ザ・グレート・展開予測ショー

すきんしっぷ(前編)


投稿者名:偽バルタン
投稿日時:(04/10/ 7)

早朝…局長の所へ顔を出すまでには、まだかなりの時間があった。
その日僕…皆本光一は、本部に泊りがけの上、徹夜で仕上げた書類を提出した後、施設内部に設置された仮眠室で、ソファに転がり毛布に包まってひと休みしようとしていたんだ…

「皆本さん…」

色素の薄い青みがかった髪は、ふんわりとしたセミロング。
おっとりとした柔和な顔立ち…肌は雪の様に白く、繊細で華奢な印象を受ける。
その少女…超度7の接触感応能力者 三宮 紫穂が声をかけてきたのはそんな時のことだった。
なぜこんな早朝から本部に彼女が居るのかといえば…昨日は緊急の災害救助任務があり、状況終了後も念の為…と“ザ・チルドレン”の彼女等は本部へ泊まったから。
予断だが、徹夜する羽目になった事務仕事も、それに関しての事だ。

「紫穂…どうしたんだ?」

頬に朱を散らし、もじもじと僕の方を見つめる紫穂…心なしか潤んだ瞳が、僕に何かを訴えかける…

「………」
「…あぁ…またして欲しくなったのかい…?」
「…ん…」

こくん…
肯定の意を持って頷く彼女…そう、これは紫穂の“おねだり”なのだ。

「しょうがないな……おいで…紫穂…」
「♪」

僕はソファに座りなおし、両の腕を広げ彼女を迎える。
彼女に余計な気をかけさせない様、笑顔を作るのも忘れない。
その顔に喜色の微笑を浮かべ、僕の胸へと飛び込んでくる紫穂…
そして…僕と彼女は…



すきんしっぷ(前編)



…その始まりは数ヶ月前の事だった。

「抱いてほしいの…」
「ブフゥッ!!」

最初に、紫穂のその言葉を聞いた時、僕は不覚にも飲んでいたコーヒーを鼻から噴出すとゆー醜態を晒してしまった。
…恥ずべきことに、僕は一瞬…その…18歳以下のお子様には聞かせられない様な、いかがわしい想像をしてしまったのだ…
しかも以前想像してしまった事のある、手足の伸びきったオトナの仲間入りをした紫穂相手で。

「…ナニ考えてるの…」
「あ、や、それは…」
「……皆本さんのえっち…」(赤)
「グハッ…」(汗)

彼女の“チカラ”の前には、言訳も不可能だった。
全く…僕ってヤツは…何を早とちりしてるんだ…
紫穂は、ただ純粋に…僕に“抱っこ”してほしい…抱きしめてほしい…と、そうゆう意味で言ってきたんだってのに…
自己嫌悪にのた打ち回る僕を見つめる、彼女の純粋な瞳が痛かった。

そして今……
紫穂と僕は、一枚の毛布にふたりで包まっている。
ソファに座った僕と向き合う形…首に手を回し、紫穂はしがみ付くようにして僕に抱きついている…

「おい紫穂…あんまり動くな…落ちるぞ?」
「〜♪」

僕に“抱っこ”してもらうコト…コレが紫穂の“おねだり”。
数ヶ月前のあれ以来、時々彼女は、こうして僕に“抱っこ”して貰いに来る。
念の為に言っとけば、その行為にセクシャルな意味合いは断じて無い!
何をするでもない、僕が紫穂を抱っこしたまま、ふたりで他愛の無いおしゃべりをする…ただそれだけ。
でも…それが、彼女にとってはこのうえなく楽しい事らしい。
…当然薫と葵にはナイショだ…ばれたら真剣に僕の命がキケンな気がするからね(汗

僕は、赤ん坊をあやすように、優しく一定のリズムで、彼女の背中を“ぽんぽん“としてあげる…最初は『赤ちゃんじゃない』と講義した紫穂だが…今ではこれをしないとごねる程にお気に入りのようだ。

しかし…なぜ彼女は、僕なんかに“抱っこ”してもらいたがるのだろうか…
そう思ったとき…ふと…紫穂の会話が途切れた。
僅かな沈黙の後…意を決したように僕を見つめた紫穂の…そのとても真剣な瞳…
あぁ…今、紫穂は何か大事な事を僕に伝えてくれようとしているんだ…
それは、“チカラ”なんか持ってない僕でも、容易に察する事が出来た。



後編に続きます。

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