ザ・グレート・展開予測ショー

フォールン  ― 08 ―


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(04/10/10)




「ママ、ちょっとこれ見てくれる・・・?」

 美神美智恵は娘から手渡された一枚の写真を見ると、顔に興味深げな色を浮かべた。

「あら、走霊性黄砂を使ったのね。キレイに浮かび上がっているわ。それに・・・。」

 彼女の手元にあるのは廃虚ホテル最上階ホールの床を様々な角度から撮った写真。霊的な力に反応して流れる特殊な黄砂をめぼしい所に撒いて行くと、次第に寄り集まり多くの図形や記号――隠されていた装置の一部――を形どり始めた。

「一瓶分しか用意してなかったから、全体って訳には行かなくて何度も掃き集めて撒き直したわ。で、全体図はこの通り・・・。」

「それに・・・面白いわね。このご時世に西洋魔術を応用した召喚陣よ。」

「・・・・・・“時世”?・・・“面白い”?」

「そうよ。ほら、令子。」

 美智恵は美神の記録した召喚陣の図面を机の上に広げた。その図面の端と中央部分には不自然な空白がある。美智恵がその二ヶ所を無言で指差すと美神は不安そうに説明した。

「いやっ、そこはね、粉が殆ど反応しなかったのよ・・・調子が良くなかったって言うか、場所の状態が悪かったんじゃないかって・・・」

「違うわよ。ここには元から何も書いてないのよ・・・書ける筈がないわ。」

 言葉の意味が分からず目をしばつかせる美神に美智恵は説明を続けた。

「ほら、この外周の部分は七等分されているでしょ?ここにはね、魔界の七大実力者の記号と名前がそれぞれ書かれるもの・・・召喚陣を発動させる上でこれは必要不可欠なの。
そして名前の配置も決まっているわ。この部分に書かれるべき名前は・・・・・・魔神、アシュタロス。」

「――――ああっ!」

 手に持ったコーヒーカップを思わず取り落としそうになる美神。美智恵はそんな娘を呆れ顔で見つめる。

「今まで気付かなかったの?確かに魔術は専門外だけどその位ならGSとして基礎知識の内でしょうに・・・。
つまり、アシュタロスが死んで七大実力者に空位が生じている今、人間がその歴史の中で使用して来た召喚陣はすべて無効なのよ。
現在魔界と人間界を出入りする事ができるのは魔界正規軍と、呪文や実力者の名前の揃わない陣だけで呼べる最下級の魔族ぐらいね。」

「じゃ、じゃあ、何でそんな使えもしない召喚陣なんか、こいつら・・・って誰だか知らないけど・・・書いてんのよ?全くのムダじゃないの!?」

「それがね・・・そうとも限らないのよ。・・・・・・そこには、“代わり”を置ける場合があるわ。」

「・・・“代わり”?」

「令子、上級魔族にとって地位や財産を手に入れる上での一番重要なルールって何だったか覚えてる?」

 美智恵の問い掛けに美神は、コーヒーを一口二口入れながらしばらく考え込み、やがて自信なさげに答えた。

「・・・・・・“弱肉強食”、だっけ?」

「そう。強い者が弱い者を倒し、奪う事で手に入れる。勝った者にこそ理がある。それが魔界の原則よ。だから、便宜上アシュタロスの空位を補えるのは、“アシュタロスを直接倒した者”になる。そしてそれは・・・。」

 美神は美智恵を凝視した。顔を上げた時、美智恵もまた娘に視線と鋭利な気配とを真っ直ぐに向けていた。

「横島クン、と私・・・!?」

「そうよ。でも、あくまでも“代わり”でしょうね。いくら前世や霊体に特殊な条件があるとは言え、人間界に住む純然たる人間のあんた達を次の魔神と見なす事は出来ない。
そもそもアシュタロスを倒したのだって、あらゆる人の手や偶然を重ねての実力外の結果であり、例え同期合体したとしても力や知略が二人だけでアシュタロスに及んでいた訳ではない。
だから、魔神を直接倒した者であっても、通例通り魔界の一柱の権限を与える訳には行かない・・・“代わり”を使った魔術であっても出来る事なんて殆どないでしょうね。
特に、人間界と魔界との流通は成立しない筈だわ。」

