ザ・グレート・展開予測ショー

GS新時代 【鉄】 其の参 後編 終劇


投稿者名:ヤタ烏
投稿日時:(04/10/15)




「俺の勝ちだぁああああああ!!!」

一匹の雄が空に吼えた。





バタンッ



地面に頭から突っ込み倒れた。
心臓の鼓動がやけに小さく、小さく聞こえる。
相手を倒した事から、ギリギリに張り詰めていた緊張の糸が切れてしまった。
霊力の限界以上の消費、肉体は過度の強化によりあちらこちらの筋肉繊維が千切れ内出血を起こしている。
身体中が亀裂骨折を起こし無数の裂傷と打撲を負っており、特に右手が重症だった。
いくら強化しているとは言え、向こうは魔獣だ・・・・その頑丈さたるや、コンクリートなどとは比較にならない、
そんな物を素拳で殴り続ければ、どうなるか・・・・
挙句最期の攻撃時に拳を止められたおりにそのまま手の骨を完璧に粉砕されていた。
握るのは愚か、ミリ単位で動すのも不可能という始末である。
精神面体力面共に限界以上の酷使をしており、要するに汰壱は静も根も尽き果てたという状態だった。
自分で立ち上れる要素は無いに等しい。
薄れそうになる意識の中で自分の状態を確認してゆく。
ぎりぎりで止血は間に合ったようだ、これなら死ぬ心配は無さそうである。
残りカスの様な氣では止血するのが精一杯、明日の昼位までは動く事すらできないだろう。
「・・・やべぇな明日学校行けねえや」
疲労の余り場違いな思考が始まっている。

・・・・・ホ・・シ・・・


「ん?」
空耳か・・・



・・・・ハナシ・・・キイテ・・・



「だめだ、幻聴が聞こえら」



・・・・・シネ・・・コロシテヤル・・・



「おいおいおい、勘弁してくれ」



・・・ノウナシ・・・ヤクザ・・・



「何だとコラ」




体を起き上がらす事もできないので、首だけ持ち上げて辺りを確認て、絶句した。
いま自分のいるフロアに、トンでもない数の悪霊達が無数に漂っている。
10や20ではない、ざっと見ても2、300はいるだろうか。
あげく、最悪なことにその全てが汰壱に狙いを定め始めている。

「あーなるほど、別に除霊されたわけじゃないしな、俺があの猿、倒したから皆さん出てきたわけね。
あー、はいはい、なるほど、なるほど・・そうですか、よーく解りました。OK、OK要するに今からみなさん
俺を襲うわけね、そんでおれがそこから、反撃する・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・って勝てるかボケが!」


先程まで立つ事すらできずに、地面に潰れたカエルの如くへばっていたのに、急に立ち上がりキレ始め悪霊達に猛抗議した。


「舐めんなよ!こちとら、さっきの戦闘で霊力・体力・知力・精神力・時の運も完璧にゼロじゃ!!判るか?
無いのOK?判るか?英語でゆうとNo・Nothinng・なっしんぐOK?
どぅゆぅーあんだすたん?戦う気なんざ、もうこれポッチもないわけ。判る?俺はも家に帰るねん。
だいたい、お前らタイミング悪いねん、こっちにも・・・ほら段取りとかあるからさ、そういう事されると・・・・
なんて言うかな〜・・・テンション下がるわけや・・だからもう今日は止めや止め。
俺もホンマに疲れたから帰りたいねん・・・・・ってゆうかもう帰るわ・・・・んじゃ」

スタスタスタスタ・・・・・・・・


「イヤ・・・カエンナヤ」


はい止められました。

仕方が無いこうなれば・・・・・
「はっははははっははははははははははははは・・・・・・んじゃ」


「ワラッテ、ゴマカスナ、ソシテ、カエロウトスルナ」
ちっ無理か亡霊の癖に的確に突っ込みやがる。



かくなるうえは・・・・
「一体誰の事やろか?、さっきから物凄い空耳するわ・・・帰ろ帰ろ・・・」
「イヤ・・・オ前シカオランヤロ、ダカラ、トボケテ、帰ンナ」 



プチッ


「何じゃゴラ!!やんのかボケ共が、お前等なんかとやる気なんざあるか!さっさと死ねこの便器に吐き出されたタンカス共が!!」


ドゴッ!


