ザ・グレート・展開予測ショー

あいかわらずなおれたち。


投稿者名:冬の子
投稿日時:(04/10/25)


 世の中平和になったものだと俺は思う。
 アシュタロスみたいなはた迷惑な奴ももう居ないし、まあ魑魅魍魎悪霊妖怪魔族にまれに神様みたいなのも厄介ごとを運んでくるもののGSなんて仕事をしながら俺はいつしかとっくに成人していたし、おキヌちゃんは相変わらずほえほえ〜っとしてるし美神さんは相変わらず守銭奴だったし、シロは相変わらず忠犬だったし、タマモは相変わらず皮肉屋だったし、ひのめちゃんは相変わらず可愛らしかった。
 いまだに理不尽な理由で死に掛けることもあったが、それも含めて俺も相変わらずだった。

 ――つまり、平和なのだった。



「なあ、おキヌちゃん」
「横島さん? はい、なんですか?」

 俺はテレビをぼんやり見ながら、わざわざ晩御飯を作りに来てくれた同僚を呼ぶ。
 いまは夕食も終わって彼女は洗い物をしていたところだった。
 そんな彼女に俺はお茶を入れてあげ、湯のみを渡すと、この間カオスから貰ったお茶菓子を薦めた。
 ちなみに変なものではない。ちゃんとカオスがバイト先からガメてきたものだ。

「あ、この御煎餅おいしいですね〜」
「そうだねぇ」

 湯のみを傾けながら俺は返事をする。
 なんだか晩年夫婦のような雰囲気だが、いまだに俺とおキヌちゃんは清い関係だった。というか俺は誰とも関係を結んでいない。
 なんだかんだで、なあなあのままだ。
 実に俺らしいヘタレた人生である。

「わわ、横島さん!? どうしたんですか、突然泣き出して!」
「なんでもないんだ、おキヌちゃん。ちょっと人生に疲れただけさ」
「はあ。それはなんだかとっても大変ですねぇ〜」

 しみじみと、おキヌちゃんがのたまう。
 なんだか最近彼女の反応もだいぶこなれて来たものだと思った。
 まあ、慣れなきゃやってられねーんだけども。

 だから。

「そういえばさー、おキヌちゃん」

 だからたぶん、俺はただちょっと彼女を慌てさせて久々に新鮮な反応を見たいなぁ〜とか、そんな気持ちで言ってしまったのだろうと思う。

「はい?」

 振り向く彼女に向かって、俺はこう言ったのだ。



「――結婚しよっか」
「そうですねぇ」



 流された。
 非常に悔しかった。

「俺なんかでいいの?」
「はい、横島さんがいいんです」

 にっこりと微笑むおキヌちゃん。
 どうやら俺ではもう彼女を驚かすこともできないらしい。相変わらずだと思っていたのは俺だけで、相変わらずなのも俺だけだったみたいだ。

「敵わないなぁ、おキヌちゃんには」
「それじゃあ、これからもよろしくお願いしますね。横島さん」
「ああ。こちらこそよろしく」

 苦笑する俺に微笑む彼女。
 そして倒れこむ彼女の体。

「あ」
「へ?」

 倒れた彼女の体を眺める俺とおキヌちゃん(幽体)。

「めちゃくちゃ動揺してるじゃん!?」
「そそそそそりゃそうですよ〜! 突然あんなこと言われたら〜!?」

 幽体で半泣きする彼女を見て思う。
 ああ、やっぱりおキヌちゃんはおキヌちゃんだなぁ。






 さて、そういうわけで平和な時間はこれでおしまい。
 俺はこれから奥さんのためにも給料の値上げ交渉をしなければならないのだから。
 こちらに退くという選択肢はもう無い以上、これが俺にとっての最大の戦争になるだろう。

「ああ、横島さん! 無理はしないでくださいね! わたし、わたし何時まででも待ってますから!」
「大丈夫さ、おキヌちゃん! 俺たち二人のために俺は頑張るから! 必ず生きて戻るよ!」



「アンタら……。人のことなんだと思ってるんじゃーーーーーーー!」
「ぎゃー!」

 何年経とうが、やっぱりみんな相変わらずなのだった。



 DEAD END.(おしまい)

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa