ザ・グレート・展開予測ショー

GS新時代 【鉄】 其の参 後編 2


投稿者名:ヤタ烏
投稿日時:(04/10/ 9)


・・・・・・なんだ・・・ここは・・・赤い夕焼け・・台所・・・三人・・・泣いてる子供・・この子供は・・
だれだ?・・・立っている男・・・おじさん・・・何でここに?

ここは?・・・・・知っている・・・斃れてている男・・・血を流している。・・全身傷だらけ・・片方腕が無い
でも、笑っている・・・泣いている子供を抱きしめて微笑んでいる・・・・何か言っている・・・・




























「強くなれ・・・・・・・・・・汰壱」








・・・親父!!
瞬間、眼が覚めた。
ほんの僅かの間だが意識を失っていた。戦闘中に意識を失うなんて、死ぬようなものだが生きている。
僥倖だ・・・・・。
体を動かしてみる。スムーズに動く・・・何処も負傷していない。
「こいつの御陰か・・・」

文珠発動・・・・・・・【守】


横島がもしもの為にと自分の服に忍ばせてくれた。

太一は地面を叩いた、情けなかった、悔しかった、惨めだった。
なにをやっている・・・自分を見失って、勝手にパニくって、やられて、また助けられた。
恐怖に囚われ、霊気も練らずにただ殴るだなんて馬鹿のすることだ。

獅子猿が近づいてくる。獲物を食らわんと近づいてくる。


恐怖が身体を支配しようとする。
落ち着け・・・・落ち着け・・・冷静になれ・・・心を静めろ
先のことより今のことだ。やってしまったミスはどうにもならない。

今自分の状態・相手の状態・置かれている状況冷静に分析しろ。
出来ること、出来ないことをすぐにふり分けろ。












まてよ・・・今ここには文珠が有る。【守】このタイプの文珠は【条件発動・継続型】。
たぶん、おじさんが心配して縫いつけてくれたんだ。
俺がヤバイ程の攻撃を受けたとき自動的に発動して一定時間守るように設定したんだ。
そして、このタイプの文珠は【爆】や【凍】みたいな【瞬間発動型】と違って、
効力が続いてる間は、別のものに書き換え可能・・・だが今の俺の操作能力イメージじゃ
たぶん一回だけしか無理・・・それ以上は文珠が持たない。

シュウウウン


文珠変換・・・・・【爆】 



本当なら汰壱は【滅】や【殺】など入れたかったが、あのタイプは【瞬間発動・事象型】で今現在の汰壱の霊力では
確実に発動し効果が現れるかどうか危うい、一か八かの賭けではだめだ。確実に効果の有る【爆】をいれた。
戦闘において必要なのは不確定要素ではない。確実な効果である。



後はどうやって当てるか・・・向うの動きは俺より速い普通に投げたんじゃまず当たらない。
外れはそのまま俺の負け、食われて終わりだ。
これは俺の切り札・エースだ、確実に当てる方法は・・・・・この方法だけだ。
この策をやって万が一失敗すればそれで確実に死ぬ。
でもできなければ・・・・やはり死ぬ。
やらなければ・・・生き残らなければ

身体が震える間違いないこれは恐怖だ・・・ハッキリ解る。
だが・・・逃げる訳にはいかない。
だが・・・負ける訳にはいかない。

逃げれば、負ければ・・・・あの時と同じだ。




俺は勝つ・・・あの時誓った・・・強くなると。






立ち上がる。    
           腰を深く落とす。
眼をつぶる。
           身体の氣を感じる
眼を開ける
           相手を見る。
息を吸う
           力を取り込む
深く吐く
           練りこんでゆく。
    
獅子猿がこちら近づく眼を細め、口の端を歪め満面の笑みで近づいてくる。
    

拳を作る。
           いつもと同じ
握りこむ。
           いつもと同じ
力を込める
           出来る事を

氣を込める
           自分最大限を 

霊力を込める
           双つの拳に

勇気を込める
誇りを込める     有りっ丈
意思をこめる

最後に野望を     そして希望と幸運を    

「破ぁああぁあぁあああぁああああ」
強化 強化 強化 強化  
練成 練成 練成 練成
右拳 左拳 右拳 左拳
全身 全霊 全身 全霊
集中 集中 集中 集中

    一意専心
近づく魔獣
迎える人間

「さあ、こいサル野郎」  「クイコロシテヤル」



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「まったくあの馬鹿は!!、」
悪態を付きながらひのめは白いホーネットを奔らせる。
400CCの排気量のネイキッドモデルが夜の闇を切り裂く。
「おぇ姉ちゃぁあんスピード落として、落として落として」
タンデムシートの跨る蛍花が悲鳴に近い懇願を表す。
「蛍花、黙ってないと舌噛むわよぉ」
「いいいいぃややああぁぁあぁああああぁぁぁ」
ドップラー効果を残しながら次々と車を追いこし、隙間がなければ反対車線を使い凄まじいスピードで突っ走る。
途中の峠道で豆腐店のハチロクとランエボなどもついでにブッチギって行く。
「早くしないとあの馬鹿がやばい事になるわよ!」
「だからって公道で150キロも出さないでぇえええええええ」
蛍花は殆ど半泣きである。
何故彼女らがこんな所で公道最速伝説に挑戦しているかというと。
話を少し戻さなければならない・・・

