ザ・グレート・展開予測ショー

君ともう一度出会えたら(エンディング1)


投稿者名:湖畔のスナフキン
投稿日時:(04/10/17)

『君ともう一度出会えたら』 −エンディング1−



》》Yokoshima


「ごめん……その、今すぐ決められない」

 俺はルシオラと美神さん、二人に向かって頭を下げた。

「俺、ルシオラのことが好きで……でも、今の美神さんにも本当に世話になったし……
 それにその、今の美神さんって、なんだか可愛いというか何というか……」

 俺は弁解しようと口を開いたが、なぜか支離滅裂な言葉しか出てこなかった。

「だからその……今は二人とも大事な存在で……選べと言われてもすぐに選べないというか……」

 それでも必死になって、今の気持ちを二人に伝える。

「もう、しかたないわね」
「横島クンにしては上出来な返事ね。ま、今日はここまでかな?」

 俺が顔を上げると、ルシオラと美神さんがクスッと笑っていた。
 重圧から解放された俺は、ほっとため息をついた。

「それから、ヨコシマに聞きたいんだけど……」
「なんだい?」
「美神さんのことは可愛いと言ったけど、私はそうじゃないの?」

 ルシオラが隙のない笑顔で、俺に詰め寄ってきた。

「いや、決してそんなわけでは……」
「横島クン、今は可愛いと言ってくれたけど、前はそうじゃなかっってわけ?」

 俺を挟むようにして、美神さんも詰め寄ってくる。
 逃げ場を失った俺は、進退窮まった。

「ゴメンナサイ」

 俺は二人に向かって、もう一度頭を下げざるをえなかった。




 数日後、俺は逆行してきた事実を仲間に話した。
 しかし、俺の話はGメンで機密事項に指定されたため、残念ながら全員に話すことはできなかった。
 その日、俺の話を聞いてもらうためにGメンの基地にきてもらったのは、Gメンでは西条、民間GSでは唐巣神父とカオス、そして友人として雪之丞とタイガーとピート、それにおキヌちゃんとマリアだった。

 はじめて俺の秘密を聞いた皆は、みな唖然としていたが、一早く衝撃から立ち直った西条が、俺に尋ねてきた。

「それじゃあ今ここにいる横島クンは、5年後から来たと……でも、いったいなぜだ?」
「目的があったんだ。だが悪いが、それについてはノーコメントだ」

 俺は、わざと返事を濁した。

「横島さんの目的は、もうわかっちゃったのね〜〜。もちろん、透視なんかはしてないわよ」

 オブザーバーで参加していたヒャクメが、俺の顔をみてクスクスと笑った。
 別にもったいぶらなくても、分かるヤツには分かるっての!

「神族として一言いいますと、横島さんが未来からもってきた情報は、非常に貴重なものでした。
 隠していたことはお詫びしますが、その情報によって、アシュタロスとの戦いが有利に展開した
 ことは事実です」

 それでも、ヒャクメが俺をフォローしてくれたお陰で、皆が俺を見る目がずいぶんと変化した。

「俺はもう、やるべきことは全て成し終えました。
 今の世界は、俺の知っていた未来とは、かなり違っています。アシュタロスとの戦いが
 終わるまでは、俺の知識は有益でしたが、これから先の未来には、もう役に立たないでしょう。
 あとは皆と一緒に、この世界で暮らしていくだけです……」




 俺の未来の知識はもう役に立たないだろうと、俺自身は思っていたのだが、一部の連中にとっては違っていたようだ。
 やはり自分の未来が気になるのか、俺の経験した未来で自分がどうなっていたか、色々と聞いてきた。
 だけどなあ、そろいもそろって、女のことばかり聞いてくるんじゃねえよ!

「横島、ちょっと聞きたいんだけどよ。あのさ……俺と弓ってどうなってた?」
「心配するなって。ちゃんと、つきあいは続いてたよ」

 だけど、ケンカする度に俺に泣きごとを言ってくるのは、勘弁して欲しいなあ。
 雪之丞と弓さんがケンカすると、その都度、俺とおキヌちゃんが奔走するハメになるんだから。


「横島さん。そのワシは……魔理しゃんと、そのどうなって……」
「二十歳で結婚。結婚二年目で一児の父親。ちなみに生まれたのは女の子だ」

 まったく、人がずっと苦労している時に、一人だけ幸せになりやがって。

「う、うおおおおっ! タイガー寅吉、17歳! 生まれてきてよかったですジャーー!」

 わ、わかったから、手を放せよ! まったく、バカ力で振り回すんじゃねーっての。


「そ、その、なんだね。僕は5年後、どうなっていたのかな?」
「独身のまま三十路に突入。Gメンで昇進はしたみたいだけど、結婚する予定は当面なし。
 ま、せいぜい頑張ってくれよな」
「ふ、ふふふふ……自分だけ幸せになって、僕は蚊帳の外かい? 暗い夜道には、
 せいぜい気をつけたまえ」

 ちょ、ちょっと待て、西条! 目つきが少しヤバいぞ!

