ザ・グレート・展開予測ショー

ごほうび:前編 (絶対可憐チルドレン)


投稿者名:偽バルタン
投稿日時:(04/ 9/27)

時刻は深夜…既に日付が変わろうとしている。
特務機関バベルのエージェント“ザ・チルドレン”の担当官を務めているこの僕…皆本光一は、パソコンの電源を落とした。
ココは僕の自宅…その寝室。
通常の任務に加え、クソガ…もとい子供等の任務外でのお守りまでこなさなければならない僕は、今日の様に、仕事を自宅にまで持込む羽目になってしまう事がよくあるのだ…

「……寝るか……」

…が…既に着替える気力も無い…スーツのズボンにワイシャツという格好のまま、ベッドの上に倒れ込む。
…明日も早く起きなくては…またあいつ等が…ぼぉっとそんな事を考える。
そんな時…こんこん…と、寝室のドアを叩く音がする。

「皆本…起きてる?」
「薫か?…どうしたんだ…眠れないのか?」

訪問者は、大きく力強い瞳が印象的な、赤毛の少女…“ザ・チルドレン”のひとり、超度7の念動能力者、明石薫だった。



ごほうび:前編



全く不本意なコトながらバベル内では、僕の自宅イコール子供等の合宿所という図式が、半ば公認されつつあったりする…無論、僕の意志などお構い無にだ。
そして、今日もまた…子供等は、家に泊まっている。
どうでもいいが、最近お泊りの回数が増えている様な気がする…お前等『たまに』って言ってなかったか?週一ペースでのお泊りは『たまに』じゃない様な気がするぞ?

…話がそれてしまった…

ベッドの縁に並んで座る僕と薫…
因みに薫は下着の上にパジャマ替りのワイシャツ…ボクから強引に奪い取った物だ…のみを着けた楽な格好をしている。

「…ちょっと…な…話があってさ…」
「葵と紫穂は?」
「ん〜…ふたりともよく寝てるよ。」

普段の彼女らしからぬ、もじもじと歯切れの悪い物言い…此方をちらちらと窺い、そのクセ目をあわせようとすれば慌ててそらす…“話”とやらが、何か言い辛いモノである事は間違いなさそうだ。
また何か無理難題を押し付ける気だろうか…まぁ何時もの事なんだけど。

「あ、あのさ〜…その…今日の任務のコトなんだけどさ…
あたし…頑張った…よな?
皆本の言う事もちゃんと聞いたし…誰にもケガさせなかった…それにいつもに比べりゃあ、モノ壊して無かっただろ?だから…その…な?」
「…?」
「その……ご、ごほうび…が…欲しいかなー…なんて…さ…
あ!だ、ダメならいーんだ!うん。ちょっと…その…お、思いついて…言ってみただけ…だからさ…」

最後の方は、全く彼女らしくない、か細く小さな元気の無い声だった…でも…まさか“ご褒美”とは…あの薫が?
…あぁ…なんだ…
背伸びして、大人ぶってはいてもやっぱりまだ子供なんだな…
…とても微笑ましい気分になった。
薫のコトが何だかとても可愛く見える。

「あぁ…いいよ。」
「ほ、ホントか!?ウソじゃないよな?」

ぱぁ…っと、喜色満面で僕の腕にしがみ付く薫。
興奮したのだろうか、頬を桜色に染め、瞳を期待に輝かせ、上目遣いで此方を見てくる。

「…でも、あまり無茶な事は勘弁してくれよ?僕の給料はそんな高くないんだからな?」

何か買って欲しい物でもあるのか…それともどこかに遊びに連れてって欲しいのか…
しかし、甘かった…薫の要求する“ご褒美”は、僕の想像を遥かに超えたモノだったんだ…

「じゃーキスしてくれ!!」
「………へ?」
「だ・か・ら…キスだよキス〜♪クチ付け!ちゅう!!」
「…は、はいぃぃ〜?」

一瞬、思考が停止する…けれど薫は、そんな僕にはお構い無しだ。
眼を閉じて頤を上にそらし、ほんの微かに唇を尖らせる…
準備オッケーのサイン……や、この場合は催促か?

「…ん…」(赤
「や…ちょ、一寸待て!出来るはず無いだろ!?
ふざけるんじゃない、大人をからかうのはよせ!!」

10歳の少女…しかしそんな薫の内面は、実はセクハラおやぢのそれだったりする。
全く…やっぱりコイツはクソガキだ。
今回もまた、無茶な要求に慌てる僕の事を眺め愉しんでるに違いない。
…ところが…

「……なんで…?」
「え?」
「なんで…そんなコト言うのさ…あたしは…ふざかてなんかない…!
…真剣だよ?」
「か…薫…?」

そう言って、ボクを見据える薫の表情は、とても真剣な物だった…
僕が…今まで見たコトが無いほどに…



…後編に続く…

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