 「殆どない」と言うのなら、少しなら出来る事があると言う事だ。そして、それこそが話の本題だ。美神は、勿体ぶっている様にも慎重に話を進めようとしている様にも見える美智恵に、続きを促す視線を向けた。
 美神を見据えながら美智恵は、間を置いて言葉を続けた。

「でも、陣の発動そのものの条件は満たすわ。そして、事が人間界の中だけで片付く場合、つまり、人間界の中にある魔力を操作するとかなら、話が違ってくる。
また、それがアシュタロスの勢力下にあった者に関してなら・・・ほぼ100%有効よ。」

 アシュタロスの勢力下にあった魔族・・・つまり、奴の元配下で人間界にいる可能性のある者。いや、今人間界にいる魔族なら呼び出し、その魔力をコントロール出来るかもしれないって事だ。
 あれだけの大掛かりな装置で幽霊や妖怪を、その妖気を集めて・・・一体誰を?
 記憶をたぐり寄せた美神は、アシュタロスの配下で最も強敵だった白蛇の女魔族の顔を思い浮かべて全身に緊張を走らせた。

「ママ!まさか・・・あれはメドーサ復活の・・・!?まさか勘九郎あたりがしぶとく・・・」

「そうかもしれないし、そうではないかもしれない。これが西洋魔術だって分かった以上は、何者が召喚されようとしているかより、何者が召喚しようとしているかを先に見るべきね。
・・・あんた達の事を知っている人物よ。そしてあんた達の血を多量に入手する目算を持った人物。」

「やはり、勘九郎かしら・・・いつ甦ったのか知らないけど何回死んでも懲りないだろーからね、あの男は。」

「ここで決め付けるのは早計だわ。もっといくらでも考えられる。・・・令子、私から見ればこうも考えられるのよ。」

 美神はここで初めて、母の放つ気配が真面目な話ゆえの鋭さだけではない事に気が付いた。

「・・・・・・あんた達自身が、あの装置を作って何かをしようとしている、ともね。」

「私たち・・・って事は横島クンが!?」

「あるいは“あんたが”。」

 美智恵がそう言った時、美神はその部屋の扉の外に通りがかりではない人の気配を感じた。一人ではない・・・三、四人はいるだろう。“万一に備えて”待機しているらしい。
 美神は強張った声で、美智恵に反駁する。

「ママ・・・私を疑っているの?」

「・・・私から、オカルトGメンの側からだとそうも見えるって事よ。疑える者は一通り疑うのが私達の捜査ですからね。勿論、身柄を拘束したりはしないわ。
ただ、これからは、最低限だけど令子にも横島クンにも監視が付く事になる。それだけは覚えておいて。」



   ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―



「じゃあ、それから一週間過ぎた今も、監視されているのですか?」

「ええ、恐らく。・・・私には分からないのですが。」

 美神の話を一通り聞いた神内はバックミラーに視線を走らせてから言う。

「いや、今のお話で大体目星は付きましたよ。3台後ろのクラウンがドライブ始めた時からずっとついて来てます。多分、あれが尾行でしょう・・・撒いてしまいましょうか?」

「いえ結構です。逃げ隠れすると余計怪しまれますから。でも、申し訳ありませんわ。こうして神内さんにまで・・・。」

「ハハハッ、貴方と一緒に疑われるならむしろ光栄です。しかし、貴方のお母さんも噂に聞く通りの人みたいですね。実の娘でも容赦なく捜査するとは。」

「・・・どんな噂なのかは聞かないでおきますわね。」

 神内コーポレーションから見ればオカルトGメンは表面上持ちつ持たれつの関係であっても基本的に商売敵――いや、市場そのものの敵でさえある――。日頃周囲で神内が耳にする美智恵の風評がどの様なものか想像に難くない。
 神内はミラー越しに尾行を確認するのを止め、美神に顔を向けて尋ねた。

