ザ・グレート・展開予測ショー

GS新時代 【鉄】 其の弐


投稿者名:ヤタ烏
投稿日時:(04/ 9/30)






早朝の五時、まだ太陽も昇らず、辺りは夜の闇がうっすらと残っている。辺りに人の気配は無く静かな朝であった
汰壱の朝は早い、すでに着替えを済まし庭に降りていた、朝食の八時までの三時間、朝の鍛錬の時間だ。

まずは入念に整理体操を行う、身長は170センチ程で、同年代から見ても平均より少し有るほどだが、体つきは相当に鍛え上げられている。それは長い鍛錬の末に行き着く、スポーツや競技格闘の体付きでは無い、まさしく戦うために
創り上げられた頑健な肉体であった。70キロ近く、かなりガタイが良い。
髪は短く刈り込まれ、眉は太い、幼さが残る年だがそんな雰囲気は、どこかに置き忘れてきたような顔つきだった。
そのためかなり年上に見られ蛍花の友人達に兄と間違えられた事など一度や二度ではない。

はっきり言えば人が避けるタイプでかなり厳つい。

寝癖の付いた髪と目覚ましついでに、庭に置いてある汲み置きのバケツに頭から突っ込み手櫛でわしわしと乱雑に整えた。
「よし」

適当に整えた髪に満足して彼は日課である朝の修練を始めた。
まずは小一時間ほど全力で駆け始める。大都会のコンクリートジャングル、まだ誰しもが眠る時間の中を白いジャージが駆け抜けていく、ペース配分などは考え無い
唯速く、速く奔る。すでに彼の額には玉のような汗が浮かんでいるが、
息は乱れていない。
   
徐々に夜が明けて日が昇り始めた、辺りに山吹色の暖かい光が差し込んでくる。
汰壱は朝日が好きだった
暗い夜が終わり活力に満ちた光が辺りを照らしてゆく、夜の闇を追いやる光。

まだまだ体力には余裕がある、しばらくして自宅から随分離れた川原で汰壱は止まった。
ゆっくりと息を吸い込み、同じようにゆっくり吐く、都会にしては朝の清んだ空気は心地よい。

呼吸法を何度と無く繰り返し、徐に汰壱は構えた。左足を少し前に出し身体を半身開き、左手を軽く握り込み、身体から少し離した胸元の高さに置く、右手は左より少し力を込め握りこむ、右足・左足6対4に体重配分し腰を落とす。
これが最も戦闘に適した形であると汰壱は七年間の修行でそう悟った。

理屈云々もあるが、汰壱自身これがもっともしっくりきたと感じ取れたからだ。ゆっくりと身体の一つ一つの筋肉に語りかける様に最も基本となる突きの型を何度も何度も繰り返した。正中線を軸に下半身の捻転の力に、上半身の捻り、手首のスナップを利かせインパクトする。これにより、貫通性の高い拳撃を繰り出す事が出来る、最初はゆっくりと徐々に徐々に速さを増してゆく、何度も何度も、息が続く限りこれを繰り返す。
左右に構えを入れ替えこれも息が続く限り続けた。

どんなに息が切れそうになっても丹田への気の集中は怠らない、万物の霊力の根幹であり発生源せある丹田にはいかなる時であっても集中を切らしてはいけない、そう有る人に教えられた。



                                                  


その人に会ったのは汰壱が9歳位の時、同じように(その時は家の近くの公園で会った)早起きして訓練している時だったがその時汰壱はある壁にぶち当たっていた。
霊力が練れない、つーか出ないと言う状態だった。ひのめや蛍花は当然の様にそれをこなしたていたが、汰壱には全く出来なかった、必死になって、ひのめや蛍花がやっているのを穴が開くほど視て練習したが、結果は同じだった。

両親は特に二人に教えていない、生れ付き感覚的に出来るのだ。人が生まれてから立ち上がる様に彼女達にはそれができた。
生まれ持った天性の差、血統の差であり汰壱が生まれて初めて感じる才能という余りに高く大きすぎる壁だった。
両親にいくら教えて欲しいと頼んでも二人は首を決して縦には振らない、
生半可な力がどういう結果を生むか・・・
それを一番良く知っている彼らだからこそ、簡単に教えるような事はしなかった。
わざわざ危険を冒してまでGSになる必要は無いのだ。
自分にあった力を見つけ平凡でも幸せに暮らせれば良い、それを汰壱に対する夫妻の願いであった。

しかし、生来の性格からして汰壱は諦めが極めて悪い、教えてもらえなければ、
自分で何とかすればいい。
まあ、この場合何とかしなければいけないのだが・・・・・・・・・・・。
このままでは、世界最強のGSはおろか、普通のGSにもなれるかどうか危うい、幼い汰壱はさすがに当方に暮れていた。
そんなある朝のことだった、自分の思いつく限りのことを考え霊力を練ろうと足掻いていた汰壱に声をかけた者がいた。

「なにを朝っぱらから唸っとる小童」

その老人の姿は9年しか生きていない汰壱が見ても、明らかにおかしいものだった、猿の様な風体で中国服に身を纏い
背中には小汚いリュックを背負いポスターやらなにやらが見えている。 
両の手に提げた紙袋に大量にゲームやら漫画を詰め込んでこちら見ている老人は紛ことなき・・・・・・・・・・・イタイ人だった。
     
目が有ってしまった・・・・・・・・・・どうしようどうしようどうしよう
どうしよう×20
無視しようかな、でも、なんか無視するって良くないし・・・・・・・・
変な人に違いないのは間違いないけど・・・
相手にしたら危なそうだし・・・・・・・
でも声をかけた来た人には一応答えた方が・・・・・・・・
学校で変な人を見かけたら110番にって・・・・・・・・・・・・・・・
そうだ!110番に連絡だ
こういう危なそうな奴は社会的制裁を食らわして法の裁きを・・・・・
  
「まてやコラ、全部聞こえとるぞ」
声に出ててました。
「・・・・・・・・・・・なんかようですか・・・・・・」
目を合わさないように    
「何〜故、目をそらす」

「いや別に」

「全く、最近の子供は、まともな受け答えも出来んのか、世界の未来は真っ暗じゃ」

「あんたの未来のほうが真っ暗だろうね」

「なんか言ったか?」
        
「いや別に」     

「まあ良いお主霊力を出したいのか?」
 弾かれた様に汰壱は顔をあげた。
「!!解るの!?じゃなくて解るんですか」
     
「なんじゃ急に態度変えおってからに・・・・質問しとるのはワシじゃ・・・出したいのか?」

「出したい!、教えて下さい」
 決定的な打開策になるかどうかは解らなかったが藁をもすがる思いだった。
このさい猿の手でも猫の手でも何でも借りたかった
「お主また失礼な事を考えたか?」
    
「いえ、何も」  

なぜその老人が教えてくれたのかは解らないが、汰壱にとっては渡し舟であった事は言うまでもない。
「まあ良い、では暇つぶし程度に教えてやるか・・・よーく視ておれよ」

「覇ァ!!」
     
「ぎゃーす!!!」
瞬間、老人の周りの空気が爆ぜた霊力の余波が爆風を巻き起こし汰壱をふっとばした。
それを見た瞬間、腰が抜けそうになった。霊力を感じるのはこれが始めてではないが、その規模たるや蟻と戦車ほどの開きがあった。

「すっごい・・・・危なそうな人じゃなくて、本当に危ない人だったんだ。」
     
「お主、いい加減にせえよ、まあこれで要領は解ったじゃろやってみい。」
ぎろっと睨みながら汰壱に促した。
「全然解らんです。つーか何をどうしたらいいのかさっぱりですな」
ピクッッ!
文句あるか!と言った感じに開き直るジャリ坊主に老人はとりあえずローキックを入れておいた。

「ああ、立てない!立てないよ、なんか微妙に足の辺りにねばっこい鈍痛があああああ」

 なんかとなりで喚いているジャリボーイをさわやかにスルーしてサル老人は話を進めた。
「やれやれ、本当に何もわからんみたいじゃな・・・・よいか小僧、霊力とは丹田と呼ばれる気の発生源からなる生命力をクンフーによって変換し、自身の肉体強化、魔に対しての攻撃、その他に回復など通常の人間の性能ではできん事をやる
力のことじゃな。・・・・・まあこれは、あくまで簡易的なものにしかならんがな霊力は極めれば人の身ですら、神・魔相手に引けを取らん。
あくまで極めればだがな」

