ザ・グレート・展開予測ショー

横島とおキヌ[4]


投稿者名:NEWTYPE
投稿日時:(00/ 4/27)

「そう・・・私の名は・・バナロス。」
「バナロス・・・?」
「君達も見ただろ?アシュタロスがバナナで滑って転けたところを。その時の屈辱が残留思念として残り今の私を生んだのだ!とりあえずバナナに関わったアシュタロスということでバナロスだ。どうだ、自分で考えたんだが結構イけてると思わんか?」
「なはははは、なかなかセンスいいじゃんかっ!」
「・・君もそう思うか?」得意げに胸を張るバナロス。
「んなわけねーだろクソ野郎っ!!そんなくだらん理由でいつまでも現世に留まりやがって!」
「・・・くだらないだと!?あれは私が犯してしまった唯一の大失態だったんだぞ!その行為を目撃してしまった貴様らは万死に値する!よってこれから私が・・・」
「・・・てけよ」
「・・・何か言ったかね?」
「その体から出てけっつってんだよ!!」
「ハハハハ、何を言い出すかと思えば。出てけと言われて本当に出て行くバカがいるか。
フ・・しかし相変わらずだな、君は。女が絡むと急激に霊力が上がる・・。ルシオラの時もそうだった。」
「その名前を出すんじゃねー!!」横島の顔が一気に高揚する。
美神の表情が一瞬沈んだように見えた。
横島は数個の文珠を発生させるとバナロスの前に立ちはだかった。
「ほう、例の文珠とやらか・・。今の私になら通じるかもしれんな。だが・・今私はこの娘の体を完全に乗っ取っているのだぞ!?私倒そうとすればこの娘の体も無事ではいまい
困ったな?」
「貴様ァァーーっ!!」
「フフフ・・。」内心反則技の文珠を恐れていたバナロスだったが横島が女を裏切ることはありえないという絶対の自信があった。
一方手が出せなくなってしまった横島。美神もどうすればいいのか頭を悩ませている。
と、その時横島の傍らでよく聞きなれた声がした。
「横島さんっ!、横島さんっ!」
横島が振り向くとそこに幽体のおキヌがフヨフヨ浮いていた。
「お、おキヌちゃん・・大丈夫か!?」横島の表情が少しだけ和らいだ。
「はい・・一応・・。・・・ごめんなさい横島さん、私のせいでこんなことになってしまって。」おキヌもだいぶ気にしているようだ。
「おキヌちゃんが気にすること無いさ!な〜に、美神さんもいるんだし何とかなるよ。」
後ろで美神がコクッと頷く。だが、顔は険しいままだ。
(問題はアイツの実力よねー。たかがアシュタロスの残した思念の一部だからたいした力も無いはずだけど・・・)


「・・そろそろ戦いを始めようか!こちらからいかせてもらうぞっ!!」
言うが早いかバナロスは忽然と姿を消した。
「えっ!なに?・・消えたの?」
「違います美神さん、奴はものすごいスピードで動いているんですっ!」
「ア、アンタ見えるの!?」
「ええ、ぎりぎりですけど」
その刹那ーーーーーードフッ
「あぐ・・そ・・そん・・な」
美神のうめき声が響いた。おキヌの花車な拳が美神の鳩尾を捉えたのだ。
「美神さん!?」
振り返った横島の目に映ったのは人形のようにもろく崩れ落ちてゆく美神の姿だった。
「クソ・・・おキヌちゃん、美神さんを頼む!」
「・・・・・」
「おキヌちゃん!?」
「え・・あ・・は、はい!」
おキヌは何か考え事をしていたらしく少し反応が遅れたが、とりあえず急いで美神の救護に向かった。


