ザ・グレート・展開予測ショー

GS美神 EP2 No,6 向き合う為に


投稿者名:純米酒
投稿日時:(04/10/29)


「・・・っと、忘れる所だったぜ・・・ちょっと寄り道するぞ」

「なんの用があるのでござるか?」

「俺の妙神山に行く用事は『ある物』を妙神山に届けることだ」

そう言うと雪之丞は郵便局に向っていった。


「GSの伊達雪之丞だ、荷物を受け取りにきた」

GS免許を、あくびをしながら夜間受付窓口に座っていた男に見せてそう告げた。

「・・・ハイ、伊達雪之丞様ですね・・・少々お待ちを・・・」

あくびをしていた男が奥に引っ込み、なにやら大きな物を抱えて戻ってきた。
それは、布で包まれていて、所々御札で封印されていた。

「では、こちらに印鑑かサインを・・・ハイ・・・ありがとうございました」

極めて事務的な対応の後に荷物が雪之丞の手に渡る。


「雪之丞殿・・・それは何でござるか?」

「・・・ん、これか?これは神様の物だ。ちゃんと返さないとな」

雪之丞はそれだけ言うと、また妙神山に向って歩き出した。

シロは何がなんだか解らないまま雪之丞の後についていく事しか出来なかった。










砂漠に垂らした糸を見つめ、考え事をしていた横島は『修行の意味』について考える事を放棄した。

いくら考えても何の変化もなく、考え事は堂々巡りを繰り返すばかり。
小竜姫が差し入れに来る度に、それとなくヒントを聞こうとしても返ってくる答えは同じ。
そして、最後には「ゆっくり考えてください」という言葉を残して去っていくのだ。

(何を考えろっちゅーねん・・・いい加減頭も疲れてきたし・・・)

「はぁ・・・なにやってるんだろうな・・・」

出てくるのはため息と愚痴ばかり。

自分の身に起こった『異変』を解決するためにやってきた妙神山でやっている事が、
『砂漠で釣竿を振るう』という全く訳のわからない行為。

意味の見出せぬまま、無駄な時間を費やしてのではないか?という疑念に腹も立ってくる。

(クソッ・・・俺にもっと力があれば・・・俺がもっとしっかりしていれば・・・)

怒りの矛先がこの修行を課した人物に向かわないのは、横島の性格故なのか。
モテる男を憎みこそすれど、理由も無く怒りを顕わにすることは無い。

唯一怒りに身を任せることがあるとすれば、彼の仲間に危害を及ばすような輩に対してだ。

だが彼は今、自分自身に怒りを感じていた。

自身の無力さに、愚かさに・・・・・・


しばらくの間、自己嫌悪と怒りの感情に苛まれ、ネガティブな思考が頭の中を支配していたが、

(・・・いかん、俺は何時でも『俺らしく』してないと・・・アイツが悲しむよな・・・
 バカやって、皆を笑わせて。セクハラして、シバかれて・・・・・・
 だから・・・だから、俺は『もう一人の俺』に負けちゃいけないんだ・・・)


もう一人の自分の思い。


それは、夢の中での会話で聞いたときに、自分とは相容れないものだった為に突っぱねた。

シロを傷つけた奴を前にしたとき、呑まれてしまった。

 
横島はそういう考えに捕らわれてしまった。

故に横島はもう一人の自分を『敵』として認識してしまっていたのだ。

彼はまだ己の過ちに気づかない・・・








「こ、ここが妙神山でござるか・・・」

鬼の顔がついた門扉の上に大きく書かれた文字を見て、表情が緩む。

(やっと先生に会えるでござる・・・)