「霊力はクンフーって言うのをを積んだら誰でも出来るんですか?僕と同じぐらいの子で 特にに何もしてないのにやってる子達がいるんですけど・・・なぜ?」
 足の痛みから解放された汰壱が今度は失礼(ローキックは嫌なので)のないように聞いた。

「最初に質問に関しては出来る。・・・・だがそれにはかなり個人差がある。二つ目に関してじゃが・・・・・確かに生れ付きに霊能力が有るものはいるな、しかし小僧の年でか・・・・・相等な才覚の持ち主じゃろうな。」

「ちなみに、僕は才覚ってあります?」

「はっきり言ってな・・・・全ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん然無い!!のう。」

 うあー、3行まるまる使っての全否定かよ、九歳児に向かって容赦の欠片も無いね。
    

「そもそも才覚の有る者なら、最初のわしの発気で感覚が解るんじゃ、わしはただ霊力を発生したのではない自身の霊力と小僧の霊力の中枢にリンクしておぬしに
感覚的に理解させようとしたのじゃ・・・・・・・・・・・なんじゃい!その胡散臭そうな面は!」
  
もう一度ローキックの構えに入ろうとする老人に、とりあえず平謝りしながら説明の続きを求めた。
子供とはいえ若干情けない。

「じゃあ、僕は霊力の操作は出来ないことになるんですか?」
汰壱は怪訝な顔をしながら尋ねた。
   
「そうは言うとらん、先も言うたであろうクンフーを積めと・・・・・・・そうすれば例外無く皆できることじゃお主に才覚が無いのは仕方の無い事じゃが、それとこれとは別じゃ才覚が無くとも強くなったものは確かにおる・・
・・・そう、確かに・・・・」

老人はとても遠い記憶の中にある者を想い出して、懐かしむようなそして少し悲しそうな顔をした。
それは一瞬の事であったが、汰壱は確かにそれは見たその時になって
初めてこの老人が只者ではないと感じ取った。
   
「お主がもし霊能力を身につけるのであればその方法は唯一つ・・・・・積み重ねよ、研鑽し己を磨き、鍛え上げ叩き上げよ・・・・よいか天に輝く『栄光』の星に届く方法は唯一つ、天まで届く『努力』の山を築き上げろ 天道より与えられし
才覚『天才』に敵う事ができるのは、地道に続く『努力』のみ」





静かに息を吐きながら自分の記憶を汰壱は思い出していた。その後何日かに渡って自分の鍛錬に老人は付きあってくれた
何故、自分にこんなに教えてくれるのか聞いたが、笑って「唯の暇つぶしじゃ」と言っていた。
汰壱が毎朝やっている突きの技はその時に教えてもらった技である。技というには余りに基本的な突きであるが、
その老人の見せた突きは大気を抉り目標を貫いた。老人は毎日これを一万回繰り返せと汰壱に課題を与え去っていった。        

結局、汰壱が霊力を発生できる様になったのは、その老人が去って半年後の事だった。それから現在に至るまで、汰壱は本当に一日も欠かす事無く、課題を必ずこなしていた。一年を過ぎるころになると課題だけに飽き足らず、
極真空手・戦場柔術・気孔体術などを中心にした実戦派の格闘術の修練に明け暮れた。
僅かづつではあるが、確実に汰壱は積み重ねていた・・・・そう確に・・・・。