「・・・それで、横島さんにはその事はまだ言ってないんですね?」

「ええ。」

「何か、確信でも?」

「いえ・・・何となく、としか言えないんですが。」

 美神と横島が一番怪しいと聞かされて、自分が違うなら残るは横島。美神の感じた不審はその程度のものだった――勿論、引っ掛かる事は他にもある・・・とても重大なものが。
 ルシオラの事。だが、それが横島が犯人である可能性とどう結びつくのか、明確なイメージはなかった。

「しかし・・・西洋魔術メインの霊的装置ですか・・・面白い偶然ですね。」

「偶然?」

「ええ。以前お話しましたよね?我々の附属研究所でルシオラさんの復活に関する試案を作成したと。その中にもやはり魔法陣を組み合わせたものによって霊体の崩壊を防ぎつつ分離を行なう―と言うコンセプトのものがあったのです。」

「―――何ですって?」

「貴方の話通りのアシュタロスの空位、そして必要とする霊的エネルギーが莫大である点、そして肝心のルシオラさんの召喚用記号が不明な点などから“実行出来る可能性は極めて低い”とされたのですが。」

 その試案が外部に流出したのでは―――?美神は思ったがすぐその考えを打ち消した。
 神内が研究所に試案を作成させ始めたのは縁談の持ち上がった前後・・・2ヶ月程前だと言う。そして、廃ホテルの異変が始まったのは1年以上前だ。

「西洋魔術まで本格的に研究されてるんですか?意外だわ。」

「まあ、研究員を術者にするとまでは行きませんが、術者の能力とは別に、こうした霊的装置の設計技術なら我々の専門分野として確立出来る。そう思ってましてね。
・・・とは言え、一般人が調べただけではどうにもならない部分もありましたから、外から専門の方を招いて色々と協力して頂いてまして。この試案にもアドバイスを頂いた筈です。」

 美神の脳裏に打ち消した疑念が再び甦った。

――流出するも何も・・・「外から持ち込まれた」?その「専門の方」とやらが今回の件に関わっている可能性だって充分考えられるじゃない。

「貴方もご存知の方だと思いますが・・・とても高齢の優秀な錬金術師の方で、“ドクター・カオス”と呼ばれていて・・・」

       ・

       ・

       ・

 一昨日の事だった。
 深夜から朝にかけて除霊作業があった美神は、昼を過ぎてもまだベッドの中にいた。
 そんな中、大型バイクらしき爆音が二つ近付いて来て、美神事務所の前で動かなくなった。二台のバイクはそのままおもむろにエンジンの空ぶかしを始める。
 爆音がガラス窓をびりびり震わせ、美神は跳ね起きた。憤怒の形相で窓を開け放ち、下に怒鳴りつけようとする。

「ちょっと、アンタたちっ!!・・・・・・あれ?」

 事務所の前に止まっているのは二台のハーレー・ダビッドソン。それぞれの上に跨った革ジャン姿に顔半分を覆うヒゲとサングラスのいかつい大男・・・しかし、その頭部に角が生えている。良く見ると何だか美神にとって見覚えのある顔だ。
 ハーレーの一台にはサイドカーが付いていて、そこから赤い髪の少女―その髪の間から龍の角が覗いている―が路上に降り立った―――。



「・・・今度こそ、下界の文化に合わせたつもりだったのですが・・・。」

「だからアンタ、一体何を参考にしてるのよ?普通に来なさいっ、普通に。」

 申し訳なさそうに佇む小竜姫に美神は傍らに立つ二人のボーンツビーワイルドなバイカー・・・鬼門たち・・・の付けヒゲをむしりながら突っ込みを入れる。
 一通り叱り終えると息をつき、ソファーに腰を降ろして尋ねた。