その事だけで頭が一杯のシロは、後から何かを話しかけてくる雪之丞の言葉はまったく耳に入っていなかった。

「たのもー!!」
扉を叩き、大きな声で来訪を告げた途端、

「「無礼者ーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」

門扉についていた鬼の顔が喋った。

いきなりの不意打ちにシロは目を白黒させ、戸惑ってしまった。
後では雪之丞が笑いを堪えるのに必死なようだった。

「ココを妙神山と知っての狼藉か!?」
「この右の鬼門!!」
「左の鬼門がいる限り!!」
「「お主のような未熟者にこの扉が開く事は無い!!!!」」

一気に口上を述べた鬼門達だが、

ギィーーー

「こんな時間に大声出さないで下さい!お客様にも迷惑ですよ?」

あっさりと内側から開けられてしまった。


「・・・・・・・拙者は未熟者ではないということでござるか?」

「都合のいいように解釈してんじゃねーよ・・・それにお前は修行が目的じゃないだろ?」

そう言うと雪之丞は、鬼門の言葉を軽くあしらう小竜姫に話しかける。

「よ!ちょっと遅くなったけど例の物持ってきたぜ」

「あっ、お待ちしていましたよ雪之丞さん。あら?・・・後の方はだれですか?」

既に顔なじみの雪之丞と一緒に現れた初めて見るシロに首をかしげる。

「あぁ・・・今、横島来てるだろ?どうしても会いたいって言うからココまで案内してきたんだ。
 修行が目的じゃねぇから鬼門のテストは抜きで良いだろ?」

「そうですね、ではこちらへ・・・」

鬼門の懇願も虚しく、雪之丞とシロは妙神山修行場に入ることになった。



「はい・・・確かにお預かりしました。
 またしても天界の不祥事の後始末を、GSの方に押し付けるような形になってしまって・・・
 なんと謝罪してよいか・・・」

「気にすんなって、別に小竜姫がやったわけじゃねーんだしよ」

荷物を受け取った小竜姫が頭を下げるが、雪之丞は特に気にしていない様子だ。
彼の本音としては「強い奴と戦えて満足した」という所だろうか。

流石にそんなことを言えば、小竜姫がいい顔をしない事が想像できるので余計な事は言わない。

「・・・それより、横島来てるんだろ?ちょっと会わせてくれねーか?」

さっきから落ち着かない様子のシロの気持ちを代弁するかのように、話題を切り替える。
シロは小竜姫の霊力を人狼の超感覚で捉えて、縮こまっていたのだ。

だが、この申し出に小竜姫は難色を示した。
横島は今、修行の真っ只中にいるため他人との接触を極力避けようとしていた。

しかし、シロが必死になって、最終的には涙を浮かべて懇願したので、横島と会う事を認める事になった。






「先生ー、会いたかったでござるよー!」

「おわぁっ!?な・・・どうしてシロがここに?」

横島は、いるはずの無い人物によるタックルに驚いていた。
そのままシロに押し倒されて、顔中嘗め回されても、突然のことに頭がうまく回らない。

「俺が連れてきたんだ」

押し倒された横島に近づきながら、短くそれだけ告げる。

「そうか・・・」

雪之丞の声を確認して、納得したような表情を浮かべる横島。

力の無い仕草でシロを引き離すと、砂埃を払って座りなおす。
その動作一つ一つが、「横島らしくない」ことに雪之丞は眉をひそめる。

シロは横島の隣に腰を下ろしたが、雪之丞は立ったまま横島を見下ろしている。

そしてこう言い放った。

「嬢ちゃんから聞いたぜ。・・・美神の大将とおキヌから逃げて来たんだってな?」

「逃げて来た訳じゃない!」

激高して今にも立ち上がらんとした横島に、雪之丞はさらに突き放すような言葉を投げつける。

「自分で言わなきゃ逃げたも同然だろうが・・・言いたい事があるんなら自分の言葉で言えよ。
 口に出さないで相手に解って貰おうなんて、都合が良すぎるぜ」

「言いたい事なんて無いよ・・・」

「嘘でござる!・・・拙者は知ってるでござる・・・嘘をつくのは辛いことだって!
 自分につく嘘がとても辛いものだって・・・先生の辛そうな顔を見るのはイヤでござる・・・
 だから先生、もう嘘をつかないで欲しいでござる・・・」

シロの悲鳴のような叫び声は、途中から嗚咽交じりの震えた声に変わっていた。

「・・・・・・」

「尻尾巻いて逃げるのか?・・・自分の心(本音)から目を逸らすな!
 お前は『アイツ』から貰ったものまで無くした訳じゃないんだろう?
 それすら見失ったままくさってるつもりなのかよ!?」

「・・・・・・」

「・・・・・・・行くぞ、シロ。これ以上は何言っても無駄だ」

雪之丞は、そういうとシロの手をとって横島に背を向ける。
シロはまだ何か言いたそうな顔をしていたが手を引かれるままにその場を後にした。


残された横島はただ呆然とし、雪之丞とシロの言葉を受け止めていた。






「雪之丞殿・・・・拙者、先生のお側に居たいでござるよ・・・」
強引に連れ出された事が不満なのか、シロが横島の方を向きながらか細い声でつぶやく。

「我慢しろ、自分で解決しなきゃいけない問題だってあるんだ。・・・だから、お前は自分の先生信じて待ってろ。な?
 横島は弱くない・・・お前も知ってるだろ?」
そう言うと、今にも泣きそうなシロの頭を撫でてやる。

雪之丞の言葉と気遣いが、シロには堪らなく嬉しかった。

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