呼吸を整えて静かに眼を閉じる、ゆっくりと丹田から気を発生し、血液が身体を流れるように全身に気を回して霊力に変換してゆく、汰壱の体から薄い陽炎のような霊気が少しづつ滲み出す、徐々に量を増してゆき一定量で留める。
ぐっと腰を落とし低く構え、先程まで溜めた霊気を一気にいま自分が出しえる最大出力で発気させる。   
「せい!!」
汰壱の周りに有る小さな木の葉や草木が、そよ風に煽られる様に散っていく陽炎の霊気に先程に比べて幾分はっきりしているが、とこぞの誰かさんよろしく、炎のような霊気はまだまだ遠かった。
「はぁあああああああああああ」
最大出力を維持し続け、自分の体力が続く限り搾り出す。すでに汰壱の服は、水に漬かったかの様に汗だくであり、
地面にはそこだけ滴り落ちた汗が、水溜りのようになっている。
1分・・・・・・2分・・・・・・・3分・・・・・・7分・・・・・・ぐっ限界か・・・いやまだまだ今日こそ10分に・・8分・・ぐぐぐ・・・きつい・・・9分・・・・・やばい目がクラクラしてきた・・・・・・・・・・・・10分!

その瞬間、陽炎が消え汰壱は地面に膝から崩れ落ちた。

「はあ・・はあ・はあ・・・やっと10分か・・・・先は長いな」

暫く地面突っ伏したまま汰壱は呼吸法にて乱れまくった息を落ち着かせていた、心臓が早鐘どころか直下型地震の様な 騒ぎ方をしている。霊力の全力発気状態は信じられない程の体力を消耗する、並みの人間がやれば一分持たずに
地面のお世話になるだろう、七年間鍛えに鍛えた汰壱の驚異的な体力でも、やっと10分と言ったところだ。

ちなみに蛍花とひのめは軽く20分を超えているが、二人と汰壱では霊力の内包量が圧倒的に違うのと霊力の練り方の違いである。蛍花とひのめは内包している霊力をそのまま開放しているだけだが、汰壱の元からの霊力の内包量は常人のそれと大差が無い、汰壱が幼い時に霊力が出なかったのは、その為である。元より常人と変わらない程度の霊力では二人と同じようなやり方では、出るはずも無いというわけである。
    
汰壱の霊力の練り方は、例の老人に教えてもらったもので『真呼吸』と呼ばれる呼吸法で、まず体内で氣を練りこみ身体を廻し続け霊力に変換していく、所謂『チャクラを廻す』と言うやつである。内包している霊力をそのまま開放する方が
遥かに簡単であるし操作も楽である、殆どのGS達はこの方法を取っているが、所謂【S級】と呼ばれるGS達は皆、『真呼吸』を体得している。それはなぜか?答えは『真呼吸』のシステムにある先程も述べて様に汰壱の霊力の練り方は
呼吸法で気を練りこみ体内で『チャクラを廻し』それを体中に行渡らせ、それから霊力に変換している。

一見するとかなり手間が掛かる様に見えるが、実はこの『真呼吸』極めれば呼吸が続く限りいくらでも気が練れるのだ。
氣を霊力に変換するのには体力が必要とされるが『真呼吸』はもう一つの特性があるそれは『肉体強化』である、
氣の力で身体を強化し耐圧、耐衝撃や筋力や瞬発力・体力等の人間の基本的な力、『土台』に当たる物に対しての強化技である。

これにより体力の消費と言う問題点はかなり軽減される。霊力の元となるのは『氣』であり、理論上、氣が尽きなければ
霊力は無尽蔵に練る事が出来ると言うわけである。しかし、汰壱がこれ程までに体力を消耗するのは単に修行不足のためである。
汰壱は『肉体強化』に関しては、ほぼ問題無く出来ているが霊力への負荷の軽減は出来なかった。
二つを同時に操作し極めるのには、まだ相当に時間がかりそうであった。
長い訓練のお陰か当初に比べれば飛躍的に上昇したがまだまだ二人に比べると、
差は大きい・・・・・・・。

「ふー・・やっと終ったか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・説明が。」
 
触れてはならない話題に触れつつ、汰壱は立ち上がった『真呼吸』のおかげで一応ではあるが体力が回復してきた。
身体に付いた泥を払いながら、時間を見た・・・・・・・・・・・・7時50分
・・・・・・・・・あと10分やべぇ・・・・・・・ひのめ姉に・・・・・・・
・・・・・燃やされる・・・・・・。
    