「・・・で?アンタ達が無理に人間に紛れて来ようとするって事は、これはお忍びね。何か重大な用事なんでしょう?」

「・・・さすが、美神さんですね。」

 小竜姫も美神の向いのソファーに座り、鬼門の二人が隣でそれに倣った。

「早速、本題に入りますが・・・先日カオスさんよりパピリオに、ルシオラさんの復活に向けてこちらで何か進められているとの話があったらしくて、私達はその事実の確認をしに参りました。」

「へっ!?・・・カオス?・・・パピリオ?・・・・・・ルシオラ?復活?何、全然話が見えないわ。どーゆー事?」



 後に続いた小竜姫の説明によると、次の通り。

 「ネットゲームもやってみたい」と猿(斉天大聖老師)がゴネ出した為、妙神山では光ケーブルを通す事になった。
 しかし、人間界と神界との中継点でもあり、地図にさえ登録されてない妙神山修行場にそう易々と回線を引く事は出来ない。配線などの電気技術と霊的な知識の両方を持ち、ある程度の違法行為も平気で出来る人間の協力が必要だ・・・そこで小竜姫はドクター・カオスに白羽の矢を立て、ケーブルの敷設を依頼した。

 マリアを連れて妙神山を訪れたカオスは1日足らずで全ての作業を終了し、有形無形の報酬を得て山を下りた訳だが、作業の合間、彼は近くで(務めをサボって)遊んでいたパピリオを呼び出し「ルシオラの魔術記号」を尋ねたのだと言う。
 魔術記号とは全ての魔族が生まれながらに持っている記号で、魔界内の様々な本人認証などに用いられる他、人間界での召喚にも用いられるものだ。
 パピリオからルシオラの記号を聞き出したカオスは「お前さんが姉と再会できる日が随分と早くなりそうじゃ。・・・一応、他言無用じゃがな。」と告げた。

 パピリオがその知らせにどれほど狂喜したかは説明するまでもない・・・最初の内こそは沈黙を守っていたが、あまりにも嬉し過ぎて、3日も経たず口走ってしまったのだ。
 「ルシオラちゃんにもうすぐ会えるらしいんでちゅ。この前来てたじーさんがそー言ってた。」と。
 小竜姫は、パピリオからその話の詳細・・・カオスが彼女から魔術記号を尋ねた事も含め・・・を問い質し、微妙な問題だし真偽をハッキリさせる必要もある為、人間界での確認に乗り出したのだ。 



「カオスさんに直接聞ければ良かったんですけど・・・あの後行方が掴めなくなっていて、こうなったら美神さんと横島さんを頼ろうと・・・そう言うお話があるのでしたら知らない筈はないと思いましたので。」

「残念ながら、私は何も知らないわ。横島クンは今日休みで・・・アパートにいれば良いんだけど・・・。」

 美神にも初耳の話だった。驚くよりも、カオスが何か別の目的でパピリオを騙したんじゃないかと言う様な気がしていた。
 美神はしばらくアパートの電話や携帯で横島に連絡を取ろうとしてみたけど、一向にコンタクト出来ない。今日一日泊まり込めばいつかは繋がるかもと美神は言ったが、小竜姫も余り長く外出していられる状況ではない様だった。

「では、何か分かりましたら御一報下さい。」

 夕方頃、小竜姫の一行はそう言い残して爆音と共に去って行った。
 横島が捕まったのは9時過ぎだった。小竜姫が来ていたと聞くとその場に居合わせなかった事を異様に(と言うか案の定と言うか)悔しがっていたが、その用件を伝えると美神同様間の抜けた声で聞き返し、「いや、聞いた事ないっすよ」と答えた。

「そう。て事はやはりカオスが何か悪だくみしているのかも。気を付けた方が良いわね。」

 などと話してから、美神は電話を切った。

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 その話を思い出した時、全てが一本の線で繋がった・・・様な気がした。
 カオス・・・ルシオラの復活・・・神内さんの研究所・・・霊体分離装置・・・必要な霊エネルギー・・・廃ホテルの現象・・・アシュタロスの空位・・・横島クン・・・
 証拠が揃っている訳ではないけど、さっきまでモヤモヤと頭の中を掠めていたイメージがよりクリアに感じられる。