始まりは、人口幽霊壱号と蛍花の何気ない会話だった。
「ねえ、壱さん汰壱ちゃんしらない?。」
「随分前に夜のトレーニングに行くと言われ、それっきりですが」
「何時頃帰るって言ってた?」
「そうですね十時には帰ると・・・・」
「今十一時・・・・大丈夫かな」
おかしいな、今朝時間に遅れてお姉ちゃんにボコにされてるしな〜。
一日に二度同じ馬鹿やる程、汰壱ちゃん馬鹿じゃないし
・・・・・なんかあったのかな?
なにか嫌な感じがする・・・
唯の杞憂であるともいえる。元より汰壱は時間にルーズな方なので普段ならば気にも留めないことだ
しかし今日は何か違う・・・自分の周りを黒い何かが覆うような感覚、自分の霊感が何かを告げている。
マズイことが起ころうとしている。
その時だった。


「!!??蛍花様、大変です!汰壱様の文珠が発動しています。」
「えっ・・・嘘」
その言葉を聞くや否や蛍花は自室にいるひのめを呼びすぐさま動いた。
自分達の服には父が文珠を入れているのは知っていた、持ち主が生命の危険が迫ったときに自動的に発動する条件も、
それが発動している。考えるまでもなかった・・・・・・汰壱が危ない。
「お姉ちゃん!汰壱ちゃんが危ない!」
蛍花に最低限簡潔の話を聞くとすぐさま、自分のバイクと除霊道具を引っ掴み蛍花を乗せ夜の道路に躍り出た。
場所はすでに人口幽霊壱号が逆探知している。
「K35地区・・・全く世話かけさせるんじゃないわよ。」



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「ぜいっ!」
獅子猿との相対距離を詰め連突きを放つ、先ほどと違い【真呼吸】によって限界まで高められたその突きは、
先とは比べ物のならない奔さで相手を穿つ。

ドゴッ!!

初めて相手にクリーンヒットする。自分の五倍近い体重の獅子猿を大きく仰け反らせた。
汰壱を捕まえようと両の腕を突き出すが、爆突的踏み込みで相手の懐に入り、有りっ丈の連撃を叩きつける。

「うぅぅらあああああ!!」

ズガガガガガガガ

機銃掃射のような連撃、一発一発が霊力が低いので【真呼吸】によって高められた膂力・筋力・瞬発力を総動員しての全開攻撃
相手が悪霊の様に、この世に受肉していない存在ならば物理攻撃は限りなく無力であるが。
幸いなことに獅子猿はこの世に受肉した存在であり、有る程度であるが物理攻撃が効く。
それを利用して弾幕の如く双拳を叩きつける。

反撃させずに一気に押し切ろうとするが、その願いは無情な一撃によって打ち砕かれた。
ボッゴオ
「ぐっがあ」
獅子猿の拳が汰壱を捕らえた、吹き飛ばされそうになるのを手と足を地面に叩きつけ必死になってその場に留まる。
額が割れ鮮血が顔を汚し爪が剥がれたが、それが如何したと言わんばかりに猛然と反撃する。
迫りくる牙を顎を殴り上げ回避し、引き裂かんとする爪を受けても前に進み攻撃を加える。
何度か文珠を使おうとするが、向うもそれを読んでいるらしくすぐに引き下がり間合いを取られる。

未だに獅子猿はニタリと哂っていており、それは眼前の無力な人間を嘲っていた。
「糞っ」
何度目か解らない悪態をついた。
先ほどと違いこちらの攻撃は確かに当たっているし、それなりにダメージを与えてはいる。だが・・・
・・だがそれだけである、決定打に成り得ないのだ。
自分の全開が効かない。それは汰壱にとって今までの全てを否定されるに等しく
沸点に達そうとする自身の怒りを汰壱は抑えるのが大変だった。

落ち着け・・・落ち着け・・・自分から自滅してどうする。
これじゃさっきと同じじゃねぇか・・・頭を冷やせ・・冷静になれ・・心を鎮めろ。


こちらの攻撃は大して効かない、しかし向こうの攻撃は確実にこちらにダメージを与える。
スピードは限界まで上げて若干ではあるがこちらが優勢・・・・だが、攻撃力、耐久力は比べるだけでも馬鹿馬鹿しい。
言ってしまえば、そのスピードですら相手の怪我による物だ・・・・・

ギリリィィィ

思わず歯軋りが出る。
冷静に考えて自分のダメージ量や残存霊力を考えても後一回の攻防で霊力は尽きるだろう。
即ち後一回で獅子猿に文珠を当てなければならない。


腹を括れ・・・自分そう言い聞かせた。
既に額が割れ鮮血が滴りおちる。
爪を受けた身体は傷が深いが真呼吸の応用で筋肉を絞めて止血しているが気休め程度の物だ。
骨もあちこちに罅が入っていて、動くたびに激痛が奔る。


だが心は・・・砕けない。


地面を蹴り風を撒いて飛び掛る、この唯一勝っているスピードで相手を撹乱するしかない
瞬間的に全霊力を右手に極点集中・・・右手が鈍色の光を帯びた
これで決めるしかない!獅子猿を穿たんと連突きを放つが避けられた・・・だがこれは伏線・・避けられるのは解っている。
勢いをそのままに右手で地面を地面を穿つ・・・・
「爆ぜろぉ!」
ズウウン!!
小規模の爆発が起こり辺りが埃と粉塵が辺りを包み汰壱の姿を隠す。
「グルウゥ?」
獅子猿は汰壱の姿を見失った。



チャンスとばかりに相手の背後に回りこみ手にした珠を相手に叩き付けんとする。
タイミングは完璧だった。スピードで撹乱し攻撃を餌に、粉塵を巻き起こされ完全にこちらの姿をロストしている。
最初で最後のワンチャンス・・・・・鈍色に輝く珠を握りこむ。

「これで終わりだ」



ガッシイ





その手は止められた・・・・・魔獣の手によって
先程とは比べ物にならないスピードで突進してくる汰壱の手を受け止めた。
止められた衝撃で手にした玉「ぎょく」は砕けそのまま獅子猿の目の前に吊り下げられた。
「なっ!?」
汰壱の顔が驚愕に歪む、馬鹿な姿は完全に隠したのに・・・
そんな汰壱の表情を見てさも嬉しそうに、まるで冥土の土産とばかりに獅子猿が喋った。
「不思議ソウダナ?愚カデ浅ハカナ人間ヨ何故、我ガ貴様ノ場所ガ解ッタカ教エテヤロウ
 匂イダ貴様等人間ノ臭クテ、タマランソノ匂イダ」
「じゃお前は最初から全部知ってたのか・・・・」
「アアソノ通リダ、貴様ガ唯一、互角ト思ッテイル【スピード】ヲワザワザ落トシテ唯一ノ光明ヲ見セテヤッタノモナ・・・
最初カラ貴様ハ、コノ我ノ掌ノ上デ踊ッテイタニ過ギナカッタノダ」
「畜生ぅ」
俯き力なく呟く
「悔シイカ・後悔シタカ・諦メタカ・・・死ネ」
奈落の底の様な暗いアギトを開け、汰壱頭から食もうと迫るその様は大型の肉食獣が捕食するのに良く似ていた。
圧倒的な絶望が襲い掛かる。





















ニヤリ
汰壱は笑った。
その笑みは諦めの笑みではない
プッゥ・・・



奈落のアギト目掛けて、口内に隠した翠光に淡く輝く文珠を吹きかけた。絶望の奈落に切り札は消えていく


ゴクッ

「ギャアアアアアア!!何故ダ何故ダ貴様何故ソレヲオオオオオオオ」
それはさっき砕いたハズ・・・・・・
文珠を飲み込んだ途端に獅子猿はのたうち回り苦しんだ。体内から強引に引き裂かれるような痛みが除々に強くなる。
投げ出され地面叩きつけられたが、立ち上り獅子猿を正面から見据え朗々と言葉を発する。
「お前が砕いたのは唯の玩具の珠だ」
「馬鹿ナ霊力モ匂イハシテイタハズダ」
「ああ、簡単な話だ、霊力がするのは当たり前だ、俺が握り霊力を極点集中し発光さしたからな・・・
ほれ翠色のビー玉を握ってな、匂いも俺の口の中に仕込むから、俺自身の匂いと相殺されてわからなくなる
当然お前は霊力の反応する方を本物と思いそれを止める。後は食いつくまで待つという寸法さ」
「ソンナ・・物ドコ・・カラ」
「ここは元玩具の工場だぜ最初に叩きつけられた時に、ダンボールの中に入ってたんだよ」
最初に叩きつけられたときに思わず掴んでいたのだ。偶然とはいえ僥倖だった。
「要するに・・だ。お前が俺の掌で踊ってたんだよ」
「オオオノオオオレエエエェェェェ!!!!!」












「俺を食いたかったんだろ・・・・・・・・・・・しっっかあっぁり食えええええ!!」














文珠発動・・・・・・・【爆】

「グググギャアアアアアオオオオオオオオォォォォ」
断末魔の叫び声を開けながら
目・耳・鼻・口 毛穴の全てから光を発し爆炎を吐きながら木っ端微塵にその体を吹き飛ばした。





「腹っいっぱいになったろ・・・って聞こえてねえか」
静かに呟いた。

崩れ落ちそうになる体を支え、膝が笑うのを必死にこらえ拳をふりあげ力の限り叫んだ


「俺の勝ちだぁああああああ!!!」

一匹の雄が空に吼えた。

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