大浴場がなぜ露天風呂なのかという、つっこみは抜きにして・・・
とにかく、2人の前に広がっているのは幻想的な風景。

天然の岩場に、群雲がかった蒼い月・・。夜の冷たい空気が、湯面のまわりに薄い白煙を漂わせている。

・・・いや、もうここまで来てビビってもしょうがないので、あえて開き直って描写しちゃおうかと思うが(爆)・・・・

当然のごとく、神薙の姿もタマモの姿もほぼ裸身。
ここで『ほぼ』という表現を使用したのは、2人とも手ぬぐいで前をギリギリ隠しているからなのだが、それはそれだ(←何がだ。)

一糸纏わぬ状態になったことで、余計に際立つ白い肌と金色の髪。
水面に足を差し入れながら、タマモはチラリと隣の様子を盗み見て・・・・

「・・・・・・。」

「・・・?どうかしましたか・・?タマモさん・・?」

視線に気付き、神薙が戸惑う。
彼女の肌も、タマモと同様に純白・・・・というより、ほとんど透き通ると言ってもいいぐらいの白さなのだが・・・・
おそらく、タマモが今、注意を向けているのはそこではなくて・・・・

「・・・神薙さん・・って・・・その・・・着やせするタイプだってよく言われません?」

「・・?は・・はぁ・・・」

割と本気で落ち込んだ声で、タマモがつぶやく。

普段の華奢な制服姿からは、およそ想像もつかない・・・・いや、腰まわりの辺は印象そのままなんだが、何というか胸が・・・。
美神ほど圧倒的ではないにしろ、カテゴリーで分類すれば確実に上位にランク付けされるであろう、神薙の肢体。
いきなり敗者宣告をうけた気分になり、タマモがブクブクとお湯の中に沈んでいったりして・・・。

広い世界には、発育途上の胸が好きな人も『けっこうな比率で(爆)』存在するんだよ、というフォローも今の彼女には通用しない。

・・・・・女性読者の視線が痛くなってきたので場面を移す。


――――――・・。

(っ・・速ぇ・・・!?)

かろうじて、初太刀をかわした刹那、横島は自らの油断を痛感した。
残身はおろか、切っ先すら見えない、疾風のような斬撃。剣圧だけで吹き飛ばされたジャケットを見つめ、彼は小さく舌打ちする。
数分前の不意打ちから、うっすらと感じていたが・・・・これは・・・・・

「・・もらった!!!」  「だから『もらった!!』じゃねぇえええええええええええええっ!?」

ご機嫌で追撃を加えてくる西条に、横島は思いっきりつっこんで・・・。
剣の腹を向けてきているということは、殺すつもりはないのだろうが(いや当然だが)・・その分、容赦というものが感じられない。

衝撃で宙を浮く横島には反応できない・・・・ほぼ必中の間合い。

先ほどの台詞は綾(あや)ではない・・・。これは・・・喰らう―――――!!

「・・っ・・んにゃろ・・!」

「・・・・なっ・・・!?」

直後。

地面を巻き込み、四連の剣撃が、横島の上身に叩き込まれ・・・・。少なくとも、この場にある程度の力を備えた人間が居たのならそう見えただろう。
しかし、西条の瞳にはこう映った。

目の前のいた筈の横島が、突然視界から『消え』、そしてかわしざまにに・・・・・

「くっ・・・抜け目がないな・・・」

瞬間、西条の周囲で幾つもの閃光が炸裂する。
『爆』の文珠によって引き起こされた炎を払い、西条が大きく後方で離脱した。

爆発と斬撃の影響で、そこらかしこにクレーターが生じた緑地場。
光に濡れた刃を片手に、西条は深々と嘆息する。

そのまま彼は、遠く距離が開いた・・外と風呂場を分かつ壁面を見上げ・・・・

「・・・・今のが超加速か・・。呆れた速さだな・・」

「・・・いや、まさか人間相手にコレ使う日が来るとはな・・。危ねぇ危ねぇ・・」

壁から突き出た取っ手にぶら下がる体勢で、横島は答えながら顔をしかめる。
やはりというか何というか・・・その顔は露骨にイヤそうな半眼で・・・。
今の攻防で確信した、やはり錯覚ではない。西条は数時間前より確実に強くなっている・・それも別人、いや別『物』のように・・

「・・・ったく、ほんとに人間かてめぇは・・。人の一張羅をボロボロにしやがって・・」
「・・その言葉・・そっくりそのまま君に返すよ。」

軽口を叩き合い、横島と西条は互いに相手の瞳を睨みつけた。
いつものド突き合いなら、いざ知らず・・・・ここまで本格的に闘うことは今までなかった。
横島が意図的に威力の高い文珠の使用を控えているのに対して、西条は相変わらず剣の腹側をこちらに向けている。
ハンデがいい分である上、怪我の心配もないというなら・・・・こんな機会は願ってもない。

・・・薄く笑うと、横島は取っ手を支点に、中空で体勢を立て直した。

・・・・・さて、どう攻めるか・・・?

超加速の分、速さ比べには分があるが・・・得物の差し引きで接近戦はほぼ互角。

(中間距離ならこっち・・・。遠距離は・・・野郎、銃撃ってきそうだしな・・・)

上空およそ3メートルの位置で、器用にも頭をかきつつ、横島はそんなことを考えて・・・
・・ちなみに、彼の掌にはしっかりと取っ手が握られたままだ。

さっさと手放して地面に降りろよ、という話もあるが・・・・そんなことをしては『作者の』目論見が成功しない。
まるで目に見えない力にでも導かれるように(笑)次の瞬間、横島の視界が・・・・


「え゛?」

・・・ガクンと、揺れた。


西条も・・横島本人もギョっとした表情で壁面を見上げ・・・・
しかし、そんな彼らの動揺を嘲笑うかのように、横島の体は壁の向こうへと吸い込まれていく。

「あの〜・・吸い込まれていくっていうか・・・これ・・・」
「返し戸だな・・。なんで露天風呂の壁にあるのかは知らないが・・・・・・」
「いや、意味が分からないから!!!!!!!!」

横島が半ば落下しかける合間を縫って・・・西条がぼそりとそう言って・・・・

「・・ってお、おい!!もしかして今までのバトルは全部お膳立てです、とかそういう展開かよっ!?ちょっと・・これ本気でシャレになんないだろ!?」
「ご愁傷さまだね・・。次に会うときは君も立派な犯罪者か・・・。」
「こ・・・・っ!てめえ・・・後で絶対殺・・・・・・・・ぎゃあああああああああああ!?」

無慈悲な西条の声が聞こえたのか、聞こえなかったのか・・、
横島はしばらくジタバタもがいていたが・・結局は地球引力に逆らえず、一気に返し戸を滑り落ち・・・

・・・・・・ばっしゃーーーーん!!

・・もう描写するのが億劫になるほどの、古めかしい効果音とともに、水しぶきが勢いよく跳ね上がる。
言うまでも無く・・・彼は白い湯気の中心へと飲み込まれていったのだが・・・・・・・


・・・なお、後編の方は、是非とも女性の皆さんには読み飛ばして頂きたいというのが作者の本音である(汗

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