「やっぱり・・・ドクター・カオスが黒らしいわね・・・。あのボケじじい、一体何を企んでいるのかしら・・・?さすがに私を騙し通せるとは思ってないでしょうし・・・アイツの悪だくみに狙われるとしたら、横島クンの方よね・・・?」

 神内は早くもドクター・カオスを諸悪の根源と結論付ける美神に、引っ掛かりを感じた。
 まだ横島が関わっている可能性は十分残っている。もしルシオラの復活がかかっている話ならば、それがカオスの撒いた餌ではなく本当の話で、カオスが横島に言われて動いている事だってあり得る。
 横島がルシオラを復活させる為に、綿密で大掛かりな計画を立てている可能性。
 また、その為に、自分に悟られる事なく裏切り続けている可能性。
 ・・・彼女と横島が一心同体の存在ではなく、彼が他の何よりもルシオラを選ぶ可能性・・・それを考える事を回避している―――彼女の答えには、感情が混じっている。
 神内はそう直感する。

―――まあ、自分では気付いていないんだろうけどね。

「ごめんなさい、神内さん。さっきはお断りしたけど、やっぱり後ろの車、撒いて頂けるかしら?・・・行きたい所が出来たの。」



   ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―



 屋根裏部屋の窓から見える空は既に青く澄んでいた。この季節を除けば今頃はまだ夜の暗さを残すものだったが。
 そして、どんなに悩んでいてもシロは早く眠り、早く起きる。

「ふ、わあ〜ぁ・・・うむ、いい天気でござる、いい朝だと言う事でござる。」

 大きく伸びをして、そのまま少し離れて並ぶベッドに視線を向けた。タオルケットが頭も出さずに盛り上がっている。それを見て少し溜息を付いた。

「うむ、散歩に行くでござるか・・・まずは先生のあぱあとに寄って・・・」

 シロの口から言葉の内容とは裏腹に、精彩を欠いた呟きが漏れた。ここ数日、朝5時前に訪れているにも関わらず、ずっと横島は留守だったのだ。彼が居留守を使う事はそれまでにも何度かあったが、今回は本当にいない。気配で分かる。
 どこに行っているのかは分からない。ここしばらく聞ける雰囲気ではなかったが、それでも勇気を持って尋ねてみると「ん・・・友達の家を泊まり歩いてるのさ。色々話す事とかあってな。」とだけ返答された―――「話す事とは“あの件”でござるか?」とは何故か聞く気になれなかった。

 ・・・多分、今日も。




「みんなー!おはようでござるっ!」

「おお、おはよう、シロちゃん。」

「おはようございます、シロさん!」

「シロさんおはようっ。」

 シロが元気よく手を振りながらオカルトGメンのオフィスに入ると、同じ部署の職員・捜査官が笑顔で挨拶を返してくる。



 ――横島は、やはり今日もアパートにはいなかった。今日は隣の部屋に住んでいる少女が顔を覗かせて、彼が昨夜一旦戻って来てすぐに出掛けて行った事を教えてくれた。

「起こしてしまったでござるか、申し訳ない。」

「いえ・・・私も気になっていたんです。横島さん、どこか具合が悪いのでしょうか?」

「・・・とは!?」

「いえ・・・夜に部屋を空けるようになる前まで、よくうなされていたんです。物音も聞こえましたし。最後の日には、叫ぶ様な声も・・・それから、部屋で眠らなくなったので、何か心配で・・・。」



 浮かない一人ぼっちの散歩の後、美神事務所には戻らず職場のオカルトGメンに直行する。心の中に積もったものを表に出さない様、会う人会う人に明るく振る舞っていた。

―――先生もこんな気持ちでござったのかなあ・・・?

 などと心の底で考えながら。










   ― ・ ― 次回に続く ― ・ ―


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