ザ・グレート・展開予測ショー

皆本の陰謀(絶対可憐チルドレン)


投稿者名:DOOR
投稿日時:(04/10/ 7)



「……それでちょっと考えて欲しいことがあるんだけど」
 イイ雰囲気の中、僕は切り出した。
「何ですか、皆本主任?」
 彼女はワインでうっすらと染まった顔をさらに上気させて、僕の様子を窺っている。これは脈あり
かも知れない。



皆本の陰謀(絶対可憐チルドレン)




「…………」
 僕は失望感を堪えて、行きつけのバーに向かった。こんな時は酒でも飲まなければ遣りきれない。
嫌悪感、いや恐怖さえ滲ませた彼女の顔を思い浮かべて、思わず溜め息を吐き出した。なにしろ、
彼女はデザートさえ食べずにそそくさと帰ったのだから。
「いつものヤツを頼む」
「また、失敗ですか」
 僕の目の前でバーテンが沈痛そうな表情を作って見せた。大学のゼミの後輩であるが、夜目には絶
世の美女で通じる美形だ。一見客の中には、女性と信じて疑わない者も多いらしい。
「ああ、五戦五敗だよ」
 僕は差し出されたオールド・グランダッドを一息に干して、アルコールの刺激に思わず顔を顰めた。
自覚しているがアルコールにはさほど強くないのだ。
「今度こそ、上手くいく筈だったんだがな」
 僕はそのまま追加を求めた。
「…………」
 彼は流れるような仕草でグラスを替えた。バイトのはずがすっかり馴染んでいる。カウンターにある
のはショットグラスではなく、大ぶりのタンブラー。クラッシュアイスが満たされたタンブラーには溢
れんばかりのバーボン。そして、添えられたミントの葉っぱ。これは香りを愉しめということだろう。
もしかして、あらかじめ敗北を予想していたのか?それはそれでイヤだ。
「皆本さんは心理テストに頼りすぎてるんじゃないですか?」
「人間関係はロジックじゃないってか?」
 僕はバーボンの香りを愉しみながら、彼に向かった。
「いっそ正直に伝えてみるべきでは?」
 彼は小さく頷きながら、訊ねた。
「かも知れないな、でもなあ」
 僕は次の言葉を飲み込んだ。















「……アイツらを放り出す訳にはいかないじゃないか」
 バーを出た僕は思わず言えなかった言葉を口にしていた。アイツら、すなわち「ザ・チルドレン」と
呼ばれるレベル7のエスパーたちと僕の付き合いは極めて長い。技官とは言え、いわゆるキャリア官僚
である僕の異動がここまで凍結されているのはまさに異例中の異例なのだ。
 このため、凍結を下世話な理由に求める者もいるらしい。つまり、僕があの三人と肉体関係にあると
いうのだ。中身はともかく見かけは飛び切りの美少女たちなのだから、アイツらは。
 もちろん、これはまったく根も葉もないウワサであり、少なくともバベル内でそれを信じる者がいる
筈がない。しかし、外部ではウワサを真に受けるバカ者がいないと限らない。アイツらの将来を思えば、
ここいらが潮時なのだ、僕が一緒にいるのは。
 僕がアイツらを一生支えるということはありえない(というか、それダケは勘弁して欲しい)。それ
はアイツらの伴侶に任せるべきなのだ。いつかきっと、アイツらを受け止める(ことのできる)ヤツも
現れるだろうから(汗)。
 このため、後任の担当官の選任(誤解を避けるために、候補はすべて女性だ)に当たっていると言う
のに、この話を切り出すと皆一様に拒むのだ。ハッキリ言って、さっきの反応はまだ穏やかな方だ。こ
の話を口にした瞬間、失禁した子もいたくらいなのだ。
「まったく僕はどうすりゃいいんだ」
 僕は途方に暮れた。

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