ザ・グレート・展開予測ショー

首謀者が消えた後で(その6)


投稿者名:ウェスペル
投稿日時:(04/10/ 9)







たくさんの画面が並ぶ部屋に檜山はいた。



その内の一つには美神達のいた資料室が、
他の一つには雪之丞達のいた第三実験室の映像が映し出されている。

それらを映し出す画面の右下のランプは赤く点滅し、部屋の異常を告げている。


すでにその場に彼らの姿は無く、
ただ、ポッカリと口を開けた床が底知れぬ闇を湛えているのみ。


まもなく、床は再びその口を閉じ、部屋は正常な状態へと戻る。
そして、部屋は静寂を取り戻した。

まるで何事も無かったかのように・・・・





「これでよし、 と・・・・・・」


この経過を見届け満足した檜山は、カードキーを手にドアへと向かう。



<ガチャッ>



「!!」


が、彼がカードキーをさすよりも先にそのドアが開く。

その先に立っていたのは、彼が今最も会いたくなかった人物だった。




「・・・・・・これは珍しいですね。 所長自らこのような所へ何の御用で?」

予期せぬ事に暫し驚くものの、すぐに普段の態度で今ドアを開けた人物――所長に尋ねる。


「それは、こっちのセリフだ……ここで何をしていた、檜山?」

そんな檜山の質問を一蹴して、所長が尋ね返す。


「いえ、私はただ先程の所長からの命令通り、彼らの内の数人をこちらへ招待しただけですが・・」

きょとんとした様子で、答える檜山。 
彼にしては珍しく、自信が無いようで語尾が少々はっきりしない。




その言葉を聞いた直後、

「!? ちょっと待て!! それは私の実験が終了し次第と言っただろう!」

今まで半目で檜山を見ていた眼が見開かれ、感情のまま檜山を怒鳴りつける。



「な・・・・!! も、申し訳ございません!! それで、どうしましょう・・・?」

自らの失敗を・・いや、その失敗に対する処罰を恐れてか、上ずった声で檜山が尋ねる。
おそらく、少しでも自らへ下るだろう処罰を軽減したいのだろう。

「どーにかして彼等を足止めしろ!!
・・・とはいえ、下手に閉じ込めれば壁を破られかねん・・・
・・・・・・確か他所から買った研究用のサンプルが何体か残ってたはず
・・・そいつ等も使え!!」


「わかりました! これより全力を持って侵入者を迎撃します!! では、・・」

そう言い残し足早に檜山は去っていった。



「・・・自分で招いておいて侵入者、か・・・・っとそんな事より僕も急がないと・・・」










 ――――――――――――――――――――――――― 





「あたた・・・落とし穴とは随分べたな真似してくれるじゃない。」

こんな古典的な手に引っかかってしまう自分が少々嫌になりつつ、何とか上体を起こす。
幸い、落とし穴の底にクッションのようなものが備え付けられていたので、特に痛い所も無い。


「このネタは淀川ランプ以来ですね・・・」

不意に聞こえるおキヌちゃんの声―
―真っ暗で全く見えないが、どうやら彼女はすぐ近くにいるようだ。



「! みんな、ちゃんといる!?」

暗闇のせいか急に不安になり、必要以上に大きな声で見えない仲間へと呼びかける。


「おキヌです。ちゃんといます。」「拙者もいるでござる。」 「私もいるわ。」

まもなく返ってきた、仲間からの返事―――て、あれっ! 横島クンは!?





・・・・・そういえば、落とし穴に落ちたとき横島クンは気絶してたような・・・






「!!!!!! た、タマモ、灯りをつけて!! 今すぐ!!」

「・・・・・人を懐中電灯代わりにしないでよ。」




私の要求に対し、口では文句を言うものの、タマモは素直に狐火を灯してくれる。


そのお陰で何とか辺りの様子がわかるようになった。

どうやら、ここはかなり広めの部屋・・いや、ドームとでも言うべきか・・・
しかも、壁も、床も、天井に至るまで、その全てが銀色のなにかで覆われている。



・・・・って!! そんなことより・・・

「横島クン!?」

私は四方を見渡すが彼の姿はない。

まさか、落ちるときに・・・・


「・・・美神さん。下・・・・」

「へ?」


なんか複雑な表情をしたおキヌちゃんの言うとおり私が下を見ると・・・・いた。
おもいっきり下敷きにしちゃってたわ・・・・ごめん、横島くん。


「まったく・・・何時まで寝てんのよ、あんたは。 とっとと起きなさい。」

<げしっ>
いろいろ悪いとは思いつつも、時間が惜しいので私は横島くんを蹴り起こす。
・・・あくまで時間が惜しいのであって、悪意は無い、多分・・・。


「う〜〜〜ん・・・」

さすがにそれは無視できなかったのか、彼は少々不愉快そうにモゾモゾ動く。
 そうかと思うと、急にムクッと起きあがって・・・・・




「・・・つまり、OKってことっスねぇぇっぇぇっ!!!」

「何がつまりだっ!? ねぼけるなぁぁぁぁぁぁっ!!!」


いきなり飛び掛ってきた横島くんの顔面に、
私の脊髄反射レベルのアッパーカットが見事に決まるっ!!


「ごぁふぅっ!?」 


血飛沫で軌跡を描きながら彼の体は宙を舞い、
ちょうど6回転してからマット(クッション)に叩きつけられた。








「うっ・・・あれ、美神さん。俺達、確か資料室にいたはずじゃ・・・」

さすが横島くん。伊達に毎日この私にセクハラかまして殴られてないわね・・・。


とは言っても・・・


「あーもうっ面倒くさい! おキヌちゃん説明してあげて。」


「わかりました。 えーと、横島さん。
   私達、突然作動した落とし穴に落ちてここに着ちゃったんです。」

「へぇ……。で、美神さん。これからどうしますか?」


「そうね……」

見たところ出入り口はおろか、私達の落ちてきた穴さえない……
もっとも正確には隠されてるだけなんだろうが。



「じゃ、とりあえず……」





私は大きく息を吸い…





「くぉらぁっ!! ここの責任者ぁ、とっとと私達をここから出しなさい!!
  でなきゃ某国の軍事衛星にレーザーの出前頼んで、山ごと焼き払うわよっ!!」




てきとーなリモコン片手に、とりあえず大声で怒鳴ってみる。




…無論、相手の反応には期待していないが。





数秒間を置いて…







<ガ―――ッ>  「「「えっ!?」」」



電気的な音とともに、壁の一部が開く。暗くて、そこがどうなっているのかはわからない。

今の脅しが効いたんかいっ!! と、思わずツッコミそうになるが、どうやら違う様だ。



その壁の開きは常人が通るにしてはあまりに大きすぎる。
そうすると当然これは……





壁が開き終わらぬうちに、
その暗がりの中から一体の魔物が躍りいで私達へと向かい来る。

『キェェェッェェッ!!』

そいつは、そのまま、比較的近くにいた私と横島くんにそれぞれ両腕の爪を振り下ろす。
私達は後ろに飛んでそれをかわし、そいつから距離を取る。

「えーと・・・こいつは確か……」

そいつを見て横島くんが僅かに反応する。



そう私達はかつてそいつと同じ魔物を見た事があった。

そう言えば、ここってどっかに似てると思ったらあそこもこんな感じだったっけ……






「えぇ……ガルーダよ!」


私達の目の前に現れたのは紛れもなく
誇りも魂も無く、ただ殺戮のためだけに創られた心霊兵器・ガルーダだった。



―――――――――――――――――――――――――――――


ども!お久しぶりです。 あ、知らない人は初めまして。
ここ半年ほどいろいろあって更新が停止しておりましたが、
更新再開させていただきます。
今後は一ヶ月おき位で更新しようと考えておりますので読んでいただければ幸いです。

なお、 「首謀者〜その1」 は「過去ログその68」に、
それ以降は一、二ヶ月ごとに更新されております
その5は恥ずかしながら送信ミスにより6個ほど未完成版がありますが
完成版は 「過去ログその78」にあるものです。 探す場合はご注意を。

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