いつもな二人。
投稿者名:cymbal
投稿日時:(04/10/24)
新緑の木々が真上で揺らめく。隙間からまるで星空のように光が瞬き、風に合わせてざわざわと声を上げる。
その中心で高校生ぐらいの少女が森の中で寝転んでいた。白銀に輝く髪を地面に広げて。
彼女はいつになく詩的な気分でぼんやりと考え事をしている。
「拙者はいつになったらあの人に一人の女性としてもらえるのだろう?」
言葉遣いが古めかしいのは育ちのせいもある。まあ方言みたいなもので。
・・・つい先日彼女は、軽い気持ちで大好きな「先生」に自分の事を聞いてみた。
「ああ・・・そりゃ好きだけど。」
嬉しくてつい顔も赤くなる。でも次の言葉でその気分もどこかへ飛んで行ってしまう。
「事務所の人達はみんなそうだろ。まあある意味家族みたいなもんだしな。」
そういう事を聞いたんじゃ無かったのに。その鈍感さに・・・いやそれとは違うのかも知れないけど。
あまりに近くに居過ぎるのだ。家族という表現が胸に突き刺さる。
みんなが好きとかそういう事を聞きたかったんじゃない。自分だけを見て欲しいという気持ちがあった。
そんな事を考えるのは子供っぽい?そしてその事で自己嫌悪に陥るのは簡単。
気が付いたら・・・走り続けて森の近くに来ていた。普段いる都会の空気とは違う澄んだ匂い。
嫌な事も何もかも関係無い。懐かしい匂い。
鳥の声と森のさざめき。流れる川のせせらぎと地面を歩く蟻の足音。そして・・・。
ごおおおおおおおおお。
「・・・・・・。」
上空を翔ける飛行機。気分も台無しだ。
「ああっ、何でこんな所を通るんでござるか!!この大馬鹿!!」
「何叫んでんのあんた?」
かっとなって叫んだ後で後ろから聞こえる声。
「・・・タマモ。何でここにいるんでござる?」
「何でって・・・そりゃ・・・あんたを探しに来たとでも言うと思う?何となくよ。」
彼女は少し照れたような顔で悪態を吐いた。そして側にあった岩の上に腰を降ろす。
「・・・・・・何か言ったらどうでござるか?」
「・・・事務所の人達が朝からあんたを探してたわよ。」
「・・・先生は?」
「・・・美神に問い詰められてたわね。何かしたんじゃないかって。入院でもするんじゃない?」
・・・ぐう。
「・・・お腹すいた。今から帰れば夕飯でござるな。」
「はっ?」
「帰るでござる。」
「・・・あっそう。」
「タマモは?帰らないでござるか?」
「あんた一緒に?ゴメンだわ。それにあんたを探しに来た訳じゃないし。昼寝をしに来ただけよ。」
「こんな遠くまででござるか?暇な奴。それにもうすぐ陽が暮れるでござる。」
「あんたに言われたく無いわ。」
「暗くなるまでには戻るでござるよ。みんなが心配するから。」
「・・・あんたに言われたく無いわ。」
・・・一人森に残されたもう一人の少女。
「・・・やっぱ馬鹿を探しに来るもんじゃ無いわね。心配して損したわ。」
彼女は聞いていた。昨日の二人やり取りを。
そしてその言葉を聞いた去った筈の少女。
「・・・ありがとう。」
二人が事務所に着いたのはほぼ同時刻でした。
おしまい。
今までの
コメント:
- タマモを書いたので・・・シロも書いてみました。コメントお待ちしてます。 (cymbal)
- 素直じゃないけど、なんだかんだで結構面倒見の良いタマモ…可愛いです。
シロも、そーゆートコはちゃんと理解してるのでしょーね。 (偽バルタン)
- タマモとシロの微妙な距離がらしいですねぇw
決して仲が悪くない訳ではないけれど、いつも喧嘩してるっていうか・・・
心底信頼しあってる友達なんでしょうねぇ・・・ (純米酒)
- 口ではなんだかんだと、信頼しあっている間柄とてもいいものですね。 (R/Y)
- 「蟻の足音」が聴こえるのがシロらしい、とか思ったり(二回目
起伏は緩やかなのに、綺麗に纏まっているのは「スゲェ!!」の一言ですw
そしてシロタマの距離感。―――りそーてき(ぐっ←がっつぱぉず)
やっぱ、こんなカンジがベストだと思う訳で。
ほんわかさせて頂きましたっw
|дT).oO(頑張るんだぞ、シロ・・・!!) (龍鬼)
- 偽バルタンさんへ。
表面では喧嘩していてもいざとなったら・・・そんな関係に少し憧れます(笑)理解しあえる「親友」。素敵な存在やなあ・・・。一応シロが主役のつもりで書いたのですが影薄くなっちゃてますね(笑)コメントありがとうございます。
純米酒さんへ。
距離感は結構気にして書いております。この二人だったらどんな会話をするんだろうか・・・なんて事を一応考えて。原作より乾いた感じになってますが少ない会話で相手の心情を読み取る二人。ちょっと大人び過ぎたかも知れません(笑)コメントありがとー。 (cymbal)
- R/Yさんへ。
実際に口の悪い親友が側にいたら腹が立つかも知れませんが(笑)でも分かり合える関係なら気にはならないのか・・・とちょっと考えたりします。まあ二人は仲が良い方が見ていてほっと出来ます。末永くその関係が続きますように。コメント感謝致します。
龍鬼さんへ。
蟻の足音ってほんとに聞こえるものなのかな・・・(笑)書いてみてなんですが少し不安です(笑)そして起伏が緩やか・・・逆に云えば盛り上げる所が無いとも言えますが(笑)纏まっているとのお言葉、非常に嬉しく思います。距離感についても意識したものでそこを言ってもらえるとありがたいです。コメントありがとうございました。 (cymbal)
- 空を見ながらの昼寝で、上空を横切る飛行機は風情があると私的には思う所ですが…シロにとっては気分台無しでしかないようで残念です(´_`)
横島への想いで悩む彼女ですが、まだまだ色気より食い気、恋より皆との絆…そして友情。そんな感じで。
タマモの素直でない優しさばかりが印象強い後半になると思いきや、きちんと「伝わって」いたシロの意外な思慮深さ(失礼)で、主役たり得ていると思えました。
シロの大人の女性への道は案外近いのかも知れませんね。 (フル・サークル)
- フル・サークルさんへ。
彼女は考え事をしたかった訳で・・・それで飛行機の音が気になった訳で・・・。
と言い訳をしてみましたが(笑)とにかくがっかりさせて申し訳ありません(笑)
さてどうも私が書くとどいつもこいつも妙に大人びてしまう訳で・・・原作を読むともっと子供っぽい面が強い気もしますし、何とも難しい所です。でも本当の意味で彼女が大人になった時、女性として意識する時が来るのでしょう。多分(笑)
コメントを頂き感謝致します。 (cymbal)
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