「どっちにしても、未来が必ずそうなるとは限らないし、むしろ変化している可能性の方が
 高いんだから、俺の言ったことが当たるわけじゃ無いんだからな」

 だが西条の場合は、美神さんをあきらめない限り、同じ道を歩む可能性が高そうだ。
 ただ、この場でそれを言ってしまうと収拾がつかなりそうなので、とりあえず黙っておくことにした。


 ちなみに俺が魔神になったことについては、隊長と唐巣神父にだけ話を打ち明けた。
 GS本部やGメンの上層部には情報が伝わると思うが、最重要機密事項に指定する必要があると隊長が言っていたので、世間一般に情報が漏れるようなことはたぶんないと思う。



》》Reiko


 事件が終わって一ヶ月半が過ぎた頃、事件の後始末に目処をつけたママが過去に戻る日がやってきた。

「断っておきますが、この時間移動は神族・魔族の上層部の許可のもと行われます。
 本当なら、これ以上の時空の混乱は、絶対に避けたいんです。
 今回の事件でのあなたの功績を特に認めての、最後の時間移動ですからね」

 小竜姫が過去に戻るママに、最後の念押しをしていた。

「ご心配なく。過去に戻った私は、関係者との連絡は一切断ちます。表向きは死んだことにして。
 今日が来るまでの五年間、潜伏生活を続けることにします」
「あ、隊長。俺からも一つお願いがあるんですが」
「何なの、横島クン?」
「過去に戻る前に、これを使って欲しいんです」

 横島クンがママに、『忘』の文珠を渡した。

「隊長のことですから誰にも言わないとは思いますが、俺が逆行する前の時間帯への影響を
 極力避けたいんですよ。
 この文珠は特別に調整しており、俺の秘密に関することだけ忘れます。
 ただし俺が逆行した後は、記憶の封印が解けて思い出せるようになっています」
「そうね。横島クンの件については、秘密が漏れるリスクを減らした方が賢明かもしれないわね」

 ママは時間移動に必要な『雷』の文珠と一緒に、『忘』の文珠も受け取った。

「ところで五年間もどうするのよ? パパのところにでも行くの?」

 ママがどうしていたかについては横島クンから教えてもらっていたけど、念のために聞いておくことにした。

「そうね。ジャングルの奥地で、パパのお仕事を手伝うことにするわ。
 今まで二人とも飛び回っていて、夫婦生活はないも同然だったから、しばらくはいいでしょ」

 ん? 待てよ、何か引っかかるわ。

「……そう言えば、この五年間、パパが海外出張する期間がずいぶん長かったわね。
 ひょっとして、私がいろいろ苦労している間、ママはパパと海外で生活しながら、
 ずっとイチャイチャしてたとか──」
「ホホホ……その可能性は、極めて高いかもしれないわね」

 私は、頭をガツンと殴られたような気分になった。

「じょ、冗談じゃないわよっ! それって、あまりにひどいじゃない!」
「じゃ……じゃーね、令子」

 ママは手にしていた二つの文珠を順番に使うと、そそくさとしながら去っていった。

「もう、私がどれだけ苦労してきたと思ってるのよ! せめて、謝れっ!」
「ごめんねー、令子」

 建物の陰から、現在のママがひょっこりと顔を出した。

「私としては知らせたいのはヤマヤマだったんだけど……事情が事情だから、ねっ!?」
「……ずっと、そこにいたのね、ママ。おまけに、そのお腹はやっぱり──」

 事前に聞いてはいたけど、お腹が大きくなっていたママの姿にちょっと驚いた。

「横島クンから話を聞いていたのね。あ、ちなみに産まれるのは妹だから」

 軽くなったママの性格に意表を突かれたのか、私はすっかり毒気を抜かれてしまった。




》》Yokoshima


 事件が終わってから、三ヶ月が過ぎた。
 通常の業務も復活し、元の除霊事務所の姿に戻りつつある。
 けれども、前回と大きく違っていることもあった。

「ヨコシマ、コーヒー入ったわよ」
「ん、サンキュー」

 俺はゲーム機のコントローラーを置くと、ルシオラがもってきたコーヒーを一口飲んだ。

「あーっ! 負けてるからって、逃げるのはずるいでちゅ」
「パピリオのおやつもあるわよ」
「おやつの後で、再戦するでちゅ」

 一番の大きな違いは、もちろんルシオラが共にいることだった。
 パピリオも週に一度、俺と一緒に妙神山に出かけて修行をするが、それ以外はずっとこちらで生活している。

「それにしても、平和というかヒマねー」
「台風一過の後だからな。しばらくは悪霊たちも大人しくしているけど、一時的な現象だから
 そのうち仕事も増えてくるよ」

 ルシオラは、ミルクと砂糖のたっぷり入ったカフェオーレを飲んでいた。
 最近は人間の食べ物も口にするようになったが、相変わらず甘いものを好んでいる。

「ちょっとぉ、静かにしなさいよ。ようやく、ひのめが眠ったところなんだから」

 部屋の一角にベビーベッドが置かれており、生まれたばかりのひのめちゃんが寝ていた。
 ひのめちゃんが念力発火能力者(パイロキネシスト)であることはすぐにわかったので、念力封じのお札が必須アイテムとなっている。

「美神さんと氷室さんも、こちらでコーヒー飲みませんか?」
「いただくわ。私はブラックで」
「私はミルクと砂糖を入れてください」

 俺の目の前で、美神さん・おキヌちゃん・ルシオラ・パピリオが、テーブルに座って雑談している。
 逆行する前、俺が夢に描いていた光景が現実のものとなった。
 戻ってきてからもいろいろとあったが、こうして平和な日常を取り戻すことができて、本当によかったと思っている。

 もうすぐ、シロとタマモもこの事務所にやってくるだろう。
 ルシオラと美神さんには悪いが、もう少しだけ今を満喫したい──そう、俺は思っている。


(→ラスト・エピソードに続く)

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