「次は・・お前だっ!!」
バナロスは微かに笑みを浮かべながら右手から巨大なエネルギー波を放った。
「な、なに!?」
横島は文珠「加」「速」を使いこれを紙一重でかわした。
だが、それを予め予想していたかのように差を詰めていたキヌの強烈なまわし蹴りが横島の左腕を痛打した。
「グッ・・・」痛みに必死に耐える横島。
その後も文珠などを使いながら何とか攻撃をかわし続ける横島であったが、おキヌの体を乗っ取ったバナロスの力は想像以上に物凄かった。
「クソ・・強すぎるぞ・・・。」
その時、美神を救護していたおキヌが戻ってきた。
「横島さん、大丈夫ですか!?」
「あ、ああ。それより美神さんは?」
「美神さんなら気絶してるだけです。大丈夫、少したてば目を覚ましますよ。・・それより横島さん・・・一つ、提案があるんですが・・・・。
「何?」
おキヌは一瞬思いつめた表情をしたがすぐに真剣な顔つきに変わった。そして前を向いたまま何かを決意したようにゆっくりと口を開いた。
「横島さん・・文珠で、私の体ごと・・・やっつけて下さいっ!」
「そ・・・そんなことできる訳ないだろっ!」
「大丈夫です・・私が一時的に悪霊の動きを止めますからその間に文珠で・・・・」
「そんなこと言ってんじゃねーよ!下手したらまたおキヌちゃん死んじまうかもしれないんだぞ!」
「それは・・しょうがありません。私一人の命で横島さん達が助かるなら私は本望です」
「そんな・・そんなこと言うなよ!俺達三人ずっと一緒だろ・・今までも・・・これからもさ!?」
「・・・ごめんなさい、横島さん・・・・。私が居なくなった後、美神さんのことしっかりサポートしてあげて下さいね。あと・・食事や洗濯や掃除も自分でしっかりやらなくちゃだめ・・です・・よ・・。」
おキヌは正面を向いたままだったが、肩がワナワナ震えているのがわかった。
「ちょっと待ってくれよ・・・俺は・・・俺はもう大切な人を失いたくないよ!!」
横島の頬から大量の涙が流れ落ちた。
「・・・安心しました。私のこと大切な人だって言ってくれて・・・。」
フッとおキヌが振り向いた。
目から止めどない涙が溢れていた。
「横島さん・・・大好きです・・・。」
おキヌはニッコリ笑うと横島の頬にそっと唇を合わせた。
「おキヌ・・・ちゃん・・。」
横島はもう何も言えなかった。自分の涙で膝が湿っていくのを感じた。


おキヌはキリッとバナロスを見据えるとヒュンと光の如く猛スピードでバナロスめがけて突っ込んでいった。
「なんだと!?」
予定外のスピードにバナロスは対応が遅れた。
その一瞬の隙をついておキヌが自分の体に入り込んだ。
「ぐ・・・何をする!?」
「あなたなんかに私の体を自由に使わせるもんですかっ!!」
今、おキヌの体内で二人の意志が激しくぶつかり合っていた。
時折目の色が点滅しだしたり奇妙なうめき声を揚げたりと、そんな異常な光景を横島は固唾を呑んで見守っていた。


そして三分後・・・・
「横島さん・・・今です・・・今がチャンスです!」
見ると左腕で押さえながらヨロヨロと立ち上がろうとしているおキヌの姿があった。
呼吸も辛いらしく肩で懸命に酸素を取り込もうとしている姿は見るからに痛々しかった。
「おキヌちゃん・・・」
横島は最後の文珠を握り締めていたが、まだ決心することができないでいた。
「横島さん、どうしたんですか?早く・・それを投げて・・くだ・・さい・・・」
「しかし・・・」
「は・・や・・く・・・。私の・・・・意志・・・を・・・無駄に・・・・しな・・い・・で・・・。」
おキヌが必死の形相で横島を見つめた。
「ちくしょう・・・・・ちくしょおおおーーーーーーーーーーっ!!」
横島は意を決したかのように文珠「滅」をおキヌに向かって投げ込んだ。
途端に眩い閃光がおキヌを包みこむ。
横島は爆炎の中をじっと見つめていた。と、その時一瞬炎の中にたたずむおキヌの姿を認めた。
おキヌは微笑んでいた。その姿は聖母マリアのように思えた。
「サヨナラ・・・・横島さん・・・・。」
おキヌは一言だけそう言った。
「おキヌちゃん・・・。」横島はやるせない気持ちでいっぱいだった。


「クソーーーこんな死に方だとは思っていたが、やっぱり反則だぞ文珠はーー!!」
叫びながら閃光の中で除々に形を失ってゆくバナロス。
「・・・ふん、極楽ワールドの特権だバカヤロー!」
怒りに身を振るわせ、吐き捨てるように言い放つ横島。
そして次の瞬間・・・・
ドッカーーーーーーーーン!!!!
爆風をもろにくらったおキヌの体はまるで中身が空っぽの人形のようにフワリと宙を舞った。
その体を横島が懸命に抱きとめた。
「おキヌちゃん!おキヌちゃん!」
「・・・・・」
「おキヌちゃん、目を覚ましてくれよ・・!」
「・・・・・」
「おキヌ・・・ちゃ・・ん・・。」
横島の肩がガックりと垂れ下がった。
おキヌの顔は青白く体から生気はほとんど感じられなかった。
ただ顔の表情だけは穏やかに見えた。
そのことが更に横島を罪悪感に駆り立てるのであった。
「ちくしょう・・・・・・ちくしょう・・・・・・・」
横島の悲痛な叫びが館内に空しく響いた・・・。








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