ザ・グレート・展開予測ショー

皆本(さん)と一緒!?(絶対可憐チルドレン)


投稿者名:回転DOOR
投稿日時:(04/10/16)


皆本(さん)と一緒



「じゃあ、ふたりともこの中から選んでおいてね」
 柏木朧はチルドレン専用のレストルームで待機している薫と紫穂にカタログを渡した。葵はジュース
を買いに言ったまま、まだ戻ってきていない。
「皆本さんと一緒に暮らすのに必要でしょうから」
 そう、薫と紫穂の「お願い」(正確には恫喝という)に根負けした皆本はふたりの同居をようやく認
めたのだ。桐壺局長はとっくに承認済みであり、後の障害は皆本の抵抗だけだった。
「あたしたちにも家具ぐらいあるぜ」
「そう?でも、お家の家具はそのまま残しておいた方がいいでしょ?あなた方の家なんだから」
「「…………」」
 薫と紫穂はお互いに顔を見合わせた。
「そ、そうね」
「…………」
 紫穂の言葉に、薫も無言で頷いた。
「でも、何でもという訳にはいかないから、必要最低限のものにしてね」
「バベルもせこいな。あたしらは貴重なチルドレンなんだぜ、ドカンと買ってくれてもいいだろ」
「いっぱい選んでも置く場所がないでしょ?」
 傍若無人な薫の発言に、柏木はこめかみに僅かな縦筋を入れながら説明した。
「まあ、皆本さんのところに拘らなければ、何を入れてもいいんだけど。だったら、薫ちゃんは他の人
にスル?」
 柏木は口元に笑みを浮かべて告げた。チルドレンが他の誰でもなく、皆本との同居を望んでいること
は分かっていた。ならば、それを逆用するまでである。
「…………まあ、確かに」
 皆本宅のスペースを思い浮かべた薫は渋々頷くしかなかった。
「それに、後から増やしていく方が楽しみも多いわよ」
 柏木は立ち去りながら、ふたりに付け加えた。


 
 残されたふたりはさっそく物色を開始した。
「……最低限必要なものは……ベッドにドレッサーかしら」
 机と言わないあたり、紫穂の優先度は明らかだ。
「そうだな。まずベットから探そうぜ」
 不満顔のチルドレンであるが、ほどなく家具選びに夢中になった。
「なんだか新居選びみたいね」
 幾分照れたような表情を浮かべている紫穂である。
「これなんかいいんじゃないか?」
 あちこちページをめくっていた薫が示したのは特大のダブルベッド。チルドレンなら、全員でもゆっ
たり寝られそうだ。
「これなら、くんずほぐれつのプロレスができるぜ」
「そんな大きいのにしたら、他の物を置けなくなるわよ?そもそも、どうやって部屋に入れるの?」
 紫穂が極めて現実的な意見を述べた。
「葵に入れてもらったらいいだろ。動かすのはあたしがやるしさ」
「でも、プロレスなんて、葵ちゃんだってしないわよ」
「もちろん皆本相手に決まってるだろ!」
 薫はオヤジのような下卑た笑い声を上げた。
「あたしが皆本のヤツを悶絶させてやる!!」
「ふたりとも何してるん?」
 いつのまにやらレストルームに戻っていた葵はふたりの手元を覗き込んだ。
「家具のカタログかあ」
「ああ、皆本んちに暮らすための家具を選んでいるんだ」
 薫は胸を張った。皆本と一緒に暮らすのは葵ばかりでないぞ……ということらしい。
「ふうん」
「ねえ、葵ちゃんは何を入れてもらったの?」
「ウチかあ、ベッドに机と椅子、それに衣装ケース。他に細々したもんかなあ……」
「うーん、やっぱりそういうことになりそうね」
 紫穂は葵の説明に頷いた。
「でも、葵ちゃんの家具って、このカタログには見当たらないわね」
「当たり前や、ウチが選んだんやもん」
「あの安そうな家具か?葵らしいぜ」
 薫は葵の神経を逆撫でした。シンプルな家具ほど高いことが多いのだが、薫はそれを知らない。
「何言うてんねん。結構高かったんやで。皆本はんだって、頭抱えてはったもん」
 葵はムッとした口調で抗議する。
「へえ」
「………」
「で、ふたりはどれにするん?」
「…………葵ちゃん!?」
 紫穂はハッとした様子で顔を上げると、葵をねめつけた。
「今、なんて言ったの?」
「……なんや、紫穂。そない怖い顔して」
 紫穂の急変振りに、流石の葵も怯えた表情を浮かべた。
「だ・か・ら、今なんて言ったの?」
 紫穂は葵を睨みながら、同じ言葉を繰り返した。
「……ウチが選んだって」
「その後よ」
「…………結構高かったって」
「…………」
 紫穂の視線は葵に次の言葉を促がしていた。
「……………そ、それで……皆本はん、頭抱えてはったって」
「それよ!葵ちゃんの家具が高くて、どうして皆本さんが頭を抱えるの?」
「だって、ウチのは皆本はんが買うてくれはったんや、当たり前やないか?」
 葵は当たり前のことを聞くなと言わんばかりの態度で告げた。
「「…………」」
 葵の説明に、紫穂だけではなく薫の顔にも緊張がみなぎった。
 それに気付かぬ葵はそのまま嬉しそうに続けた。
「皆本はんと一緒にあちこち回ってな、選んだんやで。なんかなあ、楽しかったで」
「「!!!」」
「ど、どこへ行くんや、ふたりとも?」
 葵は話の途中で駆け出したふたりを呆然と見送った。