【横島家 家訓 時間に遅れる奴はぶっ飛ばせ】
 過去のトラウマと恐怖を思い出しながら全速力で家路に着いた。
   
必死なって家に帰ると既に家の中から不機嫌オーラ滲み出ていた。
「やべーなこりゃ」
    
テーブルには既にひのめと蛍花が座って汰壱を待っていた、ひのめはいかにも不満たらたらと言った感じで汰壱を睨んでいる。
「た〜い〜ち アンタ、何回言えば時間を守れるようになるのかしらねぇ?」
「すまんね、これでも一生懸命走ったんだがよ」
「どーせまた訓練のやり過ぎで動けなくなったんでしょうが」
「うっ・・・流石に解るか。いやー今日は調子が良くてな、つい張り切っちまってよ」
ばつが悪そうにしている汰壱に蛍花が助け舟を出した。
 「まあまあ、お姉ちゃん汰壱ちゃんも反省してるんだしさ」
「甘い、甘いのよ蛍花は、この訓練オタクは一度しっかりと説教しなきゃ、大体才能も無いのに訓練しても一緒なのよ」
 その言葉に汰壱のコメカミにピクッと青筋が奔った。
「へぇーその才能ってのは放火魔の才能の事か?」
「アンタ喧嘩売ってんの?」
「いーえとんでもない、唯、毎回現場を消し炭にして帰ってくる、何処かの放火マニアの人に時間云々言われたくはねぇな。」

あーあ、とばかりに蛍花はため息を付いた毎度の事ながらこの朝のセレモニーには頭痛がする。さっさと止めないと
・・・って言うか何で勝てないのに汰壱ちゃんは喧嘩売るかな?
蛍花の心配を他所に汰壱とひのめは完全に戦闘モード入っている。

「あんた、そういう口の利き方は、一度でも私に勝ってから言えってつってんでしょ」
「うるせえ、今日こそ地面のお世話になってもらうぜ」
「はん、その前に消し炭にしてやるわ」
 
ドガドガバキグシャメキョボグチャ

今日は、何分持つかしら?と静観を決め込んでいる蛍花に電話が掛かった。
電話の主は自分の母の令子であった。


「ママおはよう」

『おはよう蛍花、ところでなんか後ろが騒がしいわね?』

「ううん、気にしないで・・・・・お姉ちゃんと汰壱ちゃんが暴れてるだけだし」  

後ろの喧嘩を見ながら蛍花は事も無げに母に言った。時期に一方的な虐殺に変わる朝のセレモニー

『あっそう・・・・・実はね 仕事がまだ梃子摺りそうなのよ。今日帰るのは無理みたいだからもう一日我慢してね。』
 
「心配しなくても、大丈夫です。子供じゃ無いんだから」
  
 令子は笑いながら      
     
『ふふ、そうね、でもあんまり親離れが早いとパパが泣くわよ』

「うっ・・それは困るかな・・・・・・・」
ゴキャリ!
後ろの方では折れたらいけない音が聞こえたりしている。

「それじゃ、あとはヨロシクね。あっそうそう、ひのめに【殺りすぎるな】って伝えといて」
  
「あ〜ちょっとおそかったなー」

「殺っちゃった?」

「うん殺っちゃった」
 
「今日は何で?」

「アルゼンチンバックブレーカー」

「汰壱は?」

「血の泡吹いてる」

「ちゃんと回復してあげなさいよ」

「はーい」

「それじゃーねー」

ガチャ ツーツー

えーと・・・・・・・・・・今の会話おかしくない?
血の泡を吹きながら薄れゆく意識の中、汰壱は世の不条理に突っ込んだ。
     
「パパとママもう一日掛かるって」
      
「解ったわ、汰壱あんたも今の話・・・・(返事が無い唯の屍のようだ)って聞いてないか。蛍花あとよろしく。」
  
「はいはい」

蛍花は血の海に沈んでる屍にヒーリングを掛け、その隣でひのめは朝ご飯に有り付いている。
横島家の朝のセレモニー・・・・・・・・のどかな朝のセレモニーである。     


 その時、汰壱は今までの短い人生を血溜まりのなかで振り返っていた。

なんだか毎朝とってもチクショーな気分だ。
       

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