四回目の「帰ンナ」はなかった・・・その代わりに来たのは霊魂の体当たりだったとか・・・
宥め透かし、お願いして挙句に、キレてみたりしたが、逃がしてくれる気はさらさら無い様だ。
ここから導き出される結論は一つ!・・・・・・・絶対絶命といことだ。・・・・


「マジでヤバイな・・・」
いい加減に、焦りの色が浮かぶ、周りの悪霊達はさらに数を増し汰壱の周りを漂い始めている。
そのどれもが、今か今かと汰壱力尽きるのを待っている、死骸に群がるハイエナかカラスの様に・・・
さっき叫んだせいで残りカスの氣も着きてしまい、体中から出血が再開した。
いよいよ持って万事休すである。

ついに待ちきれなくなったのか悪霊の一団が汰壱、目掛けて襲い掛かってきた。

「わわわわ、ちょっと待て待て待て待て、俺は旨くないぞおおおお」
「マテトイワレテ、マツ幽霊ガイルカ」
「そりゃ、ごもっとも」

律儀に返しながら、身を捩ろうとするが、そのまま倒れ込み身動きが出来なくなった。



ここまでか・・・



意識が途切れそうになる。最後まで足掻いてせめて嫌がらせぐらいはしてやると、待ち構えていたが一向に来くる気配がない。
どうなってるんだ。とばかりに辺りを見回すと、なんと悪霊達はテンでバラバラになってアチラこちらに攻撃を仕掛けている。


「まったく、世話掛けさせんじゃないわよ、この馬鹿」
頭の上からよく見知った声が降り注ぐ、助けて貰っているので素直に礼でも、言いたいが相手が相手なので躊躇する。
「汰壱ちゃん、今ヒーリングするね」
身体を暖かい光が包んでゆく簡易的ではあるが、完璧な応急処置をあっと言う間に完了したそれも、幻術で相手を撹乱しながら・・・
「・・・あんがと・・蛍花ちゃん」
「こらこら私にお礼の言葉はないのか」
「すまんね」
ずいぶん存外だが、この際はどうでもいいことだ。
幻術の効果が薄れたのか徐々に悪霊達が集まり始める。醜悪な負の力場形成され回りの空気が瘴気を帯び始めているのがわかった。
「けっこういるわね、如何し様か?」
「うーんそうだね、折角だから、やっちゃう?」
「まっ、たいした数でもないしね」
「はいっ!自分はとってもいやな予感がするんで、今すぐ帰るべきだと思いま・・・・」
「「怪我人は黙ってろ(てて)」」
「・・・・はい」
少しぐらい人の話し聞けや、と心の中で呟く。
嫌な予感がするのは本当だ。何と無くしか感じなかったが、この二人が来たとたんに自分の少ない第六感が危険を告げ始めている。
「それじゃ、私がオフェンスで蛍花はディフェンスね汰壱に悪霊がいかないようにね」
「わかってる」

「そんじゃ・・・GO!!」
神通棍を抜き放ち霊力を開放、刃に刻まれた神字がひのめ霊力と呼応して紅く浮かび上がるり光を発する。
驚くべきことに、その光だけで相手を怯ませている。並みの霊力ではない、その力の規模たるや既に一流クラスのものがある。

悪霊目掛けて突進する、ひのめ目掛けて悪霊が襲い掛かるが、霞を払うかのごとく切り払われて霧散してゆく、
蛍花は蛍花で後方から正確な霊破砲を放ち続け次々と撃墜数を上げてゆく、二人ともまるで競い合い合うかの様に・・・



「遠いな・・・・」
自分は一日たりとも訓練を休んだことは無かった、毎日毎日毎日毎日毎日 鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて 
走って走って走って走って 何度でも、何十回でも、何百回でも、何千回、何万回も繰り返して、
積み重ねて来た筈だった。





だがこの二人を見ていると、自分のしている事、積み重ねていることが・・・・・霞そうになるのだ。
なんて遠いんだ・・・・


自分には霊破砲は撃てない、神通棍の発光だけで相手を怯ますことなど不可能に近い
ヒーリングも幻術も念発火も・・・・・・

獅子猿に勝てたのも文珠が有ったからだ、もし文珠が無ければ自分は勝てたのか?
自分の力、能力だけで勝てたのか?

もし獅子猿が怪我を負っていなければ自分は勝てたのか?


全て運がよかっただけだ。
自分が勝てたのなぞ偶然が重なって、勝てただけに過ぎない・・・・唯のおこぼれだ。




「遠いな・・・」
蚊の鳴くように小さく呟いた。
嫌な予感はまだ消えない。

次々と撃墜してゆくが数が一向に減る気配は無い、どうやらかなりの数が集まり始めている。
「雑魚の癖に数だきゃ多いわね・・・蛍花あれやるわよぉ」
「そうだね、ちょうどいい機会だし」

バックステップで距離をとり蛍花は能力を開放してゆく、【精神感応能力】蛍花の最も得意とする能力であり、
オーソドックスな使い方は相手の身体に触れその思念波が読み取るなどがあるが、蛍花はその力を応用して
悪霊から発せられる思念波を感じとり、其処から自分精神波を送り逆探知して相手の正確な位置を知る。
高性能レーダーのような使い方をする。

蛍花の体が翠光色に美しく輝くまるで、闇夜に浮かぶ蛍の様に・・・
「全目標、索敵完了 私達以外の全てにロック・・・お姉ちゃんいくよ・・サイコダイブ!!」
蛍花の体から発せられた翠光はひのめの身体に吸い込まれていく、


「おっけい!いくわよおおお」
瞬間的に回りの温度が急上昇を始め、ひのめの体から紅蓮の炎が奔る。
両の掌に焔と言霊を込め、地面に手を着き力を放つ!

「我ら以外の全ての不浄なる者を滅却浄化せよ・・・・・【焼け野原】」
ひのめを中心にして炎が円状に広がり全ての悪霊たちが燃えて浄化されてゆく

「ウウウゥウオオオオォオォォオオンンンン」


断末魔の叫びを上げながら、悪霊達は空に上がって消えて逝く。









すごいね、うん、本当にすごい!あんなにいたのに全部除霊したんだ。
いやー本当にすごいね・・・・・・
うん、でもね・・・・さっきからスッッッッゴク気になってるんだけどさ・・・・









「うんぎゃー!!」
何で俺まで燃えてんだコラ!!
ってゆうか俺は不浄な者なのか?




これが悪い予感の正体かよおおおお。
ワザとか?ワザとやったんかオイ、なんか恨みでもあんのかよ畜生めー!
どっちだ!どっちがやりやがったんだ。
ひのめ姉か蛍花ちゃんか・・・・
どうでも、いいんですけど早く消して・・・・・本当に死ぬから

「お姉ちゃん・・・えらいこちゃ・・汰壱ちゃんが・・・レアな感じに燃えてる・・」
「えっまじ!!どうしよう私、点けるのできても、消すのはできないのよー」
どこかのスタンド使いの様にはいかないものである。
その点で言えばひのめまだ完璧に発火能力をコントロールしきれていなかった。

もちろん都合よく近くに消火器なんざ置いていない。

「仕方ないわね、霊破砲で炎ごと吹き飛ばすね!」

ちょっと待って蛍花さん・・その馬鹿でかい霊力の塊はなんですか?
それを私にぶつけて炎を消すんですかい?
あのあんた・・私の命の炎まで消す気ですか?

「早く!蛍花やりなさい」

オイ糞女、煽るなよ!止めろよ!こんなん今食らったら死ぬ思わないのか?
なんか心なしか、「やりなさいが」・「殺りなさいに」聞こえたのは俺の空耳?


「汰壱ちゃん、今楽にして上げるからね」

やっぱり殺す気なんですね。










ドッゴオオオオオオオオン!!




ああ、時が見えるうううう
そうか!これが!かの有名な・・・・・・・・・・・・・・・・・・お約束





ガクッッ。
神様、悪魔様、いたらおねがいです。なんでもいいので、あの馬鹿娘二人に罰でも何でも当ててください。
本当にお願い・・・・グスッ




最近このパターン多くない?
そんなことも無い。

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