ザ・グレート・展開予測ショー

GS新時代 【鉄】 其の壱


投稿者名:ヤタ烏
投稿日時:(04/ 9/29)



人間生きているうえで,幾つか人生を変える大きな出会いが幾つか必ずあるものだ。
どういう形にせよ、それは必ず起こりえる、それは良い意味でも悪い意味でも。
しかし、その出会いが結果として何を生み出すかまでは誰にも解らない、知る事は出来ない。
この時点で彼ら横島 忠夫と古牙 汰壱の出会いはそういう意味では同じだった。
少年、古牙 汰壱の物語が始まったのは、まさにこの出会いからだった、そして
少年の人界最強の野望も・・・・・・ 
     



物語が始まるのは、人界の歴史に大災厄と記憶された「アシュタロス戦役」と呼ばれた出来事から10年後の事だった。

「今日からお前達の新しい兄弟だ二人とも仲良くしてやれよ。」

美神 ひのめ (みかみ ひのめ)が古牙 太一に、最初に受けた印象は、なんだか気に食わないであった。
別に大した理由は無かった、ただなんとなくそう想っただけである。
義兄に手を引かれてやってきた少年はあちこち擦り傷や切り傷を負っていたが、
その瞳に涙は無かった。
むしろ、その瞳には何か強い光が有り、おおよそ自分より年下であるはずの子供がする瞳ではなかった。
(何だろう・・・・・・)
それがまだ決意の光であることを気付くのには彼女はまだ幼ぎた。
   
横島 蛍花 (よこしま けいか)の汰壱へ第一印象は(どうして泣かないのだろう?)であった
生まれつき人より感応能力が秀でている彼女は自然と他者の気持ちが良くわかった。
それは、理解するというより本能的に感じることが出来ると言った方が良かったし、彼女自身もまだなんとなくとしか解らなかったが、その能力ゆえ蛍花は汰壱の矛盾した精神に気付くことができた。
彼の心はとても深く傷付いているにもかかわらず、その顔には涙は無い。
このことは、蛍花には大きな疑問であった。
おおよそ、彼女位の年の子供ならば悲しいと感じれば泣くし、嬉しいと感じれば笑うものだ、それがあたりまえである。
自分の父から時たま、そんな精神を感じることがあったが、少なくとも子供でそれを感じたのは始めてである。
だから彼女はそんな汰壱に興味を覚えた。



まあ、この二人の少女が汰壱に様々な思案を巡らしているすぐ横では、横島は
彼の妻、令子に隠し子かと疑われ
問答無用のデンプシーロールを食らって血の海に沈んでいたが・・・・・・・
「やっぱりこういう役なんかー!」 
 悲しき声が響いていた。     


汰壱が横島の家に居候するようになってから7年の歳月が流れ、ひのめは17歳に蛍花と汰壱は15歳に成っていた
横島夫妻は、汰壱を実の娘、蛍花と訳隔てなく育てたが、唯一霊能力に関しては汰壱に教えることはしなかった。
その理由は実に簡単である、何のことは無い汰壱には資質が無い、それはもうサッパリなく、さすがに才能がない人間に教えるような事は出来ない。
別に霊力が無いわけではない、全ての人間には霊力は存在しているがそれを操るには資質が有るか否かとなるわけだ。 
汰壱にも霊力が無論存在しているがその霊力もけして多い者ではなく一般人のそれと比べても大して変わらない。
要するに、GSの才能が無かった。
GSの仕事は常に死が付きまとう、一昔前に比べれば殉職率も下がってきているが、それでも他の公務員に比べれば比較になら無い程の殉職率になる。
GSの基本は戦闘にある。
人の人知及ばぬ人外の化け物たち調伏し封印し滅するその全ての基本となるのは霊力となるわけだ、
その最も基本たる、霊力操作が出来ない汰壱は、まさしく話しにならないといったところである。
    
しかし汰壱はGSを目指した、くどい様だが汰壱には才能が絶望的に無い。
向いてないないどころか、普通の人間ならば、それを目指す気すら、まず起こさない程だ。
だが汰壱にはそんな事は何の関係も無かった、絶望するほど才能が無いが、その絶望の強さは汰壱を絶望させるにはまるで足りなかった。

「可能・不可能は他人が判断する事じゃねえ!てめえが判断するこだ!」
そう彼は【極めて】諦めの悪い人間に育っていた。 
そう【極めて】・・・・・・・・・・・・・・・。

余談ではあるが汰壱と蛍花が10歳ごろの時に、横島夫妻に連れられ霊能力の資質を視て貰いにいったことがある。
視て貰ったのはその道100年になる御年130歳(人間)の選定士だった、GS界ではその名は広く知れ渡りその力も、折り紙つきで、全世界公認のお墨付きまで付いてる、まさしくスーパー人間国宝という老女であった。
まあ、そういう超一流の人間は、常人と一線を隠したところが有り、彼女の選定もまた変わっていたのだ。

対象者を宝石や装飾品や武器防具に例える。
それが彼女のやり方だった。
しかし、彼女は唯言うのではなく、言霊を持って相手に自分の資質を理解させるのだ。
それにより相手は頭でなく心で理解する事が出来る。
抽象的概念でしかないはずではあるが、彼女の言霊は何より深く心に響く。
ちなみに、ひのめの時は『ルビーの太刀』であった。
そして、蛍花は『エメラルドの羽衣』と選定されたその言葉を聴いた蛍花は何かを理解したようであり、幼いながらも何かを理解した笑顔がそこにはあった。

さて汰壱を視た時、彼女は一瞬とても不思議そうな、しかしどこか楽しそうな表情をした。
100年間の選定士の時間の中でも、汰壱の様な資質を見たのはこれが初めてではない、むしろ数多く視てきた。
だが彼の心の非凡さに彼女は驚いた。
汰壱の手を取り彼女は微笑みながら自分の見えたものを話した。
「あなたは『鉄』ね」
「『鉄』?」
汰壱は小首を傾げた。彼女はあえて汰壱に言霊を使用しなかった。
「そう『鉄』よ、この地球で最も多くあるものであり、最も平凡なもの、でもね平凡なものにするかどうかは、あなたしだい・・・・・・・あなたは、まだ小さいのに心に決めたものがあるね?」 
老女はとても楽しそうに語りかける
「うん、あるよ俺、世界最強のGSになるんだ」
ここで汰壱は(なりたい)ではなく(なる)といった、彼にとってそれは夢ではなく、それすでに決めたことだった。
「そお・・・・でも貴方が目指すその道は貴方にとって、本当に辛くて険しすぎる道になるわ。もしかしたら、何もその手には残らないかも知れない、それでも貴方はそれを目指すの?」
 「目指す!」                   
汰壱は一転曇りの無い眼で静かに答えた。
その眼を見て今度は老女は少し悲しそうに笑った。そして汰壱の頭をそっと撫でた
「解ったわ・・・・・・・願わくば、あなたのここより行く人生の航海にどうか常に一握の希望と幸福を」
    
それが彼女の長き人生の終わりとなる言葉だった。
汰壱と蛍花を視た翌日、彼女は自宅で眠る様に息を引き取っていた。
長き人生の中で、彼ほど凡百な資質は星の数ほど見てきた、その殆どが地に埋もれていった、だがそんな者たちの仲でも僅か一握りの者達は、幼い汰壱と同じよう天の星を目指す道を選んだ。
その結果が如何なるものかまでは彼女にも知る事は出来ない。
だから、彼女は祈るのだ、世界から無謀と笑われる夢追う人たちに
「一握の希望と幸運を」と。
資質を『鉄』と選定された少年は遥かに遠い天の星を目指して走り始めた。

    多くの者が目指す空の彼方まで
    資質が無い?
    才能が無い?
    霊力が無い?

    それがどうした!
    そんなちんけな物は、心を砕くにはまるで足りない・足りてない
    可能・不可能は他人が決める事じゃない!    

    では始めよう、心に野望の旗と古き牙を携えて。
    
    淘汰されぬ壱であろう。

    その心は名は【鉄】(くろがね)折れぬモノ、揺るがぬモノ

    さあ目指そう天空の彼方の【最強】を・・・・・・
                                                   







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