「……女の子なんですから、今はきっと家具選びに夢中になってますよ」
「僕なんかより、柏木さんの方が相応しいんじゃないですか?なんたって、女の子同士でしょ?」
 オフィスでは、皆本が押し付けられたくびきからなんとか逃れようとしていた。葵は止むを得ない事
情(葵に同情してしまった)があるとは言え、残りのふたりは完璧に押し付けられたのだから。
「薫ちゃんも紫穂ちゃんも同居相手に選んだのは皆本さんなんですよ。それに、わたしは女の子って年
じゃ、ありませんから」
 クスクス笑いながら、余裕で皆本をかわす柏木である。
「そ、そんなコト、ないですよ」
 なんとか柏木を巻き込もうとする皆本であるが、空しい足掻きでしかない。
「あら、皆本さんはわたしを恋愛対象と見てくれてるんですか?だったら、わたしも考えちゃおうかし
ら?」
「…………」
 にこやかに切りかえす柏木に皆本は沈黙するしかない。
「皆本ォ!」
「皆本さん!」
 そこに台風のように飛び込んできたのは、言わずと知れた薫に紫穂である。
「あたしにも買ってくれ!」
「わたしにも!」
「さあ、今すぐイクぞ!」
「な、何言ってるんだ?」
「ふ、ふたりとも落ち着いて」
 口々に叫ぶチルドレンふたりに、皆本ばかりでなく柏木さえ困惑を隠せない。
「葵ばっかりズルいぞ!一緒にイクんだ!!」
「そうよ、そうよ!」
「頼むから、僕に分かるように言ってくれ!」
「朧さんからも皆本さんに言ってあげて!」
「そうだ!そうだ!!」
「「………………」」
 きく耳持たないチルドレンふたりに、ひたすら困惑する大人ふたりである。
「やっぱりここかあ」
 テレポートで飛んできた葵がふたりの様子を呆れたように眺めている。
「おい、どうしたんだ、ふたりは?」
 皆本は葵に力を使ったことを注意するより先に、ふたりがこうなった原因を訊ねた。少なくともチル
ドレンの中では一番話が通じそうだ。
「いや、ふたりは家具のカタログを見てたんやケド……そこで、ウチは皆本はんが買うてくれはったっ
て言うたら、急に飛び出してな……」
「…………」
「まさか、ここに、こうしているとは思わんかったけど」



 その数日後の夜。
「いよいよ明日やね」
 皆本宅のリビングのソファーに寝そべりながら、葵は呟いた。明日は薫も紫穂もやってくる。皆本と
のふたりきりも今夜が最後である。
「ああ、また騒がしくなりそうだ」
 葵の言葉に、皆本はいつもの騒ぎを思い浮かべながら頷いた。言うまでもなく、女三人と書いて、姦
しいと読む。
「…………」
「ああ、それと葵」
 黙り込んだ葵に、皆本は思い出したように綺麗にラッピングされた箱を差し出した。
「……なんや、皆本はん!?」
 受け取りながら、葵は目を白黒させている。
「言っとくけど、ふたりには内緒だぞ」
「開けてもええの?」
「ああ」
「…………」
 ラッピングを解いた葵は、箱の中身に目を輝かせた。ガラス、実はクリスタルのネックレスである。
より正確にはバカラであるが……。
「……まあ、お前には糠喜びさせたからな。せめて、これで機嫌を直してくれ」
 そう、あれから、薫と紫穂の要求を拒んだ皆本は柏木にまで責められたのだ。葵に買って上げたなら、
薫・紫穂にも同じようにすべきだと。それがダメなら、すべてバベル持ちにすべきであると。
 いくら皆本でも、チルドレン三人全員までの面倒は見切れない。結局、葵にかかった費用はバベルに
申請するということでその場は収まったのだ。
 もちろん、それで収まらないのは葵である。皆本のプレゼントがいつの間にかバベルの支給品に化け
たのだ。しかし、チルドレン中一番経済観念が発達している葵である。公然と不満を述べることはしな
かった。
「…………」
 それでも、皆本は葵の気持ちを汲み取ってくれていたのだ。皆本の説明に、葵の顔に浮かんだ笑みが
大きくなった。
「まあ、ちょっと大人っぽいかもしれないが……でも、これなら、大人になっても使えるだろう?」
 皆本は言い訳するように言った。店員の質問に、流石に小学生の女のコ用と言えず、恋人用と誤魔化
したのは絶対にヒミツだ。
「ふうん」
 葵は首を傾げると、またラッピングを丁寧に包み直し始めた。
「どうしたんだ、気に入らなかったのか?」
 慌てる皆本である。
「そんなコトあらへん。ウチが似合うようになるまでガマンするんや」
「そ、そうか?」
「そうや。でも、似合うようになったら、真っ先に皆本はんに見せたる!」
「そりゃ、光栄だな」
「だから、皆本はんもそれまで待っててくれはるやろ?」
「ああ」
 皆本は葵の言葉を深く考えずに頷いた。
「それとな、皆本はん、また一緒に寝てもええ?」
 葵はニマッと笑いながら、皆本に訊ねた。
「こうしてるのも今夜が最後やし?」
「…………」
「……なあ、ええやろ?」
「……………」





                        <皆本はんと一緒(そにょさん)・Fin……>


って、アレッ!?

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa