ザ・グレート・展開予測ショー

彼女の視点。


投稿者名:cymbal
投稿日時:(04/11/ 1)



・・・暗がりに蠢く一つの怪しい影。その人物は辺りを気にしながら「ある場所」へ向かっていた。


彼女の心臓はバクバクと音を立てている。
顔は真っ赤に染まり、この時間は人気が無い筈の場所なのに何度も何度も辺りを見回す。


「大丈夫、ちょっとだけ。ちょっとだけだから。」


そんな気持ちを胸に、持って来た「台」の上に昇ると・・・そっと箱を置いた。
シーンとした静寂にコトリと思いが響く。その瞬間思わず口元が緩んだ。





どうなるだろう?どんな反応を示すのだろう?でも・・・


「迷惑になったりしないだろうか?」


期待と共に拒絶の不安が胸を過ぎった。普段の彼を見る限り、この事が一つの騒動を起こす事は間違い無い。
でも胸の高鳴りが止まらない。こんな恥ずかしい気分になるのはいつ振りだろう。


「多分・・・大丈夫だよね。」


ゆっくりと元来た道を戻っていく。明日の事を考えながら。きっと楽しい日になるだろうと。










そして夜が明けて・・・。


予想通り・・・というか、予想以上に騒ぎになっていた。言葉も見つからないぐらいの誤算。


どうしよう?私は思った。ここは名乗り出るべきではないのだろうか?
彼の為にも・・・でも周りの雰囲気から、言葉を出すタイミングが見つからない。


落ちつかない面持ちで、私はずっと成り行きを見ていた。


こんなつもりじゃなかったのに・・・少しだけ。少しだけこの「時間」を共有したかっただけなのに。










一通り出来事が通り過ぎた後、残されたのは一つの箱。


結局彼はこの箱を持ち帰る事は無かった。この部屋に置き忘れたまま。


私は窓から沈んでいる彼の姿を見つめていた。いつもこうして私を影で楽しませてくれる。


今日もそんな意味で、また一つ楽しい思い出が出来た。でも・・・彼を傷つけてしまった。





ごめんね・・・本当の事言い出せ無かったの・・・。
ちょっとだけ青春を味わってみたかっただけなのに大ゴトになっちゃって・・・。





少しだけ・・・罪滅ぼしという意味を込めて。
私は指先でリボンを付いた箱を回すと、それを表に向かって放り投げた。


「よっと。」


夕日に重なって一瞬それは見えなくなり、そして地面に向かって落ちていく。


コンッ。


「う、うわっ、何だ!?誰だ!?もう放って置いてくれー!!」


狙った所に寸分も違わずそれは落ちた。彼はは周りを見渡し、その「もの」を見る。


「こ、これは・・・だ、誰だ!ちくしょー!これ以上馬鹿にするんじゃねー!!」


彼はふいに上を見た。とっさに私はその場に隠れようと・・・したが、焦ってその場に倒れ込んでしまった。


ゴツン。


「あいたー!!」
「ぬっ、そこかー!!ちょっと待っとれよー!!」


やってしまった。彼は物凄い勢いでこちらへ向かってくる。マズイ。どうしよう。


私は急いで机の中に「潜り込む」。どうせバレるに違いないけど、もうしょうがない。
でも正面から相対する勇気も無い。罪は謹んで受けよう、この「中」で。ズルいかも知れないけども。


「誰じゃー!!」


土煙(?)を立てて、彼は私のいる所まで上がって来た。
彼は相当怒っている様子でこちらに近寄って来て、私の前で止まった。





「・・・・・・。」





私は目を瞑った。彼は何も言わない。私の顔の温度はどんどん熱くなり汗が噴き出した。
どうやら彼は何か考え込んでいるようである。そして・・・


「・・・・・・なんだ。そっか。」


一言呟いた。全てを理解したようなその響き。私はそれを聞いて大きく息を吐いた。
身体の汗が冷や汗へと変わっていく。


「・・・えーと、その・・・なんだ。・・・ありがとな。ただ・・・今度はまともに渡してくれると嬉しいなあ・・・と。」


最後の言葉は笑いながらだった。彼はゆっくりとその場を去っていった。


私はドキドキしながら暗がりの中でその言葉を聞いた。
瞑っていた目を開けて、机から顔を出す。





・・・夕暮れが校内を照らしていた。一つだけ古ぼけた机が影を作り、黒髪の女の子がその上に座った。
彼女の目には廊下を歩いていく彼の後姿が見えた。手にはリボンのついた箱を持って。





「青春だよねコレ!もうっ・・・嬉しいっ!」





にっこりと・・・喜びを噛み締めて、愛子さんは教室へと戻るのでした。


おしまい。

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